神社のある風景

山里の神社を中心に、歴史や建築等からの観点ではなく、風景という視点で巡ります。

小代神社

2013年07月26日 | 兵庫県


兵庫県美方郡香美町小代区秋岡


今回の但馬行きでは新温泉町の神社に6社訪れ4社掲載した。
最初の久谷八幡神社が一番の目的で、それ以外は流動的な計画ではあったけれど、今回掲載する香美町の小代神社は可能な限り寄ろうと思っていた。
この小代神社を知ったのも随分と前のことで、巨木を紹介するサイトであったと思う。
ここも久谷八幡神社と同じく、神社紹介サイトよりも巨木紹介サイトで取り上げられることが多いようだ。

五十鈴神社を後にして香美町に向かう。
素直に国道を使えばいいのに、つい山越えの道を使ったりしたのでえらく時間を食ってしまう。
現地近くでgoogleの地図を見ると、小代神社の名前が八代神社になっていることに気付く。
やっぱり国土地理院の地形図でないと信用できないな、と思うが、地形図に神社名が記載されているわけではない。
小代神社は山の上の方にあって、車道がそこまで通じている。
その分岐点と思しき場所には「秋岡稲荷」の看板が立っているのみで小代神社の名前は無い。
ちょっと不安になったので、散歩をされていた地元の方に、「小代神社はこの先ですか」と訊ねて確認を取る。
神社までの道は悪路を予想していたが、意外と走りやすい道で、難なく神社前に到着。



駐車場所は広場になっていて、そこから境内の方を見れば大木が聳える様子も窺えるのだが、思いのほか明るい。
鳥居付近も鬱蒼とした雰囲気は無い。



右手に何か建物があり、その傍にトチの大木がある。






なかなか見事なトチノキで、背後には杉の巨木もあって、やはり木々の豊かな場所であるようだ。



天気が良くなったせいもあるだろうが、木々は適度な間隔で立っているので、本殿周りも暗さは無い。






ただ、思っていたほどの巨木は無いし、奥深さのようなものにも物足りなさを感じる。
だが、思っていた以上に居心地はいい。



左手には池があって、モリアオガエルの卵塊がいくつか見られた。
写真にも何個か写っている。



拝殿と本殿覆屋。



本殿の左奥に鳥居が見える。



大木が林立していい雰囲気だ。
霧がかかった時などに見れば、とても幻想的だろう。
これが看板にあった「秋岡稲荷」の鳥居のようだ。



鳥居横の木が、とても良い表情をしている。






露出した根を覆う苔も見事。






杉の大木の間には、鮮やかな稲荷社。









塗り直されてから、それほど歳月を経ていないのだろう。
麓での看板が「秋岡稲荷」だったことからしても、地元の人からの崇敬が篤いことが窺える。






とある神社サイトでは、「朱の鳥居が並び」と書かれていたが、何故か鳥居は無く、鳥居の柱が立てられていた場所はドクダミの植木鉢のようになっていた。



稲荷社の前から杜の様子。
と、右下に何やら建物が見える。



少し草に覆われた石段を降りると、境内社らしき建物と鐘楼があった。



鐘楼に鐘は無い。
写真では判りにくいが、落書きのようなものが見えたので読んでみる。
字は滲んだりしているので読み間違いがあるかも知れないが、次のように書かれていた。
「大東亜戦争に出征した 梵鐘のめいふく お祈りします」 
・・・恐らくは個人が書いたものであるから、落書きといえば落書きであるが、単なる落書きではない。
当時、あらゆる金属の供出が行われたことは知っている。
だが、「ただの金属」ばかり、というわけでは無かったのだろう。
改めて調べてみると、当時の金属類回収令によって、全国の鐘の九割以上が失われたという。
地元の人にとっては誇りや親しみのあるものだったに違いなく、鐘が擬人化された表現からも、そのことが窺える。



鐘楼の近くから本殿を見上げる。
何となくではあるけれど、ちょっと玉置神社を彷彿とさせるものがある。
山の上にあって大木が多い、鐘楼があって神仏混淆の名残が見られる、といったことがそう思わせるのだろう。



ここから参道のような道が続いている。
反対側を見れば通行止めになっているのだが、恐らくは車道ができるまでの旧参道なのだと思う。


 


旧参道らしき道は、ドクダミや苔に覆われつつある。
先に進んでみると、鳥居の手前に出た。



周辺の緑が美しかったので、その杜の風景を。











雪の多い地域であるからか、その分、緑は柔らかく豊かに思えた。


撮影日時 20130627 14時10分~15時30分
地形図
道路地図
駐車場 あり                                                                       


五十鈴神社

2013年07月19日 | 兵庫県

兵庫県美方郡新温泉町用土


熊野神社の参拝を終え、当初の目的であった五十鈴神社に徒歩で向かう。
地形図には川沿いの堤防の道しか描かれていないが、田園の真ん中を進む未舗装の農道を進む。
というか、移動中はスマートフォンのグーグルマップを見て行動しているので、それにはこの道がちゃんと表示されているし気にならなかったが、どの地図よりも正確だと信頼している地形図が負けているのは困る。
更に、地形図では岸田川に架かる橋から神社まで一直線に繋がる道が記されていて、水田の真ん中に参道が続いている風景を想像させるのだが、実際にはこんな道は無く、これもグーグルマップが正しかった。
まあこれは地形図が間違っているというよりは、更新頻度が低いために道路の情報が古い、ということなのだろうが・・・。



田圃の向こうに鳥居が見えてくる。
鳥居へと一直線に続く道が無いのは残念だが、豊かな稲の緑の先に見る鳥居もいいものだ。



いったん鳥居の正面を通り過ぎて右折、更に突き当たりでまた右折する形で神社前へ。
熊野神社から7、8分といったところか。



神社の手前辺りから、一センチ前後の小さなカエルが無数に足許で逃げ惑う。
踏まないように歩くのに苦労する。
鳥居の手前に電気柵があるので、プラスチックのグリップ部分を掴んで外す。
鳥居の奥に本殿覆屋が見えているが、これまた一直線に向かう道はなく、右、左、左と曲がって進まねばならない。



鳥居と光を浴びる蕗と、ドクダミ、その他いろいろ。



もう雨が降ることもなく、陽射しが強くなってきた。



神社を外から見たときに、いちばん目立っていた木。


 


本殿覆屋。



本殿前から振り返る。



覆屋の扉は開けられるようになっていたので、本殿を見せてもらうことにする。
扁額には「礼川神明」と書かれているように見える。



ふと頭上からの気配を感じて視線を上げると、このお方と目がばっちり合ってしまった。
というか、知人のS君と顔がそっくりだったので微笑んでしまう。



神社の外に出れば、緑の色はもう夏の装いになっていた。


撮影日時 20130627 11時40分~12時10分
地形図
道路地図
駐車場 砂利道や狭い道を厭わないなら神社前に駐車可                                                                             


熊野神社

2013年07月12日 | 兵庫県

兵庫県美方郡新温泉町今岡


浜坂で日本海に注ぐ岸田川に沿って県道を南下していくと、用土というところで対岸に五十鈴神社がある。
立ち寄ってみようと思ったのだが、対岸に渡る橋が思いのほか狭そうなので、更に南下して金屋方面への道に入り、南側から神社に向かうことにする。
このルートだと途中に熊野神社があって、その前を通ることになるのだけど、集落のすぐそばにあるので特に興味を惹かれない。
まあ前を通るときに様子を見て、車が停められそうで雰囲気が良さそうなら立ち寄ろう、程度の軽い気持ちで殆ど意識していなかった。
左折して金屋方面への県道に入る。
岸田川を渡り、すぐにまた左折して熊谷川の橋を渡ると集落内の狭い道になる。
これがまた思いのほか狭い道で、果たして五十鈴神社まで行けるのか、どこかでUターンすべきでは、と頭の中で慌しく考えを巡らせていると、右手に熊野神社の鳥居が見えた。
参道横は民家があるものの、鳥居の奥に数本の杉の大木が連なっているのが見えた。
寄りたい! と思った。
だが道は狭く車を停めるスペースなど無いし、熊野神社を過ぎたところで道は未舗装の農道に変わっていたので、もう迷わずUターンすることにした。
県道に戻り、熊谷川の上流側に少し進んで道路の広くなっているところに駐車。
熊野神社まで徒歩4分ほどのところ。



再び、さっき車の中から見た風景を目にして胸が高鳴る。



前回の三柱神社から、この熊野神社に来るまでに、実は二社の神社に寄っているのだが、今に至るまで時おり小雨が降る天気が続いている。
ただ、運がいいのか悪いのか、神社に着く直前に雨が止み、車を降りて神社の杜に入る頃にまた降り出すということの繰り返しだ。
そしてどこの杜も、少しの雨なら遮ってくれるくらいの豊かさがあった。



鳥居をくぐれば、まずは三本の杉が連なって迎えてくれる。
外から見たときほど大きな木には見えないけれど、その奥にも樹種はよく判らないが大木があり、他にも比較的大きな杉が聳えていて狭い境内を包んでいる。



大木の外側は竹林で、暗さや圧迫感は無く、柔らかさを感じる空間になっている。



鳥居方向を振り返る。



本殿は石垣の上で覆屋の中だ。



本殿周りも杉の大木が聳えているが、やはり暗さは無い。






覆屋の壁には、啄木鳥が開けたと思われる穴が沢山ある。



狛犬は趣のあるものではないけれど、大木を背後に背負ってなかなか勇ましい。



本殿横の素朴な石の境内社。



雨も上がって薄日が射すようになってきた。
木々と竹の緑に包まれて、心ゆくまで安らげた。
ここは参道が深いとか、本殿が立派とか、目を見張る巨木があるとか、そういった特別な要素は何も無い。
境内は狭いから、写真だってそれほど撮るべきところも無い。
それでも、こういった神社に出逢いたくて山里を巡っているんだ、という気がした。


撮影日時 130627 10時40分~11時20分
地形図
道路地図
駐車場 本文中に記載した場所                                                                                              


三柱神社

2013年07月05日 | 兵庫県

兵庫県美方郡新温泉町赤崎

 
兵庫の北西の端まで来たものの、確実に行こうと決めていたのは前回の久谷八幡神社だけで、その後のことは、はっきりとは決めていない。
半日くらい割いて日本海を撮りたいとも思っていたのだが、生憎の天気であるし、やはりどこか神社に行く方が良さそうだ。
事前に地形図を見て、ある程度は気になる神社を絞っていたので、その中から、取り敢えずは久谷八幡神社に最も近い、赤崎の神社に向かうことにする。
久谷から北西に僅か2キロほどのところである。
尤も、気になる神社とはいっても、地形図や、その他の地図情報だけの判断なので、具体的にどんな場所なのかは全く判らない。

地形図を見ると、赤崎には神社記号が一つあって、神社名は記載されていない。
YahooやGoogleの地図を見ると、地形図とは違う位置に八柱神社の名前が見える。
どうやら赤崎には二つの神社があるようで、私は地形図に記載されている方の神社に惹かれた。
ところがこの神社、地図に名前が無いだけでなく、現地でも神社名が書かれたものが見当たらなかった。
帰ってから神社検索サイトで調べると、住所が赤崎になっている神社は八柱神社と三柱神社の二社。
ということで、三柱神社として掲載。



赤崎からは、峠のトンネルを抜ければすぐ日本海なので、一応見ておく。
やはりどんよりとした空で、雨も降ったり止んだりなので海の撮影は諦めて引き返す。



神社入り口は、ちょうど集落の民家が途切れた辺りにある。



小雨が降っているが、傘を差すほどでもない。



石段の先は広場になっているらしく、建物も見えてくる。
本殿覆屋かと思い、少し落胆する。
かなり粗末な建物だし、空間構成にも惹かれない。



と思いきや、参道は右に折れ、広場の奥へと続いていた。
杉林を背景に、少し高みにある建物が本当の本殿覆屋で、今度は少し嬉しくなった。



参道を振り返る。






さして深い木々というわけではないけれど、よく神社で見かける手入れのされていない貧弱な杉林とは違って、奥行きと広がりがある。
それに、この少しずつ上っていく石段、しかも直線でなく曲がりながら、というのが好きだったりする。



趣のある石段の先には、出雲構えの狛犬。



本殿右側にある境内社。



こんな風に、目障りなものが一切画面に入らずに一対の狛犬が撮れる場所は意外と少ない。



本殿覆屋。



木々が遮ってくれる程度の雨なら、神社の風景は潤いを増して、寧ろ心地いいくらいだ。



殆ど杉林ばかりの空間だが、本殿向かい側の斜面に少しだけ、照葉樹らしき木々が残っていた。
左にある大木はスダジイだろうか。
ほんの小さな範囲なのに、ちゃんと杜の気配を湛えていた。


撮影日時 20130627 7時40分~8時30分
地形図
道路地図
駐車場 神社入り口から峠側に50メートルほど進むと少し道が広くなっている。