幻の詩集 『あまたのおろち』 by 紫源二

幻の現在詩人 紫源二 の リアルタイム・ネット・ポエトリー

 欠落させたもの

2012-04-23 00:46:19 | Weblog

 
 
  人生、思いどおりにはいかないものだ。
 
  でも、僕にとって欠落しているものは、
  必ずしも、僕に原因があった訳ではなかった。
 
  僕が生まれる前からそのようになっていた。
 
  つまり、僕はその環境に生まれ、
  欠落したまま育った。
 
  したがって、僕が欠落していたのではなく、
  初めからそうだったのだ。
 
  そのことに、初めて気づいた。
 
  そして、しかし、僕は、欠落したものを
  今から補おうとは思わない。
 
  それは、僕にとっては傷だ。
  未だに痛みを感じ、口を開き、血が流れている。
  それを癒すことはできない。
  この痛みを受け入れるしかないのだ。
 
  日陰で育った植物は成長しない。
  手折られた枝からは新しい芽は出ない。
  そして、それを手折った者がいて、
  その枝を売りさばいて、
  のうのうと暮らしている者がいる。
 
  それは、許されない行為だが、
  それを裁く手段はない。
 
  復讐したとしても、
  失われた枝は戻ってはこないし、
  出るはずだった芽が、
  再び芽吹くことはないのだ。
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 

 聴くだけで自己実現できる魔法のCD

2012-04-10 02:45:40 | Weblog

 
 
  聴くだけで自己実現できる魔法のCD
 
  そんなものがあるのかどうか、ぼくには、わからない
 
  そもそも、言葉の意味がわからない、から
 
  構築する音楽のように
 
  歌詞と五線譜の音符のように
 
  他者との関わりなくして自己は存在しえない、けど
 
  言葉の文法を理解している無意識
 
  音符で音楽は作れないように
 
  CDに入っている無意識
 
  自己実現するための映像は
 
  自己実現した後の映像を元にして作られる
 
  地平線に霞む山並みに噴煙を上げる火山
 
  それはたぶん、そして必ず、マウント・フジだろう
 
  ダンスする男女は裸で象徴的アブストラクトに結晶し
 
  世界の終わりを祝福し、愛し合う
 
  そのとき、頭は冴え渡り、沈黙は深まる
 
  浮遊する宇宙は、誰もいない地球の最後
 
  そのとき、ぼくは思う
 
  あなたがこんなに美しくてよかった、と
 
  ぼくはピエロのように逆さまになって
 
  もちろん、ペニスも逆さまになって

  碧い空を向いている
 
  まるで噴水のように
 
  吹き上げるものはすべて空へ
 
  そして、やがて落下するものは、すべて地上に降り注ぐべし!
 
  地獄がそうであるように
 
  そして、天国と地獄が、夢と記憶であるように
 
  そして、夢は
 
  まだ見たこともない禁断の果実であるように