神社のある風景

山里の神社を中心に、歴史や建築等からの観点ではなく、風景という視点で巡ります。

大谷稲荷神社

2019年03月31日 | 和歌山県

和歌山県西牟婁郡すさみ町大谷


最近はロクに下調べもせずに、行きたい場所を二、三か所決めてあとは適当に、ということが多かったが、今回はかなり綿密に計画を立てた。
行き当たりばったりだと、結局効率が悪くて数か所しか周れないことが多いし、後になってここも行けば良かった、と後悔することが度々あるからだ。
結果、十数か所の目的地と、それぞれの到着時間、出発時間まで決め、グーグルマップの航空写真やストリートビューで駐車可能な場所も確認し、道順もほぼ頭に叩き込むという、普段からは考えられない緻密な予定が出来上がった。
もっとも、計画とは予定通りにならないのが常で、数か所は見逃すことになるだろうとは思っているが、下調べをしっかりしておけば、時間が足りないときの取捨選択が容易で、後で悔やむことも減るだろう。

今回もT君と車で南紀に向かう。
前回降りた日置川インターを過ぎ、その次のすさみインターで高速を出る。
一つめの目的地は期待外れだったので掲載はせず、まずは二つめの目的地である雫の滝から。
といっても、ここもオマケ扱いで掲載しているわけだが。



雫の滝は名前とは裏腹に、けっこう豪快な滝である。
道路のすぐそばにあるとは思えないスケールで、T君も「おお」と声を上げる。
ただ、ここ暫くまとまった雨が降っていないので、水量は少なめだ。
スマホで他の方々が撮った雫の滝を見たT君が、「最初はスゲーって思ったのに、画像と比べたら水が少なくてガッカリっすわ」などと言う。
知らんがな。



滝の左手前には石が積まれ、その上に祠がある。
滝壺は広く深く、寛げる空間もあるし、夏ならば水遊びするのにいい環境だ。



水は上流に集落もあるので、やや濁りが感じられる。
それが理由というわけではないが、この滝の存在はずっと前から知っていたものの、私はあまり惹かれなかった。
実際に見てもそれは同じで、撮影もそんなに楽しくない。
出来れば一つの記事にしたかったが、最初から「ついで」のつもりで訪れたので仕方ない。

二か所ほどの目的地を実際に見てからスルーし、大谷稲荷神社に向かう。
集落内の、やや狭い道に入り、大谷会館と書かれた公民館らしき建物の向かいに駐車。
鳥居は見当たらないが、参道はその建物の横から伸びている。



素朴な石段が続いており、鳥居は無くとも参道であることはすぐ判る。



神社は小山の上にあるので、結構な長さの参道である。



急な登り一辺倒ではなく、こういうなだらかな部分もあるのがいい。



ただ、ちょっと雑然としているというか、尾根上の道で潤いに欠けるというか…。



光線の向きの影響も大きいようで、振り返って撮れば印象は変わる。



鳥居が見えてきた。



かなり傷んだ鳥居だが、所々で石畳になっており、熊野古道を思わせる。



今は人も少なくなって修繕もままならないのだろうが、大事にされていた神社なのだろうな、と思う。



登りきると小さな広場で、正面に割拝殿のような建物がある。
雨による土砂の流出があるのか、山頂部の木々の多くは、こんなふうに根を露出させていた。



拝殿から本殿を見る。



拝殿と本殿の間の狭い場所に木々があって、何か「空間」を感じさせる佇まいに惹かれる。



狛犬さん。



ゆるキャラが巷に溢れているが、昔から日本人はそういう遊び心があったのだな、と思う。
狛犬とゆるキャラを一緒にするなとお叱りを受けるかも知れないが、可愛くしたり、ユーモラスにしたりする余裕がある社会はいいものだ。



本殿覆屋。
境内社は一つのみだった。

車に戻ると地元のおばさんが話しかけてこられた。
人懐っこい方で、南紀の人らしいなと思う。
次に向かう神社のことや、七川ダムの桜の状況などを教えてもらう。
予定時間が、などと思ったりもするが、こういう会話ができるのが一番楽しいことである。


撮影日時 190329 雫の滝 9時30分~9時40分 大谷稲荷神社 10時10分~10時40分
地図 雫の滝 大谷稲荷神社


お滝さん

2019年03月18日 | 滝・渓谷

和歌山県田辺市本宮町請川 

 
継桜王子から小広峠を越えると本宮町に入る。
日置川水系から熊野川水系に入ったわけで、大層に言えば文化圏や風土といったものの境界に当たるが、分水嶺を越えても田辺市のまま、というのは、旧本宮町の頃から何度か訪れたことのある私には、未だに違和感がある。

本宮の中心地は、言わずと知れた本宮大社があり、過去に二、三度参拝したことがある。
今回はどうしようかと思ったが、参道の石段を埋める人波を見て、寄らないことにした。
世界遺産に登録される前は、チラホラであったのに、今はゾロゾロである。
代わりにというわけではないが、すぐ近くの店に入って、T君と蕎麦を食べる。
昼食を食べてから、まだ三時間ほどしか経っていないけれど、何故か二人とも食べたくなったのだ。
観光客相手の店だからと期待していなかったが、悪くなかった。

本宮の中心から、熊野川に沿って少し下った請川というところに、「お滝さん」と呼ばれる滝がある。
これは地元の人が、親しみを込めて呼ぶ際の通称あり、正式な名前が他にあるのだろう、と思ったが、どうも「お滝さん」という名前しか使われていないようだ。
素朴で微笑ましい。

国道から横道に入り、すぐのところにある広場に駐車。
が、これは失敗で、狭くなると思っていた林道は、終点まで普通車で難なく通れる良い道であった。
そこからは山道になるが、よく踏まれており、道標もある。
お滝さんは有名な滝ではないと思うし、滝の多いこの辺りでは特に目立つ存在ではないが、以前、NHKの朝の連続テレビ小説「ほんまもん」で、修行するシーンのロケ地に使われたという。
それからは、地元の人以外も少しは訪れるようになって、道標も立てられたのだろう。
道は谷川沿いではなく、登り坂で峠を越え、やや平坦な道を暫く進むと滝の手前で急坂を下る、といったルートを辿る。
運動不足の身には、前半の登りですらキツイものだったのに、帰りにはこの急坂を登らなければならないのかと思うとウンザリする。



やがて滝音が足下から届いてきて、樹間からその全容が望める。


落差はそれほど無く、姿も特に際立つものは無い。


優しい姿の平凡な滝、といった印象。


右側には岩に穴が開いていて、不動尊がある。


平凡な印象、と書いたが、滝壺は広く、部分的に深く抉られていて、夏ならば泳ぎたくなるようなところだ。


この滝壺は魅力的である。


滝の左側へと移動する。



右からも左からも近付いて撮れるのは有難い。


そして、やはり滝壺は美しい。
立派な滝壺と、滝前に寛げる空間があるというのは、写真としてはともかく、滝を楽しむという点では重要な要素だ。


だが、私がこの滝に行ってみようと思ったのは、他の要素だ。
それは、滝の右側、不動尊よりも更に右にある。


滝壺の右側には、逆擂鉢状というか、お椀の欠片を伏せたような形状の岩が、頭上を覆っている。
湛えられた滝壺の穏やかな水と、異形の岩との対比が凄まじく、私は、異空間のようだ、と思った。


で、矮小な人間との対比の意味でも、何やら物思いに耽っているようなT君を入れて撮っておく。
決して彼が矮小な人間という意味ではないです。


小屋があるのがちょっと難だが、ただならぬ気配を感じる場所だ。


超広角レンズが無いので全容が写せないのは残念。
信仰心が育まれるのが当然と思える場所だった。

もう時間はだいぶ遅いが、この近くでもう一ヶ所だけ寄ってから帰ろうと思う。
本宮大社の近くから、音無川沿いの道に入り、1.5キロほど遡ったところで駐車。
入口はちょっと判り難いが、西側から入ってくる小さな谷に小道がついているので辿ると、すぐに目的地到着。


ちちさま、或いは、乳子大師、子安弘法とも呼ばれるところで、乳房を思わせる天然の丸い石が二つ、岩から顔を出している。
お滝さんと同じく、ここも「ちちさま」という呼称が、素朴で飾り気なくていいなぁと思う。
母乳の出が悪い女性や、子育ての信仰対象になったのは当然と思える判りやすさだが、T君は、「胸というよりキン〇マに見える」と言う。


うーん…判らなくもないような…?
それはともかく、お滝さんもちちさまも、自然の妙に感心させられる場所で、熊野の自然と信仰の面白さが感じられて楽しかった。


撮影日時 190224 お滝さん 15時50分~16時30分 ちちさま 17時20分~17時30分
地図 お滝さん ちちさま


継桜王子

2019年03月09日 | 和歌山県

和歌山県田辺市中辺路町野中


久しぶりにT君と出掛けることにする。
だが、季節的に中途半端でもあるので、あまり撮りたいものが思い浮かばない。
梅の花ならそろそろ咲いていそうだし、昨年訪れた賀名生梅林にはもう一度行ってみたいが、満開にはまだ早い。
それならと、もっと南の梅林を検討するものの、南部梅林は人が多そうで、その周辺の梅林を調べてみても、惹かれる風景が見当たらない。
更に南へと範囲を広げていくと、小森梅林というのが目に入った。
地図に記載は無く、ごく僅かな記事がネットで見つかるのみ。
実際に小森梅林という名称が使われているのかどうか知らないが、旧日置川町の小森というところにある。
ということで、今回はそこを起点に、他に行きたい場所を決めていったのであるが、結局、小森梅林はオマケ扱いの記事になってしまった。

いつも阪神高速だけ使って、あとは下道で行くことが多いけれど、今回は贅沢にも田辺まで高速で行く。
その先の日置川へも無料の高速で、二時間ほどで南紀白浜を過ぎ、遥か遠いイメージの日置川には意外と早く辿り着く。
日置川インターからは日置川沿いの県道を走り、安居の集落で山への狭い道に入ると、暫くで山に囲まれた小盆地のようなところに出る。
そこが小森で、盆地を埋めるように梅の木が植わっている。



辺り一面が梅で、梅の花の香りが漂っている。
日曜にも関わらず花見客は皆無で、逆に梅林を手入れする人は多い。
狭い道では軽トラを除けてくださったり、出逢う方みんなが挨拶してくださったりと、素敵な場所で素敵な人達である。



だからオマケ扱いなどしたくはないのだが、良くも悪くも、ここは観光梅林ではなく、鑑賞向きではないのだ。
ただ見る分にはそれでもいいのだが、写真を撮るとなると、青いネットが目障りだし、パイプが通っていたりする。
この盆地を見下ろす高いところへも上ってみたが、梅林を一望できて美しいものの、写真にするには木々が邪魔であったりと、何かと欲求不満になる。



一画には、小さな牧場があって、黒毛の和牛らしきものがいた。
熊野牛というやつだろうか。
楽しくはあったが、写真的には不満の残るまま、次の目的地へ向かうことにする。

これから向かう継桜王子は結構離れており、元来た道を暫く戻って、国道311号線に入る。
ドライブイン的なところに立ち寄って昼食。
T君は熊野牛の肉うどん、私は和歌山ラーメンとめはり寿司のセットを食べる。
そこからは直ぐに国道を離れ、やや狭い道を野中へと進む。



神社の少し手前に「駐車場」と傾いた看板に書かれた場所があったのでそこに車を入れる。
参拝者、もしくは観光客用駐車場と思うのだが、そのような文字は無かったし、もしかしたら停めては駄目なところかも知れない。
かやぶきの茶屋を過ぎると神社入口が見えてくる。
付近は素朴ながらも観光客を迎えるような雰囲気があるが、ここも余所者は皆無。



ここは、鳥居前と参道両脇に立つ巨杉が見事。
樹齢800年ほどであるらしいが、本来、もっと木々が繁っていたところ、明治の神社合祀令の際に多くが伐採されたという。
今残っている杉の巨木は、南方熊楠の尽力によるものらしい。
ここの杉は一方杉とも呼ばれ、枝が那智大社の方を向いていることによるが、これは植物の向日性によるものである。
それはともかく、随分前に、このすぐ近所にある野中の清水までは来たことがある。
まだ神社巡りを始めて間もない頃で、その時はまだ「〇〇王子」という文字を地図で見ても、何のこっちゃ、であったので、ここには立ち寄らなかった。
熊野古道に興味のある方は当然ご存知であろうし、そうでない方も、王子社で検索すれば詳しい説明は簡単に見つかるので、あえてここに書く必要もないだろうが、べつに継桜神社と書いても差し支えないと思われる。



参道はかなり急であるにも関わらず、手摺の類いは設置されていない。
写真を撮るにはありがたいが、足腰の弱った高齢者には厳しいだろう。



石段を上りきると少し開けた場所に出て、その右寄りに本殿が建っている。



数年前に地元の人が書かれた記事で、この社殿の傷みが激しく修繕のために寄付を募っている、といった内容のものを見たことがある。
そこに掲載されていた写真では、塗装は剥げ、高欄は朽ち、土台も腐って社殿は傾いていた。
私は王子社について詳しくはないが、継桜王子は数ある王子社の中でも比較的有名なところだと思っていたので、その写真を見たときは驚いた。
今回、実際に訪れてみて、無事、その社殿が修繕されたことを知り嬉しくなった。



派手なようでいて渋さがある。
なかなか味わい深く、周囲の風景とも違和感なくある。



誰も来ず、思いのほか寛ぐことができた。
さて、次の目的地に向かうとしよう。


撮影日時 190224 小森 9時30分~10時15分   継桜王子 12時50分~13時10分 
地図 小森 継桜王子


八幡宮から福島大池

2019年03月04日 | その他

兵庫県三田市福島


大龍神社の記事から間が開いてしまったけれど、その帰りに立ち寄った場所がある。
実のところ、大龍神社の雪景色に満足してしまい、そのまま帰ろうかと思ってしまったのだが、重い腰を上げて新三田駅で下車する。
2015年の6月にも訪れたことのある、八幡宮と、福島大池へと続く小道の雪景色が見てみたいからで、前回は緑濃いその小道を歩くのが、とても心地よかった。

駅からは、つまらない平地の道をてくてく歩く。
途中、ビニールハウス内でイチゴ狩が出来るところがあって、駐車場は満車、なかなかの盛況っぷりであるのを横目で見て通り過ぎる。
日曜日ではあるが、こんな雪景色の日に、ハウス内でイチゴを摘んで何が楽しいのかと思ってしまう。
もちろん、私の行動の方が、何が楽しいのかと思われる可能性は大いにある。

平地が尽きて、小川に沿った農道のような道を進むと、暫くで八幡宮の鳥居が見えてくる。



やっぱり、もう少し雪がほしいなと思う。
既に溶け出しており、頭上からポタポタと水滴が落ちてくる。



ここの参道の雪景色は期待していたのだが、雪が少ないせいか、色がゴチャゴチャしているように感じられていまひとつ。



参拝者、というよりハイキングのグループがやってきたので早々に退散。
今までは、ずっと平日が休みだったのだが、やっぱり日曜だと勝手が違う。
福島大池までの道はハイキングコースのようだから、冬のこんな日でもそれなりに人が訪れるのだろう。



神社からも暫く農道のような道を進む。



やがて木々に覆われた、森の中の小道に変わる。



横を流れる小川は福島大池から流れ出すもので、残念ながら水は汚れている。
この小道の雪景色も期待していたが、緑いっぱいの時期の方が美しく感じた。
何より、思っていた以上にハイキング客が多く、あまり落ち着けない。



あまり撮るべきところも見当たらず、福島大池に出る。
水が綺麗なわけでもなく、護岸されている場所も多く、風景としてはつまらない。
前方にある民家と有馬富士と呼ばれる山が、絵になるといえばなるけれど。



他に人も多いので、すぐに引き返すことにした。
まあ、この冬、最初で最後の雪になるだろうから、わざわざ雪の多い所を選んで歩いたりする。
何だかんだで、童心には帰ってしまうのであった。



撮影日時 190127 10時~11時
地図