三重県熊野市育生町尾川
時間的に立ち寄れるのはあと一ヶ所、というわけで、迷わずこの大森神社へ。
ここは過去にも訪れており、「雑多な写真」や「狛犬さん」の記事に掲載したことがある。
とても落ち着ける好きな場所なので、今回やっと一つの記事として紹介出来るのは嬉しい。
雨滝からは尾川川沿いの狭い県道を下り、周囲の地形が開けて集落が現れたところで県道から逸れ、右への狭い道に入る。
神社手前には公園のようなものがあって、そこに駐車。トイレもある。
神社前の風景。
右はレンゲ畑。
もう夕暮れ時で、神社の撮影をするにはぎりぎりの時間だ。
郷愁を誘うような、長閑で沁み入る風景である。
鳥居は南紀らしいもの。
深い杜というわけではないが、心地いい参道。
右手の木々がやや疎らなので、思ったほど境内は暗くない。
その疎らな木々を通して入り込む、黄昏時の淡い光が拝殿を照らす。
本殿は撮りにくいので割愛。
境内は苔生している。
潤いがあって、自然と溶け込んだ空間だが、よく手入れされた清浄な場所である。
拝殿向かって左へと続く道があって、それを辿ると川辺に出る。
水の透明度が見事で、夏の日中など、こんなところでゆっくりしたら気持ち良さそうだ。
ここは雨滝の下流に当たる。
川へと続く道から見た境内の様子。
参拝を終えて、もう一度、神社前からの風景を。
暫く出掛ける予定が無いので、次の更新まで間が開くと思います。
撮影日時 190502 18時半~18時50分
地図
三重県熊野市育生町赤倉
以前、熊野市にある雨滝を紹介したことがあるが、その記事で、この丹倉神社のことにも触れている。
訪れるのは二回目で、掲載するのは初めてになる。
二回目と言っても、前回は2008年だったから十年以上も前だ。
以前は「知る人ぞ知る」といった感じの神社であったが、最近は結構知られてきているようで、グーグルマップにクチコミも載っている。
神社前の道は狭く、かなり離れたところに駐車して歩いた記憶があるが、今は軽自動車二台分ほどの駐車スペースが設けられている。
そういった変化はあるものの、神社自体は変わらず、原始の信仰を思わせる佇まいのままだ。
車道横に立つ、白い鳥居をくぐって石段を下りる。
開けた場所に出ると、その先にある巨岩が目に入る。
社殿は無い。
が、これも神社の在り方の一つであるし、ここにはそれが相応しい。
熊野の海岸で見られるような白い石が置かれている。
南紀の神社ではよく目にする光景だ。
周りが単純な杉林なのが少し残念だが、遠い過去に想いを馳せられる場所である。
さて、ここまで来たからには雨滝にも寄っておこう。
ここも雨後のせいか、水量は普段の倍以上はありそうで、豪快な音を辺りに響かせていた。
ただ、もう夕暮れ時で薄暗くなっており、水飛沫が飛び散る様は撮れない。
足を濡らさずに対岸に渡るのは出来そうもないし、滝壺に近付くのは断念する。
と、ここでT君が足を滑らし尻餅をつく。
尻ポケットにスマホを入れていたようで、まるで弾丸でも受けたかのような放射状のヒビが背面に見事に入る。
買い替えて10日ほどだったらしく、大いに凹む。
彼はあまり写真を撮らない人だが、それでもいつも一、二枚は撮るのに撮ろうとしない。
スマホはヒビが入ったとはいえ、動作は正常だし、画面自体は割れていないから、「撮らへんの?」と聞くと、「写真を見るたびこのこと思い出しそうなんでいいっす」と言う。
何となく、連れて来た私は罪悪感を感じた。
撮影日時 190502 丹倉神社17時25分~17時40分 雨滝17時55分~18時5分
地図 丹倉神社 雨滝
三重県尾鷲市九鬼町
九鬼に初めて訪れたのは高校生の時だったと思う。
今はもう走っていないけれど、新大阪を夜に発車して、早朝の新宮に到着する普通列車を利用した。
夜通し走り続ける普通列車というのは、ちょっと不思議な感覚で、車内は独特の雰囲気であったし、外の景色は見えなくとも、夜が明ければ日常から遠い風景が広がっていた。
当時の私は、珍しい植物を探すことに夢中になっており、天然記念物に指定されている久木神社樹叢を地図で見つけ、訪ねてみたのであるが、結局、私がいちばん見つけたかった植物には出逢えなかった。
それでも、漁港に泳ぐコバルトブルーの小魚、濃密な緑を描く暖地性の木々が印象に残った。
私は南紀が大好きだと何度か書いているけれど、思えば、初めて南紀の魅力に触れたのが、この九鬼であった。
目を見張るような風景があるわけでは無く、どこにでもありそうな漁港の風景なのだが、それ以降、私は何度か九鬼に訪れている。
今回は、五度目の九鬼だ。
久木神社前には漁港の駐車場があって、確か以前は参拝者用の駐車場所が一台分確保されていたのだが、今回は見当たらない。
仕方がないので集落の入り口付近まで戻って道の広くなっているところに駐車する。
海を覗き込めば変わらずにコバルトブルーの魚が群れているし、のんびり歩くのは楽しくある。
楽しくはある。が、暑い。
暑いが、夏だ! と思える青と緑。
駆け出しはしないけれど、内心では童心に返る。
つい右側の海ばかり見てしまうが、左を見れば趣のある路地があって心躍る。
アジの干物が製作中。
いつも思うが、海辺に育ったわけでもないのに、こういう風景を見て懐かしいような気持ちになるのは何故だろう?
人けは無いが、水揚げされる早朝には賑わうのだろうか。
久木神社の鳥居が見えてきた。
南紀の神社らしい雰囲気。
海が近くても緑は深い。
初めて訪れたときは、見慣れない樹相に心ときめいたが、大人になってからは若狭などの海辺の神社で、これと近い杜を見ているので、ああ、海辺の杜だ、と思う。
気象庁のアメダスの気温を見ていても判るが、日本海側であろうと太平洋側であろうと、暖流の影響は大きく、植生に強く反映されるのが見て取れる。
二の鳥居と、潜り抜ける形態の社務所らしき建物。
そこから拝殿を見る。
コントラストが強くて写真にはしにくいが、緑深くていい神社だと思う。
拝殿は比較的新しい。
初めて訪れたときの拝殿も、いつ新しくなったのかも思い出せないが、それほど違和感は無い。
本殿を囲う瑞垣は、丁寧な造りだ。
境内は海辺の割には苔生している。
これは、何だろう?
漁港と神社を堪能したが、九鬼ではもう一ヶ所、寄りたいところがある。
漁港から背後の山の方を見ると、やや高みにそれはある。
そこを目指して路地に入る。
階段を上りきると、明治7年に開校し、平成10年に廃校となった九鬼小学校の入り口だ。
いつだったか、漁港にいるとき、学校の方から子供達の声を聞いた気がするが、それが20年以上も前のこととは信じ難い思いだ。
車道が通じていない稀有な学校でもあった。
校舎内は立ち入り禁止だが、校庭は開放されているようである。
木造校舎はペンキが塗られているし、窓枠はアルミサッシなので、やや趣に欠けるけれど、とても素敵なところだ。
校舎入り口の横には創立百周年の石碑が立っている。
校舎右の斜面には桜の木が幾つかあって、春にはさぞ美しいだろうと思う。
校庭から漁港方面を見る。
大海原が望めるわけではないが、愛おしくなる風景だ。
撮影日時 180809 12時30分~13時20分
地図
三重県熊野市飛鳥町小阪
天気は曇りだけれど、それなりに空は明るく薄日が射すこともあって、やっぱり海が見たくなってくる。
隠れ滝から三重県境まではすぐなので、このまま425号線を進んで尾鷲に出てしまいたいところだが、三年ほど前から尾鷲への道は通行止めになっている(7月1日に開通予定)。
来た道を戻り、169号線を南下、熊野市に入る。
この後の予定を考えると尾鷲まで行く余裕は無いが、尾鷲行きの計画を立てていたときから立ち寄るつもりだった飛鳥神社へは参拝する。
ここは過去二回、参拝していて、「雑多な写真」でも掲載したことがあり、いずれ一つの記事として載せたいと思っていたのだ。
が、境内の奥では小さなショベルカーが入って何か工事をしており、撮影に不向きな状況。
結果、撮った枚数は少ないし、今回も「雑多」に回すかとも思ったのだが、隠れ滝のときと同じように、二回もオマケ的扱いをするのは嫌だったので、「飛鳥神社」として記事にすることにした。
写真に不満は残るけれど…。
道路を挟んだ神社の向かい側は広場になっている。
以前はただの空き地だったと思うが、整地されて駐車場っぽくなり、公衆トイレまで出来ている。
それほど人が訪ねてくる場所でもないだろうけれど、巨木マニアの間では、それなりに知られている神社ではあるし、祭りの日などには結構な人が集まるのかも知れない。
いつもこの広場から鳥居を撮りたいと思うものの、道路が神社より高い場所を通っており、ガードレールが鳥居を横切っていて絵にならず口惜しい思いをする。
社叢全体が熊野市指定の天然記念物であるが、やはり杉の巨樹が目を引く。
参道の石畳も、杉の根で盛り上がっている。
左奥には何やら作業する人の姿が…。
実はその奥に、この杜最大の四本杉というのがあるのだが、今回は諦めることにする。
四本杉の写真は撮れずとも、ここから見る拝殿と石畳、巨杉の姿には心惹かれる。
空気がとても清澄で、神域を感じさせてくれる。
上手く説明出来ないが、南紀の神社だなぁと、しみじみ思う。
木々の表情だろうか、社殿の雰囲気だろうか、それともただの錯覚なのかは判らないけれど、南紀をこよなく愛する私としては、心の底から安らげる空間なのである。
向こうが参道で、手前の道は護国之霊碑へのもの。
そこに刻まれた数多くの名前を見て、この静かな山里から、これだけの人が出征して亡くなったのかと愕然とする。
鳥居周りの木々達。
賑やかなようでもあり、静けさのようでもあり。
また訪れよう。
撮影日時 180529 13時30分~13時50分
地図
海の写真を撮ろうと思い、頭に思い浮かんだ幾つかの候補地の中から楯ヶ崎を選んだ。
それなりに名の知られた景勝地で、数年前にその駐車場で車中泊をしたことはあったのだが、楯ヶ崎まで徒歩40分ほどもかかるということで、結局その景観には接していなかった。
また、途中には阿古師神社があって、舟か徒歩でしか辿り着けない場所でもあり、ちょっと興味もあった。
楯ヶ崎も良かったが、民家も車道も無い木々と海だけの環境にある神社は、ことのほか居心地が良く、立ち去りがたい魅力があった。
駐車場から遊歩道に入り、急な下り坂を降りる。
よく整備された道で迷う心配もなく、20分ほども歩けば阿古師神社に着く。
日差しとコントラストが強いので、神社をゆっくり撮影するのは後にして、まずは楯ヶ崎へ向かう。
途中で道が分岐するが、どちらを選んでも楯ヶ崎へ行けるようなので、取り敢えずは右の道を進む。

道中は海岸沿いとはいっても概ね樹林帯で、神社も海に面してはいても狭い入り江だった。
ここで一気に視界が開け、太平洋の大海原が眼前に開けるので、とても眩しく感じられる。
ここは千畳敷と呼ばれる場所で、灯台付近から楯ヶ崎の手前まで、なだらかな傾斜の岩場が続いている。

振り返れば、白い灯台が青空に映えていた。

海面は黒くさえ思える濃い青色だが、岩に波が砕けて光と溶け合うと、ドキッとするような鮮やかな青色が現れる。

のんびり岩場を進むと楯ヶ崎が見えてくる。
なだらかな千畳敷とは対照的に、柱状節理の岩が屹立している。
ここは伊勢と熊野のほぼ境目で、熊野大神と伊勢大神が、楯ヶ崎を眺めながら酒盛りをしたという伝説があるらしい。

風が強いわりには波は穏やかだ。
豪快な波飛沫を期待していたのだが・・・。

少し雲が広がりだし、雲間から差し込む光が海を輝かせる。
夕暮れの楯ヶ崎を撮るつもりでいるが、まだまだ時間がある。
とは言え、けっこう日は傾いたので、一旦は神社へ戻ることにする。



日が傾けば、木々も表情が豊かになる。
ヤブツバキ、カゴノキ、クスノキ、ウバメガシなど、海岸部に多い暖地性の木々たちが、独特の樹形を見せる。

鳥居前のコンクリート敷は、道ではなく船着場である。
寝転んで空を見上げ、静かな波音を聞いていると、微睡んでしまいそうなほど心地よい。

境内から鳥居方向を見れば、ここが海に面していることがよく判る。
二木島湾を挟んだ対岸には室古神社があり、こことは深い繋がりを持っていて、
神武東征軍が熊野灘で難破した際、犠牲になった神武天皇の兄である稲飯命を室古神社に、その弟の三毛入野命を阿古師神社に祀ったのが起源とされている。
対岸に目を凝らしてみたが、左手から伸びる岬が邪魔になっているらしく見えないようだ。

目の前の海は砂浜などは無いが、透明度が高く、見ているだけで楽しい。
どうも私は、滝でも海でも、その水に触れられる環境でないとダメなようで、先程の楯ヶ崎にしても、景観は優れていても気軽に海に触れられないのが気に入らない。
実際に水に触れて遊ぶわけでもないけれど、とにかく手に届く場所に水があるだけで、楽しさや居心地の良さが倍加する。

境内の木々たちを見る。
もともと暖地性の木々は動物的というか躍動的というか、動きの感じられる樹形をしたものが多いが、ここは更に特徴的で、今にも動き出しそうな気さえする。


木の間越しに本殿を見れば、海辺らしい木の表情でありながらも、どこか深い山奥のような気配。

拝殿と本殿。
クリーム色の社殿は、南紀ではよく見かけるものだ。

さて、夕焼けを狙って楯ヶ崎へと戻る。

空を見上げれば、その立体感に暫し見入ってしまう。
都会では、空の色も雲も、もっとぼんやりしていることが多くて、この空の深さには吸い込まれそうな気分だ。

千畳敷から見て楯ヶ崎は東にあるので、西からの残照に浮かび上がる景色を期待していたのだが、ただのシルエットになってしまった。

西の方を見ても、派手な夕焼けになる様子は無い。
ただ、夕暮れらしい優しさが満ちてきた。

波が穏やかなので、スローシャッターでの撮影も中途半端な感じに・・・。

夕暮れの余韻と夜の訪れ。
風が冷たくなってきたので、そろそろ来た道を引き返すことにする。
で、40分の道のりということは、当然闇夜の中を歩くことになる。
懐中電灯を持って、時おり月明かりの差し込む樹林帯を歩いていると、動物の足音が聞こえてきたりする。
狭い岬ではあっても、ちゃんと生き物たちの営みがあるのだなぁ、などと思いながら黙々と歩く。
やがて、今日、三度目の阿古師神社。

月明かりに鳥居がぼぉーっと浮かび、その奥で社殿の屋根が白く輝いている。
再び船着場に寝転んで、今度は夜空に流れる雲を暫く眺めることにした。
2万5千分1地形図 賀田
撮影日時 100326 14時半~19時20分
駐車場 あり
地図
三重県熊野市神川町柳谷
ずっと以前に、地形図でこの神社の存在を見つけてから気になっていた。
私が南紀へ行くときに使うルートから、少しだけ外れたところにあるので、ついでに寄ろうと思えば寄る機会は何度もあったし、実際、寄ろうとしたこともあった。
ネット上の地図で調べると名称が載っていて、「滝神社」とある。
地形図を見る限りでは、地形は穏やかで滝の存在など窺えないが、そのシンプルな名称から、滝があることは間違いなさそうだし、車道や民家からも距離があって、落ち着いた環境にあることも想像できる。
これだけの条件が揃っていながら今まで寄らずにいたのは、どうも「ついでに寄る」ことに抵抗があったからのようで、南紀への行き帰りにここへ立ち寄る計画は何度も流れてしまったのに、ここを中心にした南紀行きの計画を立てた途端、何やら妙に落ち着いたというか、いざなわれるような感覚になれた。
七色貯水池に沿う国道169号線から、柳谷集落への道に入る。
天気予報では午後から雨が上がる予想だったが、降り止む様子は無く、谷間の道はやや暗い。
地形図では参道が川を渡って続いているように描かれているが、実際は車道が橋を渡ったところから参道が伸びている。
車を停めると、蛙の鳴き声が響いてきた。まだ水田に水は張られていないが、春の雨なのだな、と思う。
車道には石灯籠が立っているので、参道入り口を見落とすことはない。
車道が橋を渡ったところから、コンクリートで簡易舗装された参道が、川に沿った緩やかな下り坂となって続いている。
もう一度、振り返って。
参道横は清流である。
僅かに濁っているが、雨で増水していることと上流に民家があることを思えば、かなり綺麗と言える。
流れには注連縄が渡されていて、水はこのすぐ下流で滝となって落ちている。
滝神社は柳谷川と支流の合流点近くにあって、私はその支流のほうに滝があると思っていたので、参道に入ってすぐに現れた滝に驚く。
参道から少し逸れて滝の下まで行ってみる。
滝の大きさも、思っていたよりも大きくて驚かされた。
迫力はあったが、たぶん、普段通りの水量の方が美しいだろう。
滝の上では山桜が咲いていた。
滝のすぐそばで、参道は二手に分かれる。
左の道は更に下っていき、右の道はほぼ水平に社殿のそばまで続いているようだ。
左が本来の参道のようであるが、右の道に少し入ったところにある木が気になったので近寄ってみる。
それなりに大きな木であるが、大きさよりも、その表情に目を奪われる。
苔、羊歯が樹皮を覆い尽くし、他の種類の木も生えてきている。
この一本の木で、どれだけの植物を育んでいるのだろう。まるで空へと伸びる大地だ。
左の参道へ戻り、更に下っていくと、やがて石段が見えてくる。
このまま真っ直ぐ進めば、本流に架かる朽ちかけた木橋と、支流の流れがある。
支流の方は上流に民家も無く本当の清流であるので、当初の予定では道が無くても遡ってみるつもりだったが、雨が降り続き傘を差した状態ではとても無理なので諦める。
参道を振り返る。
苔生した木々と、苔生した参道。
そして、石段を見上げる。
思いのほか山深い気配に、陶然とする。
照葉樹、もしくは植林された細い杉の多い地域だが、鳥居の先は樹相が変わり、大きな杉が天を衝く。
境内はほぼ水溜り状態。中央には御神木である巨杉。
社殿は社務所と繋がったような質素なもの。
だが、その素朴さが心地よい。
雨の降りしきる中、思索に耽る風情の狛犬。
豊かな緑の中で幸せそうでもある。
背後の緑からは、鶯が盛んに囀っている。
御神木を覆う苔。
雨ならではの雰囲気が味わえたけれど、ここはどんな天気のときでも素敵な表情を見せてくれそうな気がする。
またいつか再訪しようと思った。
2万5千分1地形図 七色貯水池
撮影日時 100325 12時~13時30分
駐車場 橋を渡って集落側にすぐのところにスペースあり。
地図
三重県南牟婁郡御浜町上市木
神社巡りを始めた頃、オレンジロードと名付けられた道を走っていて、わりと立派な鎮守の杜が見えたので立ち寄った場所である。
オレンジロードは名前の通り、ミカン畑の多いところを走っており、車の多い42号線を走るのが嫌な時など、遠回りになるが利用する。
だから何度もこの神社の横を通っているのだが、それ以後、この神社には立ち寄っていなかったので、久しぶりにお邪魔することにした。
何しろ当時の観察眼は今以上にお粗末なものだったので、いちおう写真は残っているものの、その記録は貧弱なものだし、記憶の方もかなり頼りないのである。
で、今回再訪してまだ記憶も鮮明という状態であるにも関わらず、いざ掲載する段になって、「あれ、ほんとに八幡神社だったかな?」と気になってきた。
地図に名称は載っていないし、鳥居に扁額は無かったはずだし、最初に訪れた時からずっと八幡神社だと思っていたけれど、社号標でも見たのだろうか。
見た、ような、気はする。
・・・斯様に、観察眼は養われていなかったのである。
鳥居の写真は帰りに撮ろうと思っていて忘れてしまい・・・。
境内はそれなりに大木が多いわりに、明るく開放的な空間。
初めて訪れた時の印象は、清々しい、といったものだったが、今回もそれは変わらず。
木漏れ日は優しく、風も流れて気持ちいい。
鳥居を振り返る。
門のように二本の大木が聳え、その向こうは民家と田畑の広がる長閑な風景。
残念ながら社殿背後に木々の奥行きが無いのだが、それがある意味、重苦しさを感じさせない理由かな、と思ったりもする。
シルエットになってしまっているが、社殿右手には、この神社最大と思われる木がある。
いかにも三重県といった感じの社殿。
境内左手には、表情のいい杉の大木がある。
ただ、背後には市木川を渡るオレンジロードの赤い橋が見えて目障りだけど。
狛犬はなかなかユーモラスで特徴的。
前回は、この狛犬の存在さえ目に留まってなかったのだから、いかに観察眼が無かったかが判ってもらえるかと。
というか、横から見ると完全な二頭身で、見た瞬間に思わず微笑んでしまった。
この神社は雑多な写真で載せるつもりだったけれど、この狛犬君がいたので掲載。
2万5千分1地形図 阿田和 (神社記号の表示位置が少しずれているように思う)
撮影日時 100326 10時40分~11時
駐車場 神社入り口付近に駐車可
地図
海辺の神社へは、あまり行くことがない。
海に近い神社なら過去にも取り上げたことがあるが、ここはまさに海縁である。
杜には巨木が多く、港へと張り出した枝の葉が、時には海水に浸かっていたりするくらいで、海と木の両方を堪能できる場所だ。
これだけ海に近くて、よくぞここまで杜が豊かになったものだと思わせられるし、木々の根が海水の影響を受けないのかと心配になってくる。
ここは数年前に、歳の離れた当時高校生の従兄弟と訪れたことがある。
大人と対等に会話の出来る子ではあったが、神社に興味を持っているわけではないし、ただ神社に連れて行っただけでは退屈するだろうと思い、巨木のある神社を選んでいくつか周った。
そのうちの一つがここで、その時は木々を中心に見て周ったのだが、長らく海の写真を撮っていないので、今回は海を目的に訪ねてみた。
そのため、ちょっと神社の扱いが小さいです。
夜明け前に神社前に到着。ちょっと早すぎたので、朝焼けの海を見渡せそうな場所を探すことにした。


神社から、国道を進んでトンネルを二つ抜けた辺りで撮影。
正直、朝焼けや夕焼けの写真は好きではない。
例えば、参道で写真を撮る場合、入り口方向の鳥居を撮る人もいれば、奥の拝殿を撮る人、横に聳える木を撮る人、足許の草花を撮る人と、それぞれの人が、それぞれの好みや感性で写真を撮ると思うが、朝焼けや夕焼けとなると、ほぼ全ての人が同じ方向を向き、似たような構図で写真を撮るので、面白味が無いと感じる。
ただ、実際に綺麗な空を見ていると、やっぱり心奪われて、夢中になって撮ってしまうのだけど・・・。
本当は日の出までいたかったのだが、太陽が出てしまうと神社の写真が撮りにくいので戻ることにする。


神社横の漁港。
一枚目は、私の写真には珍しく人物が写っている。

背後は民家、鳥居奥には巨木、右手には輝く海が見える。

参道と社殿は、社域の海側に偏っている。この神社最大の木は、海とは反対側にあるので、木々をもっと見たい人は、社域をぐるりと一周した方が良い。
私は今回は割愛。

鳥居の右手の空間には、ベンチなどがあって憩える場所。
陽射しの強い日中など、大木の陰から海を眺めるのは気持ち良さそうではあるが、けっこう蚊が多い。

右はスギ、左はクスノキの巨木。

参道の左手に石垣が現れ、門をくぐる。

この門をくぐったところで、異様な姿のクスノキが出迎えてくれる。
何となく動物を思わせ、人が見ていなければ動き出しそうな印象。



何となく、語りかければ返事をしてくれそうな気もする。

拝殿は簡素だ。

本殿。
さて、あとは朝の港の風景を撮ることにする。

左手が社叢で、社務所の裏側が見えている。


船のエンジン音があちこちで響き、朝の活気が伝わってくる。

やっと右手から太陽が顔を出した。
深い湾内にあるので、波は無く海面は穏やか。
海中を覗き込むと、ウニやらコバルトブルーの魚やらがいて、それだけで楽しい。

朝陽を浴びる漁港の家々。
2万5千分1地形図 賀田
撮影日時 090910 5時~6時20分
駐車場 神社前の駐車場は契約駐車場のようだ。神社の少し南側で道が広くなっているのでそこに駐車。
地図
三重県松阪市嬉野上小川町
伊勢湾に注ぐ雲出川の、その大きな支流、中村川を源流近くまで遡ると上小川町の集落に着く。
中村川最奥の集落で、どんどん山奥に入っていく気配だが、集落に辿り着けば、意外と明るく開けた場所である。
標高は約350mで、川を遡って標高が高くなったぶん周りの山が低くなり、深山の雰囲気は無い。
宇気比神社は上小川町の集落にあって、式内社である小川神社の論社となっている小さな神社だ。
松阪市のオフィシャルサイトにも小さく紹介されており、「そこは神がすむ、深山幽谷の世界」などと記述されているが、ちょっと大袈裟な表現に思える。
地理的条件としても「こんなところに式内社?」と思わないでもないけれど、ここに古くからある神社なのは確かなようで、川のせせらぎが届く、落ち着いた場所である。
道路に面して鳥居、すぐ奥に中村川を渡る橋がかかっている。
橋の先には木製の二の鳥居。
参道は左に折れ、左手に杉の大木を見ながら緩やかに登っていく。
雰囲気の良いところなので、参道先に見える現代風の建物がちょっと残念。
川面はほとんど見えないけれど、その水音が聞こえるだけで緑も空気も潤うような気がする。
拝殿。右手にこの神社最大の杉が聳える。
時間は昼過ぎだったが、遠雷が響き、夕暮れ時のような雰囲気。
凛々しい狛犬が、空気を引き締める。
本殿は流れ造で、神明造の多いこの辺りでは珍しい。
2万5千分1地形図 伊勢奥津
撮影日時 080813 12時20分~12時40分
駐車場 神社前から少し進むと道路がかなり広くなっている。
地図 神社の表示位置がかなり上流側にずれている。川を挟んでお寺の向かい辺りが正しい位置。地図を拡大すると位置表示は正しくなる。
三重県松阪市柚原町
一般的には蘭神社と呼ばれているようで、地図に記載されている名称もそのようになっている。集落から離れた山間部にありながら、国土地理院の地形図にもその名が記載されており、目を引く存在である。
そうでなくても、私は高校生の頃から蘭科植物に傾倒して野山を歩き回ったヘンな人間であるから、気になる神社であった。
好きだったのは洋蘭ではなく、日本に自生する和蘭や野生蘭と呼ばれるもので、その数およそ250種。実際に見つけたのは30種ほどで、絶滅危惧種も多く、一部を除いて見つけるのは容易でない。
蘭にゆかりがある神社だろうか、なんて期待を一瞬してしまったが、地形図にはルビが振ってあって、「あららぎ」とある。
「あららぎ」とはユリ科の「野蒜」の古名、或いはイチイ科の「一位」の別名である。イチイと聞けばブナ科の櫟=イチイガシと勘違いしそうだが全くの別種。一位の方はアイヌ語でオンコと呼ばれていたもので、こちらの名称を聞いたことのある人の方が多いのでは。
野蒜は珍しくないが、一位は深山に生える高木だ。加工し易いので装飾品や鉛筆などに使われ、庭木にもされるけれど、野蒜が古名ということと、一位がこの辺りには自生していそうにない、ということから、「あららぎ」は野蒜の方だろう、と一度は思いかけた。
が、一位が笏の材料とされる、と知って判らなくなった。というか笏を作るから一位という名称になった木なのであった。
笏とは聖徳太子や閻魔大王が持ってたりする、あの木の板だ。神官も使うし、これはもう、「あららぎ」は一位のことである、と、真実はともかく得心した次第。
柚原の集落が尽きる辺りから、狭い峠越えの横道に入る。やがて谷間の道になると、すぐに神社前に到着。
鳥居前が狭いので、正面からは撮影しにくい。
鳥居右手に2、3台駐車できるが、道路を少し進むとかなり広いスペースがある。
鳥居をくぐると橋があって、その先には連続した鳥居がある。
橋の部分の谷川は護岸されているがイワタバコがたくさん咲いていた。コンクリートの護岸に生えているのは珍しい。
参道は直角に左に曲がる。平成18年に大きな改修が行われたようで、木の鳥居はまだ新しい。
稲荷神社以外でこれだけ鳥居が連続しているのを見るのは初めてだ。
遠近感による奥行きを狙ったとは思えないが、どういうわけか奥へ進むほど鳥居は低くなっており、少し身を屈めなければならない。
参道途中、高みに社殿が望まれる。杉の巨樹が見事である。
参道を横から見る。
連続する鳥居と巨樹、その奥に凄い高さの石垣があって、面白い空間だ。
参道は再び直角に、今度は右に折れる。どうも参道の付け方が不自然な感じがする。
振り返ってみると、谷川の対岸が、ちょうど駐車場と思しき広場の位置だ。
で、対岸から見てみると、こういう風景。
どうも昔はここが神社入り口だったのでは、と考えるが・・・。
この神社で最も見事な杉。夫婦杉と呼ばれるものであるが、通常、夫婦杉と呼ばれるものは、似たような大きい杉が二本並んでいるか、或いは一本の杉の主幹が途中から二本に分かれているものが多い。ところがここのものは、その両方の特徴を併せ持っている珍しいものだ。
この杉の周りも、比較的最近に整備されたように見受けられるが、景観を損なうことなく上手く整備されているように思う。
立派な石段を上ると、もう目の前が拝殿で、写真を撮るスペースも無い。
本殿はやはり神明造。ここの木も新しい。
本殿背後の石垣にもイワタバコが群生していた。水辺以外で見るのは初めてで、かなり湿度が高いのだろう。
社殿のある境内から参道を見下ろす。
下の広場にも社殿を建てたくなるような素晴らしい空間だ。
2万5千分1地形図 大河内
撮影日時 080813 10時40分~12時
駐車場 あり
地図