超兵器磯辺2号

幻の超兵器2号。。。
磯辺氏の文才を惜しむ声に応えてコンパクトに再登場。
ウルトラな日々がまたここに綴られる。

辛苦多きマラソン大会

2017-01-29 17:23:21 | スポーツ・健康
前夜はアルコールを摂っていないこともあり、やたらに寝付きが悪かった。時間にすると長くてもたかが2時間弱走るだけなのだが、完全体でないために「何が起こるか分からない」という不安が付きまとっていたのである。「過ぎたるは」編で書いた通り、開脚ベターストレッチをやり過ぎて左足首を痛めたばかりであり、さらにこれを庇い上半身のバーベルエクササイズにばかり精を出した報いがまさかのテニス肘・・・試しに2,3kmに走ってみても平気だったが、2時間近くとなるとやはり心配である。正月明けに経験した階段を下りる時に走る痛みの類が再発したら、おそらく走り続けるのは無理だ。時間切れで回収バスで「ドナドナ」に子牛のように揺られて行くくらいなら、途中でコースアウトしてそのまま家に帰ったほうがマシだ。スタート時間は8時半、寝付きが悪かった割には5時には目覚めてしまい、家族がまだ熟睡している中、外は真っ暗な中をごそごそと起きだした。

いつものように血圧、体重を測定して異常ないのを確かめて記録する。起きたばかりなので、いきなりストレッチなどを行うと痛める恐れがあるから、ヨガの要領で呼吸を続け、クラスで行う「ほぐし」を思い出しながらゆったりと動いてみた。だんだん身体が温まってきたので、例のベター開脚ストレッチの基本メニューと3週目メニューだけを「軽く」こなしておいた。(我ながら全然懲りていない)「消化がいいし温まるからうどんでも作ろか?」前夜言ってくれた妻はぐうぐう寝ているので、いつもの通りの出撃メニューで行くことにした。炊きたてのご飯に納豆、卵、シラスに海苔そして野菜ジュースである。「粘り、スタミナ、ノリ、カルシウムにバランス」という意味である。前日は晴れていたがすごい強風で「この風の中を走るのは確実にめげるなー」と心配していたが、幸い穏やかな様子であり、天気予報では最高気温も結構高くなるようだった。

インナーの上に着るTシャツは昨年話題となった「ゴジラ」にちなみ、葛飾北斎の富嶽三十六景風浮世絵ゴジラである。実はいつか面白いコスプレで走ってみたいと思っているのだが、距離的には「走るだけで精一杯」という面もあり、中々実現できないでいる。我が家のすぐ近くの海岸道路がコースになっているのに息子も妻もめったなことでは見にすら来ない。毎回一緒に走る人がいるわけでもなく、沿道で力強く応援してくれるのはスポーツクラブでお知り合いになったMラさん一人である。今年はしんさんがエントリー漏れしたようで(もしかして確信犯かも)出場していないし、たまさんも腰痛が出て走れるかどうか微妙だと聞いた。「後で合流しようか」と言っているのは、もっぱら「走ること」を趣味の中心に置きはじめたらしい「マイク」のみである。自分のコンディションが万全でないこともあり、「なーんか今年は気分が盛り上がらんなー」と江ノ島に向けてチャリを漕ぎ出した。

        

宇宙戦艦ヤマトの発進シーンはどれも悲壮な決意を連想させる勇ましいものだが、結末によって二つに分かれることに気付いた。一番最初はご存知、大戦末期に沈没した現場から大地をかち割り土砂を振り払って浮上、次は海の中から空に向けてジャンプして発進、その次は小惑星の岩盤を砕いてアステロイドリングの中を出撃、そして「完結編」は海中ドックから長官に見送られて発進した。お分かりだろうか、「大地から発進すると帰ってくる」が「海の中から発進すると帰ってこないのである」海中から発進する際に向かう空は輝くような青空ではなく、何となく不吉な前途を暗示するような、どんよりした空である。私は何となく完結編の方の出撃シーンを思い浮かべながら自転車を走らせていた。それでも朝早くから準備に余念のないスタッフやボランティアの中高生などと挨拶を交わし「頑張ってくださーい」とか言われると段々と意識が高揚してアドレナリンが充填されてくるような気分になった。

今年で第7回を迎える湘南藤沢市民マラソン、数年前に公的資格試験と重なりやむなく息子甘辛に代理で走ってもらった時を除いてはすべて無事に完走している。ここ数年は「ただ走るだけではなく、何かテーマをもって」などという多少の余裕もできた。昨年の血圧レコーディング&減塩作戦の相乗効果、そしてオクトーバーランの経験により、「走ること」が楽々(楽に楽しく)になってきた私は当初、「いよいよタイムと意識してみるか」と数ヶ月前からトレーニングマシンで身体に走る速度を覚えこませていた。しかし前編で書いたとおり「やり過ぎ」の災厄のために「完走すら覚束ない」体たらくである。タイム改善は全く期待できないから、開き直って「ドナドナ回収バスのぎりぎり前をノロノロ走る」ことも考えたが、天気も良かったので前回の「沿道の応援を楽しむ」に対し、「とりあえず景色を楽しむ」というスタイルで行くことにした。

    

実は少し前に友人が某SNSサイトに海岸から撮った江ノ島や富士山、烏帽子岩や市のモニュメントなどの写真をどばーっと投稿した。コメントは「茅ヶ崎…いいよねえ」だったが、これがいい意味で「炎上」と言ってもよいくらいにすごい反響を呼んでいた。地元周辺に住む人ばかりだと思うが、あらためて故郷や今の土地への「思い入れ」が沸き立ったようなのである。(パシフィックホテルを語れる人とは仲良しになれると思う)私も小学校は忘れたが、中学校の教室から海や江ノ島は見えた記憶があり、それこそ何百何千回と見飽きた風景なのだが、あらためて皆が盛り上がると嬉しい気持ちにはなる。そこでこの機会以外には足を踏み込めない134号車道のマラソンコースからの風景を走りながら記録し記事に上げてみようかと考えた。コメントは「湘南…いいよねえ」。いつものようにスタート直前で「今年はゴジラで走ります」と投稿し、1万人以上いるランナーのほぼ最後方のゾーンで号砲を待った。

ストレッチし過ぎで故障・・・みたいなことも書いたから、「無理するな」というありがたいメッセージが多かったが、スタートしてからしばらくは快調そのもの、貝作(飲食店ね)の前にいつもいる「応援和太鼓」のおねえさんに手を振って弁天橋を軽快に走り渡った。江ノ島カメラのあるT字路の建物、境川を渡ってすぐの富士山、新江ノ島水族館、マイポイントである鵠沼スケートボードパーク(プールガーデン前)、そしていつもの波動偵察ポイント・・・日光が反射してどんな画像が撮れているか確認もできず、最後方のゾーンにいたからやたらに遅い人混みに埋もれ、かと言って撮影のために立ち止まると周囲に迷惑なので、とにかくシャッターを押して走るだけになってしまった。(後から見たら普段見る景色と比べ、何の変哲もないし、ぶっちゃけ出来栄えがダメダメだったので、「湘南…いいよね」作戦は中止にした。)

      

最初の折り返し地点を過ぎ、いつもスタッフでお手伝いしているKちゃんパパと笑顔でハイタッチしたまでは良かったが、その後何か身体が妙な具合に狂ってきたのを感じてきた。まず左足を着地するときに「ペッタン、ペッタン・・・」と変な音がするのである。靴の底だけ剥がれて地面とぶつかっているような異音である。俯いて様子を見ながら走っていると、スローで横から見ると着地時は踵、土踏まず、つま先の順番に設置していくのが普通だと思うのだが、足首が固いのかベターッと一気に着地してしまうためにペタペタ音がするようなのだ。いわゆる「ドタ足」というヤツか・・・?!足首に痛みがないのが幸いだが、柔軟性が落ちて左右着地時のバランスがおかしくなってきたらしい。さらにこれを直そうとしたのか、庇おうとしたのか、今度は右体側が凝ったとように痛くなってきた。よくある「片方のバランスが悪くなると庇おうとして他の部位に影響が出る」という現象のように思えた。そのうちに股関節にも違和感が入るようになり、身体を動かすために腕を大きく振っているうちに例のテニス肘まで出てきてしまった。

10km地点より先、2回目の折り返し点を越えてからはこれまで以上の試練に見舞われた。呼吸器系は全然平気なのに、身体のあちこちで警告アラームが上がってきたのである。宇宙戦艦ヤマトが敵の一斉攻撃を受けて次々に破損し、艦体至るところにレッドランプが点灯するようなものである。残り距離と疲労度合いから見れば、このままならほぼ完走はできる自信はあったが、何かの拍子に(ヤマトで言うところの)大破に当たる激痛が走るともうそれ以上走るのは無理だ。
「(何とかこのまま持ち堪えてくれ・・・May THE force be With ME!)」
普段なら残り3kmくらいでイケる限り速度アップするのだが、用心深くそーっと足を運びながらようやくゴールを通過した。身体の疲れよりも「何が起きるか分からない不安と焦燥」による疲れにぐったりだった。

  

はるか前に悠々とゴールしたマイクと合流しスーパー銭湯で汗を流して昼食会場に取ってもらったレッドロブスターに向かう。幸いたまさんも無事ゴールできたようで、ご夫婦とご一緒することができた。「とにかく今回のオレは最悪だったよ」
今回の苦戦の元凶となった(のは「やり過ぎ」だが)ストレッチと言えば、マイクのほぼ専門分野である。今回どんなことをやって、どうなってこの有様となったかをかいつまんで話すと皆は「あんたなら、いかにもありそうだ」みたいな顔をして笑っていたが、マイクは「イソちゃん、さすがにそりゃーまずいよ」次第に深刻な顔に変貌していった。まず、ストレッチというのは「痛い」ところまでやってはいけない、「歯を食いしばって」もいけない、続けて同じところばかりしてはいけない。私のやってきたことは「殺人で追われている者が『2人も3人も同じこと』と言っているようなもの」らしい。

骨と筋肉は一方向からだけ着いているわけではないから、ある部分を伸ばしたら同様に反対側も伸ばさなければならない。それだけでなく、稼動領域を全方位バランスよくほぐさないと変な風に固まってしまうことがある。「ベターッストレッチ」は基本開脚して正面に倒すスタイルで使うところのみを伸ばすものだから、バランスを保つには他の部位も同様に伸ばさなければ単に痛める原因となってしまいやすい。週替りメニューを重ねてしかも、暇さえあれば行っていた私は「罪の上塗り」を重ねてきたようなものだというのである。マイクは優しいから「磯ちゃんの性格から、気持ちは分かるんだけどさ」と苦笑いである。私はしょんぼりと「でもさ、1週間ですぐに肘までは床にベターっといったんだぜ。もう少しやればと思うだろ?」そこで横から妻が「あーっ、分かった!だからテニス肘に・・・」「なるわけねえだろ!!漫才やってんのか、オレたちはぁ・・・・!」

幸いなことに翌日以降、後遺症のようなものはなく、痛みもダメージもゴール直後に想定したよりも回復は早かった。しかし「ちょっとしたやり過ぎ」が油断すると身体中にレッドランプが点灯する事態に発展したのはよき経験だった。実はほぼ30日間続けてしまったので、ストレッチは何か「やらなければ気がすまない」症候群になり、毎日メニューだけは続けているが、妻に「あなた、やればやるほど痛がってたもん」と呆れられていた週替りメニューはとりあえず中断した。来月からは著書に忠実に、そしてマイクに教わった反対側ストレッチも入れて、「新30日コミットメント」としてリスタートするつもりである。この1週間、ひたすらヨガやピラティス、ペルビックストレッチなど調整系に徹している。不思議な話だがフルマラソン走り切ってもそうは驚かれないが、開脚してベターッとできると間違いなく「わーっ、すげえ!」という歓声が上がる。今年のテーマである「整」に通じるベターっ作戦は決して間違いではないから、マラソンで得た教訓を活かし方向習性しようと思う。(と言っているそばから、サウナで「しこ」を踏んでいる懲りない自分だった)


最新の画像もっと見る

4 コメント

コメント日が  古い順  |   新しい順
Unknown (小夏)
2017-01-31 22:11:08
うわぁ~、本格的にレッドゾーン入りするところだったですねー!おいたわしい。そんな状態でもちゃんとゴールされたのですね!よかった(ドナドナにならない点もよかったですね^^)
そういえば、いつもこの大会は声援に押されて、とかよい状態のレポでした。初めてマイナスからのスタートも今後に生かせるといいですね。
マイクさんの解説、わかりやすいですね。
返信する
書き忘れ (小夏)
2017-02-01 07:54:15
青いバスは普通の市内バスでしょうか?
それとも臨時のドナドナバスかな~。

「いつもの波動偵察ポイント」人員チェックいたしましたぁ~!これなら小夏参戦できそうです(いつの日か)^^
返信する
Unknown (磯辺太郎)
2017-02-01 18:35:38
小夏さま

タイム狙うなどと生意気なことを考えた罰ですね〜。何事も謙虚に臨まなければいけませんね。すべて自業自得なので、これでドナドナになったら立ち直れませんでした・・・ホントにホッとしました。
前回は沿道で応援してくれる人に笑って手を振ったりする余裕もあったのに、マイナスからのスタートも教訓に活かしたいと思います。(次回は4月に走ることが決定しました)
さすがマイクはその道のプロ、分かりやすくて良かったのですが、私はやるべきことの真逆路線ばかり進んでいるので冷や汗が止まりませんでした。
返信する
Unknown (磯辺太郎)
2017-02-01 18:38:43
小夏さま

青いバスは路線を走っているのを見たこともありますが、臨時のドナドナバスです!結構乗っていたようですが、係員も一緒にいたのでランナーがいたかどうかは定かになりませんでした。
いつものポイントは師匠が湘南にいらした時に何度も通過されているはずですね。
返信する

コメントを投稿