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“男のためのガーデニング”改め

己高山 「居張瀧(イバリ滝)」と「施環の瀧」~長浜市木之本町古橋~

2022-09-08 06:25:15 | 御朱印蒐集・仏像・磐座・巨樹・古墳・滝・登山
 滋賀県湖北地方に聳え立つ「己高山(標高923m)」は、古くから霊山として信仰を集めたとし、奈良時代に北陸より「白山信仰」、平安時代には比叡山天台宗の影響を受け、独自の信仰へとつながっていったという。
融合して結びついていった信仰は、「己高山仏教文化圏」を形成して平安期には己高山7ヶ寺が栄えたといい、観音信仰は湖北一帯にひろがっていったとされています。

己高山の山中には行きたい場所が複数あるのですが、古橋辺りは熊の出没情報も多く、一人で登るのは怖い感じがして行けない山になっています。
ガイドツアーがあれば参加したいと思いますが、通常は登山客の多い山なのかも不明で、長浜の観光情報サイトにも“1人での登山は控えていただくとともに熊の出没情報にご注意ください。”とある。



山登りはいずれ機会があればということになりますので、己高山の山麓にある2つの滝へ行ってみることにしました。
古橋から己高庵方向へ向かうと、登山届の提出BOXと登山者用の駐車場があり、その先には分岐があります。
目指す滝は有名でも人気のある滝でもないものの、滝は分岐の左の道の先と右の道の先に1曝づつあり、まずは左の道を進んでみる。



林道は砂利道とはいえ、最初は平坦な道でしたが、段々と細くなり穴ぼこだらけの酷道になってしまいました。
そもそもこの道は、林業関係者以外の方が通る道ではないようで、登山者は歩いて登山口を目指すための道です。
とはいえ、車で入ってしまったものは仕方がない。行ける所まで進むことにします。



8月初旬に大雨で増水した高時川が氾濫しましたが、己高山の渓流も雨続きで水量が多く、渓流の横の林道にも水溜まりが幾つも残って、薄暗く小雨まで降ってくる。
林道を走るのは慣れてはいるとはいえ、こんなボコボコした道は緊張しますし、どこかにUターンできる場所はあるのだろうかと不安にもなる。

登山するとなるとこの道を30分くらい歩かないと登山口にすら到着出来ませんので、林道歩きだけで心が折れてしまいそうです。
林道の雰囲気を動画で撮りたくなって撮り出したが、地面がボコボコで車の揺れが激しく冷や冷やものです。



林道の途中には「山ノ神」の看板が立ち、道の反対側には石の祠が祀られ、祠の周辺を樹木が取り囲んでいます。
山ノ神には、春になると山ノ神が山から降りてきて田の神となるという言い方がされますが、ここではむしろ林業などの山仕事の神としての性格が強いのではないでしょうか。



祠のすぐ下には高時川に流れ込む渓流があり、山への信仰と同時に水の恵みへの感謝の祈りを奉げた場所なのかもしれません。
古橋集落では山麓に山ノ神、集落の境界に野大神が祀られていますが、同じ神が季節によって交替しているのかどうかは定かではない。



もうすぐ登山口の分岐という所までくると、巨石の上から流れ落ちる「居張瀧(イバリ滝)」へと到着します。
「居張瀧」は己高山鶏足寺が華やかなりし頃、行者達はこの瀧に打たれて心身を清めて登山したと伝えられているといいます。



見上げるような巨石から流れ落ちる滝は、霊山・己高山の場の雰囲気もあって実に神秘的です。
雨が続いた時期でしたので水量はやや多めのようでしたが、轟音と共に水が流れ落ちて行をするような滝ではなく、山へ入るための禊のための滝といった感じです。



巨石の滝の水の落ちる部分には、人が禊に入るのにちょうどいいくらいの凹みがある。
現地の案内板には“水量豊富のとき瀧に向かって目を閉じると瀧音とともに白装束の行者の姿が浮かびます。”と書かれてあり、想像するとちょっと怖くなる。



己高山にかつて存在して現在廃寺となった寺院の仏像や寺宝は「己高閣・世代閣」に納められており、己高山七ヶ寺を引き継ぐ寺院には多数の仏像が残されています。
己高山仏教文化圏に属する寺院(観音堂)の仏像群は、仏像としての見事さとともに、守り続けてきた村の人々の想いの強さがあり、「観音の里」と呼ばれるに相応しい信仰の歴史があります。
その信仰の中心にあった山ですから、この滝ひとつをとっても神秘的な空気が漂います。





登山口手前の分岐には谷を流れる渓流に架かる橋があり、そこから見た渓流の様子です。
橋の上からの上流方向と下流方向ですが、なかなかの激しい水流になっています。





ここでUターンできましたので、登山届の提出BOXがあった分岐まで戻って、今度は分岐の右の細い道に入ります。
道を進んでいくと「施環(せんかん)の瀧」というもう一つの滝があり、滝見台も設置されています。



「施環の瀧」には往古 役小角がこの川上に座す神に参詣の際、水垢離をしたという伝説の滝で、以来この地を訪れる多くの僧達がこれに習ったという伝承があるという。
滝は数mほどの小さな滝で、木々が茂っているため見にくいが滝壺があるのは確認出来ます。



滝見台は滝の上から落下口を見降ろすような場所にあり、水が落ちていく様子が見れます。
目的であった2つの滝を見ることが出来ましたのでこれで戻りますが、この道ではUターンする場所が見つからず延々とバックで林道を戻ることになってしまいました。



「施環の瀧」から山中を進むと法華寺跡があるといい、法華寺は羽柴秀吉に寺小姓だった石田三成(佐吉)が三杯の茶を出した「三献の茶」の伝承が伝わります。
同じ話は米原市の観音寺にも伝わりますので真偽のほどは分かりませんが、光成の母の実家は古橋とされていますので、法華寺との縁があった可能性があります。
また己高山の山中には、関ヶ原の戦いに敗れた石田三成が逃れたとされる「大蛇の岩窟・オトチの洞穴」が残っているといい、光成と古橋(己高山)のゆかりの深さが伝わります。





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