兵庫県篠山市初田
車に乗っていた頃は、月に一度は篠山に行っていた。
星を見るためであったり、神社を訪れるためであったり、無目的なドライブであったりと、とにかく馴染み深い場所であった。
ここ暫く疎遠になっていたので、久しぶりに篠山を訪ねてみようと思う。
電車で篠山に行くのは初めてのことで、何かと勝手が違う。
駅の跨線橋の階段が、下車客で一杯になるなんて想像もしてなかったし、駅前の風景も慣れ親しんだものとは違って、どこか知らない場所へ来たかのようだ。
気温はマイナス3度ほど。
寒いというより冷たいという感じで、田畑には霜が降りて薄っすらと白くなっている。
田松川という用水路のような川に沿って歩くが、最初は進行方向とは逆向きに流れていたのに、水門のあるところから先は、進行方向に向かって流れるヘンな川だ。
水門までは加古川水系、水門からは武庫川水系になっている。
分水嶺という言葉があるように、通常は山が水系を隔てるものだが、こういう絶妙な地形の兼ね合いで分水された場合、谷中分水界と言うらしい。
河川争奪など、地形図を見ていると数百年、数千年後には、この流れはこっちの谷に奪われているだろうな、と想像出来るところもあったりして楽しいが、ここは人為的に運河が開削された結果によるもののようだ。
これから向かう初田の八柱神社は、過去に何度か訪れたことがあって、とても好きな神社の一つである。
雪景色が似合いそうに思ったので、本当は雪の積もった時に来たかったのだが、残念ながらそう都合よくはいかなかった。
やがて、知らない場所が見知った風景になる。
初田の集落に入って、民家が途切れるところから林道に入る。
林道が左にカーブするところで神社への参道が岐れる。
ああ、と心の中で声が漏れるほど、この風景は懐かしく、何度見てもいいなぁと思える風景だ。
真っ直ぐに伸びた左の杉と右の竹。
朱の鳥居と石の鳥居。
その向こうに屹立する巨杉。
厚着をしてきたので寒くは無いが、手袋をしていないので手が悴む。
痛みを覚えつつも、暫しそれを忘れたりもする。
車で訪れている時には意識していなかったが、ここは篠山口駅から2キロ弱だ。
もっと辺鄙なところという印象を持っていたけれど、意外と身近なところに素敵な自然がある。
電車であちこち訪ねるようになってから、新たな発見が色々あって楽しい。
ここに来ると、いつも森厳という言葉が頭に浮かぶ。
とはいえ、そういった厳かな気配が写せなくて、いつも落胆するのだけれど。
石の鳥居と木の鳥居、その先に続く石段と、奥に見える本殿。
参道には杉の枯葉がたくさん落ちていて、やや雑然としているけれど、やっぱり森厳とした空気は変わりないように思う。
手入れされているとかいないとか、そんなことを抜きにして神域なのだと感じる。
本殿に近づくと、ちょっと失礼な言い方かも知れないが、旧知と再会するかのような高揚感を覚える。
本殿背後の杉林には、朝の光が射し込んでいる。
狛犬さんもお久しぶり。
本殿左手から。
右手から。
前回の再訪記事で、地元のおばさんが「存亡の危機ですわ」と神社の維持の大変さをおっしゃっていたことを書いたが、部分的に修繕はされているようだ。
余所者の無責任な言葉かも知れないが、どうかこの環境を残していただきたいと思う。
境内社。
境内社と杉林。
垣の外に出て、横から本殿を見る。
直線の杉と、曲線の屋根に見入ってしまう。
過去に二回掲載しているし似たような構図も多いかも知れないが、今までと少しは違う雰囲気が出せた…ような…気がする。
撮影日時 160226 8時半~9時10分
地図