神社のある風景

山里の神社を中心に、歴史や建築等からの観点ではなく、風景という視点で巡ります。

桃尾の滝

2015年10月29日 | 滝・渓谷

奈良県天理市滝本町


ちょっと間が空いてしまったが、前回からの続きで桃尾の滝を。
石上神社からは200mも無く、歩いてすぐである。

最近、滝や流れの風景を見ていない。
不動小屋谷が最後だから、一年以上前のことになる。
とはいえ、電車で、となると、駅から徒歩で行けるような滝や渓谷は限られており、神社のようなわけにはいかない。
天理に桃尾の滝があるのは以前から知っていた。
当初は天理の神社をあちこち巡るつもりでいたが、やはり久しぶりに滝が撮りたい。
山の奥深くにある滝ほど惹かれはしないけど、無性に行ってみたくなった。
というわけで、今回はここがメイン。



滝の手前は広場になっていて、こんなに滝前が開けているのは三重県の飛雪の滝くらいしか思いつかない。
着いたときには陽射しが強く、滝の左側の岩ばかりが照らされて、全く写真にならなかった。
今回はブログ掲載を諦めるか、と思ったほど光線状態は悪かったが、30分ほど待つと日が翳ってきた。



見ての通り、とても宗教色の強い滝で、市街地に近いこともあって、古くから信仰の対象とされてきたようだ。



滝の手前左側には不動三尊磨崖仏がある。
鎌倉時代の作というから、7、800年は経過している筈で、そういったものは日本各地にあるのだろうが、野ざらしにされているのが不思議なような気もする。



最近は雨が降っていないので、水量はやや少なめか。



一部、黄葉が始まっている木もあった。



岩壁の裂け目にも不動明王像。



あちこちに供えられた花はどれも瑞々しいから、篤く信仰されているのだろう。



基本的には深い滝壺を持つ滝が好きだけれど、ゴツゴツした岩肌に水が弾け、濡れた岩の表情も面白い。






この角度から見た姿が一番好みだろうか。
滝手前の開放的な地形を忘れさせる、岩が迫ってくるような気配がいい。



また陽が差してきた。
虹が出るかと期待したが叶わず。
水飛沫が写し止められるほど明るくもならず、中途半端な明るさで、多彩な水の表情といったものは撮れずじまい。
滝に至るまでの流れにもいいものがあれば、と思ったが、心惹かれるような流れは無く、せっかく水の写真を撮りにきたのに、寧ろ欲求不満になってしまった。

帰りは往きと同じ道を辿る。
蟷螂を見かけて、懐かしいなぁ、なんて思ってスマホで写真を撮ったりしたが、その後、次から次へと蟷螂が現れたりした。

石上神宮への道標を見て、やっぱり立ち寄りたい衝動を堪えつつ、この近所にある豊日神社には立ち寄ることにする。
小さな神社であるし、そんなに時間を費やすことも無いだろう。



陽射しは強くて写真にはしにくいものの、鳥居前はいい雰囲気。
奥へと進むと、左に社務所らしき建物、前方の狭苦しいところに拝殿らしき建物があり、本殿はその拝殿の右手、斜面の上にあった。
石段があって、見上げた本殿は何やら工事中の様子。
取り敢えず石段を上ると、宮大工の方が本殿を修繕してらっしゃった。
本殿横に作業台のようなものを設えて、その場で木材を加工されている。
ブルーシート等もあって、写真に撮れる状況でもないが、いろいろと話をさせてもらい、楽しいひとときを過ごせた。



本殿修繕中ということと、光線状態のこともあって、撮った写真は鳥居付近の二枚のみ。
山の辺の道に接しているからか立ち寄る人も多かったが、いい雰囲気を味わえた。

ちょうどいい時間、と思って駅まで歩く。
だがどうしたことか、途中、何度か信号に引っ掛かったせいもあって、ホームへの階段を上っている途中で電車は発車してしまった。
次の電車は一時間後。
こんなことなら、石上神宮に寄ればよかった………。 


撮影日時 151015 11時20分~12時半
地図


石上神社

2015年10月17日 | 奈良県

奈良県天理市滝本町


天理市の神社に訪れるのは二回目だ。
天理市は日本で唯一、宗教団体名を市名に冠した自治体で、実際に天理市内を歩いてみれば、宗教都市といっていい雰囲気を強く感じる場所であるが、歴史のある地域でもあるから、当然、神社もたくさんある。

車で高速道路を使えば数十分で行ける天理も、電車だと三回の乗換えと一時間半ほどの時間を費やしてしまう。
天理駅からは商店街を通って、東の山の方に向かって歩き出す。
同じ方向に向かって歩く人が結構いて、長い商店街のアーケードを抜けるまで一緒だったが、左に天理教本部、右に天理大学のあるところを過ぎると、東に向かうのは私だけになった。
市街地を抜け、周囲の雰囲気が長閑になってくる辺りで、右手の方角に石上神宮があるのだが、今回は立ち寄らない。
国宝の拝殿などもあって、相当な規模と歴史を持った神社であるから気にはなるけれど、今日は午後に用事もあるので時間的余裕が無い。
因みに、石上神宮は「いそのかみ」と読み、これから訪ねる石上神社は「いしがみ」である。

国道に出て暫く進むと、左の山へと入っていく狭い車道がある。
桃尾の滝という小さな道標が立っているが、車なら見落としてしまいそうだ。
石上神社は桃尾の滝への途中にあるのでそちらに進む。



車道が明るい場所から木々の間に入っていく辺りで、右に石上神社への参道が岐れる。
直ぐに急な石段が現れて、鳥居を見上げる。



石段を上りきれば、小さな空間があって、その先に拝殿、そして本殿が見える。
もっと鬱蒼としているのかと思っていたが、意外と明るい場所で、コントラストが強くて写真が撮りにくい。



少しだけ陽射しが弱くなると、ふっ、と心地よい静けさに包まれる。



手水は右手の小さな谷川から、竹樋を使って注がれる。



拝殿から本殿。
簡素な拝殿だが、本殿も小さく質素。
でも、心惹かれる佇まいだ。



小さく愛らしい神殿狛犬もいる。



拝殿の左手から、滝への道に出られるのでそちらに進む。



本殿周りは大木と杉や雑木が入り乱れて、やや雑然としているようにも見えるが、それでいてちゃんと調和しているような、何か不思議な美しさを感じる空間だった。

車道に出て、桃尾の滝へ向かうことにする。


撮影日時 151015 11時~11時20分
地図