第十話 信ちゃん
秋口に松茸をとりに行きます。
子供達ははぜの木で、よくかぶれていました。
だからさなは、秋の山だけは、入りませんでした。
さなの知らないうちに、松茸山は隣の三高村の子達との松茸争奪の場と
なっていました。
「こんないつら、やっちゃれや。三高のばかたれが。」
最初は、松かさの投げ合いでしたが、知らない子通しはやがて小石の
投げあいになりました。上に陣取った高田村の子に歩がありました。
「ほおら、ほら。」
男の子達は、おちんちんを振りながら放尿していました。
ある時、中でもいたずら好きの信ちゃんが、柔らかさが戻ってきた
秋の日差しの中で、背丈ほどの木にぶら下がっている足長蜂の巣に
おしっこをかけて遊んでいました。
この時期の足長蜂は気が立っているのでした。
信ちゃんは、迫ってきた蜂に気付かずまだかけていました。
見事刺されたおちんちんは、見る見るうちに徳利ほどにも
膨れ上がりました。
信ちゃん一大事
「いそげんけえの。まっちゃれや。すれていたいんじゃけえ。」
信ちゃんは、腫れ上がったおちんちんが、ずぼんに擦れて
今にも泣き出しそうです。さなはその時初めて、あこがれていた
おちんちんにも弱点があることを知りました。
どこの家でも、実のなる木を植えていました。子供達は、どこの家の
柿の実であろうと取って、腹の足しにし、喉の渇きをいやしていました。
「さな。気い付けえよ。柿の木はもろいけんの。わしなんか、こないだ
持った枝が折れての、7mも下の地面へ落ちての、息が当分
できんかったけえの。」
と信ちゃんは、思い出したように柿を拭いてかじりました。
秋が始まる頃の夜、近所の農家では、ランプの下で、
一家総出でタバコ綱に、タバコの葉を一枚ずつ通す作業をしていました。
さなのうちからこの頃よく笑い声が聞こえてくるようになりました。
(つづく)
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