幻の詩集 『あまたのおろち』 by 紫源二

幻の現在詩人 紫源二 の リアルタイム・ネット・ポエトリー

 世界の終わり

2010-11-22 03:22:35 | Weblog

 
 
  さっき、深夜のラジオ・ニュースで言っていた
 
 「今日、朝が来ないことが判明しました」
 
  そのあと、ホワイトノイズしか聞こえなくなった
 
  こちらで朝が来ないのなら
 
  地球の裏側では夜が来ないのだろうか
 
  と思った
 
  そのとき、水の滴る音が聞こえ始めた
 
  たぶん宇宙から響いてくるのだろう
 
  宇宙は小さな蛇口になったのだ
 
  そこから水が漏れだした
 
  こわれてしまったのだ
 
  水回りも、電磁気も、ラジオも
 
  地球が回転しなくなったのなら、朝は朝、夜は夜のまま
 
  いや、回らないコマが太陽の周りを回ると
 
  一年でゆっくりと一日が経つはずだ
 
  でも、そんなことあり得ない
 
  きっと 僕だけがそうなのだ
 
  僕だけ、朝が来ないのだ
 
  たぶんそうなのだ
 
  そうなのかどうか
 
  あの人にきいてみよう
 
  他の人にきいたら笑われる
 
  でもあの人ならちゃんと答えてくれるはずだ
 
  笑わないで
 
  だってあの人は
 
  この社会に生きているようで、そうでない
 
  この社会で生きているのに
 
  僕が地球の自転と反対に旅をすれば
 
  一日が始まらないで済むのかもしれない
 
  ありえる話だ
 
  論理的だ
 
  でも、あの人は、そんな論理的な話でなくても
 
  それがあり得ると言ってくれる
 
  でも、あの人は今、闇の中にいる
 
  ここが闇であるように
 
  あそこも闇なのだ
 
  なぜそうなのだろう
 
  なぜ光を失ってしまったのだろう
 
  僕がそれを望んだからだ
 
  その方が
 
  光がより綺麗に見えるからだ
 
  だから
 
  朝が来ないことは
 
  星の光を見る者にとっては
 
  好都合なのだ
 
  星から来た種族
 
  太陽の光だって同じこと
 
  朝が来なければ
 
  太陽は小さな星の一つになる
 
  詩人は詩を歌わない
 
  もう二度と祈らない
 
  なぜなら
 
  すでに世界は終わってしまったのだから
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
  
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
  
 
 
 
 
 
 
  
 
 
 
 
 

  
 
  
  

 失恋させて

2010-11-18 21:20:28 | Weblog

 
 
  彼女は言った。
 
 「あたしに最高の失恋をさせて。あたし、失恋マニアなの」
 
  失恋?
 
  ぼくは考えた。
 
  どうやって?
 
 
  彼女は言った。
 
 「それは、あなたの考えること。
 
  あたしにあなたのこと、思い死にさせるくらい
 
  好きにならせて」
 
  思い死ぬ?
 
  ぼくのことを?
 
  どうして?
 
 
  彼女は言った。
 
 「意味なんてないの。
 
  意味なんて無意味になる世界に
 
  あたしは浸りたいの」
 
  無意味な世界に浸りたい?
 
  どうして?
 
  どうやって?
 
 
 「あなたが失恋させてくれたら
 
  一生あなたのことを思っているわ」
 
 
 
 
  
 
  
  
  
  
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 

 ごめんなさい、さようなら、でも・・

2010-11-13 22:10:41 | Weblog

 
 
  ごめんなさい
 
  あなたを愛せなくなったの
 
  ごめんなさい
 
  もう時間がないの
 
  だから、もうメールしてこないで
 
  迷惑メールなの
 
  あなたのメール
 
  ぜんぜん心に響かないし
 
  迷惑なの
 
  わかる?
 
  ごめんなさい
 
  もう冷めてしまったの
 
  ぬるくなったコーヒーみたいに
 
  まるで朝になったら夢から醒めたように
 
  わかる?
 
  わかりますか?
 
  あなたのこと
 
  もうなんとも思ってないの
 
  ごめんなさい
 
  さようなら
 
  もう追いかけて来ないで
 
  でも・・
 
  他の人を愛さないで
 
  約束できる?
 
  それだけ
 
  それだけは最後に言っておくわ
 
  それでは
 
  もう二度と私を追いかけて来ないでね
 
  さようなら
  
  
  
  
  
  
  
  
  
  
 
 
 
  
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 

 
 
 
 
 
 
 

 簡単にできる方法

2010-11-11 22:54:50 | Weblog

 
 
  簡単にできる方法
 
 
  たとえば
 
  あの水平線の少し上で瞬いている星
 
  掴むことはできないが
 
  そこまで行くことができたら
 
  簡単にできたら
 
  
  
  時間をなくす方法
 
  宇宙の裏側まで行って
 
  またここに戻って来る
 
  一瞬で、できたら
 
 
   
  できたら
 
  
  たとえば
 
 
  あなたとの会話を
 
 
  望もうが望むまいが
 
 
  録音テープの初めと終わりを輪っかにして
 
  永久ループの繰り返し
 
 
  どこから来たんですか?
 
  名前は?
 
  何を見ているの?
 
  大きな目
 
  あなたは私の目を見ている
 
  私もあなたの目を見ている
 
  ストップ! ここでカット!
   

  言葉はBGMみたいなもの
 
 
  たとえば
 
  簡単にできる方法
 
 
  愛し合うために
 
  見つめ合いながら
 
  別の時空に消えてしまう方法
 
 
  一瞬は
 
  持続すればするほどいいに決まっているから
 
 
  でも、光の煌めきのように
 
  瞬かないと美しくないから
 
  闇の中で輝くなら、なおいい 
 
  さらに際立つのは
   
  寒い夜
 
  漆黒の星空の下とか
 
 
  そうしたら
 
  もうあなたは
 
  逃げられない
 
 
  そして、簡単にできる
 
 
  たとえば
 
  あの水平線の少し上で瞬いている星
 
  掴むことすらも
 
 
  できるくらい
 
 
  簡単に
 
 
  一瞬を永遠にストップさせて
 
 
  二人でその輪の中に閉じ込められたら
  
 
  
  そのときは怖がらなくていいよ
  
  
  あなたはわたし
 
 
  わたしはあなた
 
 
  だから
  
  
  
  
  
  
  
  
  
  
  
  
  
  
  
  
  
  
  
  
  
  
  
   
  
  
  
  
  

 あなたのように消えてしまう雲

2010-11-08 23:59:43 | Weblog

 
 
  千の風景があって
 
  毎日毎時刻々と変化している
 
  ただ空を眺めているだけで飽きないのに
 
  美を堪能するためだけに生まれてきたのではないから
 
  視線のベクトルを水平に向け
 
  ぶつかる障害物がどんなに醜くても
 
  それらを認識するしかない
 
 
  そうだろ?
 
 
  あなたに訊いているんだ
 
 
  あなたは何でもできる?
 
 
  たとえばぼくのために何でもできる?
 
 
  あのときはそう言って
 
  それは永遠だと約束して
 
  やっぱり時は刻々と変化して
 
  そんな約束、存在したことすら忘れて
 
  あなたの存在すら、どこかへ行ってしまった
 
 
  あなたはどこかにいて
 
  これを読んでいるかもしれない
 
  だとしても
 
  もう、ぼくとは関係ない
 
  あの世に行っても出会わない
 
 
  あなたはぼくを知らない
 
  今日の夕焼け空に浮かんだ雲の姿を覚えていないように
 
  ぼくは、その他大勢の一人に過ぎない
 
  
  誰もちぎれた雲のひとつひとつに
 
  名前を付けたりしないだろ?
 
  すぐに形を変え、消えてしまう雲に
 
 
  でもぼくには名前があって
 
  あなたにも名前がある
 
  それをお互いに呼び合って
 
  笑い合ったとしても
 
 
  時は永遠に形を変え、流れ、消えてしまう
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 

 かなわないことを約束したい

2010-11-07 23:59:52 | Weblog

 
 
  かなわないことがわかっていても
 
 
  あなたは青い色のスーツを着ていて
 
  隙がない女性に見えた
 
  才能があるのを少し覗かせて
 
  露出狂にならない程度に
 
  自分の欲望に気付かせていた
 
 
  でもいい寄る仕草を見せた途端
 
  興味を失くして
 
  洗練された趣味の世界に逃げ込んで
 
  そこで培った社交の仲間の元に戻っていく
 
 
  所詮、生きている階級が違うのだから
 
  マナーを学んでも
 
  新参者は溶け込めないソサイエティー
 
  あなたはそこで自然に振る舞い
 
  ほとんど全ての欲望を昇華することもできる
 
  でも、たったひとつだけできないことがある
 
  それは、冒険という誘惑
 
  その好奇心に満ちた欲望を満足させるためには
 
  今までのマナーを破り
 
  階級の外に飛び出し
 
  ブランドの高級ラベルを剥がして
 
  裸の服を着なければならない
 
 
  あなたには、たぶん分かってる
 
  自分のしたいことが、
 
  ぼくと付き合うことだということを
 
  そして、ぼくと付き合えば
 
  あなたは、今までになかった自分の欲望に気付くだろうことにも気付いている
 
  でも、まず、ぼくと付き合うには
 
  ぼくと付き合う準備をしなくてはならない
 
  それは、ただの準備ではなくて、
 
  一種の冒険、もしかしたら、賭けになり得る
 
 
  自分の服を脱ぐことができるだろうか?
 
 
  あなたは自問している
 
  友達はなんて言うだろうか
 
 
  私はそれでも階段を踏み外さないで済むだろうか?
 
  私は私でいられるだろうか?
 
  私のキャリアはそのままで、
 
  すこし世界を広げるだけならいいが
 
  キャリアを否定し、世界が180度変ってしまいやしないだろうか?
 
 
  あなたは考えている
 
  躊躇している
 
  自信に満ちた声で語ることができるのに
 
  それは自己の分野での、自己に係わらない第三者のことだけ
 
  あなた自身のこととなったら、
 
  あなたは迷い、急に確信が持てなくなり、自らを閉ざす
 
  無難で、危険の少ない方を選ぶ
 
 
  それでもOK
 
  ぼくはOK
 
 
  あなたのスーツ姿は素敵だし
 
  あなたの自信に満ちた言葉は魅力的だ
 
 
  でもあなたがそのキャリアから少し外れ
 
  スーツを脱いで
 
  裸になって自分自身になって
 
  なにを求めているのかを
 
  はっきり自覚したとしたら
 
  もっと、あなたは、魅力的だろう
 
 
  そのときは、おしゃべりをしよう
 
  どこかへ出かけ
 
  同じ夢を見て眠ろう
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 

 
 
  

 あのときと同じ光

2010-11-07 23:04:44 | Weblog

 
 
  秋の高い空がゆっくり暗くなって
 
  夕日に白い雲が黄色く輝いて
 
  だれかとの別れが思い出されて
 
 
  数年前の出来事
 
  愛していた?
 
  いいえ
 
  もしかしたら
 
  今でも愛しているのかも
 
  あの頃となにも変わってないのかも
 
  あの人が変ってしまっただけで
 
  ぼくはなにも変わっていないのかも
 
 
  黄色い雲が紫になっていく
 
  そしてだんだんと
 
  光がなくなって
 
  闇が濃くなっていく
 
  そらが黒くなり
 
  空気が冷たくなっていく
 
 
  あのときより、あなたはぼくと同じだけ歳をとった
 
  たぶんそうなのだろう
 
  時間はだれにも分け隔てなく公平に過ぎていく
 
  でも本当は、ぼくは、歳をとっていない
 
  想い出の中のあなたも
 
  あのときのままだ
 
 
  あなたはあのときなんて言った?
 
  ぼくに
 
  もう終わり
 
  あなたに逢いたくない
 
  二度と電話しないで
 
  もうあなたを好きではないから
 
  そうよ、嫌いなの
 
  そう言った
 
 
  とっても散文的
 
  
  だからぼくは自嘲するしかなかった
 
 
  それなのに、季節がどんどん寒くなって
 
  上着の襟を立てて家路に急ぐようになると
 
  あのとき見た雲の輝きと同じ光
 
  自分の最後を体験しているような絶望
 
  あのとき見た夕日に照り返す雲の色
 
  オレンジがかった年老いた黄色の光線
 
  ぼくにとってあなたは
 
  単なる散文ではなかった
 
  単なる快楽でもなかった
 
  単なる異性でもなかった
 
  ぼくにとっては
 
  あなたは詩であり、神聖であり、神だった
  
  でも
 
  あなたにとっては
 
  あなたは単なるぼくの散文だった
 
  あなたにとってのあなたは
 
  ぼくにとっての単なる快楽だった
 
  あなたは
 
  ぼくにとっての単なる異性でしかなかったと
 
  あなたは思っていた
 
  だからあなたはぼくから別れたのだ
 
 
  そうぼくは思っていた
 
 
  でも本当は違っていた
 
  
  あなたには、他に愛する人がいた
 
  そしてぼくは単なるもう一人のボトルキープだった
 
  遊びのためにキープしているストックが
 
  本気になったら面倒だから
 
  責任が持てないから
 
  捨てたのだ
 
 
  初めから、ぜんぜん別のリアリティー
 
  ぜんぜん別の文脈で
 
  交わっていた
 
  だから
 
  すれ違いに気付くのは時間の問題だった
  
  
  なんだかぼくの方が女みたい
 
 
  身体は男でも
 
  感受性は女のよう
 
 
  逆になっている
 
 
  だから、秋になり
 
  あの日のような、あの雲の、あの光を見ると
 
  思い出す
 
  あなたへの憧れ
 
 
  そして、夜になり
 
  やがて、朝になり 
 
  高速から降りた直ぐ脇にある
 
  側道で見上げた、明け方の暁の空
 
 
  永遠に叶わない夢は
 
  とってもメランコリックな絶望
 
  あなたの価値は無限大に上昇し
 
  あなたの身体に恋焦がれる欲望は
 
  星空の闇のようにどこまでもどこまでも深く
 
  ブラックホールのように重く重く神秘的に
 
  ぼくの魂を深海に沈め
 
  ぼくの肉体をバラバラにし
 
  たったひとつの光にしてしまう
 
 
  あなたを好きにさせること
 
  あなたをたったひとつの欲望にしてしまうこと
 
  ぼくだけを求めること
 
  それ以外なにも求めないようにすること
 
  それ以外、ぼくは満足できない
 
  引き裂かれ、沈み込み、二度と光を見られないぼくの光
 
  それはあなたがぼくを求めること
 
 
  それだけを願っていた
 
 
  かなわないことが分かっていても
 
 
 
 
  
 
  
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
  
 
 
 
 
 
  
 
 
 

 数時間と一生

2010-11-04 01:30:52 | Weblog

 
 
  どうもだめだ
 
  夜更かししてしまう
 
  純粋芸術
 
  あり得る?
 
  だれからも同じように受け止められる
 
  究極の芸術
 
  
  あり得るような気がする
 
 
  例えば、エメラルドグリーンとセルリアンブルー
 
  綺麗にちがいない
 
 
  でも、気付かないこともあるかもしれない
 
  その美しさに
 
  
  たとえば今ここの空気
 
  それがそのまま天国かもしれないのに
 
  日常だと思い込んでいる
 
  気付かないだけかもしれない
 
 
  だとしたら
 
  日常って、なんて陳腐なんだろうって思ってしまう
 
 
  魔法のように
 
  昼間の空気を変えられるのに
 
 
  それを使ったのは
 
  もう20年も前の
 
  たったの数時間だけ
 
 
  その更に前にも
 
  数時間、使ったことがある
 
 
  そして
 
  まだ幼かった頃にも
 
  数時間、使ったことがる
 
 
  魔法を
 
 
  全てが必然になる魔法
 
  
  だれかが語り伝えてくれるのなら・・・
 
 
  魔法の数時間に
 
  残りの命を賭けてもいい