神社のある風景

山里の神社を中心に、歴史や建築等からの観点ではなく、風景という視点で巡ります。

熊野神社

2016年03月17日 | 再訪

兵庫県篠山市宇土


八柱神社の雪景色を堪能して、林道から出たところで雪が降り出してきた。
四日前に12キロほど歩いたばかりなので、今回は同じルートを辿らず、もう少し手短に済ますつもりだ。
倉庫のような建物の軒下で、暫く雨宿りならぬ雪宿りをする。
雪が降れば、昔だったらただはしゃいでいただけなのに、今は帰りの電車で濡れそぼっているのもなぁ、などと色々考えてしまうのが煩わしい。
雪はそれなりに強く降っているように見えて、それでも地面を更に白くさせるほどではない。
空の隅には青空も見えて、やがて小降りになってくる。
北に向かって歩き出す。
ここから歩いて行ける範囲で行ってみたい場所を考えたら、宇土にある熊野神社が頭に浮かんだからだ。
過去に二回、訪れている筈で、ここに記事を載せたこともある。
概ね民家の多いところを通るので、あまり楽しくはないが、途中に稲荷神社があったので立ち寄る。



連続する朱の鳥居から、雪や、溶け出した雫が落ちてくる。
一つの記事として掲載するほど写真は撮らなかったけれど、こういった寄り道は楽しい。

それなりに車の多い道を歩く。
溶け出した雪が水飛沫を上げるので、反対車線まで出て私を避ける車もあれば、割と直ぐ傍を横切っていく車もある。
自身が運転する立場であったとき、路面が濡れていれば前者のような対応をしたつもりだが、どこまで徹底できていただろう。 

宇土集落に入ると道は狭くなり、やがて正面に宇土観音が見えてくる。 



宇土観音はよく知られいるようで、駐車場にも沢山の車がある。
その左手に、隠れるようにあるこの神社に気付かぬ人も多いだろう。



懐かしいけれど、雪があるので新鮮な気分でもある。
参道の桧は皮が剥かれて赤い。
桧皮葺に用いるためで、神社では時々見かける光景だ。
痛々しく見えるが、これで枯れるわけでもないらしいし、ここの桧の樹皮が、どこかの神社やお寺に使われるのだと思うと、何やら想いは遠くへ馳せる。
知らずに、どこかで出逢うこともあるかも知れない。



鳥居前からは、宇土観音が見える。



参道は短いものの、奥行きを感じさせる。






少し進んでは撮り、で、似たような写真ばかりだが。



境内社の稲荷神社。
やはりここも紅白で鮮やか。



北北西に向いた谷間にあるので、今になって太陽の光が射してきた。



参道は桧であったが、社殿周りは杉の大木が聳える。



モノクロの世界に、木だけ着色したかのよう。






雪は八柱神社よりも少ないけれど、ここも来てよかったと思える風景。



もともと端正な姿の本殿であるが、背後の木々が白いと、より際立ってそれが感じられる。






美しい本殿だ。



やや離れた右手の林からも撮影してみる。
ちょっと雑然としているものの、雪の中にある佇まいには惹かれるものがある。

帰りは同じ道を通るのもつまらないので、宇土集落から変電所まで、山際を通る道を歩いてみた。



地図からは軽自動車が通れる程度の舗装された道を想像していたが、思いのほか雰囲気のいい道で、雪が無くても写真にしたい風景だった。



ちょっとブレてしまったけれど、左手の杉林。



変電所の手前で振り返って。
この道は多分、また通ることになると思う。

変電所からは、往きと同じ退屈な道を篠山口駅まで歩く。
たった二社を訪ねただけだが、楽しく充実した一日だった。


撮影日時 160301 10時半~12時
地図


八柱神社

2016年03月08日 | 再訪

兵庫県篠山市初田


前々回に掲載した八柱神社を訪れた日から四日後、私はまた同じ時間に同じ篠山口駅前に立っていた。
もともと雪景色が似合うだろうと期待していた八柱神社だったが、今冬はもう雪は無理だと諦めて八柱神社を訪ねたのに、まさかその四日後に雪が積もるとは。
しかもちょうど仕事が休みの日で、喜んでいいのか嘆くべきなのか判らない。
とにかくまあ、往復二千円ほどの電車賃をかけて、四日前と同じ場所に行く。

ありがたいことに、最近は雪があるか無いか行ってみないと判らない、ということはあまり無い。
前夜から雨雲レーダーと気温を何度も確認していたが、決め手になるのはネットで見られる各地のライブカメラだ。
兵庫県の場合は、兵庫県土木局の河川監視システムのカメラが役に立つ。
ライブではなく2分毎の更新で、夜間だと少し見えにくいものの、時おり雪が舞っていたり、薄っすらと地表が白くなっているのが確認できた。

前回と同じく田松川に沿って歩く。
前回と全く同じ場所に白鷺がいて、前回は逃げたが今回は逃げない。
周りの田畑は白一色ではあるものの、5センチくらいの積雪を期待していたのに、せいぜい1~2センチといったところだ。

青空が見えているけれど、時おり雪が舞う。
気温はマイナス2℃ほどで、湿度のせいか前回より寒く感じる。
雪景色と寒さの中、鶯の鳴き声が聞こえる。
春はもうすぐ傍まで来ているのだろう。

初田集落を抜けて林道に入る。




神社前から集落を見る。
普段なら撮らないけれど、やっぱり雪があると全く印象は変わる。
神社の方向を見れば山深い雰囲気だが、意外と人家が近いことが判る。



参道に入れば木々に覆われているせいで雪は更に少なくなり、ちょっと斑な感じになるものの、来て良かったと思える世界になる。



雪の中で、朱の鳥居はよく映える。



参道の奥、鳥居の向こうは凛然として、頭に思い描いていた気配を湛えている。



前回と似た構図になってしまう写真が殆どだが、雪があったから撮った写真もある。



木々の葉まで白く染まっているのは、雪が止んでから暫くの間だけだ。
時間が経てば雪は落ちたり融けたりして、黒っぽい常緑樹の木々の葉と白い地面とに色が分れて、美しさが半減するように思う。
積雪量は少ないが、いいタイミングに出逢えたようだ。



丹後出身の友人は、雪は嫌だと言うけれど、やっぱり私は雪が好きだなぁと思う。
ただ、雪国の苦労など何も判っていないのは承知しているから、その友人が言うことも理解できる。



参道を振り返る。
朱の鳥居は、緑の中でも白の中でも鮮やかだ。



この位置からの写真は、いつも納得がいかない。
色合いも、その気配も写せない。



いつもとはちょっと違う角度から撮ってみる。



見上げた木々が、白く輝いて綺麗だ。
何度か訪れた場所でも、こんな風にまだ知らなかった装いがいっぱいあるのだろう。



歩みは遅々として進まないが、やっと本殿が見えるところまで来た。



シャッターを押す手が痛い。



顔は痛みや冷たさを感じないが、鼻水が出ていても気付けないくらいだから、ちょっと麻痺しているようだ。
雪景色に目を輝かせている自分、鼻水を垂らしている自分というものを客観的に見ると、随分と滑稽な姿であって、綺麗な雪景色の中で、自身だけが綺麗ではない異物なんだなぁ、なんて思えてくる。



くぐった鳥居を振り返る。



そして本殿前へ。



前回と同じように、杉林の向こうに朝の光が射し込んでいる。



反対側は、より強く照らされて、雪も淡く太陽の色に染まる。



真横から。



帰り際、振り返ると竹の葉からさらさらと雪が舞い落ちてきた。
スローシャッターで撮ったので、竹林の上部が光を纏ったかのように微かに白っぽく写った。


撮影日時 160301 8時半~9時半
地図


参拝記 (二村神社 大歳神社) 

2016年03月03日 | その他

八柱神社を訪ねた後、結構な距離を歩いて二箇所の神社を参拝したのだが、例によって一つの記事とするにはそれぞれ写真が少なく、道中に適当に撮った写真と併せて「参拝記」として載せようと思う。

八柱神社からは林道を先へと進み、峠を越えることにする。
大した登りではないが、車の通行は困難な道路状況だ。 
特に見るべきものもなく峠を過ぎて下っていくと、やがて里の気配がしてくる。



道は緩い下り坂で快適だ。
薄暗い八柱神社で身体は冷えていたので、太陽の光が心地いい。



田畑が現れ、その先に民家が見えてくると何故かホッとする。



こういう風景の中を、のんびり歩くのもいいものだ。
国道に出て少し西に進むと、向かい側に「二村神社」の社号標が立っているので、そちらへの狭い車道に入る。
途中、民家の間に鳥居があり、そこから100メートルほどで二村神社。
社号標も鳥居も酷い逆光で、まともな写真にならず残念。






拝殿も本殿も立派なもので、ベンチもあって地元の人の憩いの場なのだろうが、どうも明るく開けた境内は落ち着けなくて写真もあまり撮らず。



神社を後にして適当に横道に入ったりすると、隠れるように茅葺の廃屋があったりした。



風が強くなってきて、日の光は真冬のそれではないけれど、やはり寒い。
畑の水も薄氷が張っている。
畑の土の色というのは暖かみがあっていいなぁ、なんて思うのは、寒いからでもあるのだろう。
ビュービューと吹きすさぶ風に、つい俯きながら歩く。
履きなれない靴のせいか、足も痛くなってきた。
何だかまた前回の参拝記のときのように、巡礼者みたいな気分になってきた。

七分咲きの梅の木が一本あったので、その木の下で休憩する。
周囲で梅は殆ど咲いていないから、ここだけ少し春があるかのようだ。
持参したソーセージを一本食べる。
もともと少食だし、出掛けるときの食事はこの程度のことが多い。



早春の小川。



早春の田圃。



早春の農道。
この辺りでけっこう疲れていたので、実際に頭には貧困な語彙しか浮かんでこなかった。

南矢代駅そばの踏切を渡る。
このまま駅に行ってしまおうか、という誘惑を振り払って、もう一頑張りする。
駅から600mほどで大歳神社に着く。
ここに来るのは二度目で、確か「雑多な写真」で載せたことがあると思ったのだが、いま見返してみると見つからない。
もしかしたら初掲載かも知れない。






懐かしさに疲れもちょっと和らぐ。






前回は薄曇りだったので、もう少しひっそりとした印象であったが、今回は陽射しが強く、思い出とは差がある。
ただ、明るくても木々に囲まれた空間は、やっぱり落ち着ける。






スマホで南矢代駅の発車時刻を調べると、今から15分後でちょうど間に合いそうだったけれど、何だかもう少しのんびりしたくなったので、一本遅らせることにした。



道中で咲いていたオウレンの花。
いかにも早春に咲く花らしい清楚な姿。
珍しいものではないけれど、とても小さく目立たないので咲いていても気付かないことが多い。
実のところ、今日の目的の半分は、新しく買ったレンズを使ってみたい、というものだった。
年が明けて暫くした頃、何故か突然、新しいカメラを買うぞ! と意気込んでしまったのだが、不意に冷静になって、いや、カメラを新しくして今ある表現力が1増えたとしても、レンズなら2か3増えるはず、と思い直した。
というわけで、ずっと以前から欲しかったマクロレンズを買ってしまった。
今までのレンズでは、こんなにアップで撮ることは不可能だったし、背景もこんなにボケてはくれない。
使いこなすことが出来たら、表現の幅はぐっと広がるはず。
と、意気揚々として出掛けたものの、神社の写真を撮るのに接写を必要とすることはあまり無いし、時期的に花は殆ど咲いてないし…。
これから徐々に、活躍してくれればいいのだが。


撮影日 160226
地図
 二村神社
 大歳神社