幻の詩集 『あまたのおろち』 by 紫源二

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 青い鳥

2008-05-08 01:04:22 | Weblog


 ぼくの青い鳥
 
 飛んで行った
 
 明け方のまだ暗い森の中
 
 修道士のチャントも響かない静寂
 
 羽音だけを残して
 
 潔く
 
 後ろも振り向かず
 
 ぼくの手の中から飛んで行った
 
 あんなにきれいに鳴いてくれたのに
 
 ぼくはそれを聞いていたのに
 
 きみが歌う歌
 
 得意そうに歌う歌
 
 ぼくは聞いていたのに
 
 きみは
 
 潔く
 
 後ろも振り返らず
 
 飛んで行った
 
 
 
 人類の叡智とやらで
 
 宇宙に浮かんでいるステーションがあるらしい
 
 そこから発信される電波に乗って
 
 地球にメッセージが届くらしい
 
 宇宙飛行士からのメール
 
 家族や恋人に宛てたメール
 
 でも
 
 小鳥はメールを送信してこない
 
 もう歌声も聞こえない
 
 
 
 でもまだ時間はある
 
 夏がくる前に
 
 青い鳥は
 
 きっと水浴びをしにくる
 
 そのときぼくは
 
 水辺でそっと聞き耳を立てる
 
 もう一度だけでも
 
 得意そうに
 
 あの歌を歌ってくれることを願って
 
 きみが大空に羽ばたいて
 
 行ってしまう前に
 
 一度だけでいい
 
 たった一度だけでいい
 
 ぼくにその歌を聞かせてくれないか
 
 ぼくの肩にとまってくれないか
 
 ぼくの唇をつついてくれないか
 
 そうしたら
 
 きみのことをいつまでも愛おしく想うよ
 
 どこか見えないところへ行ってしまったとしても
 
 きみのことをずっと想ってるよ