エメラルドの海を泳いでいる亀がいた
ときどき海面に頭を出して広い海原を見つめる
まだ陸も島も見えないから
また黒い水中に潜る
そのうちに雲が赤く染まって
点々と綿のように空を流れているのが見える
亀は空に島ができたのだと思って
首を伸ばして天に昇ろうとする
でもどんなにもがいても体は海水に浸っている
だから、こうすることにした
しばらく夕日に輝く天空の雲を見つめてから
亀はぎゅっと口を閉じて首をできるだけ伸ばし
あの赤く輝く雲の中に入ってしまいたいと思いながら
逆に水中に潜った
どんどんどんどん潜った
真っ暗で光も届かない深い深い海底目指して潜った
そしてとうとう限界に達して
亀は肺に残っていた最後のひと息を吐いた
亀の口から真珠のような泡が一粒、二粒、三粒
海面に向けてゆらゆらと上がっていく
上に上がるにつれて泡は大きく膨らみ
海面に達すると爆発して大きな水しぶきを上げた
哀れ、亀は窒息して海底にひらひら沈んでいった
破裂した泡は誰にも聞かれない音を立てて弾けたが
それが亀の命の最後の息だった
夜空には銀色の泡のような満月が浮かんでいた
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