神社のある風景

山里の神社を中心に、歴史や建築等からの観点ではなく、風景という視点で巡ります。

三輪神社

2010年11月29日 | 再訪

京都府京都市右京区京北明石町


紅葉を見るのによさそうな神社は無いだろうかと、適当に過去の写真を見ていたら、この三輪神社が目に留まった。
ここは過去二回訪れているが、いずれも春のことで、緑の鮮やかさが印象に残っている。
おそらく秋の表情も期待出来るに違いないと思い、訊ねてみることにした。
三回目の探訪で三回目の掲載。
ほんの小さな空間に拝所があるのみだけれど、他では得難い空気がここにはあって、行く度に心惹かれる。



神社前の道路でなにやら工事をしていたが、鳥居の先はいつも通りの静けさを湛えている。
木々の色づきは今ひとつで、それも黄色ばかりだ。






晴れれば背後から光が差し込んで、色づいた葉を輝かせてくれる筈なのだが、あいにく天気も悪く、時おり小雨も降る。
でもここは、晴れていても曇っていても、すーっとその場に溶け入るように、辺りの空気と同化出来てしまいそうな優しさがある。






微妙な色づきは、優しげな色でもある。






それに、この拝所を包むかのように取り囲む落葉樹を見れば、派手さは無くとも息を飲まずにはいられない。
空気は流れても、揺るがず湛えられているものがある。









拝所の前に立てば、自ずと目は高みへと向く。
谷間にあって薄暗いのだけど、どこか清々しい明るさのある場所だ。









鳥居方向を見る。
こちら向きの方が光線状態はいいようで、暗がりの中で色づいた葉が輝いて見えた。
行ったり来たりを繰り返して、身体が冷え切ってしまうまで、辺りの風景に見入った。


2万5千分1地形図 殿田
撮影日時 101116 10時~11時40分

駐車場 神社前駐車可。
地図


琉璃渓

2010年11月23日 | 滝・渓谷

京都府南丹市園部町大河内


琉璃渓を掲載するのはこれで七回目だ。
そんなにいい場所かと問われれば、どちらかと言えば「お奨め出来ない」と答えるし、何度か書いているように、まずは水が汚れている時点で渓谷としての価値は著しく損なわれている。
手軽に行けること、そして、渓谷としての表情は決して悪くないことが、何度も足を運ぶ理由であり、写真を撮るという意味では、いろいろと試せて楽しい場所なのではある。
これも以前に書いたけれど、京都府立自然公園に指定しておきながら、何ら水質改善に取り組む様子が無い。
ただでさえ京都は滝や渓谷が少ないのに、現状を放置している行政の良識を疑う。
今の姿は、遠方から来られる方に見せるには、京都出身者として恥ずかしい。

今回は紅葉の進捗度を見るために訪れた。
まだ早いとは思っていたが、案の定、斜面の上部は色づいているものの、谷底は緑のままだ。
色づいている木々にしても、その色は冴えないし、とにかく何度も掲載しているので、撮る場所が大体決まってしまう。
そういうわけで、殆ど足元だけを見て、落ち葉を中心に写真を撮ることにした。






まだ青味を帯びた朝の表情。
落ち葉にも鮮やかなものは少なく、枯葉と言うべき色合いで残念。



枯葉ではあっても、それぞれ表情があって、楽しくはある。






岩も水も、それぞれ表情はあるし、やっぱりマクロレンズが欲しい~と毎度のように思いながらも、撮っていて楽しい。












撮っているのは楽しいのだけれど、見てくださる方が楽しいかどうかは甚だ心許ない。






でも、水面に浮かぶ葉、水底に張り付いた葉、岩に張り付いた葉と、たとえ同じ樹種の葉であっても様々で、やっぱり見ていて楽しい。















太陽がやや高くなってくると、水面も岩も、より多彩な色合いを浮かべるようになる。









結局、とにもかくにも私にとって、自然というものは面白くて素敵なものなのだと思う。



太陽に照らされた黄葉を水面が映し出すと、その葉自体よりも鮮やかな黄金色になったり・・・。



日陰の方が、空の青さをより強く映し出したり・・・。









紅葉は今ひとつで、足元のちいさな風景ばかりを撮ったけれど、これはこれで秋らしさを感じてもらえれば・・・。


2万5千分1地形図 埴生
撮影日時 101105 6時20分~9時10分

駐車場 ダム付近にあり。
地図


春日神社

2010年11月17日 | 和歌山県
和歌山県田辺市下川下


日置川の滝巡りを終えて、帰りのルートをどうしようか迷う。
往きと同じではつまらないので、ちょっと遠回りでも日置川を遡り、中辺路の近露、十津川経由で帰ることにした。
せっかくだからもう少し日置川に寄り添って、その表情を見ておこうという気持ちもあった。
近露辺りに流れる川は、何となく富田川の上流のような気がしてしまうのだけど、実際には日置川がくねくねと険しい山中を縫って近露からさらに奥、果無山脈へと続いている。
道中はひたすら山の中を行く印象で、国道を走る部分でも、時に林道レベルの道になる。
そんな道のりで、少しは平地が出てきたなぁと思える場所が下川下の集落で、そこに春日神社がある。
地図に名称は載っているのでその存在は知っていたが、今回はどこも神社に寄らず帰ろうと思っていた。
だが、国道からその鳥居と石段、さらにその上にある鳥居が見えたときに、ふっと惹かれるものがあって立ち寄ってみた。



国道に面した鳥居は割愛。
たぶん私は、石段の上、鳥居の先にある緑に惹かれたのだろう。



上りきってみると、べつに深い緑というわけでもないのだけど、何となく、「いい感じだな」と思える雰囲気がある。



日が翳れば、ふっと鎮まるような気配も訪れる。






拝殿の両脇には相殿が並び、すっきりとした端正な姿だ。
境内左手や、社殿の背後には杉の大木もあって、明るく開けてはいても落ち着いている。



鳥居を振り返る。



本殿と相殿。
どちらもすっきりとした姿である。






相殿は彩色されており、レンガ色というか、くすんだような朱色。
で、その手前にある狛犬が、なかなか個性的な姿をしている。
大きく撮らなかったので後悔した。


2万5千分1地形図 合川
撮影日時 101022 14時10分~14時30分

駐車場 三叉路のところに停めたが、停めていいのか微妙・・・。
地図


日置川周辺の滝巡り 3

2010年11月09日 | 滝・渓谷

和歌山県西牟婁郡白浜町久木


このシリーズの一回目に、八草の滝の近くに是非とも見てみたい滝がある、と書いた。
その日はドン谷と八草の滝を見ただけで、その滝には訪れていない。
滝の名前は判らず、もちろん地図に滝記号も載っていない。
久木にある塩津谷に懸かっているというのが唯一の情報なのだが、塩津谷の記載もない。
だが、塩津山という名前の山は載っている。
恐らくここから流れ落ちる谷が塩津谷であろうという見当はつくのだが、地形を見る限り、滝がありそうにも思えない。
北隣にある集落内を通る谷を見てみると、こちらは滝のありそうな地形がある。
どちらにせよ、この二つのうち一つなので、初日は集落内を通る谷を遡ろうとしたのだが、動物避けのネットがあって、容易に通り抜けられそうにない。
時間もあまり無かったので、その日は諦めてドン谷と八草の滝に行った次第。

二日目の朝一は滝ノ谷を選んだので、再び久木に戻ることになる。
今日はまず塩津山から流れ出すほうに行ってみることにしたが、谷の入り口は木材置き場になっており、丸太を積んだトラックとフォークリフトがあって、二人の方が作業されていた。
入り口の雰囲気からして滝があるようには思えないのだが、とにかく作業されている方に、「この奥に滝はありますか?」と訊ねてみた。
「滝?」
と怪訝な顔をされてから、
「おい、この奥に滝なんかあったか?」
ともう一人の作業員の方に声をかける。
唸りをあげていたフォークリフトが止まり、作業が中断して恐縮する。
「上まで行ったことあるけど、滝なんて無かったで」
やはりここではないのだろうか? でも、一般の人がそんなに奥まで行ったとは思えないし、道から見えにくい場所にある可能性もある。
「なんちゅう滝や?」
「名前は判らないんですけど、塩津谷にあるらしいんです」
「塩津谷? 向こうに見えてる山が塩津やけど、ここが塩津谷なんかなぁ。そもそも水流れてへんで?」
どんどん可能性が減っていく。
「もうちょっと行ったとこに民宿あるやろ。そこの人が詳しいから行って訊いてみぃや」
民宿に道だけ訊ねに行くのは気が引けるが、仕方がない。とにかくここの滝が一番見たくてこんな遠くまで来たのだ。

民宿前にちょうど人が出ていれば訊ねやすいのだが、あいにく人影は無い。
呼び鈴を押して出てきてもらうのもなぁ、と暫く躊躇ってから、意を決して玄関前へ。
玄関は開け放たれていて、奥にお婆さんが座っているのが見える。
「すいませーん」
と声をかけると、お婆さんが玄関前まで出てきてくださる。
塩津谷のことを訪ねると、やはり先ほどの場所がそうであると簡単に答えが得られた。
そして、ここの水も、近くのキャンプ場の水も、塩津谷の水を使っていることなどを教えていただく。
「滝がありますよね?」
「あるある」
「岩に囲まれた滝ですね?」
「そうや、けど今でも行けるんやったかいな」
「じゃあ行ってみます」
「なんかの調査か?」
「いえ、滝の写真を撮るだけで・・・」
「お茶でも飲んでいくか?」
南紀の人は温かい。
お茶をよばれてお婆さんと色んな話をしたい気もしたが、滝ノ谷に行ってズボンはびしょ濡れだし、そこまで甘えるわけにもいかないので辞退する。
何だか名残惜しいような思いで頭を下げて、先ほどの場所に戻る。

「あるってか?」
先ほどの作業されている方が、戻ってきた私に気づいて声をかけてくれる。
更に、木材置き場の横の道の奥に小屋があるので、その前にでも車をとめておくように指示してくださる。
口調は荒っぽいが、やはり温かい。

木材置き場の横の道を進むと小さな橋があって、その奥に朽ちた小屋がある。
そこに車をとめて歩き出すが、橋の上から見ると、確かに水は流れていない。
道を少し戻って、斜め上に上っていく未舗装の林道に入る。
すぐに右下に朱色の鳥居が見えてくる。



鳥居の先には同じく朱色の橋が架かっていて、対岸に社殿というか祠が二つある。
神社名は判らなかったが、帰りに先ほどの橋を見たら「妙見橋」と書かれていたので、妙見さんなのだろう。

このすぐ奥は砂防ダムがあって、その上流は雑草に覆われた広い場所になっている。
しかも谷はコンクリートで護岸されているし、相変わらず水も無く、およそ滝などありそうにない。
お婆さんの話を聞かずに来ていたなら引き返していただろう。
暫くつまらない景色が続くものの、あちこちにゴーラがあって、南紀らしいなと思う。
ゴーラとは丸太をくり貫いて作った野生のミツバチの巣箱で、蜜の採集を目的に、林道沿いの林縁などに設置され、南紀ではよく見かけるものである。
やがて谷が二手に分かれるところで林道が尽きる。
ここにきてやっと水音が聞こえるようになる。ここより下流は完全に伏流しているのだろう。
右手の谷の奥へと続く踏み跡があるのでそちらに進むが、あまり人は来ないらしく、羊歯に覆われている。
水辺を進むようになるとすぐに取水場所がある。やっと谷間を行く気分ではあるけれど、それでも滝のあるような気配は無い。
が、そこから僅かな距離で、まさに豹変といった感じで地形は変化する。



両岸ともなだらかな斜面だったのに、前方には岩が立ち塞がり、流れの奥は洞窟のようにさえ見える。



岩に囲まれた空間は大した距離ではないものの、この空間は充分感嘆に値する。
以前に紹介した、古座川源流にある植魚の滝のある空間にはさすがに及ばないが、ここは地元の人しか知らない、ほぼ無名の滝である。



ドン谷の滝は殆ど人に知られていないと書いた。
でもここは、全くと言っていいほど人に知られていない。
しかも険しいわけでなく簡単に行けるのだから、もう驚くほかない。



岩ばかりの空間で緑は少ない。
閉鎖的な薄暗い場所のせいでもあるが、見上げた先の緑がまぶしく感じられる。



とはいえ、少ないながらも羊歯の緑が滝を彩っていて、こちらは目に優しい緑だ。





















羊歯と滝の取り合わせは、とても柔らかい印象。



だが、何より目を引くのは、やはり岩の表情だろう。






美しいというか艶かしいというか、とにかく見入ってしまう造形だ。










見所はここだけで、渓流の美しさや楽しさは無いが、八草の滝に行かれる方は、ぜひ立ち寄られるといいと思う。
もっと知られてほしいような、でも秘密にしておきたいような、そんな滝である。
尚、今回の日置川周辺の滝巡りに当たっては、「和歌山 南紀から」というブログを参考にさせてもらいました。
厚くお礼申し上げます。


2万5千分1地形図 富田
撮影日時 101022 11時10分~12時30分

駐車場 谷の入り口付近
地図


日置川周辺の滝巡り 2

2010年11月02日 | 滝・渓谷
和歌山県西牟婁郡白浜町城


ドン谷、八草の滝を見た後は、日置川を少し上流に進み、支流の城川沿いの道に入る。
城という集落の手前、道の広くなっているところで車中泊をする。
時刻は18時くらいだったが、通る車も無く夜更けのような雰囲気だ。
そんな中、たった1台だけ、城に向かってバスが通っていった。
城が終点なのだろう、暫くで折り返してきて、今度は日置川方面に走っていく。
真っ暗な谷間の細い道に、バスの車内だけが煌々とした明かりに浮かび上がり、何だかちょっと「となりのトトロ」に登場する猫バスを連想してしまった。
何となくいい夢が見られそうな気がして、そのまま眠りに落ちる。

翌朝は、というか3時過ぎには目が覚める。
時間を潰してから薄暗い中を城の神社に参拝した後、地図にも名称が載っている滝ノ谷に入る。



入り口は谷沿いに林道が伸びているように思ったがすぐに行き止まり。
探せば踏み跡くらいはありそうだけど、面倒なので足を濡らしながら河原を歩く。



地形図からも想像出来るように穏やかな谷だ。
ただ、滝の谷という名称からすると、どこかに滝がある筈という予想も立つ。
尤も、ちゃんと滝があることは事前に確認済みなのだけど。



左岸が大きく伐採されている場所に出る。
比較的明るい場所にはアケボノソウがたくさん咲いていた。
花弁にある緑色の斑点がなんとも爽やかな印象を与える花だが、例によって私の持っているレンズではアップで撮れない。






伐採地の先からは谷間が狭まり、少し岩も目立ってくる。
振り返れば水面が綺麗だ。



概ねこういった風景が続くので、単調といえば単調だけど、心地よいといえば心地よくもある。



また岩が目立つようになってきた。



昨日のドン谷や八草の滝とは岩の表情も違うようで、水の色も少し違って感じられる。



やがて低い壁が立って、ちょっと廊下状になる。
雰囲気的に滝が出てきそうな感じだ。



予想通り、この谷初めての滝が現れる。
この滝が谷名の由来なのかも知れないが、落差は4メートルほどで、あまり立派なものでもない。
さて、周りを見回すが道らしい道は無い。
少し引き返せば簡単に斜面を登って滝の上へ巻くことが出来るだろうけど面倒だ。
滝の右側から岩に取り付き、水飛沫を浴びて登る。
傾斜も緩く、手がかりの多い岩なので簡単だったが、水飛沫を浴びてダイレクトに滝登りをするのは十数年ぶりのことで、妙に清々しい気分。



滝上は再び穏やかになる。
倒木が多く、流れを跨ぐように横たわる木には、苔だけでなく、いろんな植物が芽吹く。
左にあるマツカゼソウは問題ないが、右に密集している杉の苗は、大きく育つことは出来ないだろう。






穏やかな流れが続く。
ここは増水すればもっと美しい風景になりそうな気もする。
こんな風に、静かに森を行く気分も捨て難いけれど。



また少し岩が出てきたなと感じる頃、不意に前方の両岸が高みを増して廊下を形成する。






足許の水の色も、美しさを増したように感じる。






廊下の奥には小さいながらも滝が懸かっている。
手前にある倒木が邪魔なので除けようとしたのだが、力が足りず断念。
写真を撮る際、無いものを加える───例えば花を持ってきて置くだとか、水面に葉っぱを浮かべるとかいう行為は、私の中では禁止事項である。
逆に、取り除くという行為の場合、ゴミは当然OKで、枯葉や落ちている枝、倒木までは構わない、ということにしている。



閉鎖的な空間ではあるが、危険箇所も無く、ワクワクするような気分で滝へ向かう。



滝の前へ。
落差2メートルほどで、滝というには小さいが、岩の表情は特徴的だし、周囲の雰囲気もなかなかのものだ。
浅いながらも滝壺もあるし、その水色が美しいのもいい。















この上にもまだ小さな滝はあるらしいのだが、この滝を登るのも面倒だし、この後、他にまだ行きたい場所もある。
ここを堪能し、引き返すことにする。

さて帰り道、険しい谷ではなかったけれど、最初に登った滝はちょっと問題になる。
登りはいいけど下りは危ないかも知れない。
というわけで、滝上で周囲を見渡すと、左岸の山腹へと伸びていく踏み跡を見つけた。
あまり人は歩いていない様子で、恐らくは動物達が歩く機会の方が多いだろう。
こういう道で気になるのはダニである。
なるべく木の葉や羊歯に触れないように歩いていたのだが、ふと気づけば左手の袖口にダニが4匹。
今まで見たことのあるダニより大きめのヤツで、そんなのが4匹も固まって付いているのを見ると、鳥肌が立ちそうになる。
慌てて指で弾き、やはり水際を歩いた方がいいということで、急斜面を下って流れの傍へ。
全身を点検し、他にダニがいないのを確認。ドッと疲れが出る。
自然が好きなのに、ダニがこんなに苦手ではイカンなぁ、と思いつつ、重くなった足で駐車場所へと戻った。


2万5千分1地形図 市鹿野
撮影日時 101022 6時20分~8時50分

駐車場 滝ノ谷入り口から北側へ少し行ったところで道がやや広くなっている。
地図