幻の詩集 『あまたのおろち』 by 紫源二

幻の現在詩人 紫源二 の リアルタイム・ネット・ポエトリー

 空・虚

2008-09-22 00:57:17 | Weblog

 

 空しい
 のは
 胸が
 苦しいから
 
 なぜかわからない
 なぜだかわからないから
 ただ
 時間だけを数えている
 
 その先にあるものを求めて
 ぶらぶら歩いて行くけれど
 終着駅まではたどり着けなくて
 ただありふれた街の日常
 夕日が暮れていく
 
 風景がねじれながら変貌し
 自分の力では
 もうどうにもならないほど
 意味が溶けはじめ
 どろどろに流れはじめると
 もうただ
 歩くのさえ疲れて
 その場に座り込む
 
 思い出す
 いつか思い出したような気がすることを
 
 それを思い出したことを
 もう一人の自分が思い出している
 
 だったらこの私は誰?
 
 それすらわからないから
 
 きっと風景さえ見なくなっているんだろう
 
 闇夜に電柱の光
 
 家路に続く道
 
 ぼくはそれを覚えているだろうか?
 
 ここがどこすらもわからないのに
 
 それなのに
 
 言葉だけは覚えている
 
 それすらも消えてしまえばいいのに
 
 そうしたら
 
 楽になれるのに
 
 蘇ってくるのは悪い想い出だけ
 
 責められ、ののしられ、告発されている
 
 責められる理由などなにもないのに
  
  
  
  
  
 虫の声がいつもの秋と同じように聞こえている
 
 それがだれの仕業だか知らないが
 
 偶然ではないような気がする
 
 私とは別の世界の
 
 命の営み
 
 それがあまりにも静かできれいだから
 
 自分がますます空しくなる
 
 
 
 生命に意味などない
 
 あるのはただ生き残ること
 
 生き残るために喰らい
 眠り
 死んでいく
 
 そこに歓びがあろうと
 苦しみがあろうと
 関係ない
 
 最後はみな同じ死
 しかない
 
 だからせめて
 生きているうちに
 死の意味を問う
 歓びの追求よりも
 存在の意味を問う
 
 なぜなら
 虚しさが
 胸の内から
 消えていかないから
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 

 気分はどう? 今夜も?

2008-09-08 01:46:27 | Weblog

 

 薄暗い部屋の隅を見ると
 
 なんだか無限に遠いような気がする
 
 じっと眼をこらしても見えない
 
 見えるような気がするのに
 
 どうしてかわからない
 
 どうしてこんなに魅かれるのかわからない
 
 小さな光が見えるのだ、否、見えるような気がするのだ
 
 それが小さければ小さいほど
 
 なぜか いとおしく感じる
  
  
 
 原初の記憶がはぐくまれる小さな体、脳
 
 小さな目が見る世界は
 
 部屋の隅ほどにも隔たっていない
 
 それがどこかも知らずに
 
 空想は旅に出る
 
 
 
 きみには分かるだろ?
 
 小さな光が輝く空を
 
 孤独な者だけが見つめるわけを
 
 
 
 だから昨日見た夢を思い出せなくても
 
 また明日を迎えられる
 
  
 
 記憶はレコード盤に刻まれた一本の螺旋
 
 くるくる回転しながら
 
 どんどん中心に近付き
 
 終わりがくるまで叫び続けるシンガー
 
 
 
 手を叩いてステップ踏めば
 
 ラララン ラン ララ
 
 ショーは終わらない
 
 幕は下りない
 
 朝は来ない
 
 夢は醒めない
 
 
 
 気分はどう?
 
 今夜も?
 
 また昨日と同じように
 
 ハッピー?