三重県熊野市神川町柳谷
ずっと以前に、地形図でこの神社の存在を見つけてから気になっていた。
私が南紀へ行くときに使うルートから、少しだけ外れたところにあるので、ついでに寄ろうと思えば寄る機会は何度もあったし、実際、寄ろうとしたこともあった。
ネット上の地図で調べると名称が載っていて、「滝神社」とある。
地形図を見る限りでは、地形は穏やかで滝の存在など窺えないが、そのシンプルな名称から、滝があることは間違いなさそうだし、車道や民家からも距離があって、落ち着いた環境にあることも想像できる。
これだけの条件が揃っていながら今まで寄らずにいたのは、どうも「ついでに寄る」ことに抵抗があったからのようで、南紀への行き帰りにここへ立ち寄る計画は何度も流れてしまったのに、ここを中心にした南紀行きの計画を立てた途端、何やら妙に落ち着いたというか、いざなわれるような感覚になれた。
七色貯水池に沿う国道169号線から、柳谷集落への道に入る。
天気予報では午後から雨が上がる予想だったが、降り止む様子は無く、谷間の道はやや暗い。
地形図では参道が川を渡って続いているように描かれているが、実際は車道が橋を渡ったところから参道が伸びている。
車を停めると、蛙の鳴き声が響いてきた。まだ水田に水は張られていないが、春の雨なのだな、と思う。
車道には石灯籠が立っているので、参道入り口を見落とすことはない。
車道が橋を渡ったところから、コンクリートで簡易舗装された参道が、川に沿った緩やかな下り坂となって続いている。
もう一度、振り返って。
参道横は清流である。
僅かに濁っているが、雨で増水していることと上流に民家があることを思えば、かなり綺麗と言える。
流れには注連縄が渡されていて、水はこのすぐ下流で滝となって落ちている。
滝神社は柳谷川と支流の合流点近くにあって、私はその支流のほうに滝があると思っていたので、参道に入ってすぐに現れた滝に驚く。
参道から少し逸れて滝の下まで行ってみる。
滝の大きさも、思っていたよりも大きくて驚かされた。
迫力はあったが、たぶん、普段通りの水量の方が美しいだろう。
滝の上では山桜が咲いていた。
滝のすぐそばで、参道は二手に分かれる。
左の道は更に下っていき、右の道はほぼ水平に社殿のそばまで続いているようだ。
左が本来の参道のようであるが、右の道に少し入ったところにある木が気になったので近寄ってみる。
それなりに大きな木であるが、大きさよりも、その表情に目を奪われる。
苔、羊歯が樹皮を覆い尽くし、他の種類の木も生えてきている。
この一本の木で、どれだけの植物を育んでいるのだろう。まるで空へと伸びる大地だ。
左の参道へ戻り、更に下っていくと、やがて石段が見えてくる。
このまま真っ直ぐ進めば、本流に架かる朽ちかけた木橋と、支流の流れがある。
支流の方は上流に民家も無く本当の清流であるので、当初の予定では道が無くても遡ってみるつもりだったが、雨が降り続き傘を差した状態ではとても無理なので諦める。
参道を振り返る。
苔生した木々と、苔生した参道。
そして、石段を見上げる。
思いのほか山深い気配に、陶然とする。
照葉樹、もしくは植林された細い杉の多い地域だが、鳥居の先は樹相が変わり、大きな杉が天を衝く。
境内はほぼ水溜り状態。中央には御神木である巨杉。
社殿は社務所と繋がったような質素なもの。
だが、その素朴さが心地よい。
雨の降りしきる中、思索に耽る風情の狛犬。
豊かな緑の中で幸せそうでもある。
背後の緑からは、鶯が盛んに囀っている。
御神木を覆う苔。
雨ならではの雰囲気が味わえたけれど、ここはどんな天気のときでも素敵な表情を見せてくれそうな気がする。
またいつか再訪しようと思った。
2万5千分1地形図 七色貯水池
撮影日時 100325 12時~13時30分
駐車場 橋を渡って集落側にすぐのところにスペースあり。
地図
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驚くべき空間ですね
なんだこれは!?
な空間ですね
滝も素晴らしいし
道も素晴らしいし
境内も素晴らしいし
狛犬も素晴らしい
しかも
この雨の風情は
筆舌に尽くしがたい
風情を伴って
本当に驚くばかりです
こうした空間に
包まれてみたいものです
まるで巨大な龍が物思いに耽っているような。
雨でしっとりした感じなのも、味わいを深めています。
ここは幽黙さんも絶対に気に入ってくださるだろうと思ってました。
とにかく好きになる要素がいっぱいあって、
とにかく居心地のいい空間です。
だからこそ、もっと違う天気、違う時間帯にも訪れてみたいです。
熊野は、私にとって行く度に特別な場所になっていきます。
幽黙さんにも、いずれぜひ、訪れていただきたいものです。
>Junさん
生命をいっぱいに引き受けている、いい表現ですね。
その表現、使いたかったです(笑
なるほど、龍ですか。
言われてみればそんなふうにも見えますね。
私は想像力が貧困なのか、
そのものをそのものとしか見てないような気がします。
訪れた時のイメージが甦ります。
かなり雨が降ったのでしょうか?丁度私がお邪魔した時も雨でして・・・でもこんなに水溜りにはなっておりませんでした。
もう少し季節が進んで苔の美しい時期に再訪しようと思います。この辺りはかなり古い場所のように感じました。
雨がマッチしていますね。これはディープな場所
でしたね。哲学する狛犬さんには脱帽です。
これは違うシーズンにも、ぜひ行ってもらいたい
ですよ。
はははhiro1jzさんも変態の素養あるようで!
それはともかくイギリスの料理の不味い理由の
一つにソースを作ってしまった事とも言われて
いますね。ソースのせいで料理に工夫が必要なく
なったせいとも言われていますね。
田舎料理は、なかなか美味しいそうですよ。
ありました。三十三間山。なんで、あんなに離れて
いるのに若狭からもっていったのか不明らしいで
すね。闇見の禰宜さんも不思議がっていました。
越前・若狭・近江・山城と続くんですよね。
あ!継体天皇のコースですよ。大昔からの繋がり
だと思うなぁ。ロマンですよぉ。
昨日は伊勢の多気郡を中心にまわったんですが
意外と良いエリアでしたよ。ただ写真撮りにくい
のと道が狭いの残念でしたよ。
電車ではユッタリズムなのに車乗ると基地外にな
るんですよ。なんでしょ?
ここは想像していた通りの素晴らしい場所でした。
その雰囲気の良さに、撮影でも助けられたように思います。
雨は前々日から降り出しておりまして、
谷川の水は倍くらいにはなっていたのではないでしょうか。
ここは苔が豊かになると更に素敵でしょうね。
私は再訪したら、神社横の小さな流れを遡ってみようと思ってます。
熊野はどこへ行っても、太古の息遣いが聞こえるようで、
やはり興味が尽きません。
>eraさん
ここはいいです。
私の中で、居心地のいい神社ベスト10に入ります。
滝や流れや木々や草花や苔と、被写体もいっぱいで楽しいです。
南紀へ行くときは、ちょくちょく寄ってみようと思います。
SとMが極端に混在してますからそうでしょう(笑
ソースを作ってしまったから、というのは成る程という感じですね。
あ、でも、日本の醤油は万能だと思ってます。
でも日本料理は奥が深い。
素材を活かすかどうか、ということですかね。
それだけの長さのある木は、遠方に求めなければならなかったのでしょうが、
和歌山の熊野川畔、奈良の柳生でも、
三十三間堂の棟木を伐り出したといわれる場所があるみたいです。
この二箇所では柳の大木となってますが、若狭ではヒノキです。
こういった話もロマンですね。
多気郡はなんとなく良さそうな気はしてましたが、
写真が撮りにくいですか・・・。
狭い山道はいいんですが、集落内の狭い道とかは苦手ですねぇ。
電車でも、自分で運転するとなると飛ばしたくなるかもですよ。
ローカル線をゆったりは、情緒もあって好きですが、
JR西の新快速のように飛ばす電車も好きです。
鉄バナ失礼(笑
故中上健次の小説からも感じるのですが
ものすごくねっとりと身体にまとわりつくような
濃密な気が満ちているところですよね
この濃密な空気の中に身を委ねてみたい
という思いはあるのですが…
南紀以外にこうした濃密な空間があるところ
そうそう無いように思うのですが…
豊かに神寂びて奥深いなところは
もちろんたくさんありますが
このねっとり感を感じるようなところは
他の地域ではあまり思い当たらないですね
想像では屋久島くらいかな…
南紀辺りを底抜けに明るいと感じられる方もいらっしゃるようですが、
中上健次の小説がそうであるように、
寧ろ底の無い暗部のようなものも漂っている気さえします。
もちろん底抜けの明るさも、爽快さもあるのですが、
とろりとしたぬるま湯の中に揺蕩うような、
そんな感覚が常にあったりします。
しかしこの感覚を判ってらっしゃるということは、
幽黙さんは何度か足を運ばれたことがあるのですね。
この感覚、確かに他の地域では得難いものですね。
私も屋久島は近いような気もするのですが、
熊野信仰というものが創り上げたものも大きいでしょうし、
やはりここだけかな、という気もします。
あれは関東drは味わえない速度ですね。
多気郡は鳥居から社殿までまっすぐじゃない神社
が多かったですね。竹神社や竹大與杼神社は素晴ら
しい神社でしたが写真向かないですね。今回参拝
したなかでは宇尓桜神社が一番写真向きな神社で
したよ。あと鳥墓神社は名前に負けない陰気な
オーラあって素敵な神社でしたよ。伊勢もすてた
もんじゃないでしたよ。
う~んさすがhiro1jzさんがベスト10に入る居心地
の良さというだけありますね。ここの苔と参道は
見事ですもんね。近くに民家とかあるんですか?
氏子さんなんかいないように見えますね。
南紀も恐ろしい場所だなぁ~。
桧と柳・・・地域の文化の差異を感じます。ロマン
ありまくりですね。33間堂は何処の木で作られたん
でしょうね。奈良の柳生も、そんな伝承あるんで
すか!柳生は行ってみたいですよ。
あ!茨城の式内の大井神社のすぐそばの木で京都
の清水寺の仏さんが作られたなんて伝承あります。
意外と、こんな伝承あるのかもしれませんね。
こっちは雪かもしれません。風邪ひいたようです。
お写真を拝見して、というより、私自身お写真の中を歩ませて頂きました。