幻の詩集 『あまたのおろち』 by 紫源二

幻の現在詩人 紫源二 の リアルタイム・ネット・ポエトリー

 ヒメジョウオン

2005-05-26 14:36:48 | Weblog

 
  子供の頃
  背丈よりも高い
  ヒメジョウオンを見て
  人格があるように感じた

  怖いけど
  ニコニコ笑っているように見えた
  しゃべり出すんじゃないかと思った

  簡単に手折れるのに

  そう思っただけで
  睨み返されようで
  できなかった

  今でも同じ顔して
  咲いている





 真夜中の自販機

2005-05-25 22:47:43 | Weblog

 
  乾いたのどに
  すっきり爽快
  すっかりそうかい
  乾いた
  どこが?
  どこののど?
  こののどどれくらい?
  どれがどののど
  のどのどの
  暗い真夜中
  クライマックス
  自ら光る
  自動販売機
  自動そうかい喜
  そうかい
  彼女
  乾いた
  紙切れ
  噛み切れず
  髪切るとき
  神レバノン
  ノンノも言えず
  ただの紙きれい





 飲みかけのアイスコーヒー

2005-05-17 17:14:52 | Weblog

 
  昨日
  あなたは
  必ず待っているって
  言ったはず

  ただ
  忙しいときは
  必ず電話するって
  言ったはず

  なんだか
  裏切られたみたいで
  電話できない

  これで
  終わりだったら

  ずいぶん早いね

  まだ
  何もしてないのに





 射精した空

2005-05-16 18:05:46 | Weblog

 
  さっき僕
  とても淫らな気分になって

  花の匂い
  嗅いだから

  社会の窓から
  隠れていたモノ
  出して

  生まれたままの
  下半身になったら

  春の空に向かって
  勢いよく
  上に

  飛び出しちゃった

  飛行機雲みたいに
  成層圏まで

  一直線に
  飛び散っちゃって

  天の処女
  懐妊したかな?

  堕天使
  降らせるため





 無垢なおこない

2005-05-16 16:50:32 | Weblog

 
  名前も知らない花

  咲き誇って

  ひたすら待ち続ける

  何者も拒まず

  ただ
  受容するだけの

  罪のない行為

  誰も傷つけず

  ただ
  誰かの行為を
  そのまま
  受容するのを

  待っているだけ

  手折られ
  死に至るか
  受精し
  実を結ぶか

  選択する自由も持たず

  ただ
  花開いて

  何をされるのかも知らず

  ただ
  信じて

  されるがまま

  受け入れるためだけに

  こんなに
  美しく
  花開いて

  待ち続ける


  名前も知らない
  咲き誇った花





 過剰なまで開いて

2005-05-16 15:26:16 | Weblog

 
  過剰に花が
  開いている

  ありとあらゆる
  目という目に
  性器が
  見られるように

  真昼の
  太陽の下
  自ら芳香の匂う
  花びらを広げて

  それが誰であれ
  触れられ
  しゃぶられ
  吸われるために

  花心を甘い蜜で濡らして

  自らの姿を
  過剰なまでに
  さらけ出し
  見せつけていながら

  一切自分を顧みない

  自らが
  過剰であるほどに
  エロティックであるのに
  そのことにさえ
  気づかない

  だから
  彼女はこんなにも
  美しいのか?





 PM10:00地下鉄

2005-05-11 22:12:00 | Weblog

 
  帰宅の地下鉄

  酒臭い
  背広姿の
  サラリーマン
  疲れ切った顔

  そんな両親の所に帰る
  夜間学生たちの
  ガキっぽい顔

  今日一日
  稼いだ顔と
  稼がないかった顔
  ごちゃ混ぜになって

  いったい僕は
  どっちなの?

  いったいこの人
  誰なんだ?