わが家の東側は小さな雑木林、北側は広い畑と栗林。
街道から少し入った、静かで緑いっぱいの環境が気に入り、19年前にこの小さな分譲住宅を手に入れました。
東側は高さ20メートル以上にもなる大樹が、わが家の屋根の上を緑で彩ってくれていました。
朝は野鳥の啼く声で目が覚め、冬は出窓横の餌台にメジロやヒヨドリがやってくるのが楽しみでした。
時には野良猫が遊びに来たり、うちのネコも脱走してこの雑木林の木に登り、息子が捕獲に入ったり…
夏はセミの声(最近は少なくなりましたが)がミ~ン、ミ~ンとうるさくもあり、夏の風情もありで。
暑い夏の夜も更けると、2階は涼しい風が入り「高原にいるようだね」と夫と話していました。
秋には樹々に朱色のカラスウリがつるを伸ばし、取りたくても高くて不可能で。
雑木林自体が小宇宙のようでした。
この大樹の名前は分からないのですが、常緑樹で年に2、3日小さな毛虫のような花(?)が一斉に落ちてきて、
ベランダを覆いつくすのですが、日々恩恵を受けているので、その掃除などちっとも苦になりませんでした。
それが、先月突然地主さんが挨拶にみえ「長年手入れせず放っておいてすみませんでした」と。
最初は下草刈りや飛び出している枝払いだけかと思っていたのですが、なんとすべての樹々が伐採され、雑木林がなくなったのです。
最大のショックで、夫も沈んだ顔をしていました。
トータル7日間ほどかけて、5,6人の職人さんたち、クレーン車も出動する大掛かりな作業でした。
ベランダから見た、長年親しんだ最後の姿です。
次々に切られる大小の樹々。これまで雑木林の向こうにトウモロコシ畑があるなんて分かりませんでした。
中央の2本の大樹はまだ太い幹を残しています。
大樹は少しずつ切られ、クレーン車で下ろされていきました。
兵どもが夢の跡のような景色です。
20本以上の樹々が伐採され、雑木林消滅です。
1日中、モーター音が響き、木が倒される度に地響きがしました。
家に居たくなくて、外出していました。
切られたあとをみると心が痛みました。
19年間、防風林、防砂林の役目もしてくれ、楽しみを与えてくれました。
見守ってくれた樹々に「本当にありがとう」。
今はあまりに見通しが良すぎて、明るくなりすぎて落ち着きません。
このあと宅地になり家が建つのでしょうか。
今になり考えると、わが家も含め、近所9軒の家も畑だった土地に建てられたもの。
20年も前は一面の畑で、その風景の消滅を惜しんだ人もいたかもしれません。
変わっていくのは世の常。
それを街の発展というのでしょうか。
昔、取材した有名な園芸家だった柳宗民さんは「空き地があれば木を植えなさい」
と言われるのが常だったことを思い出しました。