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神社のある風景

山里の神社を中心に、歴史や建築等からの観点ではなく、風景という視点で巡ります。

竹野神社

2019年08月30日 | 京都府

京都府京丹後市丹後町宮


屏風岩から内陸へ入って昼食を摂り、また海の方へ戻ってきて竹野神社に立ち寄る。
竹野神社は、丹後に行く度に寄ろうと思いつつ、今回が初めての参拝となった。
丹後屈指の古社で、式内大社でもある。
道路を挟んで神社の反対側には、丹後古代の里資料館というのがあって、駐車場もあったが閑散としていた。



この時点では、まだ天気が良かった。
この後で立岩の撮影に行ったわけだが、順序を逆にすれば良かった。



丹後の神社としては参道は長い方で、私が寄りたかった理由の一つである。
小さく浅い西向きの谷間にあって、地形的にも惹かれる要素がある。
季節や時間を選べば、斜め前からの理想的な光に出逢える筈だ。
式内大社であるとかは二の次なのだが、それでも風格というものはあるし、木々の表情もいい。


こういう門があるのも好きな様式である。



門の周囲にはモミジが多く、秋に訪れるのも良さそうだ。



社殿周りは陽射しが強いが、これも季節が違えば、気持ちの良い陽だまりになるだろう。



鈴緒が門にあるというのは、あまり記憶に無い。



これは、拝殿になるのだろうか?



本殿は、写真では判りづらいが結構な大きさがある。
私の知人で、ここに立ち寄ったことのある人がいるのだが、「ボロい」と表現していた。
侘び寂を解さないとそういう感想になるのかと愕然とした。
ボロいどころか、私が訪ねる神社の中では立派な方なのだが…。



本殿と、その向こうは摂社の斎宮神社。
どちらも檜皮葺である。



門から参道を振り返る。



やはり木々の表情がいい。
清浄な空気が湛えられていて、居心地のいいところだった。
狛犬の傷みが目立ったが、安易に真新しい物にしてほしくはないし…。


撮影日時 190814 14時15分~14時40分
地図


八王子恵美須神社

2016年06月11日 | 京都府

京都府木津川市鹿背山


木津川市鹿背山の民家から離れた山中に、どうしてこんなところに? といった感じで神社記号がある。
山中といっても標高100メートルほどではあるけれど、浅い山だけに、民家から離れているのが興味を引く。
三十八神社から見れば、山を越えた反対側にあって、山を迂回すれば結構な遠回りになる。
山越えすれば距離を短縮できそうだが、地形図には観音寺峠という地名が記載されているものの、峠越えの道は記されていない。
ところがyahooやgoogleの地図を見てみると、峠を越える狭い車道のようなものが記されている。
ネットで調べてみると、車はともかく、人が歩くぶんには問題無さそうな道があるようだ。

三十八神社から少し北に移動して、民家の間の狭い道を西に進む。
民家が尽きるところから山道のようになり、暗い樹林の中を進むと小さな池が現れる。
どうもおかしいと思い、スマホで現在地を確認すると、明らかにコースから外れている。
一旦、民家のあるところまで戻る。
民家の裏手の塀に沿うように道があって、こちらが峠への道らしいが、入り口付近は下草が生えていて、あまり歩く人はいないようだ。



暫く進むと下草は消えて、こんな感じの道になる。
とても車が通れる道ではないし、かといって地形図に記載されないのも困る、といった程度の道だ。



途中、前日の雨のせいか、ぬかるんでいるところもあるが、道ははっきりしている。
ただ、山歩きに慣れている人なら何でもない道だけれど、神社めぐりだけをする人なら、ちょっと不安を覚えるかも知れない。



峠付近は軽トラなら通れそうな道になる。



峠の先も同じような感じで、緩い坂道を下っていけば農道のような雰囲気になり、すぐに鹿背山の集落に入る。
集落内は特に見るべきものは無いけれど、のんびりと歩いていける。



集落内を600メートルほど歩いたところから、右手の山へと入っていく狭い車道を進む。
途中、道が大岩を避けるようにカーブするところがあって、曲がりきって岩の反対側を見ると、磨崖仏が彫られていた。
回復地蔵磨崖仏と呼ばれているものらしい。



道端に咲くノアザミにバッタが乗っかっていた。



何してはるん? という感じで覗き込むと、少し警戒するように身じろぎするが、居心地がいいのか花の上に留まったままだ。
顔の正面に花粉を付けているから、受粉の役割も担っているのかも知れない。



低い峠を越えて、浅い谷間に下りたところに神社がある。
思いのほか立派な鳥居が立っているし、神社前は駐車場として小さな広場になっていて、山中の神社のイメージは無い。
この日、訪ねた神社は4社で、ここが4社めになるわけだが、奥深さという点においては最もそれを感じさせない。



よく手入れされている、と言うよりは、よく整備されているといった感がある。






境内は小石が敷き詰められ、拝殿も小綺麗なものだ。



本殿も立派なもので、今回の神社巡りでは、唯一、奈良を感じさせないものだった。



何となく物足りないような気もするが、やはり民家から遠く離れた場所にあるので、一人の空間は満喫できる。
それに、周囲の地形はなかなかに興味深く、近くに住んでいたなら探検気分で歩き回ってみたくなるところだ。

ここからは、加茂駅よりも木津駅の方が近いので、そちらに向かって歩く。
やや退屈な道のりではあるが、時折お邸と呼べるような古い大きな民家があったりして、やはり歴史ある地域なのだなぁ、と見入ったりした。


撮影日時 160517 14時40分~15時(神社のみ)
地図


三十八神社

2016年06月03日 | 京都府

京都府木津川市加茂町観音寺


白鬚神社からは集落に戻り、北西へ向かう道を進む。
偶然にも、これから向かう神社への道のりは、途中まで大仏鉄道遺構めぐりコースと重なっているようだ。



集落を抜けるとすぐに長閑な風景が広がる。
山城は竹林の多いところで、道路横に竹林があったりするが、薄暗いイメージのある竹林とは違って、ここは随分と明るい竹林だ。






ひっそりとした竹林が好きだけれど、これはこれで面白い。



やがて三叉路があって、右への道を見ると大仏鉄道の遺構があった。
観音寺橋台と呼ばれるもので、奥に見えているのは現役の関西本線の橋台である。
大仏鉄道は1907年廃止ということらしいから、今から100年以上前の遺構ということになるが、まだまだ使えそうな堅牢な造りだ。



橋台の向こうの風景に少し惹かれたので進んでみる。






平凡だけど、いいなぁと思える風景。



三叉路のところに戻る。



線路に沿う道の方も、いいなぁと思える風景が広がる。



左に道が分かれて竹藪の中に入っていく。
大仏鉄道の跡を辿るならこちらに進むらしく、私自身、進みたい衝動に駆られる。



衝動を断ち切って右の道を進む。



JRの踏切を渡って、観音寺の集落が近づいてきた。
というか、ここに至るまで神社と関係ない写真ばかりなのはどうなのか、と思いつつ、楽しい道中だったので。



集落から山の手へ入っていく狭い車道を進むと、突然といった感じで石段が現れる。
ずっと伸びやかで長閑な風景の中を歩いてきたから、大袈裟に言えば、いきなり深山に入り込んだような気分になる。



実際、天気や時間帯によっては、深山の気配を漂わせそうな気がする。



地形図にも記載されている、それなりに長い石段を上っていく。
地図に直線の長い石段記号のある場所は、大抵コンクリートの階段で、周囲が開けて味気ないところが多いものだが、ここは味わい深い。



石段を上りきればすぐに社殿という形態じゃないのもいい。



平坦な道が続いて奥深い。
鳥居が見えてきた。



電柱が邪魔だが、鳥居もいい雰囲気の中に立っている。
もっといい光線状態のときに訪れたかった。






鳥居の先にも、もう少し参道が続く。



二手に分かれるが、上の本殿前の広場で繋がっている。



左の参道から広場に出たところ。



こちらは右から。
本殿方向以外の三方に、似たような形状の建物が建っていて広場を囲んでいる。






本殿はやはり朱塗りで、所々色褪せてはいても綺麗に保たれている。



本殿右の境内社。



更にその奥に朱の鳥居が立っている。
この先には何も無いようだし、鳥居の下に台のようなものもあるから、遥拝所か何かだろうか。
ここも照葉樹林が豊かだ。

掲載した写真の半分ほどが神社以外のものになった。
道中の寛げるような風景が気に入ったためでもあるが、撮影条件さえ良ければ、この神社だけでこのくらいの枚数は掲載したと思う。
奥深い参道と鳥居の佇まいは、もっともっといい風景になる筈で、心奪われるような瞬間が想像出来るだけに、自分の力量不足を痛感。


撮影日時 160517 13時~13時45分(神社のみ)
地図


白鬚神社

2016年05月27日 | 京都府

京都府木津川市加茂町高田


春日若宮神社からは、やや広い道に出て南へ向かう。
田畑と丘陵が広がる風景の中とはいえ、それなりに車や住宅の多い、ちょっと退屈な道だ。
天気も良くて、歩いていると少し汗ばむ陽気になってきた。
更に車の多い道と合流するが、そこからすぐに集落内の狭い道に入る。
これから向かう神社は過去に車で訪ねようとしたことがあって、そのときは神社への道がかなり狭そうだったし、集落内に駐車できそうな場所が無かったことから立ち寄っていない。
集落に入って少し進むとお寺があり、何組かのハイカーの姿を見かける。
近くに登るような山は無いし、歴史ハイク的なものかな、と思うが、「大仏鉄道遺構めぐり」という立て札を見かけたから、それ目的の人達かも知れない。
大仏鉄道の存在は知っていたけれど、具体的にどこを通っていたかは知らなかったので、今回の神社めぐりでコースが重なるとは思っていなかった。
私は鉄道も好きだし、廃校や廃線といったものにも惹かれる性質なので、ちょっと立て札に従って道を辿ってみたくなる。



神社は集落の北の外れにある。
民家が途切れるとこんな風景になる。
なんでもない風景だが、私が子供の頃に遊びまわった環境に似ていて、どこか懐かしいような気分になる。
尤も、私が幼少期に暮らしたのは城陽市で、ここからさほど遠くはない。



神社が近づくと木々は深くなって雰囲気が変わる。
コントラストが強く、木々の下は斑模様になるので、カメラのコントラスト設定を下げて撮る。
付近は丘陵の上で、集落からは平坦なままここまで来られるが、山地でもないのに豊かな木々に包まれている。
実際、航空写真でこの辺りを見ると、常緑広葉樹の緑がべったりと張り付くように覆っていて、こんな穏やかな地形でよくぞ残っているものだと感心する。






建物をくぐりながら、本殿方向を見る。






振り返って鳥居方向を。



この建物、割拝殿のようでもあり、



絵馬殿のようでもあり、



舞台のようでもある。
まあ色々な用途を兼ねているのだろうし、よくは判らないけれど見ていて楽しいものだ。



本殿はやっぱり奈良を思わせるもの。



本殿前から振り返る。
参道と言うほどのものでもないし、さして広い境内でもないけれど、飛び石とクマザサ、羊歯のシシガシラや、鳥居とくぐる建物などが調和して、思いのほか素敵な場所だ。






ここの狛犬さんは、珍しく涎掛けを着けている。
お地蔵さんの涎掛けは、子供との繋がりもあって理由があるわけであるが、狛犬に関してはたぶん無いだろう。
是非はともかく、大事にされているからであろうし、どこか茶目っ気があるようにも見える。



本殿左から。






本殿右から。
ここも、春日若宮神社ほどではないが、綺麗に保たれている。
定期的に塗り替えられているのだろう。



本殿周囲は緑がいっぱいだ。






斜面ではないのに、木々が奥へと続く環境はあまり見られないもので、森を思わせる。



神社横に続く小道を少し辿ってみた。
暫くで森のような雰囲気は尽きるが、神社も含めて、とても素敵な環境と雰囲気が保たれており、居心地の良さを満喫した。
ただ、先ほど見かけたハイカー達は、お寺には立ち寄っていたのに、ここには来る様子が無さそうだ。
お陰で静かな環境に浸れるのはいいのだが、神社好きとしては、何でだろうなぁ、と思わないでもない。


撮影日時 160517 11時20分~12時10分
地図


春日若宮神社

2016年05月20日 | 京都府

京都府木津川市加茂町里口薬井


久しぶりに、山城南部を訪ねることにした。
この地域は、車で移動していた時にはあまり行く気になれない地域であった。
行き帰りで渋滞に巻き込まれる可能性が高いことと、神社周辺の生活道路が狭く、駐車場所にも困りそうだったからだ。
奈良と京都の間ということもあって、古くから開けた地域でもあるから、田舎というわけでもなければ都会でもない。
古い民家の立ち並ぶ集落を縫うような、車社会に対応してない狭い道路の先に神社があったりする。
山里の鄙びた風景を好むことからしても、少し違う、という印象もあった。
だが、鉄道と徒歩で神社巡りをするようになって、好みというか視点がちょっと変わった。
狭い道が入り組むところは、寧ろ楽しそうに見えるし、どの道を辿ろうかと思案するのも面白い。
車だと、最短経路、若しくは最も走りやすそうなルートを選んでいたが、徒歩だと探索の趣が深まってくる。
そうなってくると、少し敬遠気味だった山城南部も魅力的な地域に思えてくる。
尤も、六所神社、高神社、松尾神社、朱智神社、天神神社など、かつてここでも掲載した神社は、とても惹かれる風景に出逢えた場所でもあり、もともと魅力的な地域ではあったのだが。


関西本線の加茂駅で下車する。
大阪に直通する快速電車が出ているので、駅前に高層マンションが建っていたりするが、駅から少し離れると古い家並の続く静かな町になる。
天気予報は快晴で、家を出るときにも快晴だったが、加茂駅を降りたときにはどんより曇っており、気温も肌寒いほどだった。
これから向かう春日若宮神社は、計画を立てた当初は立ち寄るつもりは無かった。
いくら都市部ではないといっても加茂町の中心部にかなり近く、地図をぱっと見ただけでは目を引かれない。
だが、詳細な地図を見ると参道は長く、航空写真を見れば杜は深い。



駅から500メートルほどで狭い道に入り、更に100メートルも進めば左手に鳥居が現れる。
これは帰りに撮ったもので晴れているが、着いたときにはまだ曇っていた。



鳥居をくぐれば桜などが植わった参道。
これも帰りに撮ったもので、コントラストが強くて困った。
往きに撮っておくべきだったが、先が暗くなっており、杜が深まることが判ると思う。



ここからは撮った順番で。
雰囲気が一気に変わり、木々に覆われた素敵な参道になる。
正面に見える紅い社殿は境内社である。



山城地域の神社は照葉樹が多く、ここも照葉樹の濃密な香りが漂ってくる。
ただ、モミジも結構あって、紅葉時にはさぞかし映えるのではないかと思う。



境内社の手前で左に90度折れた方向に本殿がある。



本殿が見えると、ああ、奈良の文化圏だな、と感じる。
京都府南部は京都市よりも奈良市に近いし、この辺りの神社を訪ねれば、京都というより奈良にいるような気分になる。



それはともかく、美しい佇まいだ。



本殿を囲むように、湧き上がるような勢いを見せる緑も見事。



民家から近く、時おり電車の音も聞こえてくるが、落ち着いた心地のよい空間。



参道の手摺も朱色に塗られていたし、ここの手摺もそうだ。
多くの人にとってはどうでもいいことかも知れないが、写真を撮る者としてはありがたい。



春日造の本殿。







建て替えられて間が無いのか、塗り直されたばかりなのか、とにかく汚れ一つ無く鮮やか。



本殿を囲う塀も真っ白だ。
普通なら、こういう状態は違和感があったり、風景から浮いてしまったりするものだが、ここでは何故かそれが無い。



晴れて青空が広がりだした。



雰囲気が変わって、写真も撮りにくくなってきた。



コントラストが強く、これから向かう神社の写真がちゃんと撮れるかどうか…。



とはいえ、晴れた空は心地よく、陽の光を浴びた緑も気持ちいいもので、歩く足取りは軽くなる。


撮影日時 160517 10時~11時
地図


大枝稲荷神社

2015年09月08日 | 京都府

京都府京都市西京区大枝東長町


八月上旬に、ちょっと体調を崩した。
猛暑でもあったし、外出を控えていたのだが、下旬になって暑さにも翳りが見え始め、体調も良くなってきたから、さあそろそろ出掛けようかとモチベーションが上がった途端、休日は雨ばかりになった。
そんな日は地図を見て、次に行くべき神社を探す。
とりあえずハードな行程は避けて、近場で良さそうなところを探してみると、意外と都市近くに良さそうな場所が見つかる。
行きたくてウズウズする。

やっと晴れの予報が休日に出た。
早朝の電車に乗るつもりが、通勤ラッシュの時間帯になってしまったが、車窓を流れる景色を見ているだけで楽しい。
高槻で新快速を降りて普通電車に乗り換える。
京都府に入ると、西山から雨上がりの水蒸気が湧き上がり、曇り空から時おり日が射して、撮影には良さそうな天気に嬉しくなる。
これから向かう神社は京都市西京区にある。
京都市の神社は今までに何度か掲載しているが、どれも山間部のものだ。
今回は初めて都市部にある神社だけれど、いわゆる洛西と呼ばれる地域で、タケノコでよく知られている場所でもある。
目的の神社付近には広大な竹林もあって、神社だけでなく、竹林の風景も楽しみな場所だ。

桂川駅で下車する。
山は離れているし、辺りは完全に市街地で、これまでの神社巡りに無い状況だから、何だか変な感じがする。
車の多い道を、テクテク西に向かって進む。
最初は平坦な道だが、だんだんと上り勾配が強くなっていく。
高校生が自転車で私を追い越していくが、毎朝こんな道を自転車で通うのは大変だろうなと思う。
さぞかし脚に筋肉がついてムキムキになるのでは、なんて思っているときに追い越していった女生徒の脚は、まあ普通でした。

幹線道路から外れて、丘陵へと入る狭い道に進む。 
民家が途切れると直ぐに竹林の中だ。



こんな感じの滅多に車の通らない道を、のんびりと歩く。
帰りも同じルートの予定なので、竹林の撮影は帰りにするつもりだが、それはともかく蚊が多い。
のんびり歩くなどと言ってられないくらいの数で纏わり付いてくる。



丘陵を越えて、再び市街地に出る手前に神社がある。
いかにも稲荷神社らしい朱の鳥居が連続して迎えてくれる。



周囲は竹林だが、境内は鎮守の杜といった樹相で、それなりに豊かな木々で覆われている。
植生が変われば蚊は減るかも、という淡い期待は、この時点で打ち砕かれた。



蚊に悩まされつつも、美しさに息を呑む。
奥の方が鳥居が新しく、更に光が当たっているので色鮮やかに浮かび上がる。



いざなわれるかのように、ゆっくりと進む。









昨夜までの雨の余韻が鳥居に残っている。
さして暗いわけでもなく、寧ろ朝の爽やかな空気が周囲を取り巻いているのだが、やはり朱のトンネルはどこか妖しいような気配を湛えていて、私などはそれを美しいと感じる。






拝殿越しに本殿。
朱の鳥居の連なりとは裏腹に、拝殿、本殿は質素なもの。






本殿の周囲は参道よりもやや明るい。
質素であると同時に温かみのようなものも感じる。
これはこれで魅力的だし、寛げる空間でもある───なんて言ってられないくらい、実際のところは蚊の攻撃を受け続けていて、これはもう辛抱堪らんと、スマホで地図を見て、すぐ近所にコンビニがあることを確認する。
そこで虫除けスプレーを買うことにして、一時退避する。

実のところ、私は今まで屋外用の虫除け剤の類は使用したことが無い。
一般的な人より山や神社に行って虫に遭遇する機会も多いのだが、これまでは何とか遣り過ごせてきた。
蚊の多さなら、亀岡の走田神社もここに匹敵した。
だが、何かが違う。
基本的に虫は殺さないので、皮膚にとまった蚊に「ふーっ」と息を吹きかけて追っ払ったりするのだが、ここの蚊は、それでもしがみ付いて離れないヤツが数割いる。
しかも腫れが大きい。
腕は既にボコボコになっているし、顔も、このままでは帰りの電車で恥ずかしくなるくらい腫れそうだ。
というわけでコンビニに駆け込んだ次第。



虫除けスプレーを肌の露出部にかけて撮影を再開する。
纏わり付く蚊の数は圧倒的に減ったが、それでも喰らい付いて来る猛者がいる。



本殿付近の雰囲気もいいのだけど、やはり鳥居の連なりに惹かれる。



陽が射したり翳ったりで、撮影する分にはどちらの表情も撮れて有難い。



大木というほどのものは無いけれど、木々の表情もいい感じ。



神社の向かいにはテニスコートがあって、やや騒がしくなってくる。
車の音は常に聞こえてくるし、やはり山里の神社とは違った雰囲気だが、それでも素敵な空間を満喫できた。



さて、帰り道は竹林を満喫することにする。



タケノコの産地だけあって荒れた雰囲気は無く、竹林独特の風情がある。









もちろん観光地の嵐山の竹林ほど手入れされているわけでも無いが、竹で作られた様々な垣も見られて楽しい。



爽やかなような陰鬱なような、適当な言葉が見つからない不思議な魅力がある。



竹林内でよく見かけた大きなキノコ。






植生としては単調で、キノコもこれ以外は少ししか見かけないのだけど、竹林というのは一つの世界を創り上げているのだなぁ、なんて思ったりする。



竹林の出口まではあと僅か。
また市街地を歩かねばならないが、往きよりは元気になっている気がする。


撮影日時 150904 8時半~10時半
地図


三輪神社

2014年05月02日 | 京都府

京都市左京区花脊別所町


前回の岡安神社と掲載順序が逆になったけれど、ここも桜の写真を撮りに行った際に立ち寄った、岡安神社の前に訪れた場所。
美山町から佐々里峠を越えて京都市左京区側に入ったのは、実はこの神社に寄ることが目的で、暖かくなったらぜひ行こうと決めていた。
この神社の所在地である花脊という地名も、京都で育ち、雪や花が好きだった私には、心惹かれて焦がれるような響きに感じられる。
京都市に住んでらっしゃる方ならご存知の方も多いと思うが、花脊はかつてスキー場があったところで、私はいつも京都新聞に載っていたスキー場だよりで積雪深を確認して、その白い風景を夢想していた。
昨今は雪も少なくなったとはいえ、真冬に行くにはノーマルタイヤでは不安なので、今回はちょうどいい機会だった。

この神社を教えてくださったのは、ここと相互リンクしていただいている「アタの雑記」さんで、昨年の12月のこと。
私は今まで何社かの三輪神社に行っているが、相性というものがあるのかどうか判らないけれど、どういうわけかとても居心地がいい場合が多いので、三輪神社と聞くと期待が膨らむ。
アタさんのところで掲載されていたその風景も、心惹かれるものがあったので、暖かくなるのを待っていた。

佐々里峠から桂川沿いに下ってきた道を逸れ、別所川に沿う道を遡る。
国道ではあるが狭い道で、離合困難な部分も多い。
神社前に駐車スペースが無いのは判っているので、事前にgoogleマップの航空写真で確認していた道路の広くなっている場所に駐車して歩き出す。
神社入り口から700メートルほど北側である。
ただ、地図には日吉神社と記載されている。
車道は緩やかな上り坂で、既に桜の撮影で歩き回っていたので、運動不足の身としてはしんどい。
やがて道路に面して石灯籠と木製の鳥居が現れるが、どうやっても目障りな建物が写真に入り込んでしまうので撮影せずに参道に入る。
参道横は休耕田なのだろうか、枯れススキの揺れる明るい道であるものの、相変わらず空気は濁っているかのようで、空の色も冴えないままだ。
 


明るい参道を150メートルほど進むと、今までの風景とは一変して暗い杉林の中へと入っていく。
二の鳥居と杉の大木が、結界感を意識させる。



振り返るとこんな感じ。



二の鳥居。
既に居心地の良さを確信、というか実感している。



どういうわけか、濁っているように感じられた空気が、進むにつれ澄んでいくように思える。
森の中は春霞や黄砂といったものの影響を受けにくいのか、それとも神域だからだろうか。



拝殿と狛犬、そして右後ろに御神木。



この御神木の存在感はかなりのもの。
背後には同じような社殿が二つ並んでいて、左が日吉神社、右が金峰神社であるらしい。



金峰神社。



日吉神社。
googleマップに日吉神社と記載されていたのは間違いというわけではないようだ。
では三輪神社は? というと・・・



この二社に挟まれた中央に拝所がある。
三輪神社は本殿を持たないのが普通なので、こういう様式となる。



拝所の背後には二本の杉の大木が聳え、御神木ほど大きくはないものの、何やら特別な存在感を放っている。
ああ、三輪神社だ、と思える風景。



それにしても、太陽の場所さえ定かではない空だったのに、木漏れ日が降り注いでいるかのように空気は綺麗で、写真もクリアに写る。



ふと、せせらぎが聞こえてくるので、日吉神社の左奥に進んでいくと、山からの清水が流れており、手が洗えるようになっていた。
その場に座って、ぼーっと春の暖かさに浸る。



あちこちに点々と咲くミヤマカタバミも、春を清楚に彩る。



帰りに、拝殿越しに狛犬さんを見て、



名残惜しくゆっくりと参道を戻る。
予想以上の居心地の良さを満喫したけれど、外に出れば相変わらずの濁った空が広がっていた。

最後に、この神社を教えてくださったアタさん、ありがとうございました。


撮影日時 140416 10時50分~11時50分
地図


岡安神社

2014年04月25日 | 京都府

京都府南丹市日吉町四ツ谷


前回、桜の撮影の途中で立ち寄った神社。
京北から峠を越え、園部に向かう府道19号線を走っていると、少し離れたところに、桜に囲まれた朱の鳥居が見えた。
何度も通っている道なので、この神社の存在は知っていたけれど、今まで参拝しないままだった。
ちょうどいい機会なので、府道の広くなっているところに駐車して歩き出す。
神社まで徒歩5分。



遠目からだと桜に囲まれているように見えたのに、神社前まで来てみるとそうでもない。
見る距離と角度によって上手く桜と重なるのだろうが、ちょっと残念。
民家も近く、この写真も背後の民家の壁に接するような感じで撮影しているので、あまり落ち着けない。



この時期、まだ緑は少なく、やや殺風景な感はあるが、社殿からは端正な気配。



近づけば、その印象はより強くなる。



本殿も同様で、本殿狛犬も凛々しい。
背後の斜面が伐採されているのが残念だけど、倒木などで本殿に被害がでないようにするためだろうか。






彫刻も華美ではないが精緻で、光線状態は悪かったのに、なかなかにいい陰翳を描いてくれた。



周囲は民家が近く、目障りな物を避けて撮るのが難しい。
なんとか桜と社殿を絡めて撮りたかったのだが、無難に桜を多く画面に入れるなら、この構図しか見つからなかった・・・。



駐車場所と神社の間から見える小学校の木造体育館。
地図で学校名を調べてみると、どの地図を見ても載っていない。
学校があること自体はずっと以前から知っていたのだが、いつの間にか廃校になっていたらしい。
桜には華やかさや賑わいがあるが、同時に寂しさのようなものも感じさせる。
学校にも同じようなものを感じる。


撮影日時 140416 12時50分~13時10分
地図


富家稲荷神社

2013年06月07日 | 京都府

京都府亀岡市宮前町宮川


前回掲載した宮川神社に行ったときになど、車からこの富家稲荷神社を垣間見ることが何度かあったのだが、車を停められそうにも無かったのでいつも素通りしていた。
地図やネットの情報から小さな神社であることは判っていたし、さして気に留めていなかったのだけど、意外と鬱蒼とした気配を湛えているので、通り過ぎるときは後ろ髪を引かれる思いがする場所だった。
この辺りの道は大体憶えているから、普段あまり地図を見ることが無い。
ところが、改めて地図を見てみると宮川神社から思っていた以上に近いので、それなら宮川神社に行ったついでに、そこから徒歩で富家稲荷神社まで行ってみようという気になった。

宮川神社に参拝した後、車とは違うルートで稲荷神社に向かう。
途中、民家の飼い犬に吠えられたりしながら7分ほどで神社前に辿り着く。
こんなに近いのなら、もっと早くに来ておけばよかった。
それというのも───



鳥居が真新しくなっていた・・・。
ネットで見た画像では、木製で朱塗りの朽ちかけた鳥居で、それが味わい深く思えたのだが・・・。



鬱蒼とした、という印象ほど木々が深いわけではないようだ。
所在地の地形の関係で、日当たりが悪いせいもあってそんな印象を受けたのだろう。
ただ、明治の創建という比較的新しい神社でありながら、豊かな緑に包まれた気持ちの良い空間が出迎えてくれる。



手水舎の向こうに古い鳥居が・・・。



拝殿越しに本殿。
拝殿と本殿が水平じゃないので、本殿に合わせて写真を撮ると拝殿が傾いてしまう・・・。



思っていた以上に立派な社殿に、思っていた以上に居心地のいい境内。






日当たりが悪いと書いたけれど、木漏れ日が降り注ぎ、風も渡って陰気な印象は無い。



彫刻にも惹かれる。












社殿の壁には、木々が影絵を描いていた。



本殿右手には、稲荷神社らしく朱の鳥居が連続している。






日が翳ると、新緑の中で朱の鳥居は妖しいほどに引き立つ。






光に緑が輝いていても、また違った美しさがある。

鳥居をくぐって上っていけば境内社があるものと思っていたが、それらしいものが見当たらない。
ただ、埋まりかけた大きな穴のようなものがあった。



拝殿方向を振り返る。



本殿左手にも朱の鳥居が見えるのでそちらにも行ってみる。
道はジグザグに斜面を上っていき、こちらもすぐに行き止まりで境内社は見当たらない。
小さな石柱と、そしてこちらにも斜面に穴が開いていて、やや奥行きのあるものだった。
狐穴、というものだろうか。


撮影日時 20130517 7時20分~8時20分
地形図
道路地図
駐車場 なし
 


玉依神社

2013年01月04日 | 京都府

京都府亀岡市東別院町湯谷


初詣は殆どの人にとって何か一つのイベントのようになっているけれど、普段から割と普通に神社を訪れている私としては、ただ単にその年の最初に行った神社というだけで、特に気合を入れるわけでもなければ、いつもと違ったことをするわけでもない。
今回、訪れたこの玉依神社も、いつも通りに山里の良さそうな神社を訪ねただけである。
正月三日の参拝ではあるものの、二時間以上の滞在で誰一人出会わなかった。
小さな集落の地元の人達は、当然、一日に済ましているだろうし、それが終わればあとは余所から人が来ることは滅多にないだろうから、きっと二日だろうと三日だろうと元日以外はいつもと一緒なのだろう。
ただ、正月飾りはあったから、普段とは違う装いではあるようだ。

玉依神社のある湯谷集落は標高400mほどの高地にあって、亀岡でも最も山深い場所の一つ。
大阪府境のすぐ近くだが、大阪方面はもちろん、亀岡市街に出るのも不便なところだ。
当然、凍結が心配なので、注意しながら運転。
集落内は狭く駐車スペースも無さそうなので、集落に入る手前の道路が広くなっているところに駐車。
風が冷たく寒い。気温はマイナス1度ほど。



集落に入ると冬の田畑の風景が広がる。
棚田と言われればそうなのだが、整備されて棚田の情緒は無くなっている。
空は快晴で月も見えている。
神社のある位置と向きを考えると、この陽射しではコントラストが強くて写真にならないかも知れない。






神社までは10分ほど歩かねばならないが、歩いたおかげでこういった道端での出逢いがある。



青空は綺麗だけど、これは杜に入れば光と影の斑模様に違いない・・・。



案の定、どうやってもまともな写真が撮れない。
この日、朝は快晴だったが午後からは天気予報通りに曇りだった。
というわけで、この日は午後にもう一度ここを訪ね、朝に撮れなかったところを撮り直した。
この鳥居もそうで、以後、朝と昼の写真が入り混じってます。






氷が張るほど寒くても、苔の緑は鮮やかだ。



深くていい参道ではあるが、竹林がかなり荒れているのが残念。
雑然とした印象になってしまう。



振り返れば───って、光線状態が違いすぎて違和感が拭えないし説明もし辛いけど、逆光の場合はまだ何とか写真になる。



カーブした参道を上って行くと石灯籠が見えてくる。



この石段の先には空間が広がっている気配があって、何か期待させられるところだ。






石段を上り切れば、広場とその先の高みに本殿の覆屋が見える。
ここの広がりと、高みへと続く石段、杉の大木、それらが作り上げる気配には、歩みを止めて浸ってしまうものがある。



右下隅に服の袖が写り込んでしまった・・・。









苔も豊かなので、梅雨明け頃にもう一度来てみたい。



とにかく居心地の良い空間。



さて、本殿に向かうが、石段の手前に何かある。



よく判らないけれど、反対側にまわってみると、光の加減か妙に印象的な構造物に見える。



いい。



なんか凄くいい。
えらく気に入ってしまった。



何だか神秘的なオブジェに見えてきた。
この神社を紹介しているサイトはあるし、他にも神社の写真を撮りに来た人はいるだろうけれど、こんな必死にここにレンズを向けたのは僕だけだろうなぁ、なんて考えると可笑しくなってきた。



石段の途中から見下ろせば、広場で光と緑が戯れているようだ。



日が翳っていれば、また違った何かの息遣いのようなものが湛えられている。






石段もまた様々な表情を見せてくれて楽しい。



拝殿は無く、石段の先にはいきなり本殿覆屋がある。



ここまで来て「ん?」と思う。
正面に「学業成就」の文字が見えるではないか。
今日はちょうどそっち方面のお願いもするつもりだったので、何だか迎えてもらえたような気分になる。



では、ご利益がありますよう。



本殿はなかなか立派なもので、きっちり手入れ修繕がなされているようだ。



本殿背後には磐座と思われる大きな岩がある。 


最後に本殿前から振り返って。


撮影日時 130103  9時10分~10時40分  13時~13時50分
駐車場 本文に書いた場所が無難。
地形図
道路地図