幻の詩集 『あまたのおろち』 by 紫源二

幻の現在詩人 紫源二 の リアルタイム・ネット・ポエトリー

霊的絵画

2017-05-31 00:04:58 | Weblog

私は若い頃、熱海の山の上に建っていた海の見える家に居候させていただいていました。盲目の霊能者の先生の家でした。目が見えないのに、絵を描かれていました。アトリエには、絵の具が、ビリジアンならビリジアンだけのチューブが2、3ダース、箱に入って引き出しに入れてありました。先生はいつでもそのアトリエを使って好きなだけ絵を描いていいと言ってくださいました。私はそこで恐る恐る絵を描いて、とても不思議な体現をしました。そこのお家に居候させていただいている間に、何度か神秘的な体験もしました。霊能者の先生と寝起きを共にしていたので、先生の波動が伝わったのかもしれません。先生がされるお話もとても不思議でした。私の未来について話されたことは、驚くほどぴったりでした。今でも、そこで見た熱海の海を懐かしく思い出します。

先生のお名前は、伴野重虎といいます。

そこで絵を描いて神秘体験をしてから、私の描く絵は “霊的絵画” になったのです。
自分で言うのもおこがましいですが、私が描く絵は、“霊的絵画” なのです。















白い猫の話し つづき

2017-05-15 21:49:14 | Weblog

尻尾をぴんと立てて、白い猫は僕の後をついてきた。
猫缶を売っているコンビニに行くには駅前まで出なければならない。だんだん人通りも多くなるし車も走る大通りを歩かなければならない。この白い猫はちゃんとついて来るのかな。
それにしてもこの猫、首輪も付けていないし、白い毛は薄汚れている。野良猫に違いない。それなのに、こんなに馴れ馴れしく僕についてくるなんて、不思議だ。
「よっぽど好かれたんだな」

大通りに出ると、それまで描いていた一本の細い線が急に途切れてしまったように、白い猫は何処かに消えてしまった。

僕はコンビニに入り、ちょっと高級そうな猫缶と玉子のサンドイッチを買った。またそのうちに、あの白い猫は戻ってくるかもしれないと思ったからだ。
コンビニを出て空を見上げると、夢を見ているような快晴の青空。五月の昼下がりは汗ばむ陽気だ。
元来た道に引き返し、住宅街を縫って歩いた。
小さな坂道を下ると、僕がよく来る公園があった。
それこそ猫の額ほどの小さな公園だ。遊具ひとつない。あるのはベンチがひとつと水飲み用の蛇口がひとつ。その横には看板が立っている。「栓を開けたら必ず締めましょう」
僕はその看板を見る度に、いつも少し不思議な気持ちになる。蛇口が開いていて、水が無駄に流れているのを今まで一度も見たことがない。それは皆がこの看板の言うことに従っているからなのだろうか。それとも、自分自身の中にある道徳心に従っているからか?
とにかく、僕はベンチに腰掛けて、コンビニ袋から玉子のサンドイッチを出した。
「ふん。猫にも振られたか」
肩を震わせてハハハと笑った。
白い猫の白い顔を思い出した。丸い両目のわきに乾燥した目やにがぶら下がっていた。
僕は玉子のサンドイッチを二口か三口で平らげた。そして猫缶の蓋を開けてみた。
「こんなもの食えるのかな? 人間が…」
匂いを嗅いだ。そして舌先をつけてみた。臭くて不味い。「こんなものよく食うよな。いくら猫とはいえ…」
僕は立ち上がって、蛇口の栓を開けて水を流した。手の平に水を溜めて、口に運んだ。
少し高い木の葉っぱの間から、太陽の光が漏れて、キラキラと揺れた。
「とらんすみゅ〜と」
え? 何か言った?
「とらんすみゅ〜と」
白い猫が地面に四つ足で立ってる。目やにがついた目で僕を見上げている。

「ハハハ。ちょうど良かった。今、猫缶を開けたところだったんだよ。ここでランチデートしよう。いいところだろ? ここ」
白い猫は、軽い身なりでベンチの上に飛び乗った。僕はその横に座った。ベンチの横には、鮮やかなマゼンタのツツジが誇らしげに咲いていた。















怒りの脳内ホルモン

2017-05-15 21:15:28 | Weblog

今日は職場でとても頭にくることがあって、帰宅してからも怒りが収まらなかった。もちろん私は精神と肉体が別のものであることを熟知しているので、頭の中の怒りをそのまま外に現すことはしなかった。精神がそれを肉体に表現することを許した瞬間に、それは外に現れる。でも、この場合「逆も真なり」は成り立たない。精神が肉体に「怒りよ静まれ!」と命じても、身体に分泌されたアドレナリンはすぐには再吸収されない。私の場合は特にそうだ。再取り込みを疎外する向精神薬を長年飲み続け、最近離脱したせいだということを知っている。犬は、怒って吠え立てても、主人が「静まれ!」と命じるとすぐに吠えるのをやめて尻尾を振り始める。犬の脳内では、一緒にしてアドレナリンがレセプターに吸収されてしまうからだ。脳内ホルモンと神経というのはかくもとても不思議だ。怒りがしばらく収まらなかった私の身体は、あちこちが痛み始めた。怒りのホルモンの自己中毒だ。例えば、いろいろな病気がそうした“自己中毒の痛み”から引き起こされるのではないか。シャワーを浴びながら鏡で自分の歪んだ口を見つめていたら、やっと怒りのホルモンが脳内から消えていった。😄👌















とらんすみゅ〜と

2017-05-14 00:17:29 | Weblog

誰かとランチデートでもしたいな
と思って道を歩いていると、
一匹の白い猫が僕に近づいてきた。

「とらんすみゅ〜と とらんすみゅ〜と」
白い猫はそう鳴きながら、僕の脚に尻尾をこすり付けてきた。

「ふん。きみとランチデート? 」
白い猫に言うと。
「ミュウ、ミュウ。とらんすみゅ〜と」
と猫は鳴いた。

猫缶でも買ってきてやるか。と思いながら訊いてみた。
「きみの携帯番号教えてくれる? それともFacebookのアカウントでもいいよ」
白い猫は目を細めて口を開けて鳴いた。
「ミュウ〜」

「なんだ携帯も持ってないのか。Facebookもやっていないのか?」
白い猫は黙って僕を見上げた。

「まあ、それの方がよっぽど信用できるけどね。あの女なんかよりよっぽど。あの女、本を貸してくれってしつこくメッセージしてきてさ。すごい嘘つきな女のくせに。それに比べたらきみの方がよっぽどましだよ」
白い猫は、顔を上げてニャ〜と鳴いた。

「いや、きみの方がっていう言い方は失礼かもしれないよね。きみはさっきから無償で僕にメッセージを送ってきてくれている。分かっているんだ」
僕はしゃがみ込んで猫の目を見た。
「きみさえもしよければ、僕とランチデートしないか?」
猫は尻尾を振ると、僕の顔を真剣な眼差しで見つめた。
白い顔に目やにがついている。
「それにしてもきみとランチを食べられるレストランなんてあるかな? いや、ないと思うよ、100%」
白い猫は、背中をブルっと震わせたあと、反対の方を向いて二三歩歩くとまたこちらを向いて戻ってきた。そして、しゃがみ込んでいる僕の脚に、自分の頭の骨をこすり付けた。

「OK。きみは嘘つき女なんかよりよっぽどましだ。行こう。酒は飲めないよね。それの方がよっぽどいい。僕はコンビニで玉子のサンドイッチを買ってくる。きみには旨そうな猫缶を買ってくるよ。そうしたら、よく一人で行く公園に行こう。綺麗な庭園になっている公園もあるけど、そこは管理が厳しそうだから、場末の公園の方に行こう。誰もいない小さなみすぼらしい公園があるんだ」

僕が立ち上がって歩き出すと、白い猫も黙ってついてきた。













講演会

2017-05-12 17:54:41 | Weblog

僕の講演会を開くことになった。
ポスターを作った。
講演会と言っても、お話し会みたいなものだ。
いったい誰が聞きに来るんだろう。
アートの展示会のようなものだ。
ポスターには、僕の名前は書いていない。

ポスターを貼りに、見捨てられた廃墟のビルに行った。
ボロボロになったコンクリートの4,5階建てのビルだ。
誰もいない廊下の壁にポスターを貼った。
そこに、十代の不良の少年が二人いた。
二人して、黙ってこちらを見ている。
ビルの埃で薄汚れた黒い服を着ている。
僕は高く(3〜4m上空に)ジャンプして、彼らの頭上を越えた。
二人は驚いているようだが、何も言わない。
壁に貼ったポスターと僕を見比べている。
「よかったら、来てくれよ」と僕が言うと、二人は少し尊敬するような眼差しで僕を見た。
「きみたちには特別に僕の名前を教えてあげるよ」
僕はマジックペンでポスターに僕の名前を書いた。
そこは3階か4階だった。
誰もいないコンクリートの階段を降りて下に行った。

下には、十代の若者が5,6人住んでいるようだった。
「ここにいる彼らに、話しかけない方がいいですよ」
20代半ばくらいのしっかりした男が僕に声をかけてきた。
「ご存知だとは思いますが、ここにいる子たちは皆問題児ばかりです。もちろん精神も病んでいます。」
どうやら彼が、ここにいる“問題児”たちの面倒をみているらしかった。
部屋の中から2,3人、やくざれた顔をした若者が出てきて、僕を睨んだ。
僕は統率しているらしい20代半ばくらいに見える男に言った。
「この辺りに、安くてうまいラーメン屋はないですかね? 腹が減ってきちゃって。旨い定食とか出す店がいいんだけど…」














超越瞑想と『Sexy Sadie』

2017-05-09 23:24:08 | Weblog

「ポール・マッカートニーと超越瞑想との出会い」という YouTube のリンクをFacebook で見つけて思ったこと。
http://youtu.be/zGPH3TYNhaM

ジョン・レノンは『Sexy Sadie』でマハリシをおちょくっているけどね。TM(超越瞑想)は、僕は気持ちいいと思いますよ。ジョンはプライドが高いから、グルに安安とはサレンダーできなかったんだろうな。Yoko にはサレンダーしたけど。ジョンのグルは、ヨーコたった一人だけだったんだろう。現代アーティストのヨーコ。レノン教の教祖。マハリシのマントラよりヨーコの詩の方が強烈なのは確かだと僕も認めるよ。詩は想像(イマジン)の高みまでマインドを飛翔させることができるけど、マントラは、無意識の深みにまで意識を誘ってくれる…かもしれない、、。ジョンは自分の無意識の中にまで、瞑想テクニックが蹂躙してくるのを許せなかったのだろう。自分の無意識は自分のもの。そして、それを発見する方法も、自分たった一人で見つけ出すべきもの。潔癖症過ぎるかもしれないけど、僕もそう思うよ。

以下、Beatles の『Sexy Sadie』
https://ja.m.wikipedia.org/wiki/%E3%82%BB%E3%82%AF%E3%82%B7%E3%83%BC%E3%83%BB%E3%82%BB%E3%83%87%E3%82%A3%E3%83%BC

ラジニーシは「眠りたいならマハリシのところに行きなさい。目を覚ましたいなら私のところに来なさい」と言っていた。「目を瞑っていれば生きることは簡単。目を開けて見える全てはあなたの思い違い」とジョン・レノンは歌っている。どちらにせよ、人間は眠り、また目覚め、そしてまた眠る。でも最近僕は、眠れもしないし、目覚めもできなくなくなってきた。マハリシもラジニーシも僕がかかったらお手上げだろう。軽く眠たい半覚醒状態が続いている。



















2017 GW

2017-05-08 01:06:01 | Weblog

GWには『 Midnight Sun 』 (氷の上のふたり)という白熊の映画(白熊ってかわいい!)と、『 Midnight Special 』というSFをDVDで見ました。両方とも何故かMidnight 。私もGWで昼夜逆転。『 Midnight Special 』は私は面白かったです。かみさんはつまらない、と言っていましたが。私には、すごくリアリティーのある映画でした。" Event "が近く起きると言われているので、それのメタファーだと私は思いました。メタファーといえば『騎士団長殺し』も読みました。いろいろと感想はありますが、長くなるのでやめときます。大化の改新のときの大和絵のこととか、日本画家 安田靫彦のこととか。
でも、ギリシャ哲学以来のイデアがニーチェ以降相対化され、メタファーの世界になったことは確か。でもまだ postmodern にはなっていない。文学もそれを模索中なのだと思いますが、果たして村上春樹が、それになれるのかは、私には疑問です。1Q84でカルトを描いて、それなりに面白かったけど、団塊の世代の彼が描いたカルトは、チャック・パラニュークらジェネレーションXの描くカルトに比べるとちょっと古い。そんなこと言うと、ハルキストからバッシングされそうですが…。カルトの次に春樹が描いたのが画家っていうのは、私にはなにか思い当たる感じがします。私も一応アーティストの端くれなので…。













アダムとイブ

2017-05-04 23:19:32 | Weblog

「アダムとイブ」を描いていました。
アダムはロゴスとしてのファロスであり、イブは聖母としての子宮です。聖なるものを描こうとすると、どうしても性的にならざるを得ません。そうすると、描かれた絵画は、“異常”に見えます。そしてそれを描いた私も“異常”だと思われます。😜



















輝きなさい

2017-05-04 18:10:38 | Weblog

ゴールデン・ウィーク二日目

なにかの特異日のように晴れ渡っている

今日は認知症の母の介護施設に行き

母を薄暗い施設の中から

晴れ渡った外に連れ出した

車椅子を押して

しばらく周辺を散歩したあと

遊具もあまりない日向の公園で

しばらく母親を太陽の光に晒しておいた

母は「暖かくて気持ちいい」と言った

それからおもむろに

わたしに神託でも述べるように厳かに言った

「輝きなさい」