超兵器磯辺2号

幻の超兵器2号。。。
磯辺氏の文才を惜しむ声に応えてコンパクトに再登場。
ウルトラな日々がまたここに綴られる。

恋妻家とシーキャンドル

2017-02-21 23:09:49 | 出来事
「一人1100円だったら何でもいいよな」いかにもな割引効果で今年になって既に3作品目の映画鑑賞だった。昨年末「ファミリーレスな中年男」編で紹介した重松清作品の映画化版である。ただ何故か文庫本とは異なるタイトルになっていた。「あの物語だったら本のタイトル通りの方がいいと思うがな」原作は「ファミリーレストラン」を「ファミリーLESS」とかけてある。団塊の世代が定年を迎え家族を喪失していく一昔の悲哀ストーリーに比べ、「子供が巣立った後」に喪失感を味わうスタイルだということは以前書いた。加えて主人公の家族感は「外に食べに出る時は、家族として同じ類の『食べ物』とすべきだ。魚なら寿司、鍋ならしゃぶしゃぶ屋、肉なら焼肉やステーキハウス、せめて中華、イタリアン、和食などジャンルだけでも。しかしファミリーレストランにはほぼ何でも揃っている。結果、家族はそれぞれ好きな物をバラバラに頼んでしまう。それでは家族ではなく「同じテーブルで食事をする集まり」だけになってしまう、すなわちファミリーレスなのだ。」

原作での主人公陽平には阿部寛さん、妻美代子には天海祐希さんが配役だ。うーむ、ちょっと違うような気がする。。。阿部寛さんはどちらかと言えば、「テルマエ・ロマエ」のような強烈な存在感、天海祐希と言えば「女王の教室」や女刑事、颯爽としたキャリアウーマンのイメージがあり、ファミレスでメニューを中々決められない優柔不断男やあまり自己主張をせずに子育てに専念してきた専業主婦とはちょっと違うような感じがした。私は原作を読んだ物語が映画化された時に好んで見に行くことが多い。よく「原作とだいぶ違う」などとマイナス評価されることも多いようだが、文章を読んで作り上げた自分のイメージが他人と同じものとは限らないし、作者の意図したものではないかもしれない。

映像にすると個人の想像力や注意力による違いが少ないから、他者とその感想について語らい易い。また一般的には書物を映画にすると時間内に収めるために、かなりディティールを割愛したり、時系列を端折ったりしなければならないが、逆に脚本家?があの物語をどう読み込んで、何を映像で伝えたかったのかを類推するのも面白い。自分だったらあの本は「こうして立体化する」なんてことを考えたり語り合うのは楽しいものだ。しかし今回の映画版はタイトル変更が「なるほどなー」と思うほど、抜本的なレベルでも内容が変わっていた。簡単に言うと原作は登場人物が多く、それぞれの人間模様や過去の経験、置かれたシチュエーションが複雑で、複雑に入り組んでいるのだが、映画版は見事にシンプルにまとまり、ずばり「夫婦とは」みたいなテーマに切り込んでいる。それでも妻に言わせると「日曜夜の10話完結テレビドラマみたいな感じ」のストーリー展開で、私もその通りだと思ったが、主人公二人がこれまでのイメージとは異なる「ほっこり」した雰囲気を醸し出し、さすがプロの主役だなー、と感心した。

この映画は私が「見たい」とリクエストして妻に付き合ってもらったのだが、途中から何となく不安になってきた。原作に比べて「夫婦」に関するテーマが色濃く現れ、年代的にもシチュエーション的にも我々とほぼ同じ「他人事」とは思えない話だったからである。中年男の料理に感じるダンディズムとか、料理教室のぶっ飛んだ先生やその娘など、物語をフィクションぽくする「ボカシ」が全くなく、どこにでもありそうな(むろん我々の周囲にも起こりそうな)、球筋のはっきり見える直球だったのだ。「(こんなストーリーを見たいとか言って、怪しまれないだろな。観終わった後に妙な雰囲気になったらどうするか・・・)」幸いに映画そのものはかなりほっこり系でしかも「夫婦の絆」みたいなハッピーエンドなミュージカルのような形で終わった。エンディングは出演者全員がデニーズで吉田拓郎の「今日まで明日から」を歌いつなげる、ニクイほど昭和な演出である。

その日は夕方から初めて訪れる江ノ島シーキャンドルに向かう予定だったが、何となく映画についてはあまり交わす言葉もなく一旦帰宅して一休みした。「(何か映画に影響されて妙なことは言い出さんだろうな。疑われるようなことはないが・・・江ノ島灯台ライトアップとイルミネーションはその日が最終日で、カップルでごった返すことが予想される。「やっぱ、やめようか」ということになったら要注意だと警戒していたが、別にいつもと変わることがなく、腹が減ったとか言っておにぎりを持って自転車を出してきたので少し安心した。今まで訪れた回数は100を超えているかもしれない江ノ島だが、夕方から夜にかけて行くのは初めてだった。参道のお土産屋、飲食品店が閉店するのも早いし、もっと遅くなると弁天橋自体に入れなくなる。灯台のライトアップは帰宅時に遠くから見るとどうみても「イカ」なのだが、近くで見るとさすがに迫力があるだろう。

        

我々はエスカー(江ノ島を登るエスカレーター)とサミュエルコッキング苑入場と展望灯台のセット券を購入した。たっぷり時間があれば後付けの名所も含めて1日中「所縁」で遊べる江ノ島だが、夜遊ぶようにはできていないので数々の見どころも真っ暗だ。しかしいきなり現れたイルミネーションは素晴らしかった。島の上から見る夕暮れの海辺の様子と光の洪水の組み合わせなどこれまで見たこともない新鮮さがある。エスカーの終点までのぼるとさらに新しくできた庭園は色とりどりの光に囲まれる世界だった。カメラ台のある撮影ポイントではライトアップした灯台と夕焼けに薄く富士山がシルエットを見せる。空気がひんやりしている部分、光が鮮やかだがどこからかオリーブオイルとガーリックの「ぼわわーん」という香りが漂ってきて首を傾げた。「んっ?屋台か何かが出てるのかな」と思ったら「イル・キャンティカフェ」の厨房から流れ出た料理の香りだった。(何か変な気分)

          

入口で20分待ちと告げられた展望灯台エレベーターは40分待ちになっていた。実は江ノ島からの夕景というのはかなり有名らしい。あまり気にしたことが無かったが、確かに相模湾越しに伊豆半島に沈む夕日とその横に聳える富士山のシルエットは素晴らしい眺めだろう。今回も少し眺められたが、もう少しだけ早く来ればよかった・・・エレベーター待ちの時間に腹が減ったので、持参したおにぎりを二人でもぐもぐ食べ(この辺りの慎みがなくなってきた)、展望台に上ると眼下には素晴らしい景色が広がっていた。海抜100メートルの海上から眺める山々や街や港の光、足元にはLEDライトの模様が美しい。我らがランドマークタワーも遥か遠くの光として小さいながらその姿が分かる。帰りの螺旋階段は周囲が吹きさらしで下も丸見えのため、いつもは足が竦むのだが、この時は周囲の眺めに目を奪われて怖がる暇もなかった。

          

何度も来ているのでお土産など買ったこともないが、ふらっと入った灯台下のお店でこれまで探しても見つけられなかったペンギン柄(実は幼い時からペンギン好き)のネクタイを発見、他のついでもあったのか何か機嫌よく妻が買ってくれた。それほど腹は減っていないが、どこかで何かを食って行こうということになったが、江ノ島本島の飲食店は全て閉店してしまっている。海岸道路沿いの店など行き尽くしているから中々ピンとこない。イル・キャンティビーチかレッドロブスターか、その隣にあったサンタ・カフェの跡にできたシュラスコの店(店名知らず)?クア・アイナじゃなー・・・・「映画の舞台になったデニーズでいいんじゃない?」私もエンディングシーンが印象に残っていたので水族館の向かいのデニーズに入ったのだった。ちなみに映画のシーンはデニーズに始まりデニーズで閉じる。

    

妻と映画を見た後は内容そのものよりも配役や役者の演技について語り合うことが多い。妻は俳優一人ひとりについてそれなりに詳しく、役どころや演技について興味があるようなのだ。舞台設定が我々に身近な話だから、いきなり我々に照らして「うちはどうか?」とか「離婚届を持ち歩くって」などと振ると、予想外の地雷を踏むこともあるから、私も何となく俳優の話題にノッた。最後はすごく「ほっこり」「うるうる」きたが、「やはり阿部寛さんと天海祐希さんの存在感が大きすぎるんじゃ?」どちらかというと、ヘボい役の「佐藤二朗」さんと文句ばかり言っていた妻役の「菅野美穂」さんの方が合ってるような気がしたが、妻によれば「彼らでは主役を張るのが少し辛い」。私は佐藤二朗さんはよく知らないが、妻の美代子役は「和久井映美」さんではないかと当たりをつけていた。(ちょっと自分の好みが入ってしまっているかもしれない)

また妻によると中学教師をする主人公が担任をするクラスの一生徒「ドン」の眼ヂカラがすごいという。ドンは物語の中で一つの重要な役だと思われるのだが、長身の阿部さんを見上げる時の上目使いにすごく味があるという。またデニーズで吉田拓郎のエンディングとなった時に私は「なるほど、これが言いたかったテーマか」とずばり合点がいったが、「エンドロールに甘辛の大学が出てきたよね。どのシーンで使ってたのかな」という妻を見て「(やはり目の付け所がだいぶ違うんだな)」と思った。だからこそ面白いとも言えるのだが。我々はビールとワイン、料理など迷わずに選び追加していく。ワインを重ねていい気分になってくると、気が付いたら幼い時から最近の試合の様子など息子甘辛の話ばかりしていた。だからと言って、巣立って行った時に「ロス」になるかというとそんなでもないような気がするのである。ちょうど前日に久々に息子のサッカーの試合を見に行って、「おー、結構がんばってるじゃんか。アイツ、ホントにサッカー好きなんだな」と気負いなく眺められたのを思い出したのである。



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2 コメント

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Unknown (小夏)
2017-02-23 00:14:30
こんばんは!デニーズへようこそっ!元バイト女子大生小夏です(笑)

んっ、、ひぃ~!!
「観終わった後に妙な雰囲気になったらどうするか・・・」ですか@@!シャレにならんかったら大変ですね!胃がきゅんとしてきました。アハハ
そのような日にペンギンネクタイが来たというのも意味深いような・・。びくびく君、ファミレス君、天海君、、などと名前が浮かんでまいりますが、いい感じのお色味です^^

江の島のライティングは迫力ありますねー!
映画のちょい冷やっこい思いとブルーのLED色がリンクして見えます!(ピンク色も若干感じるのですけどね)
富士山シルエット見えています。毎度思いますが素晴らしい立地ですーww

イル・キャンティカフェ、、海の向こうから匂ったのですか!?うむ、すごい
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Unknown (磯辺太郎)
2017-02-23 21:16:12
小夏さま

こんばんは。なんと師匠、デニーズで・・・今回の「恋妻家」はデニーズが全てのテーマなんですよ。

この映画はですねえ。。。見ながら、今隣の相手がどう考えているか憶測してしまうので、結構危険かもしれないです。終わった後、何となく会話に詰まりましたし・・・
ペンギンネクタイ初ゲット、これは何か意味があるかも。幼子の「買って、勝手えぇ」状態でした。

江ノ島のイルミネーション、すごい迫力でしたが、ちょっと濃すぎるんですよね。若い恋人向けの派手な演出だと感じました。
そうそう、富士山のシルエットが美しいです。もうちょっと早い時間だったらもっと素敵だったでしょう。
実はこの地域、4月4日当たりにダイヤモンド富士になるようです。(忘れないようにしなきゃ)

江ノ島本島のてっぺんにイル・キャンティカフェというのができたんです。見晴らし台の真下にあります。ちなみに海の向こうの水族館隣は「イル・キャンティビーチ」です。(紛らわしいですねー)
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