超兵器磯辺2号

幻の超兵器2号。。。
磯辺氏の文才を惜しむ声に応えてコンパクトに再登場。
ウルトラな日々がまたここに綴られる。

卒業記念木彫りの引取り完了

2017-03-08 22:25:42 | 昭和
社内に特定の業務をマネジメントする技術者を養成する目的で設けられた社内教育制度がある。社内的には研修生という続柄だが、実際の事業所で先輩などについて一連の業務能力を取得していくいわゆるOJTである。個人の持つスキル・経験値によって1年コースと2年コースがあり、毎年この時期に全カリキュラムが終わり、修了式が行われる。簡単なものだが、関連組織の長や幹部などがずらりと並び、修了生の成果報告が行われ、修了証書も授与される。私は主催者側の代表として最後に「激励の言葉」なるものをしゃべらされ、記念写真撮影後は懇親会へ流れ込む。ここでは先日妻と見に行った「恋妻家宮本」のワンシーンを真顔で引用した。「間違っていると思ったら躊躇せずに手を挙げること。しかし上司や先輩はそう間違っていることは言わないものだ(ホントかな)。それでも『間違ってないが、何か違和感』を感じたら優しいかどうかで判断すること。正しい者同士は衝突するし戦争まで起こすが、優しい者同士にそういうことはないからである」

懇親会も現場の長らの祝福などで和やかな雰囲気で終わり、いい気分で電車に揺られている時に携帯電話が鳴り出した。何と「卒業作品の行方」編で登場したゴリ橋先生だったのである。混んでいる電車内だったので一旦保留にし、最寄り駅で降りてから慌てて折り返し発信した。まだ夜の9時前だったから自宅にかけても大丈夫だろうと思ったのだ。雑踏の中、やけに聞こえにくい状況で再び40年ぶりのゴリ橋先生と通話したのだった。「もしもーし、あ、磯辺くん?この前話していた木彫りさ、持ってきたから、4日10時にTD小学校に持っていくよ。それでいいかなー。TD小の場所分かる?」(へっ?いきなり明後日?小学校?もう10年以上前にお辞めになってるはずなんだが。)「は、ははい、大丈夫です。4日10時にTD小学校ですね。ウチの近くなんです。子供も通ってたんでよく分かります」「荷物はダンボール2箱だから。じゃねー、どうもねー」「はははい、お手数かけますが、よろしくお願いします

雑音の中での携帯通話の苦手な私は、懇親会の後のこともあって瞬間的に頭が働かず、後々色々と「抜かり」があったことが気になった。「連絡用の携帯番号を聞かなかったこと」「小学校のどの門で待ち合わせるのか?」「ダンボールの大きさは?中身の状態は?」「そもそも何でこんなに急なのか?」元々木彫り作品集は私が一旦引き取るつもりだったのだが、いざ先生とコンタクトを取るときは40年ぶりということもあり、来れる人には声を掛けようと思っていたのだ。「(山男って気が早いんだな)」苦笑しながら、メールやメッセージなどを送れる数人にそのことを伝えたが、あいにく来れる人はこれまた40年ぶりに会うテーラ(仮称)ただ一人だった。(ま、それでもまだマシな方か・・・)学校敷地内は許可なく車で進入できないので、早めに行って門の前で待つべく妻にも付き合ってもらった。

正門は閉まっており、大きいのは西門、駐車場などがあるのは南門である。私達は10分くらい前に西門の前で車を停めていた。「取りあえず、周辺にいないか回ってくるよ」私は敷地内に入り、グランドや駐車場、南門などそれらしき人がいないか探して回った。すると10時ぴったりに妻から携帯が鳴り「何か門の前に車が1台停まったよ。ちょっと怪しげだけど・・・」慌てて走って戻ると、反対車線側に車がハザードランプを点けて停まっており、中からマスク姿の小柄な男が出てきた。その人こそがテーラだったのである。我々は昔を懐かしみ、しばらく近況を話しあっていた。「そろそろ先生も来る頃かな」心待ちにしていたが、待てども待てどもそれらしき車の姿も現れない・・・10分たってまた周囲を歩いて探し回った。そして15分くらいたって「変だなー。携帯の番号聞かなかったから向こうからの連絡待つしかないや」

念のため聞いていた先生の自宅に電話をかけてみたが不在。。。そのうちに妻がいぶかしんで「ちゃんと場所と時間確認したの?あなた、飲んでたけど・・・勘違いじゃないよね」そう言われると「激励の言葉」じゃないが、一抹の違和感を感じざるを得なかった。そもそも何でこんなに急に持ってきてくれるのか?しかもTD小という場所は一体何ゆえか?私は会社員と言ったから土日なのは確かだろう。4日と確かに聞いたつもりだったが、来月じゃないよな。8日は平日だもんな。しかし確かに騒音の中でやたらに聞き難かったのは確かだから、どこかで聞き違えているかもしれない。「先生の家、どこだっけ?」「WUだけど、どの辺かな。自宅電話はアルバムと同じなんだよ。」「だったらこちらから行ってもよかったな。」「なー、先生んちの近くにFG小学校ってのがあるぞ。何かTD小と響きが似てねえか?」テーラがスマホの地図アプリを駆使して色々と調べてくれた。

「すまん、オレちょっとこの後用事があるから・・・」「こちらこそごめん。こお結末はまた必ず連絡するから。」テーラは車を出して行った。近所のスーパーに買い物に行ってきた妻は「もしかして11時の聞き違いかもしれないから、それまで待ってみたら」うーむ。。。そんなはずはないんだが、完全に自信を無くして言われた通りに運転席に座っていた。「悪いな、時間無駄にさせちゃってさ・・・」がっかりして車のエンジンをかけたのが11時15分だった。さて、困ったぞ。この後、悪友たちと怪獣酒場&アニソン特撮縛りのカラオケでスパークする約束になっている。マメに自宅に電話をして、確認するしかないな。「(あー、もう、オレってこういうの向いてないのかもなー)」テーラには悪いことをしてしまったが、もし声掛けした人が皆来てしまってたらエラいことになってた。。。うー、気が重い。電話で謝っても「お前は相変わらず人の話をちゃんと聞いてないなー」と言われるだろな。昼を過ぎたくらいに突然、謎の発信番号からの着信音が鳴った。「んっ?もしかして・・・!」出てみたら、まさしくゴリ橋先生だった。「先生、すいませーん、ボク時間と場所間違えました?TD小の門でずーっと待ってたんですけど」「あー、そうか、ごめんごめーん。ちゃんと伝えなかったのがいけないな。いやー、ホント悪い」「10時にTD小で合ってます?」「いいんだよ、いいんだよ、それで。今どこ?」「諦めて一旦家に帰ってきたんですけど、先生は今どちらですか?」「TD小だよ。職員室で待ってたんだけどね」私は電撃に打たれた気分だった。まさかそんなことは想像もしなかった・・・と、同時になぜいくら待っても現れなかったのか?電話もくれなかったのか閃いた。たまたま待ち合わせに選んだのではなく、自分の仕事のついでだったのである。「い、今から10分くらいで着くので、行ってもいいですか?」「おー、南門のところね。開けて待ってるよ」ホッとしたと同時に背中にどっぷり汗をかいていた。

待ち合わせに間に合わなくなるから、そのまま駅まで送ってもらえるようにして、再び妻に付き合ってもらった。およそ2時間遅れだったが、無事に息子の通った小学校の門で40年ぶりの再会を果たし、がっちり握手したのだった。「突然だったので、誰も都合つかなくて・・・テーラが来てくれたんですけど。」「そりゃー、ホントに悪いことしたな」妻はダンボールを運ぶのを手伝いながら「この人、昔から人の言うことあまり聞かなかったんですよね」「ちゃんと合ってたじゃんかよ」「そうそう、ボクがちゃんと言わなかったのがいけないんだよ。『先生も年だからボケちゃって』って言っといてよ」ダンボールを開けて中身の様子を見た。「ちょっと誰のかは分からないだろ?でも皆の記念だから持ち主に配ってあげたいよねえ。」「40年もたつと連絡取るのすら大変ですけどね。何とか気長に探しますよ」「おー、これでオレも肩の荷が下りたかな」私は先生のこの一言でそれまでの全ての憔悴が吹っ飛んだのだった。

家へ帰って、とりあえず中身を取り出して並べてみた。日当たりの状態にもよるのか、中には劣化の激しいものがあるが、それぞれの特徴くらいは分かる。ただ残念ながら名前やイニシアルなど持ち主が特定できるような印はどこにも見当たらなかった。さてこれからどうしたものか・・・?取りあえず高齢となった先生の気掛かりは解消できたので、一段落なのだが持ち主が分からんのに、わざわざ集まる人がいるだろうか?このまま放っておくのはちょっと不人情だ。色々考えたあげく、連絡の取れる人、連絡先を知っている人に中継してもらうためのメッセージを作ることにした。幸いゴリ橋先生は我が家の近くにいらっしゃるときが定期的にあるので、いつでも集合できるし木彫りも持って行ける。メッセージリレーが拡大して反響が大きければ何かイベントを考えても良いし、そうでなければ放っておいてもよい。先生に会いたい人には連絡がつけるようにすればよい。
ま、私の役目はひととおりこんなところでよいだろうかな。

    

「皆さん こんにちは。19xx年○ス●小学校6年X組卒業の磯辺太郎です。
今年で卒業X0年、もうお忘れの方も多いかと思いますが、卒業に際し記念に一人一つ木彫りを作成して塔を作りましたね。○小の校庭に記念としてありましたが、老朽化したため数年前に有志や当時の担任の先生により解体され、我々の作品はゴリ橋先生が保管して下さっていました。この度、今年7X歳になる先生と連絡をとり、6年X組の木彫りを引き取りました。せっかくなので皆さんにお配りしたいのですが、残念ながら一部を除いては持ち主が分からないものばかりです。ゴリ橋先生は今、第△、第▽土曜日にTD小学校で施設管理の仕事をなさっており、我が家からすぐの距離なので、了解いただけたならTD小に集合し、久闊を叙す提案もしてみようかと思います。ちなみに先生のご連絡先は卒業アルバム記載のままです。
賛同いただける方、もっとよいアイディアのある方、何でもよいのでこのメッセージを受け取った方は下記に連絡をいただけると嬉しいです。
「連絡用メールアドレス」
先生はさすがにお年を召しましたがとても元気そうでした。卒業作品と今の先生(と私)の写真をお送りします。ご自分の木彫りがどれか分かりますか?
なお、このメッセージは直接お送りするか、信頼できる○小OBに中継して頂いております。別ルートから複数メールが届いてしまうかもしれませんが、悪しからずご了承ねがいますね。また6年X組で連絡の取れる人にリレーしてもらえるとありがたいです。
では、ご縁があったら再会できる日を楽しみにしています。」


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4 コメント

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Unknown (月美)
2017-03-09 11:01:20
ゴリ橋先生と40年ぶりにお会い出来たのですね。卒業記念制作品も無事に引き取られて 本当に良かったですね。先生の肩の荷がおりた…というのは本音でしょうね。その一言が 勇気を出して40年ぶりの先生に電話をかけた太郎さんへのご褒美にもなりましたね。また 連絡を貰ったクラスメートも たとえ 自分の制作品がわからなくても それらを大切に持っていてくれた先生の思いを感じ、また懐かしい顔にも会えるとなれば、集まる人も少なくないと思いますよ。40年前にタイムスリップして当時の思い出話を先生と語り合うなんて 素敵じゃないですか。そう思う人はたくさんいるはずです。なるべく沢山のクラスメートの方々に 太郎さんの思いのこもったメールが届くといいですね。「たろうくーん すごーくすごーく がんばったね〜!えらかったねぇ〜!つきみせんせいも うれしくなっちゃったよ〜」(いいこ いいこして ほっぺも両手ですりすり)
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Unknown (いそべたろう)
2017-03-09 23:02:43
つきみせんせいへ

「ぼくは、つきみせんせいに いいこいいこ してもらって とてもうれしいです」(タラちゃん風)

って黄色帽子に水色スモッグのドリフのコントを思い出しました。ホントに急な話であれこれ振り回されましたが、何とか任務コンプリートです。やはり高齢になっていくのに「預かっている」というのは気になっていたのかもいれませんね。段ボールに先生のファーストで「保管」と書いてあるのを見て「じーん」ときました。。。
どこまで連絡が行き、そして集まろうという人がいますかねえ。40年ぶりに先生と語り合うとは確かに素敵ですが、つきみ先生もそういう経験がおありですか?
こういうのは気長にしていて、ひょんなことから急転直下というパターンが多いような気がします。

せんせい、ぼくはすごくがんばりました。
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Unknown (小夏)
2017-03-11 22:38:26
なっなに~♪幼稚園ごっこ私も入れてぇ~~~

卒業記念木彫り、師匠のフットワークで速い展開となりましたね。何のためらいもなくスイスイ行動される師匠のご性格に清々しさ以上のものを感じます。
第二幕、ここからが難しくもあり、遣り甲斐もありそうです。
先生は職員室でしたか!?ニャハハそりゃ想像もできませんですね^^
木彫り、上手にできていますねぇ(感心!)小学生の時、彫刻刀を教材として買い、先が三角だったりしおっかなびっくりで使ったこと思い出しました。
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Unknown (磯辺太郎)
2017-03-12 18:14:52
小夏さま

ははは。幼稚園ではワルでならしてました。大体褒められた記憶がありませんから。。。

珍しくフットワークよく動きましたが、ためらいまくりだったのですよ~。何故か今回だけは気が向いたのでs・・・
第二幕はですねえ。三河ニラのように誰かにリレーしたいですね。他組は着々と同窓会計画を進めているようですし、ボクではちょっと力不足。
職員室!そーなんですよ。まさか建物内にいるとはホトケ様でも気が付きいませんよねえ。
木彫りは角材を縦に割った直角二等辺三角柱に彫るもので、中々上手くは作れなかった記憶があります。
そうそう、彫刻刀、さっぱり見なくなりましたが、先が三角だったりUの字だったりしてましたよねー。
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