神社のある風景

山里の神社を中心に、歴史や建築等からの観点ではなく、風景という視点で巡ります。

山椒谷(その2)

2010年08月27日 | 滝・渓谷


山椒谷は概ね穏やかな流れで、変化に富んだ渓谷ではないが、いちおう前回に紹介した渕が一つめの核心部といえる。
今回は、そこから二つ目の核心部の手前までを掲載。
つまり、見所と見所の間、ということになってしまうのだけれど、水の表情や岩の表情が豊かなところで、丁寧に見て歩けば退屈とは無縁だ。
ヤブや嫌な虫にも出遭わないし、流れと同じに、静かで穏やかな気持ちで歩いていける。



前回掲載した渕を形成したであろう滝の上部。
その上にも小さい滝があり、二段、というよりは二つの滝が連なっている。



上にある方の滝も小さく見映えはしないが、落ち着いた雰囲気がある。
滝の左上の岩には、恐らく鹿であろう大型獣の骨が一本だけ転がっていた。
キツネか何かが咥えてきたのだろうか。






この滝の上から振り返れば、緑の渕が連なって、水と緑の豊かさに満ち足りた気分になれる。



見映えのしない滝と書いたが、滝から振り返った風景も美しければ、滝の落ち口の水と岩の表情も惹かれるものがある。









静かな谷だからこそ、こういう表情を見つけられたのだと思う。
三枚目は特にお気に入りで、水の美しさや面白さを再認識した。



滝のすぐ上は再び渕になっている。






深さ1メートルほどで浅いものだが、ここも結構な長さのある渕だ。



その上流には、滝とは言えないほどの小さな落差。
ここも落ち着いた雰囲気があって、捨て難い風景。



見る角度を変えると、二段の滝であることが判る。






ここも、岩と水の表情が楽しい。



上流は更に穏やかになっていく。
赤目周辺では去年の台風時に稀に見る大増水があったらしいが、ここでも高さ2メートル以上の木の枝にごみが引っ掛かったりしていて、その高さまで水位が上がった状況を考えると恐ろしくなる。






落差は殆ど無いけれど、色んな岩があって面白い。



谷は穏やかなままだが、朝の日差しが谷底にも届きだして、蜘蛛の巣とモミジを照らした。












この辺りはモミジが多い。
今は緑を映す水面が、秋には赤や黄色に染まるのだろう。



去年の台風の名残か、流木などが散乱してやや荒れた雰囲気になるが、谷の真ん中に立つ木には惹かれる。
この先を暫く進むと、また大きな渕が現れて第二の核心部が始まる。


撮影日時 100730 6時40分~8時半

山椒谷(その1)

2010年08月20日 | 滝・渓谷

奈良県宇陀市室生区龍口


去年にこのブログで赤目四十八滝を紹介したときに、この山椒谷にも少し触れた。
四十八滝の一つでもある夫婦滝がこの谷に懸かっているからでもあるし、そのときの本来の目的が山椒谷を遡行することでもあったからだ。
結局、去年はその目的が果たせないままであったが、今回、漸く山椒谷の姿を撮影することが出来た。

ここは十数年ほど前に、二回遡行している。
地形図を見れば、勾配は極めて緩く、およそ滝など無さそうな様子が窺える。
だが、集水面積はそれなりにあって、四十八滝の本流に匹敵するほどの規模がある。
それに、四十八滝の支流なのだから地質は似通っているだろうし、そうであれば立派な滝は無くとも立派な渕や滝壺はあるかも知れない、という想像が膨らむ。
何より、殆ど人が入って無さそうだという点が、強く私の興味を掻き立てた。
遡行した結果は、とても満足できるものだった。

当時はネットなど普及しておらず、情報収集もままならなかったが、今回、改めて調べてみて、その情報の少なさに驚いた。
山椒谷の画像は一枚しか見つからず、記述も僅かなものだけだ。
相当な数の人が訪れる四十八滝がすぐ傍にあって、四十八滝の水の5分の2くらいは担っているこの谷が、こんなにも人に知られず眠っている。
道も無いこの谷に、観光客が入るには無理がある。かといって、沢登り好きの人間からすれば、あまりにも穏やかな地形で興味を引かないのだろう。
つまり、入るのは私のような物好きだけになってしまうのだろうが、決してつまらないところではないので、ぜひとも写真を撮って紹介したいと思った。
それなりに写真の枚数が多いので、三回に分けて掲載予定。
こんな地味な谷を三回にも亘って掲載するのは、このブログならではだと思います(笑



去年と同じく、四十八滝の上流側から下っていく。
まだ夜明け前の暗い山中を、懐中電灯で照らしながら進む。
道の真ん中に居座る大きなヒキガエルに驚かされるのも、去年と同じだ。
辺りもだいぶ明るくなってきた頃、対岸から山椒谷が合流する地点に着く。
本流に懸かる雛壇滝のすぐ下流だ。
赤目四十八滝は三重県名張市だが、この辺りでは対岸は奈良県宇陀市なので、山椒谷は宇陀市ということになる。
今回は程よい水量で、容易く対岸に渡り、そこから僅かな距離で夫婦滝に着く。






上部で二本の流れが、一本に合わさって落ちるから夫婦なのだろうか?
小さくて見映えのしない滝だが、それに比して滝壺が大きいのは赤目の特徴だ。
さて、ここからは殆ど知られていない場所で、三度目とはいえワクワクしてくる。









写真のように、滝とはいえない小さな落差と渕が続く。
両岸の斜面は概ね植林されているが、水際は落葉樹が多く緑が美しい。
道は無いものの険しいところも無いので、たまに足を濡らす程度で快適に進める。
ただ、谷を渡すように張られた蜘蛛の巣が、やっかいと言えばやっかい。



左に赤目らしい柱状節理の岩壁を見て暫く行くと、両岸が狭まり、壁の低い廊下状の地形となる。
間に満々と水を湛え、25メートルほどの長さがある大きな渕だ。



少し先に、この渕を形成したであろう滝が見える。
渕の大きさからすれば、不釣合いに小さな滝だ。



姿もあまりぱっとしない。
だが、ここから振り返って見た渕の美しさは、この谷随一の風景かも知れない。



いちばん深いところで3メートルほどだろうか。
止水かと見紛うくらいに水面は静かだ。



そして水面に映る緑。



それから、光と、陰と。
以下、コメント省略。





















静かで、心ゆくまで雰囲気に浸れる場所だ。

殆ど同じ場所の写真になってしまったが、今回はこの渕の紹介がしたかったので・・・。


2万5千分1地形図 大和大野
撮影日時 100730 5時~6時40分

駐車場 四十八滝上流側入り口に数台分。山椒谷出合まで徒歩40分ほど。
地図


投石ノ滝(再訪)

2010年08月13日 | 滝・渓谷

奈良県吉野郡東吉野村瀧野


近くを通る機会があったので、投石ノ滝を再訪してみた。
お手軽に行けて、それなりに美しい滝ではあるけれど、格別の個性があるわけでなし、特に印象深い滝だったわけでもない。
とはいえ、このブログで初めて掲載した滝がこの投石ノ滝だったので、そういう意味では思い入れがあるし、当時とは季節も違えばカメラも違う。私自身の見る目も変わっているだろうし、どんな写真になるかな、という楽しみがあった。
実際、それほど表情豊かな滝とは思っていなかったのに、今回は思いの外たくさんの写真を撮ってしまった。
撮影中、曇り→雨→晴れ、と天気が目まぐるしく変わってくれたのも幸いして、楽しく色んな表情を撮れたと思う。
「神社のある風景」と題しておきながら、どんどん滝や渓谷の比率が上がっているような気がするが、ここが最初と思うと、何やら親しみや愛着も感じて、いつしか好きな滝の一つになっているようだ。



お寺の横を通って、よく整備された滝への遊歩道を進むと、すぐに鳥居と滝が見えてくる。
扁額は「不動明王」で、この道は遊歩道というよりは参道なのだろう。



よく整備された場所ではあるけれど、滝、祠、大木が溶け合った、素敵な環境である。









一番大きな杉が御神木で、樹齢千年とある。
祠などは素朴なものだが、信仰の歴史は長いのだろう。






昔は滝のそばに人工物があるのを嫌ったが、今は、これはこれで溶け合った風景として感じるようになった。
もちろん、溶け合える人工物は限られているけれど、ここは雰囲気良く落ち着いている。



落差は12mほど。
滝前は河原状になっており、水に触れて楽しめる。
やや濁りが感じられるが、上流に民家や水田は無いようなので、自然の濁りだろう。



大粒の驟雨が降ってきたので、木の下へと逃れて撮影。



祠の軒下へと移動し、雨宿りしながら。






滝の左の岩壁には不動明王像。






横から見れば、水は意外と勢いよく飛び出している。
思っていた以上に、色んな顔を持っているようだ。









正面からの端整な姿。









靴を濡らして対岸へ渡り、右側からも撮る。



今度は下流へ移動。



御神木とセットで。



少し日が差してきた。



滝のそばへ戻ると、御神木に日が降り注いでいる。



夏なのに、心地よく感じられる日差しだ。
周りの全てが、ふっ、と息を吹き返すように、雨に閉じ込められていた空間が解き放たれていく。









暫し木漏れ日と戯れてから、ゆっくりと滝を後にする。
すぐに夏の日差しが戻ってきたので、すぐに水が恋しくなった。


2万5千分1地形図 高見山
撮影日時 100730 13時10分~14時20分

駐車場 あり
地図


酒賀神社

2010年08月06日 | 鳥取県

鳥取県鳥取市国府町菅野


鳥取市周辺の地図を見ていて、最初に気になった神社だ。
車道からやや離れており、参道が長そうだ。
神社の向かいは湿地帯で、植物好きの人間としての興味も湧く。
更に湿地帯から流れ出した川を辿っていくと滝記号がある。
この滝について調べてみると、なかなか立派で美しい滝のようで、神社よりも滝に関心が傾いてきた。
神社付近にはこれといった集落も無く、半ば放置されかけた小さな祠のようなものである可能性も考えられたから、尚のことである。
神社も滝も名称が判らず、この滝が記載されているホームページには、地名を取って「菅野の滝」として紹介されていた。
出発間際になって、それぞれ「酒賀神社」「酒賀の滝」という名称を地図で見つけたものの、改めて調べずに現地へ行った。
まずは滝へ向かい、滝音が聞こえるところまで行ってはみたが、草ぼうぼうの状況にウンザリして断念。
滝への期待が大きかったぶん落胆は大きく、半ばどうでもいいような気分で神社へ向かった。



道路がカーブするところに大きな木が繁っていて、「酒賀神社」という看板が出ていた。
思いの外ちゃんとした神社のようで、車を止め、木々に覆われた空間に足を踏み入れると鳥居が現れる。
寂れた小さな祠のような、とさえ予想していたから、この風景にはびっくりする。
鳥居横の案内板を見れば、「旧大茅十二ヶ村の郷中一の宮と呼ばれ」とあり、周辺に点在する山間集落の中心的な神社であったようだ。









参道右手は杉、左手はモミジを主体としているが、とにかくモミジの緑が鮮やかで、とても気持ちの良い空間になっている。



鳥居から神社入り口を振り返る。
右にある大木は御神木となっている。



苔も生えて素敵な参道なのだが、距離は短く、正面に見えている杉のところから直角に左に折れ、階段になってしまう。






参道を振り返る。



直角に折れた参道の先には拝殿が見えている。



階段を上りきると拝殿。
社殿周りは切り開かれて明る過ぎるのが少し残念。



しかし、本殿も思いがけず立派なもので、暫し見入ってしまう。












彫刻もなかなか凝っている。
とてもこんな辺鄙な山中にあるとは思えない神社で、不思議に思えるくらいであった。


2万5千分1地形図 稲葉山
撮影日時 100630 15時25分~16時20分

駐車場 入り口付近で道路が広くなっている。
地図