吉右衛門が対談で、文楽への補助金が切られると語っていたので、インターネットで調べたら、読売新聞の「橋下流に文化団体、戦々恐々…交響楽団消える?」に行き当たった。
「知事時代、「文化は行政が育てるものではない」と公言してきた橋下徹・前大阪府知事が19日に大阪市長に就任するのを前に、市内の音楽や芸能関連の団体が戦々恐々としている。
橋下知事当時、府が出していた補助金を全額カットされた大阪フィルハーモニー交響楽団(大フィル)や、「観賞したが、2度は見ない」と酷評された文楽団体などは、市から多額の補助金を受けているためだ。」との書き出しで始まる記事だが、「橋下氏は知事時代、「行政や財界はインテリぶってオーケストラ(が大事)とか言いますが、大阪はお笑いの方が根付いている」と発言。大フィルへの年約6300万円の府補助金を2009年度から全額カットした。」と言うことらしい。
産経によると、「橋下徹・次期大阪市長が、大阪フィルハーモニー交響楽団(大フィル)や文楽協会などの文化団体に対する市の補助金について、全額カットも含めた大幅見直しを指示したことが7日、分かった。」と言うことである。
文楽について書いてある部分は、次の通り。
「大阪市から年5200万円の補助金を受ける財団法人・文楽協会も憂鬱(ゆううつ)だ。
橋下氏は09年8月、「文楽を見たが、2度目は行かない。時代に応じてテイストを変えないと、(観客は)ついてこない」と発言。07年度に3600万円あった府補助金は11年度、2000万円に減った。同協会の三田進一次長は「採算が難しく、行政が手を引くと土台が崩れる」と戸惑う。」
私は、昨年4月24日のこのブログで、「民主党「仕分け」が伝統芸を潰す」を書いて、日本芸術文化振興会への予算削減について苦言を呈したのだが、その芸術振興補助金の一部が文楽にも行っていて、それが削減されると、文楽にとっては痛手であることを記した。
その一部を転記すると、
「文楽は、松竹から見放されて一時は崩壊の危機に瀕して、大阪市や国やNHKのサポートで命脈をつないで、今日の芸術性の高さと高度な質を維持しているのだが、日本芸術文化振興会のサポートがなければ、維持不能であったであろう。
文楽協会の決算数字を見ると、事業活動収入6.9億円のうち1.57億円の補助金等収入があるが、この一部が、この振興会から出ているのであろうが、微々たるもので、しかし、それがなければ、文楽協会はやって行けない。
日本の文楽の芸術性の高さと洗練さてた技術の卓越さは、世界的にも愁眉の的で、その舞台芸術への影響力の高さは、ライオンキングをはじめ、世界中の芝居やオペラを見れば良く分かるし、歌舞伎でも同様であり、正に、日本文化の粋とも言うべき誇りなのである。」
文楽は、1955年に文化財保護法に基づく重要無形文化財に指定され、更に、ユネスコ無形文化遺産保護条約に基づく世界無形文化遺産に登録されており、日本が世界に誇る最も代表的な古典藝術の粋である。
そして、文楽は、淡路仮屋の初世植村文楽軒が「西の浜の高津新地の席」という小屋を大坂高津橋南詰で建てて、興行したのが始まりとされており、正に、大阪で生まれて大阪で育ち、大阪弁を主体とする、大阪の魂とも言うべき、恐らく、大阪が胸を張って世界に誇り得る最高の宝であり文化遺産であることには疑いの余地がない。
私は、ロンドンで開催されたジャパンフェスティバルで、大阪市と大阪財界の肝いりで派遣された文楽公演で、玉男と簔助の「曽根崎心中」を見たのだが、同行したイギリス人夫妻が、涙を浮かべて感激していた。
イギリスなので、カーテンコールに登場した玉男の徳兵衛の頬を、簔助のお初が、甲斐甲斐しく拭ってやっている仕種を見て、その優雅さ淑やかさが、また、イギリス人夫妻を感激させて、その後会う度に、思い出を語り続けていた。
この夫妻だが、ロンドンの著名なエンジニアリング会社の社長夫妻で、私達を毎年、グラインドボーンのオペラへ招待してくれ、私たちもロイヤル・オペラに招待するなど、クラシック音楽やシャイクスピア劇を含めて、正に、芸術鑑賞の友であった。
それは兎も角、ロンドンのロイヤル・オペラ劇場だが、サッチャー政権が大鉈を振るってグレイター・ロンドン(東京都庁に当たる)をぶっ潰してしまったのだが、この劇場の改修工事費をねん出するためには、ない袖を振れなかったので、公営賭博の益金などを当てて、立派にやりとおして、素晴らしい劇場に衣替えさせた。
このロイヤル・オペラ劇場もそうだが、あのウィーン国立歌劇場も、ミラノスカラ座も、とにかく、世界の名だたるオペラハウスは、国家や地方自治体の手厚い保護育成や民間の献金などのお蔭で、高度な芸術水準を必死になって守り続けている。
高度な芸術は、豊かな財政援助とその価値が分かる為政者や国民あってこそ栄えるのであって、人類を限りなくアウフヘーベンし、人々に生きる喜びと限りなき希望を与えてくれるのである。
あのルネサンスを爛熟させたメディチ家の偉大な貢献と、フィレンツェの途轍もない文化文明の輝きを見れば、そのことが良く分かる。
橋下市長は、「文楽を見たが、2度目は行かない。」と言っているが、何をどこで見たのか知らないが、単に、文楽を鑑賞する能力がなくて、その価値が分からないだけであって、「時代に応じてテイストを変えないと、(観客は)ついてこない」などと言うのは古典藝術・世界文化遺産への冒涜であり、「文化は行政が育てるものではない」と言うに至っては、教養と識見、さらに、人間性さえ疑わざるを得ない。
高度な芸術は、一度、衰退を始めると殆ど回復は不可能であり、鳴きもしなければ声も出せない花や木と同じで、水やりを忘れた人に育てられると、悲しいかな、枯れてしまう。
人々の叡智と審美眼を営々と積み重ねて築き上げてきた世界遺産を守るのも殺すのも、同じ人間。
大阪の宝を守るのか殺すのか、大阪人の良識と英知が試されている。
「知事時代、「文化は行政が育てるものではない」と公言してきた橋下徹・前大阪府知事が19日に大阪市長に就任するのを前に、市内の音楽や芸能関連の団体が戦々恐々としている。
橋下知事当時、府が出していた補助金を全額カットされた大阪フィルハーモニー交響楽団(大フィル)や、「観賞したが、2度は見ない」と酷評された文楽団体などは、市から多額の補助金を受けているためだ。」との書き出しで始まる記事だが、「橋下氏は知事時代、「行政や財界はインテリぶってオーケストラ(が大事)とか言いますが、大阪はお笑いの方が根付いている」と発言。大フィルへの年約6300万円の府補助金を2009年度から全額カットした。」と言うことらしい。
産経によると、「橋下徹・次期大阪市長が、大阪フィルハーモニー交響楽団(大フィル)や文楽協会などの文化団体に対する市の補助金について、全額カットも含めた大幅見直しを指示したことが7日、分かった。」と言うことである。
文楽について書いてある部分は、次の通り。
「大阪市から年5200万円の補助金を受ける財団法人・文楽協会も憂鬱(ゆううつ)だ。
橋下氏は09年8月、「文楽を見たが、2度目は行かない。時代に応じてテイストを変えないと、(観客は)ついてこない」と発言。07年度に3600万円あった府補助金は11年度、2000万円に減った。同協会の三田進一次長は「採算が難しく、行政が手を引くと土台が崩れる」と戸惑う。」
私は、昨年4月24日のこのブログで、「民主党「仕分け」が伝統芸を潰す」を書いて、日本芸術文化振興会への予算削減について苦言を呈したのだが、その芸術振興補助金の一部が文楽にも行っていて、それが削減されると、文楽にとっては痛手であることを記した。
その一部を転記すると、
「文楽は、松竹から見放されて一時は崩壊の危機に瀕して、大阪市や国やNHKのサポートで命脈をつないで、今日の芸術性の高さと高度な質を維持しているのだが、日本芸術文化振興会のサポートがなければ、維持不能であったであろう。
文楽協会の決算数字を見ると、事業活動収入6.9億円のうち1.57億円の補助金等収入があるが、この一部が、この振興会から出ているのであろうが、微々たるもので、しかし、それがなければ、文楽協会はやって行けない。
日本の文楽の芸術性の高さと洗練さてた技術の卓越さは、世界的にも愁眉の的で、その舞台芸術への影響力の高さは、ライオンキングをはじめ、世界中の芝居やオペラを見れば良く分かるし、歌舞伎でも同様であり、正に、日本文化の粋とも言うべき誇りなのである。」
文楽は、1955年に文化財保護法に基づく重要無形文化財に指定され、更に、ユネスコ無形文化遺産保護条約に基づく世界無形文化遺産に登録されており、日本が世界に誇る最も代表的な古典藝術の粋である。
そして、文楽は、淡路仮屋の初世植村文楽軒が「西の浜の高津新地の席」という小屋を大坂高津橋南詰で建てて、興行したのが始まりとされており、正に、大阪で生まれて大阪で育ち、大阪弁を主体とする、大阪の魂とも言うべき、恐らく、大阪が胸を張って世界に誇り得る最高の宝であり文化遺産であることには疑いの余地がない。
私は、ロンドンで開催されたジャパンフェスティバルで、大阪市と大阪財界の肝いりで派遣された文楽公演で、玉男と簔助の「曽根崎心中」を見たのだが、同行したイギリス人夫妻が、涙を浮かべて感激していた。
イギリスなので、カーテンコールに登場した玉男の徳兵衛の頬を、簔助のお初が、甲斐甲斐しく拭ってやっている仕種を見て、その優雅さ淑やかさが、また、イギリス人夫妻を感激させて、その後会う度に、思い出を語り続けていた。
この夫妻だが、ロンドンの著名なエンジニアリング会社の社長夫妻で、私達を毎年、グラインドボーンのオペラへ招待してくれ、私たちもロイヤル・オペラに招待するなど、クラシック音楽やシャイクスピア劇を含めて、正に、芸術鑑賞の友であった。
それは兎も角、ロンドンのロイヤル・オペラ劇場だが、サッチャー政権が大鉈を振るってグレイター・ロンドン(東京都庁に当たる)をぶっ潰してしまったのだが、この劇場の改修工事費をねん出するためには、ない袖を振れなかったので、公営賭博の益金などを当てて、立派にやりとおして、素晴らしい劇場に衣替えさせた。
このロイヤル・オペラ劇場もそうだが、あのウィーン国立歌劇場も、ミラノスカラ座も、とにかく、世界の名だたるオペラハウスは、国家や地方自治体の手厚い保護育成や民間の献金などのお蔭で、高度な芸術水準を必死になって守り続けている。
高度な芸術は、豊かな財政援助とその価値が分かる為政者や国民あってこそ栄えるのであって、人類を限りなくアウフヘーベンし、人々に生きる喜びと限りなき希望を与えてくれるのである。
あのルネサンスを爛熟させたメディチ家の偉大な貢献と、フィレンツェの途轍もない文化文明の輝きを見れば、そのことが良く分かる。
橋下市長は、「文楽を見たが、2度目は行かない。」と言っているが、何をどこで見たのか知らないが、単に、文楽を鑑賞する能力がなくて、その価値が分からないだけであって、「時代に応じてテイストを変えないと、(観客は)ついてこない」などと言うのは古典藝術・世界文化遺産への冒涜であり、「文化は行政が育てるものではない」と言うに至っては、教養と識見、さらに、人間性さえ疑わざるを得ない。
高度な芸術は、一度、衰退を始めると殆ど回復は不可能であり、鳴きもしなければ声も出せない花や木と同じで、水やりを忘れた人に育てられると、悲しいかな、枯れてしまう。
人々の叡智と審美眼を営々と積み重ねて築き上げてきた世界遺産を守るのも殺すのも、同じ人間。
大阪の宝を守るのか殺すのか、大阪人の良識と英知が試されている。
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