神社のある風景

山里の神社を中心に、歴史や建築等からの観点ではなく、風景という視点で巡ります。

不動小屋谷 その2

2014年06月13日 | 滝・渓谷

奈良県吉野郡十津川村旭


この日の天気予報は、午前中は晴れで午後から曇り。
不動滝は結構大きな滝なので、青空をバックに撮りたいと思っていたのだが、時おり薄日が射すものの、綺麗な青空は見えないまま。
それでも、不動滝が見えた瞬間には、周囲がぱーっと開けて、光が降り注いでいるような感覚になる。



そんなに閉塞感のある谷では無かったけれど、やはり大滝が見えた時の開放感は心躍るものがある。
落差は50mと書かれているサイトが多いが、40mあるかないか、といった印象。



普段から滝の高さには拘っていないけれど、それでも高い滝を見れば、「おお」と心の中で声を上げる。



薄日ではありながら、滝の右側の緑は輝く。



左側は、陰を纏って濃密な緑。



滝壺は広く深い。
色付いた落ち葉がたくさん浮かんでいて、ここもちょっと秋っぽい。



泳げるほどの広さはあるし、水色の美しさに定評のある場所だが、正直、期待したほどでは無いかも。
滝壺は広いわりに、周囲に寛げる空間はあまり無い。
水色もイマイチ冴えない。
数年前に訪れた南紀の滝本北谷の比丘尼滝は、泳げる広さの滝壺と、走り回れるほどの空間があって、心から寛げるお気に入りの場所になっていたから、それと比較してしまうのだろう。



空が少し明るくなれば、滝壺の色も少し変化する。
たぶん、もっと美しい色に出逢える瞬間がある筈と思って待ち続ける。



滝から吹き付けてくる風は冷たく、長い時間その風に当たっていると手先が悴んでくる。



滝壺の美しさに、少しは近づけただろうか。



肉眼ではこれほど鮮やかな色では無いのだけれど、少なくともカメラでその色が捉えられれば。



滝壺だけでなく、滝そのものも光の強弱で表情を変える。



岩は輝いて、水は飛沫を上げて迸る。



多彩な表情を見せてくれるのは、名瀑の条件だと思う。



ほんの僅かな時間だけ、滝身に日が当たる。



珍しく縦向きの写真で全容を。
期待通りとは言えないかも知れないが、ここに来られたことに満足。



ふと思い立って、スマホで滝壺の水面を撮ってみる。
あれ? 何だか一眼で撮るより透明感があるような・・・。



更にスマホが防水であることを思い出して、滝壺に突っ込んで写真を。
それなりに面白い写真も撮れる。



さて、そろそろ帰ることにする。
振り返れば、岩壁が聳え、柔らかな新緑に包まれながらも険しく深い山中にいることを思い出させる。
こんな場所にいたのだ、と自分がいま立っている場所を改めて見渡せば、とても満ち足りた気分になれた。

駐車場所に戻るまでの間に、スマホのカメラレンズの内側に、水滴がビッシリ着いていることに気付く。
おいおい、キミは防水の筈だろうが、などと問い掛けながら、電源を入れれば画面は表示される。
ただ、一部が白っぽく表示され、ちょっと目障りでもある。
別にスマホのカメラなんて普段は使わないし、画面の表示も使用に不都合があるわけではないから、まあいいか、なんて強がってみる。
だが、車に戻って暫く休んでいると、スマホの画面が表示されなくなった。
車のヒーターに当てて乾かしてみるものの、画面は真っ暗なまま。
ちょっとマテ、PCのデータも大事だが、キミにもそれなりのデータが! などとちょっと焦る。
家に帰ってから、微かな希望を託してアツアツになるくらいファンヒーターに当ててみると、正常に戻った。
とはいえ、SDカードのデータは一部破損していたから、防水は過信してはいけないのだろう。


撮影日時 140514 9時~12時
地図


不動小屋谷 その1

2014年06月06日 | 滝・渓谷

奈良県吉野郡十津川村旭


朝の4時に目を覚ます。
車での睡眠は決して寝心地がいいとは言い難いけれど、目覚めと同時に夜明け前の山が目に飛び込んでくるから、ゆったりと爽やかな気分でもある。
軽く朝食を摂っている間にも、周囲がだんだんと明るくなってくる。
気温はあまり下がらなかったようで、寒さは無い。
数年前の五月に、この近くの舟ノ川に行ったときは10度以下まで下がって水も冷たかったが、今日は問題ないだろう。
昨日とは違い、リュックを背負って四時半に出発。
久しぶりの山歩きなので、ちょっと緊張というか、身の引き締まるような思いで林道を進む。



林道はゴツゴツした石が多くて歩きにくいが、周囲の緑は豊かで退屈しない。
杉の植林が殆ど無い山は、なんと柔らかなのだろうと思う。



不動小屋谷を渡る橋の近くから、下流方向を望む。
左上には歩いてきた林道が見える。
ここからは不動小屋谷の流れに沿って、道の無い谷中を進むのだが、ここに来てちょっと悩む。
このまま林道を進んで、旭川の上流である宇無ノ川を見る方が楽しいのではないだろうか。
答が出ないので、もう暫く林道を進んでみる。



悩みながらも寛げる緑の中、いいなぁ、どうしようかなぁ、を繰り返す。 



いいなぁと思いつつ、引き返して不動小屋谷に行くことに決める。



不動小屋谷の橋の上から上流方向を見れば、いきなり滝がある。
橋の下流にも滝があって、池小屋滝という名前のついた結構大きな滝なのだが、降りるのは大変そうだし、あまり惹かれる姿でもないのでそのまま上流に向かう。
この滝は左岸を巻いて越えたものの、初っ端からちょっと恐怖を感じてしまった。
年をとるほどに高所恐怖症になっていっている気がする・・・。



ただ、この谷は癒し渓と言われているくらいで、最初の滝を越えれば上流にある不動滝まで難所は無く、こんな感じの穏やかな流れになる。



何故か色付いている落ち葉が多くて、まるで秋の風情。



当たり前だけれど、目を上げれば秋の風情ではなく緑いっぱいで、春の谷川を彩っている。









時に足を濡らしたりしなければならないが、いちばん深くて膝上くらい。
もちろん、足を滑らせれば身長より深いところはあるものの、思ったほど滑りやすくはなかった。
基本的にはのんびり緑を見ながら、適当にルートを選んで進んで行ける。






逆に、滝と言えるほどの険しい場所がなくて、沢歩きに慣れた人なら退屈だろうなと思う。
私としては綺麗な水と緑があればそれでいいけれど、それでもちょっと撮影ポイントが少ないかな、とは思う。






でもまあ、誰も居ない山の真っ只中で水と戯れるのは楽しい。



この辺りまで、慣れた人なら一時間以内で来られるだろうけど、既に二時間以上経過。
でも、時間はまだまだある。
今日はここだけで費やすつもりなので、もっとのんびりしてもいい。



虫が苦手な人には恐縮だが、途中で見かけた虫の死骸があまりに鮮やかな金属光沢を放っていたのでパチリ。
往復で三匹の死骸を見たから珍しいものではないのだろうけど、家に帰ってからネットで調べてみても名前は判らなかった。
ご存知の方がいらっしゃったら教えてください。



やがて谷間にも日が差し込んできて、水面が光と色で賑わう。



きらきら、さらさら、ゆらゆら、自然の音や情景を表現するオノマトペは沢山あって、それらが競演する。






私自身は、じゃぶじゃぶ、わくわく、のろのろと、自然の奏でる言葉に混じって進む。
目的地である不動滝まではもうすぐだ。


撮影日時 140514 4時50分~9時
地図