神社のある風景

山里の神社を中心に、歴史や建築等からの観点ではなく、風景という視点で巡ります。

屏風岩 暮色

2011年07月26日 | 

京都府京丹後市丹後町筆石


立岩を後にして、昼過ぎに訪れた屏風岩の駐車場に向かう。
直線距離にして1キロも離れていないのですぐである。
駐車場に着くと、夕焼けを狙うカメラマンが一人。
更に駐車場から下を見ると、昼に撮影した畑のそばに5、6人のカメラマンがいる。
どうも思っていたより夕陽の撮影場所として有名なところのようだ。
皆さん非常に高価そうな機材でシャッターチャンスを待ってらっしゃるので、壊れかけの三脚と安い一眼の私はちょっと気後れしそうになるが、コンデジの時から「何くそ」と思って撮ってきたから、今回もまあ気合いを入れてみたりする。
ただ、人と同じような写真を撮るのは面白くないので、後で昼に訪れた海辺へ降りてみようとも思う。



色はやや濃いめの設定で、しかもアンダーで撮っているからこの色。
肉眼では、まだ西日に近いような色だ。
他のカメラマンの方々を見ても、時々、試し撮りをされている程度で待機状態。



太陽を入れて更にアンダーで濃い色に。
というか、雲が邪魔で綺麗な夕陽は見られそうにない。



待機されている人たちを尻目に、私は何枚も写真を撮る。
そのうちに、水平線が輝いていることに気付く。
雲の向こう側、水平線の辺りでは直射光が降り注いでいるのだろう。






シャッターを押しているのは私だけのようで、他の人は気付いていないのか、それとも求めるものが違うのか。



やがて手前の雲も切れて、海面に橙色の帯を描く。






本格的な夕焼けはこれからなのだけど、海辺に向かうことにする。
ここで落日を待つべきでは、と少し悩みはしたが、やはり自分だけの夕暮れが見たい。



海辺までは徒歩10分ほど。
その10分の間に、海の色も空の色も大きく変わっていた。



少し離れたところに水遊びをする若い男性が二人いるのみで、カメラマンも見当たらない。



夕焼けというほどの派手さは無いけれど、これはこれでいい。



と思ったら、最後に少し、太陽が顔を出してくれた。









太陽の色よりも、水面に映る、空や雲の色に惹かれる。



空の青い部分は深みを増していく。
もうすぐ宇宙を描き出すんだな、なんてことを思う。



昼は、空と海が青さを競って対抗してるみたいだったけれど、今は空を海に優しく溶かし込んだみたいだ。



雲のせいで水平線に沈む瞬間は見られなかったが、空と海の色の変化を見ていられるだけで満足。



太陽は沈んで、橙色が薄れて青みが増していく。
夕焼けではなく、夕暮れの気配になる。



ずっと海は凪いでいたけれど、それでもやはり夕凪というべき優しい雰囲気に満ちてくる。












夕陽や夕焼けよりも、私はこの時間帯の空の方が好きだ。



反対の東側を見れば、夜の気配も迫っている。






淡くなった空の光を映し出す海面は、まるで水底から光を放っているように見える。






やがて、向こうに見える岬に光が灯り始めた。






沖合いには漁火が輝き出す。

写真を撮るにはほぼ限界なので、駐車場所に戻ることにする。
暗くなった道を、やや急ぎ足で歩いていくと、道路脇の叢から夏の虫が賑やかに歌い出す。
田圃を見渡す場所に出れば、涼しくなってきた風に乗って蛙の合唱が流れていく。
それらに耳を傾けながら、海と漁火を見る。
歩調を少し緩めて、僕は僕の好きな時間に浸ることにした。


撮影日時 110714 18時45分~19時45分 


屏風岩・立岩

2011年07月19日 | 

京都府京丹後市丹後町筆石・竹野


丹後半島の神社には行ったことが無い。
久しぶりに海の写真も撮ってみたいし、朝に家を出て丹後へと向かうことにした。
途中、瑞穂の道の駅でトイレ休憩。
トイレの中にツバメの巣があって、賑やかで和やか。
ふと思い立ってタイヤのチェックをすると(家を出るときにすべきだが)、前輪の内側がツルツル状態。
というか、ゴムの下地まで露出していた。
今日一日くらいは大丈夫だろうけれど、テンションが大いに下がる。

宮津市に入って二つの神社に立ち寄る。
そのうち一社はシイの大木などがあって雰囲気が良かったが、日差しが強くまともな写真が撮れない。
夏の日中はずっとこんな調子だろうし、神社の撮影は諦めた方がいいかも知れないと思うと、かなりモチベーションが下がる。
ただ、私の住む阪神間とは違い、嫌悪するような暑さではなく、木陰は過ごしやすかった。

と、思いきや、車のエアコンがおかしくなり、温度設定をどれだけ下げても温風が吹き出してくる。
車載の温度計では外気温は34度だが、外の空気が涼しく感じられるくらいだから車内は蒸し風呂状態で、僅かに残っていた気力が萎える。
もう神社へは寄らず、一路、海へ向かうことにした。

どういうわけかカーエアコンが機嫌を直し、車内が冷えてきた頃、目的地の一つである屏風岩に着いてしまった。
次にエンジンをかけるときにはまた機嫌を損ねているかも知れない、と思いつつ、海辺なら暑さもそんなに苦になるまいとエンジンを切る。



国道横の駐車場所から屏風岩を望む。
というか、丹後の海がこんな綺麗だとは思わなかった。



思わず「うみーっ!」と叫びたくなるが、近くに民家もあるので自重。
事前にネットで写真を見たときに、屹立する岩と対照的な長閑な田畑がすぐそばにある、というのが魅力的に思えたのだが、実際に見ると予想以上に素敵だった。



当然、田圃のそばまで行く。
断崖の上にある、ささやかな田圃から大海原を望む。



畑からも海。
思いのほか遠浅の海は、驚くほど鮮やかな青で、どこか南国の海のようですらある。



とても爽やか、に見えるのだが、実は風はそよとも吹かない。
海辺とは思えない無風状態で、容赦の無い日差しに汗びっしょりになる。



夏の海辺は、コンクリートの白い道がよく似合う。
どこまで続いているのか辿ってみたくなるものの暑さに負けて諦める。






海と葱畑と木の電柱。



この道も、どこまで続いて・・・・・・まあ来た道を帰りに撮っただけなのだが、この程度の登りがツライ。

一旦、国道に戻り、少し西側へと進む。
駐車場所のある高台から、ちょっと気になる道が見えていたからだ。



予想通りの構図が目の前に現れる。
ビニールハウスが目障りなようなアクセントのような・・・。
海へと一直線に続く道、ではなくて、ここも断崖の上なので、すぐ先で道は途切れている。



ただ、左へと続く道がある。たぶん、海岸へと続いているはずだ。
景色を見ながら、「あー、いいなぁ」という感想と、「あっちぃ、やってらんねー」という感情が交錯するけど、半ば義務感のように先に進んでみる。



急な坂道を下ると、目の前に海が見えてきた。



海岸に降り立つ。



相変わらず風は吹かず、波も琵琶湖と変わらないくらい。
でも、水は綺麗なので一人でちょっとハイになる。



こういう場所に来ると、いつもは寝そべって暫くぼーっと空を眺めるのだが、焼けたコンクリートに寝そべる勇気が出ない。
ただ、海も空も綺麗で、やはりぼーっと眺めてしまう。
ぼーっとするのは暑さのせいかも知れないけれど。






名残惜しいが、クーラーの恋しさが勝ったので車へ向かう。
危惧した通り、再びカーエアコンは機嫌を損ねていたが・・・。


取りあえずは車を出して、峰山町にある神社に行き、そこから戻ってくるような感じで立岩に寄った。
国道沿いにある駐車場はどこも有料。
国道から外れて川沿いの狭い道に入り、立岩のすぐそばまで行ってみるが、そこも有料駐車場になっていた。
料金を見ると「一日千円」となっている。
こっちは数十分だけ駐車するつもりなので、それで一日分取られてはたまらない。
よし、値段交渉して300円くらいなら駐車しよう、と思ったが、誰もいない。
それどころか地元の人と思しき車が入ってきて、無造作に車を止め、そのまま釣り道具を持ってどこかへ行ってしまった。
私も撮影道具を持って立岩へ行くことにする。



狭い砂浜のすぐ先には立岩が見えている。



屏風岩では屹立する岩と田畑が対照的だったが、ここは屹立する岩と砂浜が対照的。
ただ、想像していたよりスケールは小さかった。



それでも見事な岩であるのは確かで、周りには誰もいないし、ちょっとはしゃぎたくなる。



陽は西に傾いたものの暑さは残っている。
でも立岩の上に広がる空は、何だか秋の空みたいだ。






最初はここで夕暮れを撮ろうと思っていたのだが、太陽の方角がイマイチなのと、海の表情が乏しいので、先程の屏風岩で夕暮れを迎えようと決めた。






岩の上では、ユウスゲの黄色い花が咲き出していた。
屏風岩へと向かうことにする。


撮影日時 110714  屏風岩1320~1420   立岩 1810~1840
2万5千分1地形図 網野(屏風岩 立岩
駐車場 あり
地図 (屏風岩 立岩


舟ノ川上流 その4

2011年07月05日 | 滝・渓谷

今回が最終回。
大した距離でも無く、それほど見せ場の多い谷でも無いのに「その4」まで続けてしまったけれど、その分、この川の表情が見せられたのではないかと思う。
滝だけでなく、流れや水そのものが好きだし、ネットで調べてみても、ここに限らず滝の写真はあっても流れの風景が掲載されていることは少なく、私自身はいつも欲求不満になっていた。
だからこんな風に、自分の足で訪ねて、自分が撮った写真で紹介出来るのは嬉しくもある。

今回は来た道を引き返すだけなので新鮮味に欠けるかも知れないが、太陽が高くなって、また違った表情を見せてくれていると思う。
こうやって沢山の写真を載せて色んな表情を紹介した気になっているけれど、季節、天気、時間帯でその表情は千変万化といっていい程のものがあって、私が見て紹介出来たのは、ほんの一部、片鱗に過ぎないのだろうと思う。



名残惜しいが、滝を背にして歩き出す。
谷間は往きよりも明るく、軽快な気分にしてくれる。



しかしまあ、やはり振り返らずにはいられない。









滝も、来た時より優しげに見える。



後ろ髪を引かれる思いだったが、滝の見えないところまで来た。






直射日光が当たると滝の写真は撮りにくいが、水そのものは太陽の光の下の方が美しい。






往きでは荒々しいと感じた岩壁も、どこか穏やかだ。






谷歩きは登りより下りの方が難しい。
だから時間に余裕があるものの早めに出発したのだが、明るくなった谷間と透き通って輝く水が、不安など吹き飛ばして気持ちよく水と戯れさせてくれる。



両岸は到る所で水が滲み出し、その雫が光に弾けて流れに融けていく。



往きと同じ場所でやはり手こずりながらも、往きよりもだいぶ短い時間でアメ止滝の下まで来た。
今回、服に付いていたダニは十数匹。
往きほど取り乱したりはしないが、やはり嫌悪感は拭えず服を脱いで叩き落とす。
写真はアメ止滝下流の右岸から流れ落ちる滝だが、ここも日が当たって清冽な印象。



アメ止滝は直射日光のせいで写真にはしにくい。



が、見上げた岩峡の空は緑の帯で、閉鎖的な空間であることを忘れさせる。












岩峡から下流方向を見る。
朝とは全く違う表情だ。



朝は寒いくらいだったけれど、谷間は初夏の装いになっている。



そして水面に映す緑の美しさ。












水には、飽きることが無いなぁと、つくづく思う。



林道の橋が見えるところまで戻ってきた。
太陽の光を浴びて、濡れたズボンを乾かす。
時折、七面山方面から下山してきた登山者が橋を渡っていくが、誰も流れに目を向けないので私の存在にも気付かない。
橋を渡るときは必ず流れを見てしまう私には不思議なことで、彼等は山に来て何を見ているのかな、なんて思ったりもする。
お陰で私は人目を気にすることなく、ぼーっとヒメレンゲの花を見ながら日の光を浴びていた。


撮影日時 110525 10時40分~15時30分