幻の詩集 『あまたのおろち』 by 紫源二

幻の現在詩人 紫源二 の リアルタイム・ネット・ポエトリー

 バスルーム・ウィンドウ

2013-07-29 01:54:41 | Weblog

 
 
 バスルームの窓から激しい雨に打たれるガレージが見えた
 
 オレンジ色の水銀灯に照らせられて
 
 誰もいないパーキングのアスファルトの上に
 
 オレンジ色に瞬く雨粒だけがキラキラと
 
 
 そのあと、僕は窓を少し閉めたんだ
 
 あんまり全開じゃあ、もし誰かが通りかかったら
 
 丸見えになっちゃうじゃないか
 
 
 そう、僕が入ったときは全開だったんだよ
 
 
 222
 
 今、ネットを調べたら、こんなふうに書いてあったよ
 
 エンジェルナンバー『222』
 
 信じる心をもっていてください
 
 すべてはうまくいきます
 
 この状況は関わっているすべての人にとっておのずとみごとに解決していきます
 
 心配はいりません
 
 
 僕はエンジェルの助けを借りたけど
 
 今、僕の中にいるのは
 
 
 僕はシバ
 
 僕はガネーシャ
 
 破壊と創造の神
 
 頭をすげ替えられた神
 
 
 豪雨が叩きつけても
 
 あっという間に蒸発してしまう
 
 溶けたアスファルトのように熱い
 
 地面
 
 僕のハートは、地面に叩きつけられても
 
 熱いまま、鼓動している
 
 踏みつけても、鼓動を止めない
 
 
 あなたは誰?
 
 
 全て
 
 
 あなたの名前は何?
 
 
 陶酔
 
 
 昨日の夜なにをするの?
 
 
 何が起きたの?
 
 
 そんなこと言えないけど
 
 言う必要もないけど
 
 忘れない
 
 
 僕といると、マジックが起きるんだよ
 
 
 光か闇かは分からないけど
 
 
 近くにいるだけで
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 

 だらしなく生きる

2013-07-25 23:47:17 | Weblog

 
 
 「君はだらしないね」
 
 「そう。100%だらしない」
 
 「どうするつもりだ」
 
 「わからない」
 
  あたりが急に暗くなって、空から大粒の雨が降ってきた
 
 「第一に、あきらめるという方法もある」
 
 「それは僕も考えた。でも、そうするなら生きていてもしかたがない」
 
 「だったら実行するか?」
 
 「僕が実行したら、壊れるものがたくさんある」
 
 「それにきみはもうそんなに若くない」
 
 「そう。僕はもうそんなに若くない
 
  でも、今だから分かったってことがたくさんあるのは確かだ」
 
 「今なら表現できることもあるということか?」
 
 「そうかもしれない」
 
 「それには、物理的な場所と時間が要る」
 
 「その通り」
 
 「でもきみは、もう一度生まれ変わってやり直す訳にはいかない」
 
 「そう。物理的な場所と時間は、本当は今ならなんとか手に入る
 
  でも、失った時間はもう取り戻せない」
 
 「だったら、実行することだな
 
  それで壊れるものがあったとしても、それは必然だ
 
  シバ神を見習えよ。きみを応援しているシバ神は
 
  言うまでもなく、破壊の神だ
 
  でもそれは、創造のための破壊だ」
 
 「そうだが、僕には実行できない
 
  実行できない”体質”になってしまったんだ」
 
 「それは”体質”ではない、きみの”怖れ”だ」
 
 「10代で試行錯誤したのに、それがぜんぜん身に着いていなかった
 
  今ではそう思う
 
  この社会に適応することしか考えなくなってしまった
 
  試行錯誤しながら、いろいろな人間を見たはずだが
 
  それらを参考に自分の生き方を模索したこともなかった」
 
 「結局、齢だけとって老いぼれたと思っているんだろう?」
 
 「そうだ。そして、なんのキャリアも身につかなかった」
 
 「身内にもそうとう邪魔されたしな」
 
 「そうだ。放っておいてくれなかった
 
  よってたかって邪魔をした」
 
 「もっとリスクを冒すべきだったんだよ」
 
 「そうなんだ。もっとリスクを冒すべきだった
 
  例えば、あのときはエジプトに行くべきだったし、
 
  あのときはインドに留まるべきだった
 
  あのときは、NYからメキシコに行くべきだったし
 
  あのときは、台湾からフィリピンに行くべきだったんだ
 
  そして、あのときは、あのまま、山の中にずっといるべきだったんだ
 
  そうしていたら、きっと今の僕はここにこうしていないはずだ」
 
 「確かにそうだ。きみは、まがりなりにも、たとえ犬のようであっても
 
  なにかの紙切れに、絵とか詩をかいていただろう」
 
 「誰にも読まれない詩と、誰にも見られない絵をね」
 
 「そうだ。それは今でも変らない」
 
 「そう。今でも変らない。(笑)
 
  でも、こんなネットができるなんて
 
  あの頃(ビルゲイツがガレージでベーシックを作っていた頃)は
 
  考えもしなかった」
 
 「そう。80年代になって、全てがコンピュータの世界になった
 
  デジタルになった」
 
 「アナログはすべてデジタルに置き換えられた
 
  1と0の2進法の世界になった」
 
 「そう。そして、世界から理想が消えた」
 
 「そして、明らかに弱肉強食の競争社会になったのは
 
  レーガン・サッチャーの時代からだ」
 
 「湾岸戦争がその始まりだ
 
  国連でイラクに多国籍軍を派遣することが決定された
 
  明らかな偽善を、世界で誰も見抜けなくなった」
 
 「それから、NWOの時代になった
 
  ブッシュの時代だ」
 
 「もし、きみがそのときアメリカにいたらどうする?」
 
 「きっと”愛国者法”に引っかかって、グォンタナモ刑務所に入れられていたかもしれない」
 
 「そういうリスクはあった
 
  テロリストとかスパイとして、捕まっていたかもしれない」
 
 「フィリピンの孤島に行ったとしたら
 
  反政府ゲリラに殺されていたかもしれない
 
  アメリカの回し者だと思われて」
 
 「そのリスクは確かにあった
 
  でも、そういうリスクを回避して
 
  今ここでこうして生きている意味がいったいどこにあるのだろう」
 
 「きみは、完全に自分を見失ってしまった」
 
 「そう。見失った」
 
 「30年くらいの間に、自分をだんだんと見失ったのだ」
 
 「こんなに長い間、ここに居続けるとは考えていなかった
 
  本当はもうどこか、よそに行っているはずだった」
 
 「よそとはどこだ?」
 
 「わからない。でも、ここではない」
 
 「ではなぜここにいる?」
 
 「ここに僕を引き止めている多くの人がいるからだ」
 
 「そんな関係を否定していたのが
 
  きみが17才のときに弟子入りしたグルではなかったのか?」
 
 「そうだ。結婚も、親子関係も否定した
 
  人間は一人一人が個であるべきだと言っていた」
 
 「きみは今、その思想をどう思う?」
 
 「確かにそれは真実だ
 
  でもそれは実現できない”理想”に近い
 
  それを実現するには
 
  それこそ、シバの加護がいるだろう」
 
 「つまり、そうとうの破壊が必要だということか?」
 
 「そうだ。破壊され、傷付いて、立ち上がれないものもでてくるだろう」
 
 「きみは、結局、”優しい“のだ」
 
 「そうかもしれない。”優しい”のかもしれない」
 
 「でもときには、冷酷になることも必要だ」
 
 「そうかもしれない
 
  でも、僕が冷酷になったら、とことん冷酷になるような気がする」
 
 「たぶんそうだ。そして、きみはきみをも破壊するだろう」
 
 「そうかもしれない
 
  だから、僕はこうして中途半端なところで生存を保っているんだ」
 
 「そうかもしれない 
 
  でも、一応、生を信頼してみるように忠告しておく
 
  老いぼれるのも、その信頼の内の一つだと考えるのだ」
 
 「しかたがない
 
  こんなにだらしない僕には
 
  生を信頼するなんて自分を信頼することのようで
 
  できそうにもないが
 
  老いぼれていくのだけは確かだ
 
  だから、しかたがない
 
  生を信頼していれば、きっと死に近づいていくんだろう?」
 
 「そうだ。リスクの少ない死だ」
 
 「結局、僕はそれを選んだんだね」
 
 「そうかもしれない。だから、あきらめることだ
 
  もうこれ以上、抗うことはできないと」
 
 「もう、抗うことはできない
 
  あるがままだ
 
  もうしかたがない
 
  ぼくはこうしてだらしなく死ぬまで生きるだけだろう」
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
  

 詩は野蛮か?

2013-07-23 02:05:28 | Weblog

 
 
  ああ、私の薔薇よ!
 
  というような詩は、もうとっくにおわっている
 
 「アウシュビッツ以降、詩を唄うことは野蛮だ」と言われて以降
 
  ドイツ在住のユダヤ人、パウル・ツェランが詩人の最高峰とされる
 
  もちろん(皮肉を込めて!)ノーベル文学賞にノミネートされたりしない
 
  あたりまえの話しだ
 
  それはそれとして、「ああ」とか「おお」とかはもはや詩では死語となった
 
  それはそれとして承知の上で僕は言う
 
  ああ、僕の天使
  
  我が生命のエネルギーのみなもと
 
  おお、なぜ君は沈黙し続けるのか? と
 
  
  アウシュビッツ以降とは、もちろんハイネなんてとっくに昔
 
  抗鬱剤で言えば第一世代の三環系、ノリトレンとかトリプタノール
 
  アウシュビッツ以降と言ってずばり意識されているのはホフマンスタール
 
  第四世代の抗鬱薬、トレドミンとか、なんだっけ、忘れてしまった
 
  僕はバカだからね
 
  すぐに思い出すけど、そんなのどうでもいい
 
  それをのんだときは、本当にすごかったよ
 
  詩の話しをしていたんだっけ?
 
  本当は違うよ 
  
  
  ああ、なせ君は沈黙の彫像となりしか?
 
  ということ
 
  簡単に言えば
 
  (僕はゲーテではないから)
 
  何でなんにも言ってきてくれないの?
 
  そう言えば、あなたは、ドイチュとは関係なかったね
 
  ゲーテだのハイネだのホフマンスタールだのツェランだの
 
  ベートーヴェンもモーツアルトもバッハも
 
  ヒットラーも
 
  ぼくもフランスの方が好きだよ
 
  でも綺麗な人がいるのはドイツの方だ
 
  フランス人よりもドイツ人の女の人の方が綺麗
 
  あんな七面倒くさい文法の言葉をしゃべっているけど
 
  僕はドイツ人の方が綺麗だと思う
 
  でも、そんなの関係ない
 
  今は君のことしか頭にない
 
  このいかれた頭の中に君がいること自体
 
  君にとっては不名誉なことだろう
 
  でも、もしかしたら、パウル・ツェランに並ぶ詩人かもしれないよ
 
  僕は詩人のレポートでA+をとったし
 
  ツェランの翻訳者で有名な先生だったらしい

  僕が選んだ日本の詩人は、白石公子だった
 
  そのレポートであA+をとって、
 
  次の学期から、白石公子が詩の授業の先生になった
 
  きっと、生徒に選ばせていたのかもしれない
 
  僕のレポートが詩の権威の目に止まった
 
  なぜなら、僕は歯に物を着せずに書くから
 
  つまり、ツェランだって、公子だって、セックスなんだよ
 
  それが悲劇的であれ、歴史の終焉であれ、ヘーゲル的であれ、ゲーテ的であれ
 
  性は性なんだ
 
  この世の中に雄と雌、男と女、+と-しかないんだ
 
  そんな単純な話し、詩人のメタファーにもならないだろ
 
  でも、それをよりストレートに表現している人が本当の芸術家なのさ
 
  そこらへんにいるアカデミックな君には分からないだろうけどね
 
  くだらない学問、教育をうけたっていうキャリアなんか
 
  詩人にはまったく通用しないのさ
 
  あとは、美しさだけだ
 
  ランボーにしたって、ニジンスキーにしたって、美しかった
 
  ニジンスキーは詩人ではなかったかもしれないが
 
  彼は神になったんだよ
 
  彼の言葉は全て詩になったんだ
 
  だから、結局僕が何を言いたいかって?
 
  それは、なぜ君はだんまりを決め込んでいるのかってこと
 
  彼は、君のことしか考えていないよ
 
  彼は本当にかわいそうだ
 
  そして、ぼくに言わせれば、彼は幸せに満たされている
 
  そんなこと、君が知らないわけないけど
 
  ああ、僕の薔薇よ、なんて書かないのは
 
  もうとっくにそんな時代は終わっているから
 
  アウシュビッツ以降、詩は野蛮なのだ
 
  特に、ドイツ語のね
 
  でも、ぼくは日本人だし
 
  君は、フランス人だし
 
  関係ないよね
 
  日本語なんて、絶対に、どこの言語にも翻訳なんかされないし
 
  百人一首とか、徒然草みたいな古典でしかないだろ
 
  でも、僕の中にも、ドイツもフランスもあるんだ
 
  エジプトもアトランティスもあるのと同じように
 
  つまりは、なにを言いたいかというと
 
  今度、瞑想しようねっていうこと
 
  メディテーション
 
  目と目を見つめ合って、
 
  チェクラを全部全開にするんだ
 
  たった二人だけでね
 
  そこに言語なんていらない
 
  詩もいらない
 
  アウシュビッツ以降でも野蛮ではない
 
  なにもまとわず
 
  ただ、ありのままに見つめ合い
 
  そして、全てのチャクラのエネルギーを全開にするんだ
 
  それが、野蛮なものだろうと、
 
  デカルト以降の近代的理性的ものだろうと
 
  ナチ以降の野蛮なものだろうと
 
  全て混沌と全部を許して
 
  天使って、地獄にだっているし
 
  天国にだっているのが
 
  本当の天使なんだよ
 
  闇の底から、天上の恍惚としたまばゆい光までを知っている
 
  それが宇宙のマクロコスモスの人間としてのミクロコスモスとして
 
  すべて備わっているんだ
 
  まるで、相似図形のように、フラクタルのように
 
  それが君と僕だとしたら
 
  宇宙なんて、ちっぽけなもんだろ
 
  たった二人で簡単にその全てを味わい尽くすことができるんだ
 
  ぼくはそのために君を選んだ
 
  君に出会った
 
  君もそのために僕に出会った
 
  そのような出会いを野蛮だとは言えないはずだ
 
  肉体を持った人間はもともと野蛮なのだから
 
  だから、実験しよう
 
  愛の実験
 
   
 
 
 
 
 
 
 
 

 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 

 
  
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
  
 
 
 
 
 
 

 

 
  
    






























 数学を解くようにはいかない

2013-07-16 01:16:09 | Weblog

 
 
  当事者はたった二人で、他に誰がいる訳でもないのに

  簡単な数学の問題のようには、解けないよ

  この神が与えてくださったとしか思えない、
  僕にとってはこの上なく幸運な状況

  ポアンカレ予想を解いた数学者がいるそうだが、
  彼は世界一名誉な賞を貰うのも辞退して、行方不明になってしまったらしい
  (彼も、フィールズ賞の名誉なんてゴミみたいにしか感じられない、
   最上のエクスタシーを味わってしまったのかもしれない)

  たとえば、愛なんていう項は数学には存在しないけど、
  それを客観的に理解することなんて不可能だよね

  それは僕の中にあって、それが存在するようになったのは、
  あなたに出会ったからだ

  それを心臓の中からえぐり出して、あなたに見せてあげたいけど、
  そんなことできないのは僕ですら知っている
  この、かなりいかれてしまった僕でもね

  だから言葉を使って伝えようとするけど、
  あなたはすぐに見破ってしまうよね

  僕の言葉なんて明らかに矛盾していることを

  愛に優先順位なんかないはずたけど、
  僕は吟遊詩人のようには自由じゃない

  僕が一番軽蔑する法律とか紙切れ一枚の戸籍とか一本の線にすぎない国境とか

  それらによれば、僕は日本国に出生した両親の間に生まれた子であり、
  婚姻した夫であり、子の父であるらしい

  僕はそれらの責任を放棄しようとは思わない

  でも、魂には、この世の戸籍によって付与された役割とか、
  法律で規定されている罪とか、国家とか、人種も存在しない
  そんなふうに習ったよね

  でも、神のために純潔を保たなければならないとか、
  あれやこれやのシャリーアのような行動規範みたいなものは、
  僕には不要なんだ
  不要なだけでなく、それらを憎んでもいる
  何故なら、自由を愛しているから

  たとえそれが全知全能の神から与えられたものだとしても、
  僕はあえてそれらを足元に踏みつけるよ

  何故なら、そんな権威が世の初めから存在するなんてありえないから
  そんなことは、ピタゴラスの定理を証明するよりも簡単に分かることだ

  だから、僕の中に愛がある限り、
  それを否定することなんて、誰にもできないことなんだ
  当事者は結局この僕と、そして、あなたしかいないのだから

  もちろん、あなたが否定すれば、それで終わりだ

  愛を強要することなんて、誰にもできないことだから
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 

 許される資格はある?

2013-07-15 05:04:03 | Weblog

 
 
  ぼくはあなたのすべてが好きだよ

  だってあなたはすべてにおいてかわいいから

  ぼくにはその資格がないかもしれないけど、だったらぼくはもうどこにも行けない

  あなたを傷つけるつもりはなかった

  でももしそうなら、ぼくはどこかに行くよ

  二度とは戻っては来れないけど
  ぼくにとっては一番身近な場所

  きみがいないなら、地獄で焼かれたっていい

  ぼくを罰するためなら、きみに殺されたってかまわない

  贖罪の神父なんて、いないから

  懺悔をするなら、薬を飲むよ

  大丈夫だから、薬をください

  迷惑はかけない

  でもそれしかあなたを忘れることができないから

  他にないだろ?































 壊れない為に

2013-07-07 15:01:23 | Weblog

 
 
  こわれた機械の部品
 
  集めて
 
  見つめて
 
  ため息をつく君の顔
 
  見つめて
 
  僕は言う
 
  どこ行くの?
 
  片道チケット
 
  君と
 
  僕と半分こにして
 
  行ってみない?
 
  プロペラ機なんて
 
  いまどき珍しいでしょ
 
  太平洋越えられるのかな?
 
  NO, NO, NO
 
  落っこちるよ
 
  きっと
 
  そして
 
  バラバラになった部品
 
  きみがまた集めて
 
  手のひらに乗せて
 
  見つめて
 
  ため息をつくんだ
 
 
  だから
 
  機会を壊しちゃダメだよ!
 
  最先端のロマンスの旅
 
  片道チケット
 
  君と
 
  僕と半分こにして
 
  太平洋越えられるかな?
 
  ダメなら僕が操縦するよ
 
  太陽に向かって
 
  ジェット機の操縦桿握るよ
 
  それとも
 
  僕の操縦桿
 
  君が握ってみる?
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 

 鉛の海

2013-07-04 01:34:54 | Weblog

 
 
  黒い鉛に溶かされて
 
  泳ぎ行きつく波しぶきの海
 
  銀色の月を浮かべ
 
  難破して漂う船
 
  誰もいない船室に
 
  いつもと違う時計の音
 
  女の歌声のように哀しく響き
 
  嵐の夜
 
  答えもない問いに応える僕の
 
  黄金の裸体に映る銀色の月
 
  いつもと違う
 
  思い出したこともない昔の記憶
 
  少女の胸のように鼓動し
 
  叩きつける雨粒
 
  僕の肉体は
 
  千の弾丸を浴び
 
  鉛色の血に染まり
 
  全裸のまま
 
  難破船のマストに登り
 
  遠くに見える北極星の光の点が
 
  海の底に無数に映っているのを見つめる
 
  いつもと違う
 
  忘れた記憶の断片
 
  いつもと違う
 
  ささやく愛人の夢
 
  鼓動する雨粒に愛撫され
 
  嵐の中に光る無数の点
 
  小さき希望のようにも
 
  熱を帯び
 
  発光し
 
  ひとつに集まり
 
  発熱し
 
  見つめる
 
  二つの目と目
 
  合わせ鏡のように永遠の
 
  遠い記憶と鉛のように重い痛みに溶かされた肉体
 
  嵐のように荒い息が交錯し
 
  固く閉じていたつぼみが徐々に開いていき
 
  雨粒なのか涙なのか
 
  銀の滴がとめどもなく
 
  紫色の花弁を伝って
 
  溶解した鉛の海に降り注ぐ
 
  嵐の海に漂い
  
  難破した船のように
 
  激しく揺れながら