幻の詩集 『あまたのおろち』 by 紫源二

幻の現在詩人 紫源二 の リアルタイム・ネット・ポエトリー

 一番の望み

2008-07-23 01:22:05 | Weblog

 

 ことばを
 
 こんなことに使ったらどうだろう
 
 つまり
 
 私的言語
 
 だれにも通じない個人言語
 
 
 あーあ
 
 失敗した
 
 もう
 
 ひとりでなくなった
 
 
 きっとひとりでいたいのだ
 
 いつまでも永遠に
 
 それが一番の望みなのだ
 
 かねてからの
 
 生まれ落ちたその瞬間からの
 
 
 それなのに
 
 こんな不自由な体を持って
 
 自由にもできない
 
 ただ振り回されて
 
 
 いつになったら
 
 たったひとりの
 
 永遠の自由が得られるのか
 
 記憶も思考も感情もなく
 
 ただ
 
 永遠の一なるものへと
 
 消えていく
 
 そのためにだけ
 
 今が
 
 ある
 
  
 
 

 

 夕の豪雨

2008-07-16 23:14:51 | Weblog

 

 鋼の境界に咲く桔梗
 
 古色じみた黄色の月ににじむ水墨
 
 銀色の砂漠が
 
 絹雲に乗って移動し
 
 大海を越えて一気に降り注ぐ
 
 白い驢馬と赤い山羊が半音階の悲鳴を上げている白夜
 
 なまあたたかい風にまぎれて
 
 海岸に打ち上げられた銀貨を一枚一枚拾う
 
 豪雨
 
  
  
 食べ終わったデザートを片付け
 
 金輪際ガラスに映った景色を見ない
 
 それが青い預言者の王冠だったとしても
 
 意外な創造を水の4分の1で活動させ
 
 望みうる以上の願望の逆
 
 抱いて確かめた苦しみの運命の予感
  
  
   
 するどい色彩に静まりかけていた鼓動が切り裂き
 
 空気の配列をナイトが疾走する
 
 なにを信頼し、忍耐しているのか
 
 行動は拘束を切り裂くナイフ
 
 
 
 飛び上って本能に勝り
 
 分別が差別を跪かせる
 
 節度と想像がせめぎ
 
 降り注ぐ聖なる絶対のカオス
 
 
 

 
 
 
 

 やり残したこと

2008-07-14 22:59:54 | Weblog

 

 きょうも早く寝ようと思ってたのに
 
 こんなに熱くては眠れない
 
 だから余計なことをしてしまう
 
 言葉を綴って
 
 自分自身に問いかける
 
 いったいなにを想っているのか
 
 きっとぼくは
 
 価値あることを探しているのだ
 
 一日中起きていて
 
 なにかしていたのに
 
 なんにも価値あることをしなかったような気がするから
 
 もう寝る時間になって
 
 眠れない
 
 なにかしなければならないような気がして
 
 それがなんだかわからない
 
 それがそんなに簡単にできるものだとも思わない
 
 でも
 
 ただ眠ってしまうことはできない
 
 きっと、死ぬ時もこうなんだろうな
 
 なにもできなかったと思いながら
 
 意識が薄れていくのだろう
 
 
 
 
 

 夏の夜に想う

2008-07-03 23:59:56 | Weblog

 

 こんばんわ 元気ですか?
 
 まだ0時前ですから きっとまだ起きていらしゃるでしょうね
 
 もしこれを読んでくださっているのなら 私にメッセージをください
 
 いいえ デジタルなメッセージではなく
 
 そう あなたの得意な テレパシーによるメッセージをください
 
 あなたの肉管的体温が感じられるように
 
 想いを込めて 私宛てに発射してください
 
 そうしたらきっと届くでしょう
 
 そうしたらきっと返事を差し上げます
 
 私の肉管的な体温で温めた想いを
 
 返信いたします
 
 このように
 
 お互い からだとからだは 離れていても
 
 一瞬にして繋がり合える想いのテレパシーは
 
 なにも無機質な信号ではありません
 
 その証拠に ほら
 
 こんなに 私の肉管的快感は高まり
 
 あなたのものと共鳴し (たとえ離れていても)
 
 距離に関係なく
 
 感じ合えるこの感覚
 
 この悦楽は
 
 なにも時空に制限されないもの
 
 だから想いは募り
 
 夏の夜は
 
 こんなにも熱くて寝苦しいのです
 
 せめても 月光だけでも
 
 見つめさせてください
 
 

  


 誕生の神秘

2008-07-02 01:02:46 | Weblog

 

 もう夜の1時だ
 
 生まれてから今まで
 
 神聖な時間が流れ
 
 今
 
 覚えた言葉で
 
 無意味なことを書いている
 
 まるで思考というものが
 
 とても価値のあるものででもあるかのような
 
 思い違いをしながら
 
 その思考に振り回されて
 
 運命の命じるまま
 
 今まで生きてきた
 
 それなのに未だに
 
 夢のひとつも実現していない
 
 ぼくはいつかパリに行くのだ
 
 でもそれはぼくにとってとても重要なことだから
 
 気軽に一週間の観光で行くわけにはいかない
 
 そう言っているうちに

 ついにこの目でパリを見ることもなく

 たぶんこの世とおさらばすることになるのだろう

 ぼくはもう少し金持ちになるはずだった

 でもどこでどう足を踏み外したのか

 この社会では

 外縁にぶら下がっている

 老いぼれたアウトサイダーになってしまった

 もうすぐ俺の人生も終わりだ

 あと数十年

 あっという間に終わってしまう

 そして

 自分が生きた痕跡など

 何一つ残さないまま

 この世から私は消えてしまうのだろう

 生まれてきたのも神秘なら

 死んでいくのも神秘

 そして、今、生きていることも神秘

 だったら

 少なくとも

 この神秘に気づいていよう

 この神秘には終りがないから

 決して飽きることもないだろう

 死ぬまで生きている限り

 この神秘に気づいていよう
 
 
 
 (今日は私の誕生日)