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“男のためのガーデニング”改め

吸湖山 青岸寺~枯山水庭園から池泉庭園へと変貌した庭園~

2019-07-21 14:28:00 | 御朱印蒐集・仏像・磐座・巨樹・古墳・滝・登山
 米原市にある「青岸寺」に初めて参拝したのは今年3月の終わりのことでしたが、庭園の見事さも然ることながら、ゆったりと落ち着けて何とも居心地の良い寺院だったと記憶しています。
その時に知ったのは、青岸寺の名勝「青岸寺庭園」は通常「枯山水庭園」で、一定量の雨が降ると「池泉庭園」に姿を変える珍しい造りの庭になっていることでした。

梅雨の雨でそろそろ池泉庭園になっているだろうと思い訪れた処、庭園は見事な池泉庭園へと変貌を遂げていました。
青岸寺には「喫茶去 Kissa-ko」という茶寮があり、縁側をカフェに池泉庭園を眺めるひとときも楽しみの一つになります。



「名勝 青岸寺庭園」の石碑のある場所にある木の洞には、石のフクロウの姿があります。
青岸寺のいいところは、細部にさりげなく気遣いがあるところで、室内にも季節の植物が一輪飾ってあったりして、実にセンスが良い。



青岸寺は南北朝期、近江守護職でバサラ大名:佐々木京極道誉によって建立された「米泉寺」が始まりとされます。
しかし、米泉寺は1504年の兵火で焼失してしまい、江戸時代になって再建、寺名を「青岸寺」と改め曹洞宗の寺院となったといいます。



山門を抜けて境内に入ると、イワヒバ(岩檜葉)が大事に育てられています。
イワヒバはシダ植物の一種ですが、今の時期は緑が豊かになっていて、サルスベリが花を付けるようになればまた違った風景となりそうです。



堂内の入り口には僧呂の姿をした信楽焼のタヌキが托鉢をしています。
何とも愛嬌のあるタヌキで、托鉢のお椀に賽銭を入れていく方もおられるようです。



本堂には五七の桐をはじめとして複数の紋が見られますが、青岸寺は江戸時代に“井伊家三代直澄候から寺領及び援助を賜り”とあり、各紋との関連はよく分かりません。
堂内の隅には座禅座布団が積まれてあり、毎月第二土曜日には坐禅会が開催されているようです。



青岸寺の御本尊は曹洞宗寺院ながら「聖観世音菩薩坐像」で、かつての米泉寺時代の仏像とされる観音像は1504年の兵火で難を逃れ、その後復興まで村人の手により小堂で守られてきたといわれます。
この聖観世音菩薩は天台宗系の密教像として製作されたとあり、比叡山から湖南・湖東・湖北へとつながる天台密教仏の流れを考えさせられる仏像となります。



脇陣に安置されている「十一面観音立像」は平安時代末期作とも鎌倉後期作ともいわれており、青岸寺では最古の仏像ではありますが、仏像様式については不明な点が多く今後検討を要するとあります。
像高56cmと大きな仏像ではなく、腰がくびれて少し首を傾げた独特のお姿をされていますが、なぜ鎌倉期の仏像が青岸寺に祀られているのか気になります。



小雨がパラつく中、「青岸寺庭園」を訪れたのは正解だったと思ったのは、やはり池泉庭園の美しさです。
驚くほど透き通った水に浸かった池の底には緑の水苔。
この庭園は、観音さまがお住まいになる補陀落山の世界を表現しているといいます。



石組みの多いのが特徴的ですが、背後に迫る太尾山を借景として奥行があるため、煩くは感じない。
左に見える建物は書院「六湛庵」といい、接化に赴いた地方寺院から永平寺に変える途中に立ち寄り休憩するために用いられたといいます。



さて、庭園が池泉庭園へと変わる仕掛けとなっているのが「降り井戸形式の蹲」で、元々は茶道の習わしで客人が這い蹲るようにして身を清めたのが蹲の始まりとされています。
水量に合わせて降りられるように石段が付いていて、溜まった水が少ない時期でも手を清めることが出来ます。

梅雨の時期など雨の多い季節に井戸に一定量の水が溜まると、庭園に水が流れるようになっている見事な仕掛けがされています。
確かに前回訪れた時には水は2割程度しかなく枯山水庭園でしたが、今回は溢れんばかりの水が溜まり、池泉庭園へと変貌していました。



枯山水庭園と池泉庭園の比較をしてみると、庭園は同じものでありながらも全く違った姿を見せてくれることが分かります。
下は池泉庭園としての姿と、枯山水庭園としての姿との比較です。
六湛庵への渡り廊下の裏側には、庭に水が溜まりすぎることがないように排出出来るようになっており、常に水が循環する設計の巧さに驚きます。


池泉庭園


枯山水庭園

庭園の最上部には「三尊石」が組まれ、ゴツゴツとした印象はあるが、緑の中にうまく溶け込んでいて味わい深い。



庭園は本堂側の縁側から見るのが広い視野で見られますが、書院(六湛庵)側から見る庭園もまた雰囲気があります。



庭園の片隅には古田織部が創案したとされる「キリシタン灯篭」があり、この灯篭はキリシタンの信者や茶人の好みに合うよう造られたといいます。
六角の火袋には地蔵菩薩が彫られてあり、灯篭としての姿は和洋折衷の少し変わった様式の灯篭となっています。
また、一説によると火袋に彫られた六体地蔵は鎌倉時代の物ではないかと推測されているようでもあります。





もう一つの楽しみの「喫茶去 Kissa-ko」では、今回は“抹茶のガトーショコラとコーヒー”のセットをいただきました。
サイフォンで淹れた香り高いコーヒーと庭園の水苔を現すかのような抹茶のケーキを楽しみながらお地蔵さんの置物と庭を眺めている時間は至福の時間です。





青岸寺ではお洒落なカフェがあるだけではなく、現在秋に開催されるライトアップのためのクラウドファンティングを行われているそうです。
ライトアップイベントでは“シタールとお経のコラボ”“アカペラで歌う女性合唱団”のイベント、“経画”という仏教ア-トイベントなどが計画されているといいます。
まさに新しい時代の寺院のモデルとなりそうな寺院ですが、お若い住職とその奥さん(かな?)のきめ細やかな気遣いはとても気持ち良く、過ごす時間が楽しい寺院だと思います。



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