中小企業の「うつ病」対策ー人、資金、時間、情報に余裕がない

企業の労働安全衛生、特にメンタルヘルス問題に取り組んでいます。
拙著「中小企業のうつ病対策」をお読みください。

法人企業の処罰

2017年12月25日 | 情報

記事中に「同社と先輩社員2人に約6400万円の損害賠償を求めた訴訟」で「会社の責任が全面的に認められた」とあります。
つまり、「両罰規定」が適用されたことなのでしょう。
企業関係者のみなさんは、このようなことがあることを、企業トップに周知することが大切です。

(参議院法制局HPより)
法人企業の処罰
(前段略)刑法の総則では、刑を科されるべき者は実際に生きている人間、いわゆる自然人であることが前提とされ、
この総則は、特別の規定がない限り、他の法令で刑を定めたものにも適用されます。
例えば、ある行政法規に、「第○条の規定による報告を提出せず、又は虚偽の報告をした者は、
六月以下の懲役若しくは五十万円以下の罰金に処し、又はこれを併科する」という規定があり、
ある法人がこの報告を求められてその代表者又は従業者が法人のために虚偽の報告をした場合、
この規定で処罰されるのは、実際の行為者である代表者又は従業者であって、法人ではないということになります。

しかし、こうしたケースでは、違反行為によって実際に利益を得るのは法人ですから
行為者を処罰するだけでなく、その法人自身を処罰すべきだという考え方が当然に出てきます。
このため、特に行政法規の刑罰については、「法人の代表者又は法人若しくは人の代理人、使用人その他の従業者が、
その法人又は人の業務に関して前○条の違反行為をしたときは、行為者を罰するほか、
その法人又は人に対して各本条の罰金刑を科する」というような形で、ある犯罪が行われた場合に、行為者本人だけでなく、
その行為者と一定の関係にある法人をも処罰する旨の規定を置くことが多く、これを「両罰規定」と呼んでいます。
なお、右の規定例でも分かるように、両罰規定は、法人のほか、自然人である事業主にも作用します。

法人に懲役や禁錮などは科しようがありませんから、
両罰規定によって法人に科される刑は、罰金のような財産刑に限られます。
この場合、法人に科される罰金の額の上限は、かつては例外なく、行為者に科される罰金と同じだったのですが、
近年は、別途これを大幅に高く定める例がみられます。
これは、行為者の場合と上限が同じでは、巨大化した今日の法人企業には、
懲罰として十分に機能しその抑止力を発揮できる罰金を科し得ないという考えから、
平成3年の法制審議会刑事法部会の報告を機に導入されてきたもので、
例えば証券取引法や金融先物取引法には、法人についてのみ上限を5億円とする罰金があります。

また、両罰規定の中には、前に掲げた例のような規定の後に、
「ただし、法人又は人の代理人、使用人その他の従業者の当該違反行為を防止するため、
当該業務に対し相当の注意及び監督が尽くされたことの証明があったときは、
その法人又は人については、この限りでない」というただし書のあるものがあります。
このただし書がある場合とない場合とを単純に比べると、ただし書がない場合には、
従業者の違反行為を防止するために相当の注意及び監督が尽くされたことが証明されても、
その法人は処罰を免れないということのようにも思われます。
ところが、実は、判例に従えば、両罰規定は、このただし書がなくてもあるのと同様に解すべきことになります。
つまり、立法技術的には、現在はこのただし書は付けないことになっているのですが、
古い立法例にはまだそれが残っているというわけです。
法律の解釈は文言だけでするものではないとはいえ、このような紛らわしい規定は全部整理すればよいのにと
筆者などは思ってしまいます。
http://houseikyoku.sangiin.go.jp/column/column034.htm

社員自殺とパワハラの因果関係認定 賠償額大幅増、名古屋高裁判決 
日経 2017/11/30

名古屋市の青果仲卸会社の女性社員(当時21)が自殺したのは職場でのいじめやパワーハラスメントが原因として、
女性の両親が同社と先輩社員2人に約6400万円の損害賠償を求めた訴訟の控訴審判決が30日、名古屋高裁であった。
永野圧彦裁判長は自殺とパワハラの因果関係を認め、賠償額を165万円とした一審・名古屋地裁判決を変更し、
約5500万円の支払いを命じた。
1月の一審判決はいじめやパワハラによる精神的苦痛の自殺への影響を認める一方、自殺との因果関係は否定していた。
判決理由で永野裁判長は、女性は自殺直前に「食欲不振や集中力、注意力の減退があり、うつ病を発症していた」と認定。
会社側の責任について「先輩社員の叱責を認識しながら放置し、注意義務を怠った」などとし、
「自殺との因果関係がある」と判断した。
判決によると、女性は2009年に入社し、12年6月に自殺した。
先輩の女性社員2人から長期間にわたり、「てめえ」「同じミスばかりして」などと繰り返し厳しく叱責されていた。
判決後の記者会見で、女性の母親(54)は「娘に何の落ち度もないことが分かり、安心した」と話した。
原告側の代理人弁護士は「会社の責任が全面的に認められた画期的な判決だ」と述べた。
青果仲卸会社は「担当者が不在でコメントできない」とした。

(地裁判決)「この野郎」叱責 女性へのパワハラ認め会社に賠償命令 仲卸会社いじめ自殺訴訟 
17.11.27 産経

名古屋市の青果仲卸会社の女性社員=当時(21)=が平成24年に自殺したのは、
先輩社員からのいじめでうつ病を発症したことが原因として、
女性の両親が同社などに約6400万円の損害賠償を求めた訴訟の判決で、
名古屋地裁(加島滋人裁判長)は27日、女性へのパワハラ行為を認め、会社に賠償を命じた。
うつ病の発症や自殺との因果関係は認めなかった。
訴状によると、女性は21年に同市の仲卸会社「加野青果」に入社。
23年末ごろにうつ状態となり、翌24年6月に自殺した。社内で先輩社員の女性2人から無視されたり、
「この野郎」などと威圧的な言葉でミスを叱責されたりするパワハラがあったとしている。
原告側は、会社がいじめを防ぐことなく、女性のうつ病を悪化させたと訴えている。
名古屋南労働基準監督署は25年12月、業務とうつ病の発症や自殺との間には因果関係があるとして労災認定した。

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