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くらぶアミーゴblog

エッセイを綴るぞっ!

暗闇はいずこ

2004-05-08 17:48:19 | エッセイ

『不埒な天国~Paradiso Irragionevole~』Occhiali da sole~にトラックバック。
 albero4さんがとても面白いことを書いていましたが(ここは“へえ~”の宝庫です)、その中に“イタリアのホテルの部屋は薄暗い”というのがありました。それは近代の日本人だからそう感じるのだろうなあ、と考えてしまいました。昔の日本の家は採光も少なく、とても暗かったですよね。
 高度経済成長期の頃、白熱電灯はビンボーで蛍光灯はリッチという風潮が起こりました。だから日本中の家屋の照明が、明るく青白い蛍光灯に様変わりしてしまった。
 それは今でも変わらずに続いています。新築のきれいな物件も、天井に大きな蛍光灯を各部屋一つずつ、という感じ。とにかく「明るく明るく」というのは家の中だけでなくて、街全体まで広がった。
 その結果、暗闇をどこかに追いやってしまったのですね。今の都市部では「夜は暗い」ということさえ認識するのが難しいくらいです。


cocktail250.jpg
闇もまた魅力的



 田舎にある大きな農家などは、今でも屋内が薄暗いです。外光を積極的に取り組まないで、むしろ障子を使って柔らかくフィルターをかけたりしている。そして、本当に昔だったら夜はロウソク。必然、影が出来ます。
 光の反対側には影がある。昼は明、夜は闇。こういう感覚って大事ですよね。




追:『■高嶺の花にくびったけ!!』“写真♪カテゴリ”にもトラックバックしましたよー




飛ぶものたち

2004-05-08 05:20:42 | エッセイ

『音風景日記』“空を飛ぶペンギン”~にトラックバック。
 海中を泳ぐ生物は、はたから眺めると飛んでいるように見える。ことにスピードの速いものは壮観だ。
 以前NHKのBSで『海中風景』という番組を観ていたことがあった。海中の浅いところ、光が差し込んで明るいくらいの深度を、エイの大群が泳いでいる映像だった。ピアノのアルペイジオの曲だけがBGMとして流れていて、解説や音声は入らない。
 何となくテレビをつけたのだが、僕はその番組に釘付けになってしまった。絵と音楽がとてもマッチしていたからだ。
 ピアノ曲は長調の合間に時々短調が入り、美しい起伏を連ねていく。いい曲だ。エイは20頭以上いて、編隊を組んでいる。身体の両側のヒレがゆっくりと波打っているが、泳いでいる速度はすごい。それを追うダイバーも少しだけ映る。

ei2.jpg

 やがて美しい短調を紡いで曲がクライマックスにさしかかったとき、エイの群れは上昇した。光に向かって、全員が上昇していく。高く、速く、どこまでも。
 彼らは確かに飛んでいるのだ。
 まったくすごい番組だった。僕は暫くポケっとしたままで、次の番組が始まっても頭の中にはさっきの曲と映像が繰り返し流れていたのを憶えている。
 僕らニンゲンの究極の夢は、やっぱり空を飛ぶことかなあと思う。飛ぶためにダイビングをする人もいる。水中で自由に浮遊しているのが“飛んで”いる気分なのだそうだ。僕は海の中が怖いので、やっぱりそのまま飛んだほうがいいようだ。昔取ったナントカで、また始めてもいいな。


匂いの記憶2

2004-05-08 00:03:45 | エッセイ
『J'sてんてんてまり』“TB匂いの記憶”~にトラックバック返し(っていうのか?)。
 以前、ギリシアに行ったことがありました。イタリアを回ってからの観光旅行だったのですが、アテネに着いたとたん、ちょっと妙な感覚が起こりました。初めてきた土地なのに、何か懐かしい。何だろう?
 しかし当時のアテネの街というのは、走っている車の排気ガスがすごかったのです。だから早いとこ建物に入るか、アクロポリスの丘に上がろう、という気持ちでもありました。
 バスに乗って移動しながら窓外を眺めると、路面上にはわりと低いところに電線がたくさん交差しています。昭和50年くらいまでは日本のどこでも観られた風景で、「これが懐かしさのもとか」とも思いました。とにかく観光の浮かれ気分はだいぶ後退し、不思議な懐かしい感覚が続いたままです。
 ロイヤル・オリンピック・ホテルに到着してロビーに入ったとき、その感覚は一気にリアルなものになりました。色あせた赤い絨毯、ぼんやりした配色の壁、古い調度品、そして、匂い。ホテル全体に甘ったるい匂いが満ちています。
 僕が3歳の頃、母親はクリーニング工場で働いておりましたが、そこはいつも甘い匂いがしていました。絨毯のリンスの匂いだと母は言いました。昭和40年代の、日本ではありふれた匂い。
 オート三輪の隣に乗って配達の手伝いをしていたこと、借家の裏の広大な荒れ地に咲くコスモス、川でつかまえた大きな亀・・・。
 海外旅行に来たというのに、僕の頭の中はそれらの鮮明な記憶が甦ってきて圧倒されました。おかげで今でもアテネ=日本の懐かしい風景、という公式が頭にあります。
“匂いは特に強く記憶を刺激する”・・・納得ですね~。

追:『Juns Welt in ドイツ』“エーゲ海ミニ・クルーズ”~にもトラックバック♪