幻の詩集 『あまたのおろち』 by 紫源二

幻の現在詩人 紫源二 の リアルタイム・ネット・ポエトリー

 快楽

2011-05-28 21:26:47 | Weblog

 
 
  快楽は、そのときはそう感じていない
 
  あとで、だんだんと記憶とともに
 
  噛みしめるように、そして不意に
 
  本当の快楽が甦ってくる
 
 
  それは今のシチュエーションに似ている
 
  似ていて非なるもの
 
  記憶のどこかに隠されている
 
  それが楽しいことだなんて
 
  そのときには思ってもみなかった
 
  ところがそれが思いの外
 
  記憶に刻み込まれていて
 
  思い出すたびに
 
  快楽の余韻が染み込んでいき
 
  いまではすっかり快楽に浸っている
 
 
  ぼくはくつろいでいた
 
  まったく、くつろげるような状況でないときに
 
  くつろいでいた
 
 
  本当は、とても不安だった
 
  未来がどうなるのか見当もつかず
 
  明日が来るのか来ないのかもわからない
 
 
  でも
 
  ぼくはそこにいて、くつろいでいた
 
 
  夕方が夜になる
 
 
  あたり前のことだが
 
  不安にならないことの方が不思議だった
 
   
  明日が来ないことだってあり得る
 
  自分が分からなくなることだってあり得る
 
  
  存在の意味さえわからない
 
 
  それなのに存在しているのに
 
 
  なにも不安でないことが不安だ
 
 
  でもそんな不安を感じない
 
 
  快楽
 
  
  なぜなら
 
 
  そのときはそう感じていないから
 
 
 
  
 
 
 
 
 
 
 

 
 
  
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
  

 輝き

2011-05-08 22:38:55 | Weblog

 
 
  人工の光が一切なくても
 
  夜空には
 
  あんなにきれいな光が輝いているんだね
 
  ひとつひとつの花は、たった今
 
  こんなに色あざやかに咲いているんだね
 
  ぼくがもし
 
  だれもいない山の中に行ってしまったら
 
  言葉もしゃべらず
 
  詩も書かなかったら
 
  ぼくは、存在していることになるだろうか
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 

 インドへ

2011-05-05 23:42:03 | Weblog

 
 
  インドへ行こうよ
 
  今日、夜中、散歩していて思ったんだ
 
  アメリカのシャスタ山でもいい
 
  夜中の街灯に照らされて
 
  歩道の脇に植わっている山ツツジの花が満開で
 
  燃え立つようなピンク色の花
 
  真っ白なツツジ
 
  桜色のツツジ
 
  どれもみんな
 
  想定もしていなかった街灯に照らせれて
 
  昼でもないのに
 
  幻想的に咲き誇っていた
 
  それを見ながらぼくは思った
 
  いや、思ったのではなくて
 
  思い出した
 
  心の中にあるわだかまり
 
  あの人も、あの人も、
 
  もうすでに、あの世に行ってしまった
 
  ありがとうも言わなかった
 
  ぼくももうすぐあの世に行くだろう
 
  でも、今、生きているけど
 
  それって、ただ
 
  ローンを返済するために
 
  日々、給料を稼いでいるだけではないのか
 
  本当は
 
  明日にでも
 
  もっと自然のある所へ行きたい
 
  都会の、人が、騒いで、夜、たむろして
 
  コンビニでおにぎりを買って食べて
 
  どこに行っても
 
  たとえ、人気のいない公園に夜中に行っても
 
  そんな、たむろした若者が騒いでいる
 
  こんな、汚らしい都会はもうごめんだ
 
  こんな、狭苦しい街にはもういられない
 
  せめて、
 
  星と木々と夜空だけで
 
  他には何もない所
 
  たとえぼくが叫んだとしても
 
  誰にも聞かれない所
 
  そんなところに行きたい
 
  
  そう思ったんだ
 
 
  たとえばインドの夜空
 
  
  たとえばシャスタ山のふもとの森
 
 
  怖ろしいほど神秘的で
 
  世俗から遠く隔たっている
 
 
  そんなところに
 
  行きたいのだ