地形図にも「不動滝」の名称が記されているが、不動滝という名は全国各地にあるので、通常は地名を冠して「若杉不動滝」と呼んでいるようである。尚、若杉は「わかす」と読むらしい。
近くには兵庫県の滝を代表するような天滝があるのだが、あまり有名なところは惹かれないし、それはまた次の機会に譲るとして、今回は鳥取の帰り道に、この若杉不動滝に寄ってみることにした。
落差は12メートルほど。有名な天滝は100メートル近くあるらしいから比較にならない。
けれど、この滝が湛える雰囲気には捨て難いものがあって、滝とは落差ではないのだなと、改めて感じさせられる。
国道から徒歩数分、遊歩道も整備されているし、容易に行ける。
秘境や深山幽谷とは違うものの、滝そのものからは幽玄な気配が感じられて、気軽に訪れることの出来る滝としては、なかなか得難い佇まいを持っていると思う。
国道脇に車を止め、橋の袂の階段を降りると流れに沿った遊歩道だ。
東屋などもあり、あまり惹かれる風景でもないが、流れは僅かに青みを帯び、清冽な印象。
すぐに不動滝が見えてくる。
岩壁に囲まれて、滝音はごうごうと反響している。
滝の右手前にはヤマアジサイの花。
湿った岩肌には、イワタバコとウワバミソウの葉。渓谷には定番の植物だ。
滝の手前には橋が架けられているので、靴を濡らさずとも滝の正面に行ける。
深く抉られた岩盤の奥に、激しい水流が白い帯を描いて神秘的だ。
空は狭くて閉塞感もあるが、それがまた心地よかったりする。
滝の右手から見たとき、岩壁は最も迫力を持って迫ってくる。
水勢によって抉られている様子もよく判る。
そして岩の表情と、青みを帯びた水の美しさ。
橋を渡って、滝の左手から見上げる。
今度は正面から。
この滝の上流がどんな場所なのか気になるところだが、地形図を見る限り平流のようで、林道も通じており、これといった見所は無さそうだ。
水田記号すらあるので、見た目には美しい流れでも飲用には出来ないだろう。
色んな角度、色んな表情が見られて撮影の楽しい滝だ。
もう一度、雰囲気に浸ってから車に戻ることにする。
国道までの短い道のり、見上げれば、サワグルミが豊かな緑で空を覆っていた。
2万5千分1地形図 戸倉峠
撮影日時 100701 6時~7時
駐車場 案内板(橋の西側)付近と橋の東側の路肩が少し広くなっている。
地図