大江戸散策徒然噺 Introducing Japanese culture and history

豊かな歴史に彩られた日本の文化と歴史を紹介

「江」が眠る芝・増上寺、戦後初の三門特別公開に行ってきました。

2011年10月25日 18時36分50秒 | 港区・歴史散策
NHK大河ドラマ「江」も終盤に入ってきました。今週10月23日(日)は慶長19年(1614)の大阪冬の陣が舞台となり、いよいよ淀殿と秀頼が追い詰められ、家康公が目論む徳川将軍家による天下統治が目の前に迫ってきました。冬の陣の年、江はすでに42歳となっており、長男竹千代君(三代将軍家光公の幼名)も10歳を数えます。

増上寺三門

江の享年は54歳ですからドラマの中では残すところ12年間しかありません。この12年の間には元和元年(1615)の大阪夏の陣、元和2年(1616)の家康公死去、元和6年(1620)の五女・和子の入内、元和9年(1623)の家光公の三代将軍宣下と歴史に残る出来事が次から次へと起こってきます。

そして寛永3年(1626)後水尾天皇の二条城行幸にあたって秀忠、家光、忠長の父子は揃って京都へ向かいます。この記念すべき天皇行幸の日が迫る中で、江の危篤が京へ知らされます。しかし大御所・秀忠も将軍家光も大切な行事をすっぽかして江戸に戻ることができません。ただ次男の忠長だけは特段の許しを得て江戸に向かうのですが、結局、江の臨終には間に合わなかったのです。将軍御台様、将軍の母、ましてや天皇家に嫁いだ娘の母親である江の臨終に夫にも子供達にも会うことができなかったのです。江、54年の人生に幕を降ろした年が寛永3年です。

江の葬儀は死後一ヶ月を経過して、増上寺から少し離れた場所に荼毘所を設け、江戸市中の寺から集まった千人の僧侶が弔いの行列を作り、荼毘所で燃やされた香の煙は空高く立ちのぼり、遥か遠くからでもみることができたと言います。そんな盛大な葬儀にも将軍家光公は参列していません。また夫である秀忠公も京都から大阪へ移動し、葬儀の時はまだ江戸に戻っていませんでした。

そんな「江」が眠る増上寺では現在、徳川将軍家霊廟と三門の特別公開を開催中です。特に三門の内部公開は極めて稀で、今回は戦後初の催しで次回はいつになるかわからないほど貴重な機会です。

増上寺での江フェアと山門公開の知らせ
江フェアのポスター

増上寺の伽藍建築の中でも創建当時の姿を唯一残す三門は国の重要文化財に指定されています。今回の特別公開では三門の楼上二階部分に安置されている天正末期から慶長前半時代に製作された釈迦如来像をはじめ、普賢菩薩像、文殊菩薩像、羅漢像(16体)、歴代の増上寺上人様の像を拝することができるチャンスなのです。

増上寺三門石柱

江戸時代を通じて増上寺の参拝は一般の江戸庶民には許されていませんでした。ただ年に数回だけ江戸庶民に山門への登楼が許されていました。その数回のチャンスに多くの江戸庶民が増上寺に押しかけ、三門の中に鎮座する仏様や羅漢様を拝み、その際に三門の階上から江戸湾の美しい景色や、遥か房総を眺め楽しんだと言います。

三門脚

これまで多くの寺院で三門や楼門を見てきましたが、登った経験はまったくありません。今回初めて寺院の楼門に登ることができたのですが、記念に是非内部の画像をカメラに収めたいとおもったのですが、写真撮影が厳しく制限されて仏像、羅漢様をカメラに収めることができませんでした。

三門の袖口で拝観料(500円)を払い、楼上へと続く細い階段を登っていきます。階段は一方通行となっているので下りの人が降りてくることはありません。

楼上への狭い階段
楼上の回廊から

狭い階段を登りきると、三門の二階部分に設けられている釈迦如来と羅漢様が鎮座する広い板の間に出てきます。創建以来、どれほどの数の人がこの板の間を踏みしめたのか、時の流れと歴史の深みを湛えるような空間が広がっています。

外光だけが射し込む楼上の板の間の片側に黄金に輝く釈迦如来、普賢菩薩、文殊菩薩、羅漢像、歴代上人像が居並ぶように座しています。三門の楼上に人しれず安置された仏様と対面しながら、寺院の入口に置かれた三門の意味を改めて思い知らされた瞬間でした。寺院に参拝するものがまず煩悩を捨てる場所として三門をくぐり、浄土へと誘われる入口が即ち山門であるということ。そのために三門楼上に仏像が安置されているということだったのです。

階上の窓から、かつて江戸庶民が見たと思われる江戸湾の方向にカメラを向けてシャッターを落としました。ファインダーの向こうには大門と浜松町の街並みが広がっています。

楼上から見た浜松町方面

この三門の一般公開は本年11月30日(水)まで行われています。めったにない機会ですので、是非参拝されることをお薦めいたします。

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