幻の詩集 『あまたのおろち』 by 紫源二

幻の現在詩人 紫源二 の リアルタイム・ネット・ポエトリー

 ぼくはそこにいた

2006-12-10 02:10:52 | Weblog

 
  あのとき
  きみは
  歩きながら

  上を見ていた

  逆さまになって
  ぼくは見上げた

  地面の上を

  星が光っていた
  
  きみがまだ
  なにもしらないとき
 
  ぼくは
  きみのことを
 
  すでに知っていた
  
  だから
 
  きみははじめて昨日

  ぼくに微笑んだね
  
  きっと
  胸に架けている
  十字架のペンダントが

  気に入ったんだね
  
  ぼくは
  マリア様を
  彫刻しようと思った
 
  そんなこと
  したことないから

  いや、でも
  あるかな

  いや、ない
 
  でも
  クリスチャンじゃないし
  
  だから
  きみを
  彫刻することにした
 
  小さなペンダントにして
  首からぶら下げようと思う
 
  きみの姿を
 
  十字架に架けられたキリストのように彫刻して
 
  ぼくが首からぶら下げていたら
 
  それをきみが見たら

  それを見ても
  
  きみはそれがきみだと
  
  気づかないだろう
  
  いや
  
  気づいたとしても
 
  無視するだろう
 
  きみはまだ
 
  なにも知らない
 
  だから
  
  だから
 
  いつか
 
  わかるだろうことを
 
  今、ぼくは
 
  想像している
 
  
  海
 
  夏
 
  風
 
  地球の裏側
 
  そこで
 
  ありふれた言葉より
 
  ありふれた行為を
 
  きみは選ぶ
 
  なぜなら
 
  そこには
 
  きみしかいないから
 
  ずっとずっとそこにいて
 
  そして
  
  きみはそれを選んだのだと思っている
 
  でも、きみは知らない
 
  それは
 
  ぼくが選んだことだということを
 
  だから
 
  きみはぼくを見る
 
  きみがいつも見られているように
 
  きみはぼくを見る
 
  そして
 
  きみはなにも見ない

  きみは波に浮かぶ
 
  キラキラ光る

  太陽がきみだ
 
  風はふいて
 
  消えていく
 
  それがぼくだ
 
  まるで詩のようだと
 
  きみは思うかもしれない
 
  しかし、それは詩じゃない
 
  郷愁だ
 
  そのときその記憶は作られた
 
  今思い出そうとしても思い出せない
 
  しかし、きみは
 
  そのとき波に浮かんでいた
  
  ぼくはそれを知っている
 
  だからきみに
 
  そのときのきみを
 
  はっきりと思い出してもらいたい
 
  きみはそのとき
 
  太陽に照らされていた
 
  その汗がきみだ
 
  そして
 
  潮の香りがした
 
  遠くに浮かぶ雲
 
  それがぼくだ
 
  やがてスコールを降らせ
 
  上昇して消えてしまう
 
  まるで詩だときみは言う
 
  でもそれは詩じゃない
 
  郷愁だ
 
  きみがそのとき感じた記憶
 
  それをぼくが思い出すとき
 
  きみは知らない
 
  ぼくがそこにいたことを