神社のある風景

山里の神社を中心に、歴史や建築等からの観点ではなく、風景という視点で巡ります。

椎尾神社

2015年09月15日 | 大阪府

大阪府三島郡島本町山崎


大枝稲荷神社の次の目的地は、近隣の神社ではないので電車で移動する。
往きに下車したJRの桂川駅まで戻らず、600mほど手前の阪急洛西口駅から乗車する。
行き先は、サントリーの蒸留所で有名な山崎にある神社だから、JRで山崎駅まで行ってもいいのだが、阪急の大山崎駅で下車しても200mほど歩く距離が長くなるだけなので、差し引き400mほど短くて済む。

大阪府の神社に行くのは5年ぶりくらいだ。
そもそも、大阪府の神社に行くこと自体が珍しい。
車を手放したので市街地から遠く離れた場所は尚更行きにくくなったし、ますます大阪の神社は疎遠になるかと思ったが、歩行者の視点で地図を眺めてみれば、それはそれで良さそうな神社が見つかるものだ。

大山崎駅で降りて、サントリーの蒸留所方面に向かう。
最近は海外にもその名を広く知られるようになったからだろう、見学者らしき外国人のグループを二組ほど見かける。
それはともかく、恥ずかしながら私は、「山崎」という地名は京都府大山崎町にあるのだと思っていた。
JRの山崎駅も京都府側にある。
ところがサントリーの山崎蒸留所は府境を越えて大阪府側にある。
改めて地図を見てみると、蒸留所は大阪府島本町山崎にあり、JR山崎駅は京都府大山崎町大山崎にあるという、少しややこしいことになっていた。



JRの線路を踏切で渡ると、すぐにサントリーの蒸留所。
道路の両側にサントリーの建物が並び、まるでサントリーの敷地内に入っていく道路のように見える。
関係者や見学者でもない限り入るのをちょっと躊躇いそうになるが、地図を見れば道路の先に保育園や老人ホームがあるし、目指す神社もこの先にあるので、行き交う見学者や作業員を尻目に先へと進む。



道路が直角に右へ折れるところ、進んできた真正面に神社入り口。
一眼で撮っておけばよかった…。



こちらは二の鳥居。



JR山崎駅からは800m、阪急大山崎駅からは1キロ。
もともと天王山が近くまで迫ってきている地域でもあるし、車窓の眺めも緑が多く、京阪間としては長閑なところであるが、それでも駅から僅かな距離で、この雰囲気に接せられるのは嬉しい。



日が翳ると、緑がいっそう深くなる。
ここはヤマブキで知られているらしく、参道両側には沢山のヤマブキが植わっている。
花期の風景も見てみたいものだ。



石段も石垣も、少し苔生して味わい深い。
近くの保育園からか、子供の声が随分と賑やかに聞こえてくるが、都会の喧騒といったものは無い。



拝殿。



ミンミンゼミの声も賑やかだ。
私の住んでいるところではクマゼミばかりなので、ミンミンゼミの声を聞くと懐かしいような気分になる。
子供の頃に住んでいたところではミンミンゼミやアブラゼミが多かったからか、クマゼミでは夏の風情がいまひとつ感じられない。
境内左手には谷川が流れており、せせらぎも聞こえてくるが、護岸されて砂防ダムもあり、風景としては詰まらない。



本殿は覆屋の中で、どんな様子かはあまり見えない。



本殿前から拝殿越しに鳥居方向を見る。



拝殿右側には稲荷神社の鳥居が並ぶ。



手前の艶やかな鳥居もいいが、奥の色褪せて苔の生え出したような鳥居もいい。



境内右側のやや高いところには何やら派手な社殿があって、まるで稲荷神社のように見えるが、弁天堂とのこと。
背後の木々は、なかなか豊かだ。



ここからは、歩いてもう一社訪ねる予定だったが、どうも雲行きが怪しい。
雨雲レーダーを見ると、遠くない場所に雷雲も発生している。
それなりの距離を歩くつもりだから、途中で雨に降られても困るので、今回はここで切り上げることにする。

この日はたった二社しか参拝出来なかったが、どちらも都市近郊にあるとは思えない趣があって、とても満たされた気分になれた。

 
撮影日時 150904 11時半~12時半
地図 


大枝稲荷神社

2015年09月08日 | 京都府

京都府京都市西京区大枝東長町


八月上旬に、ちょっと体調を崩した。
猛暑でもあったし、外出を控えていたのだが、下旬になって暑さにも翳りが見え始め、体調も良くなってきたから、さあそろそろ出掛けようかとモチベーションが上がった途端、休日は雨ばかりになった。
そんな日は地図を見て、次に行くべき神社を探す。
とりあえずハードな行程は避けて、近場で良さそうなところを探してみると、意外と都市近くに良さそうな場所が見つかる。
行きたくてウズウズする。

やっと晴れの予報が休日に出た。
早朝の電車に乗るつもりが、通勤ラッシュの時間帯になってしまったが、車窓を流れる景色を見ているだけで楽しい。
高槻で新快速を降りて普通電車に乗り換える。
京都府に入ると、西山から雨上がりの水蒸気が湧き上がり、曇り空から時おり日が射して、撮影には良さそうな天気に嬉しくなる。
これから向かう神社は京都市西京区にある。
京都市の神社は今までに何度か掲載しているが、どれも山間部のものだ。
今回は初めて都市部にある神社だけれど、いわゆる洛西と呼ばれる地域で、タケノコでよく知られている場所でもある。
目的の神社付近には広大な竹林もあって、神社だけでなく、竹林の風景も楽しみな場所だ。

桂川駅で下車する。
山は離れているし、辺りは完全に市街地で、これまでの神社巡りに無い状況だから、何だか変な感じがする。
車の多い道を、テクテク西に向かって進む。
最初は平坦な道だが、だんだんと上り勾配が強くなっていく。
高校生が自転車で私を追い越していくが、毎朝こんな道を自転車で通うのは大変だろうなと思う。
さぞかし脚に筋肉がついてムキムキになるのでは、なんて思っているときに追い越していった女生徒の脚は、まあ普通でした。

幹線道路から外れて、丘陵へと入る狭い道に進む。 
民家が途切れると直ぐに竹林の中だ。



こんな感じの滅多に車の通らない道を、のんびりと歩く。
帰りも同じルートの予定なので、竹林の撮影は帰りにするつもりだが、それはともかく蚊が多い。
のんびり歩くなどと言ってられないくらいの数で纏わり付いてくる。



丘陵を越えて、再び市街地に出る手前に神社がある。
いかにも稲荷神社らしい朱の鳥居が連続して迎えてくれる。



周囲は竹林だが、境内は鎮守の杜といった樹相で、それなりに豊かな木々で覆われている。
植生が変われば蚊は減るかも、という淡い期待は、この時点で打ち砕かれた。



蚊に悩まされつつも、美しさに息を呑む。
奥の方が鳥居が新しく、更に光が当たっているので色鮮やかに浮かび上がる。



いざなわれるかのように、ゆっくりと進む。









昨夜までの雨の余韻が鳥居に残っている。
さして暗いわけでもなく、寧ろ朝の爽やかな空気が周囲を取り巻いているのだが、やはり朱のトンネルはどこか妖しいような気配を湛えていて、私などはそれを美しいと感じる。






拝殿越しに本殿。
朱の鳥居の連なりとは裏腹に、拝殿、本殿は質素なもの。






本殿の周囲は参道よりもやや明るい。
質素であると同時に温かみのようなものも感じる。
これはこれで魅力的だし、寛げる空間でもある───なんて言ってられないくらい、実際のところは蚊の攻撃を受け続けていて、これはもう辛抱堪らんと、スマホで地図を見て、すぐ近所にコンビニがあることを確認する。
そこで虫除けスプレーを買うことにして、一時退避する。

実のところ、私は今まで屋外用の虫除け剤の類は使用したことが無い。
一般的な人より山や神社に行って虫に遭遇する機会も多いのだが、これまでは何とか遣り過ごせてきた。
蚊の多さなら、亀岡の走田神社もここに匹敵した。
だが、何かが違う。
基本的に虫は殺さないので、皮膚にとまった蚊に「ふーっ」と息を吹きかけて追っ払ったりするのだが、ここの蚊は、それでもしがみ付いて離れないヤツが数割いる。
しかも腫れが大きい。
腕は既にボコボコになっているし、顔も、このままでは帰りの電車で恥ずかしくなるくらい腫れそうだ。
というわけでコンビニに駆け込んだ次第。



虫除けスプレーを肌の露出部にかけて撮影を再開する。
纏わり付く蚊の数は圧倒的に減ったが、それでも喰らい付いて来る猛者がいる。



本殿付近の雰囲気もいいのだけど、やはり鳥居の連なりに惹かれる。



陽が射したり翳ったりで、撮影する分にはどちらの表情も撮れて有難い。



大木というほどのものは無いけれど、木々の表情もいい感じ。



神社の向かいにはテニスコートがあって、やや騒がしくなってくる。
車の音は常に聞こえてくるし、やはり山里の神社とは違った雰囲気だが、それでも素敵な空間を満喫できた。



さて、帰り道は竹林を満喫することにする。



タケノコの産地だけあって荒れた雰囲気は無く、竹林独特の風情がある。









もちろん観光地の嵐山の竹林ほど手入れされているわけでも無いが、竹で作られた様々な垣も見られて楽しい。



爽やかなような陰鬱なような、適当な言葉が見つからない不思議な魅力がある。



竹林内でよく見かけた大きなキノコ。






植生としては単調で、キノコもこれ以外は少ししか見かけないのだけど、竹林というのは一つの世界を創り上げているのだなぁ、なんて思ったりする。



竹林の出口まではあと僅か。
また市街地を歩かねばならないが、往きよりは元気になっている気がする。


撮影日時 150904 8時半~10時半
地図