神社のある風景

山里の神社を中心に、歴史や建築等からの観点ではなく、風景という視点で巡ります。

熊野神社

2009年11月21日 | 福井県
福井県南条郡南越前町清水


今年の6月に越前の神社を訪ねたが、その多くは既にネット上で紹介されている、規模や知名度のあるところだったし、私自身、ここでもそれらの神社を幾つか掲載した。
それでも地図だけを頼りに、情報の見つからない神社にも何社か立ち寄った。
だが、神社の風景の良さというものは、ある程度、歴史や由緒、信仰の篤さといったものに比例するようで、つまりは情報の有無ともそれなりに合致する傾向があるように思う。
もちろん観点や感性は人それぞれではあるので一概には言えないけれど、情報の無い場所では、残念ながら惹かれる風景に殆ど出逢えなかった。
この熊野神社も情報の無い場所の一つで、境内は明るく、集落とも接していて、普段、私が探し求めているような風景とは違う。
ただ、陰翳や奥行きといったものは無いけれど、何故か居心地が良かった。
単純な視覚情報とは別のところにある、理由の曖昧な居心地の良さというものを写真で表現することは、出来ない・・・だろうなぁ・・・。



集落の入り口に鳥居。それをくぐって集落内の道に入る。
神社前にも鳥居があると思ったが見当たらない。代わりに、門のような割拝殿のような建物がある。



境内は明るい。が、そのぶん背後の緑が瑞々しく思える。



それにしてもこの建物、かなり老朽化しているようで、心なしか右に傾いているような・・・。
でも、味わいのある建物だと思うので、何とか補修して残してもらいたいものだ。
この建物の代わりに鳥居だけがある風景を想像すると、何か大事なものが欠けてしまいそうな気がする。



理由の曖昧な居心地の良さ、と上に書いたけれど、子供が駆け回っているのが似合いそうな空間、と言い換えることが出来るかも知れない。
ここには、そういう明るさがある。



拝殿に向かって左側は、緑豊かで苔も生えている。
日差しで眩しい場所が多いからこそ、この木陰も居心地がいいのだと思える。



拝殿は真新しい。
が、軽い感じは無く、時が経てばしっくり溶け込みそうな建物だ。



本殿は古いままだが、拝殿とを結ぶ廊下が途切れていた。もしかしたら修繕されるのかも知れない。


2万5千分1地形図 武生
撮影日時 090618 12時~12時20分

駐車場 あり
地図

 

白髭神社

2009年10月06日 | 福井県

福井県南条郡南越前町今庄


白髭神社といえば、近江の湖西にある湖上の鳥居を思い出すが、ここ、越前南部の日野川上流域にも白髭神社が幾つかある。
ここはそのうちの一つで、すぐ近くには新羅神社という神社もあるから、この辺りの地域は朝鮮半島からの渡来人の影響を強く受けたのだろう。
地元では、新羅神社を上宮、この白髭神社を下宮としているようであるが、そういった繋がりに無頓着で、しかも訪れた時はそんなことを知らなかった私は、こちらのみの参拝。

少し前に「雑多な写真」の記事で、写真枚数が少ないものも一つの神社の記事として掲載しようか、みたいなことを書いたけれど、ここは当初、「雑多な写真」で載せる予定だった。
というわけで、最近にしては少ない画像だが、今後、もっと少ない画像でも、このような形で載せるかもしれない。



今庄は北国街道の宿場町で、いかにもといった風情が漂う。
適当に目星を付け、狭い路地を神社に向かって歩くが、右に折れ、左に折れる道で、果たして神社に辿り着けるのか、と思い始めた頃、鳥居が見えてきた。
鳥居奥に見える参道は、一直線の石段でちょっと味気ない。



と思いきや、落葉樹の多い空間で、とても爽やかな印象。



つくづく、空間というのは木々が創り上げ、風景というものは木々が描くものだと思う。



石段を上りきると、陽射しの強い明るい空間に出る。



やや大きめの杉が数本、根元が癒着しており、御神木となっているが、大きな木はこれのみで、ちょっと乾燥気味の境内だ。



拝殿と本殿は少し離れており、二つの社殿を結ぶ廊下の中がちょっと気になる。
本殿も覆屋の中で、近づき難い状態でもあるのでわからないまま・・・。
境内右手には小さな池があって、ふと池面が揺らいでいるように見えたので覘いてみると、大袈裟でなく、その狭い池面に数千匹のオタマジャクシが蠢いていた。
これだけの数の卵が孵るということは恐らくヒキガエルなのだろうけど、十匹以上いたイモリも、さすがに食傷気味なのか、見向きもしていなかった。


2万5千分1地形図 今庄
撮影日時 090618 12時50分~13時20分

駐車場 路地が多く狭いので、かなり離れたところから歩いた。行き止まりの場所なので、軽なら鳥居前に停められるかも。
地図

 


白山神社

2009年09月23日 | 福井県

福井県勝山市平泉寺町平泉寺


全国には白山神社が二千社近くある。といっても、白山信仰であるから、白山を中心として距離の広がりとともに希薄になっていくという分布形態で、やはり石川、福井、岐阜に集中する。
この平泉寺にある白山神社は、そういった多くの白山神社の中でも白山信仰の中心的な神社の一つで、その歴史・由緒については相当なものを持っている。
このブログでは、いつも風景中心というスタンスで、歴史的背景などについて語ることは無いのだけど、さすがにこの白山神社については何か述べなければならないような気がしていた。
が、逆に、今さら私が言うべきことなど何も無いなあということに気付く。他の方々が多くのことが語られているし、俄仕込みの知識で何かを述べたところで恥をかくのがオチだろう。それに何より、そういった面を抜きにして、「風景」という観点だけで見ても、ここは感銘を受けるほどのものを有しているのだ。
それ故、今まででこのブログに掲載した神社では、奈良県の玉置神社にもっもと多くの写真を用いたと思うが、今回はそれを上回る枚数となった。
もちろん写真は多ければいいというものではないけれど、何とかこの地の雰囲気が伝わればなあと思う。



観光客用の駐車場に車を停め、歩いて直ぐに一の鳥居。
参道自体はずっと手前の麓からあるようで、杉木立の中、車道ながらも気持ちの良い道が続いている。
訪れたのは夜明け前からだが、一の鳥居は帰り際に撮ったので、不本意な光線状態に・・・。









参道は、広く、深い。
まさに森を行く道で、これだけの幅がありながら、神域の気配を湛え、清浄な空気を閉じ込めている。





二の鳥居。
鳥居の改修でもするのか、何やら資材が置かれ、その上にブルーシートがかけられていたのが残念・・・。
しかしながら、ここからの風景は暫し立ち止まってしまうものがある。



二の鳥居をくぐれば、一気に空間が開ける。
しかし、かなりの広がりを持ちつつも、苔に覆われた地面と、適度な間隔で聳える杉が、侵し難いほどの気配とともにあって、今度は立ち尽くしてしまうといった感じだ。













拝殿を望み、ゆっくりと歩み寄る。





違う角度からも拝殿を。



拝殿前から二の鳥居を振り返る。



拝殿の後ろに周りこむと石段があり、その上に本殿が見えてくる。







本殿。
補強用の鉄材が組まれているが、環境の良さもあって、美しさの感じられる佇まいだ。





本殿彫刻も美しい。









本殿と、別山社付近。
本殿と二つの境内社が一列に並び、整然としてはいても、無味乾燥的なものは一切感じさせず、苔と木々の空間に溶け込んでいる。



社域の右奥にある、三之宮への鳥居と参道。
立ち並ぶ杉の高木と、長く高みへと続く参道は、深山の気配。













三之宮への参道と、三之宮。



本殿への参道から開山社。



開山社。




開山社前から本殿方向。



開山社の近くから、境内の外へ向かう小道があったので進んでみる。
これは振り返ったもので、向こうに拝殿の屋根が見える。



森を抜けると畑のある明るい場所に出て、こんな建物があった。寺のようにも見えるが、地図には宗像神社とある。
白山神社の杜と接していて、岩の露出したところには質素な鳥居もあった。
雑草が生えて、ちょっと荒れた雰囲気。



開山社付近から、本殿への参道越しに今宮神社。



今宮神社から背後へ抜ける道があって、ちょっと進んでみると明るい田園風景になる。
反対側の宗像神社のあるほうでもそうだったが、ものすごく深い森の中にいるようでいて、すぐそばに何の変哲も無い風景があることに驚く。



これは一の鳥居と二の鳥居の間で左手にある御手洗池。



ここからも拝殿方向へ向かう参道があった。


ここには三時間半以上、滞在した。実はこれは予定通りと言ってよく、夜明け前から刻々と変化する光の状況を追っていれば、この白山神社なら、それくらいの時間は費やすだろうなぁ、と思っていた。
結局、日の出前の写真は殆どボツになってしまったが、平日の朝ということもあって、滞在した間に誰一人出逢うことなく、この空間を満喫することが出来た。


2万5千分1地形図 越前勝山
撮影日時 090617 4時半~8時10分

駐車場 あり
地図

 


日野神社

2009年08月22日 | 福井県

福井県越前市中平吹町


ちょっと前に掲載した、越前市荒谷町にある日野神社から南西に1キロほどのところにある。
日野山の西麓にあたり、日野山信仰の中心となる神社であろう。奥宮のある山頂への登拝路も、ここからのものがメインルートとなっているようで、神社の少し手前、集落の入り口付近に登山者用の駐車場があったりする。
式内社の論社の一つでもあり、それなりに規模もあって間口も広く、格式も感じられるが、どちらかというと奥行きよりも横の広がりがあって、やや明るい印象である。



日野山登山者用駐車場に車を停めさせてもらい、集落内の上り坂を進んでいくと、正面に日野神社が現れる。



一の鳥居付近から二の鳥居。



二の鳥居。



境内右手は広く、児童公園のような遊具もある。



大木もあるので、子供の遊び場としては素敵な環境だ。



拝殿。
横幅がある建物もそうだが、石段や横に広がる空間、適度な木々のせいか、堂々とした雰囲気がある。



狛犬と拝殿。
狛犬は正面からの写真を撮り忘れたけれど、ちょっと愛嬌ある体躯だ。



拝殿と本殿。
本殿は瑞垣の中だが、この辺りは品のある落ち着いた佇まい。



本殿。


2万5千分1地形図 武生
撮影日時 090618 10時~10時半

駐車場 麓に登山者用の駐車場があって、参拝目的なら利用しても構わないかと・・・
地図

 


日野神社

2009年07月26日 | 福井県

福井県越前市荒谷町


越前富士とも呼ばれる日野山の北麓に位置する。
信仰の対象となる秀麗な姿の山なのだろうが、運転中は、神社や杜を探すためにあまり遠くに視線を向けないので、その姿を見逃してしまった。
山頂には奥宮があるらしいが、山の西麓、越前市中平吹町にも同名の日野神社があって、そちらの奥宮ということらしく、こちらはちょっと地味な存在である。
近くには北陸自動車道も通っていて、境内にも車の走行音が届きそうな様子。とはいえ、北向きの谷間にある神社というのは、しっとりと落ち着いた風情を湛えていることも多いので、期待のほうが高かった。
山懐に抱かれる感覚。奥行きと、横にも広がりのある空間。そばには谷川も流れ、心地良い風も通る。
予想通り、車の走行音が耳障りではあったが、良いほうの予想も当たってくれた。
尚、谷川を少し遡ると「荒谷の滝」というのがあって、看板も立てられているが、近くて手軽である点を考慮しても、一見の価値があるとは言えず、写真も撮らなかった。



陽射しの降り注ぐ水田地帯を抜け、山際の荒谷集落最奥の民家を過ぎると、正面に石灯籠が見えてくる。
電気柵があるが、跨いで通れる高さだ。



参道に一歩入れば、しっとりとした緑の空間。
一の鳥居、二の鳥居、そして拝殿へと、緩やかな上り道が続く。



一の鳥居。
杉を主体とした杜だが、モミジも多く、緑の濃淡が美しい。



一の鳥居と二の鳥居の間は、奥行きだけでなく横への広がりもあるが、それでいて乾いた感じは無く、豊かな木々が潤いを包み込んでいる。



二の鳥居。
秋には紅葉が美しそうだ。



二の鳥居を参道右手から。
お気に入りの一枚。



参道を振り返る。





二の鳥居付近から拝殿。



何と言うか、柔らかな気配に満ちていて、とても居心地がいい。
杜の外は眩しいくらいだが、ここは木漏れ日が優しく降り注ぐ。



拝殿と本殿。
本殿は硝子張りの覆屋の中で、硝子が汚れていて中がよく見えなかった。



特に大きな木も無く、さして深い杜でもないが、とても心休まる場所で、狛犬たちも機嫌が良さそうに見えた。


2万5千分1地形図 武生
撮影日時 090618 8時45分~9時15分

駐車場 神社前にスペースあり
地図

 


須波阿須疑神社

2009年07月21日 | 福井県

福井県今立郡池田町稲荷


池田町の中心、といっても小さな町であるけれど、とにかく開けた場所にあるので、ここで掲載する神社としては異例の明るさである。
神社背後の山には福井県でも最大級の杉があるということで立ち寄ってみたのだが、いま調べてみると式内論社であった。越前まで足を伸ばしておきながら、碌に下調べもしていないのである。
須波阿須疑は「すわあづき」と読むようで、地図でも他の情報を見ても、「づ」には「須」の漢字が当てられていたが、本殿前の案内板では「」の字が用いられていた。

とある巨木サイトでは、この池田町にある巨木を見て周っている時に、他府県ナンバーだから、という理由で警官に職務質問された話が書かれていた。
嫌な予感がするなぁ、なんて思っていたら、この神社から3キロ近く西へ行った国道沿いの駐車スペースで休憩していると、パトカーがやってきて職務質問。「あまり見かけない他府県ナンバーだから」という理由だった。
ちょっと皮肉を込めて、「福井は職務質問が多いね」と返すと、「いや、田舎やし、滅多に余所から人も来ないし」などと言う。ここよりもっと田舎にしょっちゅう行っているけれど、職務質問などされることはまず無い。
お巡りさんは愛想の良い人だったし、防犯に熱心なのは結構だと思うが、やはり気分のいいものではないし、他府県民の犯罪比率が高いなんて事実も無いだろうに・・・。



駐車車両がまともに写り込んでいる画像を使うのは初めてかも知れない・・・。
それなりに車の通りかかる道路から写真を撮るときは、いつもおざなりになってしまう。



参道の中ほどに楼門。朱塗り、というよりはレンガ色で、どこかモダンな雰囲気。
左手はグラウンドのように開けており、公共施設らしき建物と、野外ステージのようなものがある。



楼門の向こうに拝殿が見えてくる。
楼門の左右には等身大以上の大きな随神像。



仰ぎ見る拝殿は大きい。
この二の鳥居辺りから、やっと木々に覆われた空間になる。



拝殿。
昭和57年までは茅葺だったらしく、出来れば当時の姿を見てみたかったものだ。
もっとも、当時の私はまだ子供だが。



拝殿内部。
正面中央が能舞台らしく、右手奥は現在は神輿殿だが楽屋として使われていたらしい。
左手奥には囲炉裏があって、厄年にあたる氏子達が大晦日の夜に参籠し、火に当たることで厄払い出来るという。
大きいだけあって、なかなか多目的な拝殿である。



拝殿前から振り返る。



拝殿の背後へと廻り、本殿を見上げる。
さすがに杜の気配も濃くなってきた。



本殿は大きな覆屋の中。
福井県内最古の神社建築だという。
それにしても、何故こんな右寄りのアングルで撮ってしまったのだろう・・・。



本殿の右手から、山道を10分ほども登ると「稲荷の大杉」と呼ばれる巨杉の前に出る。
辺りは開けていて鬱蒼とした雰囲気は無く明るいが、樹齢千数百年と言われるだけあって、その樹皮の表情は厳かで、周囲を圧倒する風格がある。
目通り10m、樹高40mと、大きさもかなりのもの。


2万5千分1地形図 稲荷
撮影日時 090617 11時~11時40分

駐車場 神社前から南へ向かう道に入ってすぐに、観光客向け?らしき駐車スペースあり。
地図

 


八幡神社

2009年07月14日 | 福井県

福井県越前市朽飯町


鯖江駅のほぼ真東6kmほどのところにある。
朽飯の集落を貫く道路の突き当たりからが社域で、山と集落との明確な境界でもある。
集落自体は山間部の印象はなく、明るく開けていて、そこから急にせり上がった山の斜面に神社がある形だ。
地形図からは特徴を見出しにくい。南向き斜面にあることから明るい神社を思わせるし、そもそも斜面上にある神社は潤いに欠けることが多い。
だが、境内の雰囲気は、そういった条件とは全く逆の、潤いに充ちた空間であった。

集落名である朽飯は「くだし」と読む。この神社の祭神は機織の神様であるらしく、
百済から渡来した織姫達により機織技術が伝えられたことに因むらしいが、一時期は、集落名を「百済氏(使)」と称していたことがあったようで、それが転じて「くだし」になった・・・のかも? と思っていたら、何だか諸説あるようで・・・。



一の鳥居は集落内にあって、これは二の鳥居。
すぐ背後には民家が連なり、平地が大きく開けているが、鳥居の先は鬱蒼とした空間で、三の鳥居が木々に溶け入りそうに立っているのが見える。



三の鳥居。



三の鳥居をくぐると、山の斜面上とは思えない空間が広がる。
斜面の地形を利用して、縦の奥行きでなく、横の広がりを持たせたようだ。
本殿は、更に一段、高い位置にあり、鳥居正面にある奥の階段、そして手前の階段どちらからでも行ける。



これは上の写真とは反対側から境内を見渡したもの。



境内から三の鳥居。
奥に見える階段は、宝物殿への道。



サツキの植え込みなどもあり、よく手入れされた空間であるが、まるで谷間のように苔も見事である。



南向き斜面にあるとは思えない。



特に、この境内右手にある境内社周りは絨毯のようで、思わず忍び足で歩いてしまう。





こういう環境の中に佇んでいると、心まで潤っていくようで、ありがたく「ぼぉー」っとさせていただく。





こちには拝殿手前の石垣の下。



拝殿。



本殿。


2万5千分1地形図 河和田
撮影日時 090618 7時20分~8時10分

駐車場 集落内の道路、民家の前を避けて邪魔にならないように。
地図

 


大瀧神社

2009年06月30日 | 福井県
福井県越前市大滝町


最近、越前にはちょっと憧れのような感情を抱いていた。
その理由の一つが、勝山市にある平泉寺白山神社の存在。そしてもう一つが、越前市にある、この大瀧神社の存在である。
白山神社の方は、苔や木々の緑が素晴らしく、ぜひとも後日に紹介したいと思うが、大瀧神社の方は、その社殿の見事さに特筆すべきものがある。
私が行く神社は山里の小さなところが多いから、立派な社殿に出逢う機会が少ないのは確かだが、そうでなくても、ここの社殿の美しさが類稀であることは間違いないであろう。
複雑にして優美なその姿は、物凄い存在感を放ちつつも、辺りの風景や山の気に見事に溶け込んでいた。



夜明け前の暗い時間帯に、駐車場を探して集落内を何周かしてしまう。
明るくなってきた頃、やっと犬の散歩をしている方に出会い、神社入り口右手の道を入ったところに駐車場があると教えていただく。
ここより手前、集落内にも鳥居があるが割愛。



もう少し山深い雰囲気かと思っていたが、思いのほか周囲は開けていた。
長方形の境内の二辺が民家と接している。



手水舎の先、すぐ左手に観音堂がある。堂内には木造十一面観音坐像があるらしいが、暗くて何も見えない状態だった。



観音堂の前から振り返る。



背後に深い緑を背負って、高みに神門がある。



すぐ後ろに民家が立ち並んでいることを忘れさせる森厳な気配だ。



そして、神門の奥に見えてくる拝殿に、胸が高鳴る。



もうこの時点で、その身に纏う陰翳の深さが窺えるというものだ。



神門から社殿。
息を呑んだ。



神門を振り返る。
境内への入り口は、西、南、東と三ヶ所あって、見えている鳥居は南側のもの。



本殿右手にある神輿殿。



神輿殿のそばから。
奥に見えるのは神楽殿で、このように廻廊で結ばれている。



廻廊の様子。



廻廊から社殿。
木が間に立つので、通常は左手から撮られることが多いようだが、私は木の間越しに見る姿に惹かれた。



素晴らしい屋根の造形美だ。



暫し見惚れる。



昨年、部分的に修繕されたとのことだが、大きな違和感も無く、丁寧に修復されたのだろうと思う。



社殿だけでなく、それを取り巻く空間も見事である。



拝殿向拝の彫刻。
緻密にして躍動感あるもの。



正面から。



さらに龍の部分をアップで。



こちらは本殿の側面。
中国の故事を題材にしたものが彫られているらしい。



真横から。



社殿全景。



重厚、華麗、優美、精緻、あらゆる表現を包含してしまう建築だ。



とても満たされた思いで、神門から外へ出る。


2万5千分1地形図 稲荷
撮影日時 090618 5時~6時45分

駐車場 あり
地図

 

青海神社

2009年05月19日 | 福井県

福井県大飯郡高浜町青


地形図を見ている段階では、この神社に対して何の関心も持たなかった。
この辺りなら、もう少し山際、あるいは海辺の方に目が行ってしまうから、特徴の無い平地の、しかも民家と思しき記号が点在する地域は、つい見過ごしてしまう。
ところが、付近の航空写真を見ているとき、意外なほど大きな緑の塊が目に付いた。
地形図では川の合流点辺りに小さな社域があるだけだろうと思えたのだが、国道27号線から川縁に至る広い範囲が社域であるらしく、思いのほか立派な神社であるようだった。
名前を調べてみると「青海神社」とある。いい名前だ。
この辺りは青の付く地名が多く、北西には秀麗な「青葉山」があるし、神社がある場所の地名はズバリ「青」である。最寄り駅は「青郷」で、これもいい駅名だ。
青海首と呼ばれる一族が、この地域の人々の祖先であることによるものだろうが、活動拠点としては新潟の方が有名らしく、そちらにも同名の青海神社があって祭神も同じである。



国道27号線に面して参道入り口がある。
交通量が多く、かなり騒がしいが、参道は大木が立ち並んでおり空気が一変する。



大木の根元ではシャガの花が盛り。



地図以外での下調べは殆どしないので、社号標を見て初めて式内社であることを知る。



拝殿は真新しい覆いで囲われていて、ちょっと風景に溶け込んでいないが、木々が豊かで気持ちの良い空間だ。



参道を振り返る。



平地の国道沿いなので、なにかと目障りなものも見えてしまうけれど、輝く緑を見ていると、ここが守られた空間であることを実感する。



夾雑物の見えない角度で。



本殿は完全に覆われており、中の様子は窺えない。



絵馬が丸い。
神社名は「あおうみ」であるが、絵馬には「せいかい」と書かれている。



本殿右手から奥へと続く道があって、鳥居の扁額は「八幡宮」となっている。



本殿のほぼ真後ろに境内社である八幡神社があるのだが、それより右手、社域の北東角近くに「仮本殿(遷座所)」と書かれた社殿がある。



更にその奥には簡素な鳥居が立っている。



社域の東を流れる川。
護岸されているものの、緑のトンネルで、水も綺麗だ。



こちらは鳥居を出て正面に見える川。
右から社域の東を流れる川が合流してきて、水質の違いが一目瞭然であるほど汚れているが、このままほぼ一直線に流れ、一キロ足らずで海へと注ぐ。
ハマダイコンの花が満開で、海が近いことを教えてくれる。


2万5千分1地形図 高浜
撮影日時 090424 12時~12時40分

駐車場 あり
地図
 


佐伎治神社

2009年05月01日 | 福井県

福井県大飯郡高浜町宮崎


JR小浜線若狭高浜駅から直線距離で300メートルほどのところにある。
高浜町の中心に近く、民家の途切れる山際にあるとはいえ町の気配が漂う場所だ。地形図にもその名は記載されており、式内社でもある。
高浜には馴染みがあって、何度もこの神社の近くを通っているのだが、山里の神社が好きな私は、いつも立ち寄らずにいた。
今回もそのつもりは無かったのに、何故か衝動的に車を駐車場に入れた。
砂利敷きの広い境内は陽射しに充ちていて、ちょっと身の置き場に困るような明るさであったが、周囲は思いのほか緑が豊かで、午後の長閑な雰囲気が漂っていた。
驚いたのは狛犬の多さで、社殿内に置かれているものと、境内社の稲荷神社にある狛狐も合わせると12対にもなる。新旧バラエティに富んでいて、それらの表情を窺うだけでも楽しい神社であった。
何より、傷みの激しいものも、廃棄されずにちゃんと現役でいることが嬉しい。



きっちりと整えられた空間は、いつも訪れている神社とは雰囲気も違い、ちょっと戸惑う。



照り返しが厳しいが、社殿の辺りには静けさのようなものも感じる。新緑も目に鮮やかだ。



拝殿が、アルミサッシのガラスで覆われているのが少し残念。
若狭地方では、何社かこういう神社を見かけた。





二の鳥居脇の狛犬。胸を反らした厳めしいタイプ。





階段を上りきった両脇には二対の狛犬。
手前のものは風化が激しく、その表情は窺えない。





本殿手前の狛犬は出雲タイプでダイナミックな造形。
この時点で、ここの狛犬の数は凄いのでは? と思えてきて、目は周囲の狛犬を追ってしまい、本殿を撮影し忘れました・・・。



本殿から左へ小道が社務所横まで続いている。途中、いくつか境内社があって、これは本殿の横にある日吉神社。この狛犬は実際の犬に近い体形をしている。
覆屋の中にも小さな狛犬がいるが、写真は割愛。





更にその手前にも、やや個性的な狛犬が一対。



その隣、御霊神社の狛犬は、現代風のものでちょっと味気ない。



のんびりと散策気分で小道を進む。
ツワブキの葉が多く、イカリソウやホウチャクソウなども咲いていた。



少し離れて廣峯神社。ここも覆屋のなかに小さな狛犬。





石灯籠のそばにも、あどけない表情の狛犬が一対。



反対側、本殿右手にある稲荷神社。



社殿背後の大木は、なかなか見事。



根元の方が細く、しかもこちらに傾いているので、迫ってくるような迫力がある。





狛狐の下に目を向けると、もはや原型を留めないほど風化した狛犬がいた。



本殿右手、稲荷神社より更に先には、妙見宮の鳥居がある。
かなり登らないといけないようなので参拝は断念し、鳥居をくぐったところから本殿方向を。



御神木。右奥に見えているのは妙見宮の鳥居。


2万5千分1地形図 高浜
撮影日時 090424 12時50分~13時半

駐車場 あり
地図