本蔵院 律良日記

熊本県にあるお寺“真言宗 本蔵院 律良のブログ”日々感じるままに活動のご報告や独り言などを書いた日記を公開しています。

鉄眼の一切経

2018-04-04 16:59:49 | 住職の活動日記

熊本の生まれの鉄眼禅師

長崎にいた隠元禅師に参謁し

禅の道に入る。

鉄眼禅師のなによりの功労は

日本に一切経の板木を作ったことです。

その功績は、

尋常小学校の国語読本にも載っています

 

 

大願を抱き、師の隠元より

明朝版大蔵経を授かり

17年という歳月を費やす大事業に

なりました。

というのも、

資金を調達するのですが

大坂の水害や近畿地方の飢饉で

一銭残らず資金を救済に

使ってしまいます。

仏教の目的は畢竟、人を救わんが為

ということで、

 

 

 

再度募金活動に着手して

一切経の事業を完遂するのです。

 

 

「第一義」と掲げてある

万福寺山門を通り過ぎ

 

 

鉄眼一切経が納めてある宝蔵院へ

門をくぐり見上げると

 

 

一切経の板木を収めてある

収蔵庫が見えてきます

 

 

板木はすべて重要文化財になっています

 

 

なにかしら感動を覚えます。

板木はすべて吉野の桜材です

他の桜の木では虫食いしたり

腐ってきたりということで

あえて吉野の桜を使ったと、

ということは

これだけの板木を取るとなると

相当に大きな桜を切ったという

ことでしょう。

今は吉野の桜として花見が有名

ですが、

 

 

二階もびっしりと板木が並んでいます

そして、

この板木に囲まれた一角で

 

 

経典を摺り続けておられる

ということが驚きです。

それで一つの思いがあったのは

今読んでいる

『十地経』

この経典を摺ってもらえないかと

いうことなんです。

丁度、摺っている方とお話もでき

尋ねたのですが

中に専門の本屋さんも入り

装丁は奈良の御所の方でされるとか

一部だけというのは

無理のようでした。

 

やはりよく売れるであろう

『阿弥陀経』や『浄土三部経』

は、即求めることができるようです

今は、『大般若経』600巻の

注文が多いとか、

 

 

それで、記念に

『般若心経』を求めました

一番の人気でしょう

もう、板木の文字自体が

すり減ってきています。

 

「明朝版一切経」ですから

今私たちが使っている明朝体も

この板木がもとになっています。

一切経は6956巻

これを彫った板木は6万枚

縦26㎝、横82㎝、厚さ1.8㎝

一行が20文字

これは原稿用紙のルーツと

いわれています。

 

17年に及ぶ事業は

延宝6年(1678)に完成

初版は後水尾に献上され

現在までに2000部あまり印刷され

海外にも搬出されました。

 

 

あらためて、

ただ文化財として残るのではなく

340年たった今でも

摺り続けられ生きているという

ことには驚きを禁じえません。

 

鉄眼禅師は53歳で亡くなられて

いますが、

「鉄眼は一生に三度一切経を

刊行せり」

といわれています。

それは水害や飢饉の為に

集めた資金をすべて擲って

人々を救ったということです。

 

53年のご生涯で

これだけの事業をされた

ということは恐れ入る限りです

 

玄奘三蔵が翻訳された経典を

版木に残したということは

仏像を残すことよりも

なによりも

お釈迦さまの教えを残した

ということでは

何よりも勝るものと思います。

 

その版木のある空気に

身を浸してみるということも

大切なことのように思います。

 

 

 

 

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