20200614
ぽかぽか春庭にっぽにあニッポン語教師日誌>留学生の漢字教室(3)留学生の漢字クイズ
春庭の日本語教室だよりを再録しています。16年も前の記事ですから、忘れていますよね。
1988年に第1回日本語教育能力試験(当時は文科省の直轄試験でしたが、現在は日本語教育学会が主催)に合格して日本語教師をはじめて15年ほどたったときの記録です。今でも未熟な点は多々ありますが、16年前はもっと失敗ばかりの日本語教師でした。でも、失敗の記録も大切かと。
~~~~~~~~~~~~
2003-12-22 |
春庭のBC級ニッポン語教育研究18「サルでもできるHow to teach Nipponia Nippon語」
「授業の実際ー漢字クイズ」
12/19、年内最後の授業。最後のクラスは初級漢字クラス。
授業が終わったらその足で成田空港へ向かい、帰国する留学生もいて、じっくり初出の漢字を覚えるには、あまりよくない時間。明日からの冬休みを前に、皆浮き足だっている。
本当は、字形に注意しながらゆっくり書き練習、音読み訓読み気をつけて熟語や漢字交じり文の読み練習をしなければならないのだが、どうやら、いくら練習しようとしても、右の耳から入った説明が左の耳から出ていってしまう状態。
新出漢字の導入はちゃっちゃっと終わりにする。練習は「冬休みの宿題」ということにしてしまった。
10月に来日して「あいうえお」から習い始めたクラス。これまでの3ヶ月、とても仲がよく助け合って勉強してきた。
最後くらい漢字詰め込みはお休みにして、ちょっと遊びましょう。
今日の初級漢字クラスのメインイベントは、「Five hint 」というクイズ。見たことのない漢字や、忘れている漢字を出題し、3つのヒントで答えをいう。
3つのヒントだけで答えられたら3ポイント。当たらなかったらひとつ追加の質問ができる。ここであたったら2ポイント。当たらなかったらさらに追加の質問。ここで当たったら1ポイント。はずれたらゼロ。ポイントなし。
最初に私がデモンストレーション。私の例題は「兎」と「象」「薔薇」など、初級クラスでは、教えない漢字。見たこともない漢字に頭をひねったあと、ヒントを言って答えさせる。
例題第1問。「兎」と書いた紙を見せる。誰も読めない。それはそうだ。「うさぎ」という日本語は知っていても、漢字はまだ知らない。
「First hint、最初のヒント。動物です」
学生「?」
「二番目のヒント。小さくてかわいいです」 学生「Cat? ねこですか?」
「いいえ、ちがいます。最後のヒント。耳が長いです」
学生「わかりました。Rabit」
「日本語でどうぞ」「えーと、うー」
別の学生「うさぎ!」
「正解です」という具合。
ラビットはわかったのに、うさぎが答えられなかった学生はくやしそう。
次に、クラスを半分に分け、赤チームに赤いマジックペン、青チームに青いマジックを渡す。二人ずつペアを組み、ペアワークで、正解にする漢字とヒントのことばを考えさせる。
赤チームは、赤いマジックで紙に正解を書いておく。赤チームが考えた正解は「日本酒」「東京タワー」「鎌倉の大仏」「日本、酒、東京、大」は既習漢字だが、「鎌倉、仏」は未習。未習の漢字は、学生に聞いて私がこっそり書いておく。
「タワー」と、カタカナで書くと簡単にわかってしますから、塔という漢字も教える。
青いマジックを使う青チームが考えた正解は「新幹線」新は既習。幹線は未習。「年賀状」年は既習、賀状は未習。三問目の正解は「私たちは漢字、書けます」と言って、正解を見せてくれなかった。
ふたつのチームがかわりばんこに出題。
青チームの学生が自分たちで考えたヒントを言う。
「長いです」「とても速いです」「安くありません、高いです」
冬休みに旅行を計画している学生から「しんかんせん」という正解が出た。3ポイントゲット。
赤チームのヒント。「とても大きいです」「いつも座っています」「外に座っていますが、寒くありません」正解が出ない。
青チームからの質問「動物ですか」「いいえ、どうぶつじゃありません」
ここでちょっと私の助け船。いすの上にあぐらで座って手で印を結び「I'm a buddist」それで「ダイブツ」という答えが出た。ここでもめた。
「ナラのダイブツは外にいません。かまくらと言わないから、正解じゃない」という赤チーム。「ダイブツ」があたったのだから、正解だという青チーム。「じゃ、1点だけ」と、仲裁。
青チームの第二問「日本の人はこれが好きです」「フィフィさんも好きです」「飲み物です」
赤チームの答えは、すぐに出た「お酒」「日本酒」。みんなどっと笑う。フィフィさんの日本酒好きはクラスで有名らしい。
年賀状は、「じゅうしょとなまえを書きます」「お正月にもらいます」「郵便局へ行きます」というヒントで正解が出た。
東京タワー。「一番高いです」「きれいです」「のぼります」というヒントで出た答えは「ふじさん」
「ちがいます。東京タワーです」と、正解が発表されると、青チームは「ふじさんはきれいです。東京タワーはきれいじゃないです」と、ヒントの出し方が悪いとブーイング。
「夜、ライトをつけるときれいですよ」と、私のヘルプ。
青チーム、最後の問題。出題者はやけにうれしそう。
「きれいです」おや、また「きれいです」というヒント。あとでブーイングがでないといいけれど。「かわいいです」ますますブーイングが出そうなヒント。
「いつも冗談を言います」
赤チームは、「わかった、わかった」と大喜び。声をそろえて「春庭先生」と言い、みな大笑い。
青チーム「正解です」。私も大笑いして「春庭先生はきれいです。かわいいです。わあ、それは冗談ですねぇ」
めでたく正解がでたところで、漢字クイズはおしまいにした。
私の冗談好きも、クイズにしてしまう学生達の機転に、日本語の上達を確かめて、「みなさん、たのしい冬休みをすごしてください」と、ごあいさつ。
「よいお年を」「よいお年をおむかえください」という年末のあいさつも上手に言えるようになって、今年の授業おさめ。
<つづく>
ぽかぽか春庭にっぽにあニッポン語教師日誌>留学生の漢字教室(3)留学生の漢字クイズ
春庭の日本語教室だよりを再録しています。16年も前の記事ですから、忘れていますよね。
1988年に第1回日本語教育能力試験(当時は文科省の直轄試験でしたが、現在は日本語教育学会が主催)に合格して日本語教師をはじめて15年ほどたったときの記録です。今でも未熟な点は多々ありますが、16年前はもっと失敗ばかりの日本語教師でした。でも、失敗の記録も大切かと。
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2003-12-22 |
春庭のBC級ニッポン語教育研究18「サルでもできるHow to teach Nipponia Nippon語」
「授業の実際ー漢字クイズ」
12/19、年内最後の授業。最後のクラスは初級漢字クラス。
授業が終わったらその足で成田空港へ向かい、帰国する留学生もいて、じっくり初出の漢字を覚えるには、あまりよくない時間。明日からの冬休みを前に、皆浮き足だっている。
本当は、字形に注意しながらゆっくり書き練習、音読み訓読み気をつけて熟語や漢字交じり文の読み練習をしなければならないのだが、どうやら、いくら練習しようとしても、右の耳から入った説明が左の耳から出ていってしまう状態。
新出漢字の導入はちゃっちゃっと終わりにする。練習は「冬休みの宿題」ということにしてしまった。
10月に来日して「あいうえお」から習い始めたクラス。これまでの3ヶ月、とても仲がよく助け合って勉強してきた。
最後くらい漢字詰め込みはお休みにして、ちょっと遊びましょう。
今日の初級漢字クラスのメインイベントは、「Five hint 」というクイズ。見たことのない漢字や、忘れている漢字を出題し、3つのヒントで答えをいう。
3つのヒントだけで答えられたら3ポイント。当たらなかったらひとつ追加の質問ができる。ここであたったら2ポイント。当たらなかったらさらに追加の質問。ここで当たったら1ポイント。はずれたらゼロ。ポイントなし。
最初に私がデモンストレーション。私の例題は「兎」と「象」「薔薇」など、初級クラスでは、教えない漢字。見たこともない漢字に頭をひねったあと、ヒントを言って答えさせる。
例題第1問。「兎」と書いた紙を見せる。誰も読めない。それはそうだ。「うさぎ」という日本語は知っていても、漢字はまだ知らない。
「First hint、最初のヒント。動物です」
学生「?」
「二番目のヒント。小さくてかわいいです」 学生「Cat? ねこですか?」
「いいえ、ちがいます。最後のヒント。耳が長いです」
学生「わかりました。Rabit」
「日本語でどうぞ」「えーと、うー」
別の学生「うさぎ!」
「正解です」という具合。
ラビットはわかったのに、うさぎが答えられなかった学生はくやしそう。
次に、クラスを半分に分け、赤チームに赤いマジックペン、青チームに青いマジックを渡す。二人ずつペアを組み、ペアワークで、正解にする漢字とヒントのことばを考えさせる。
赤チームは、赤いマジックで紙に正解を書いておく。赤チームが考えた正解は「日本酒」「東京タワー」「鎌倉の大仏」「日本、酒、東京、大」は既習漢字だが、「鎌倉、仏」は未習。未習の漢字は、学生に聞いて私がこっそり書いておく。
「タワー」と、カタカナで書くと簡単にわかってしますから、塔という漢字も教える。
青いマジックを使う青チームが考えた正解は「新幹線」新は既習。幹線は未習。「年賀状」年は既習、賀状は未習。三問目の正解は「私たちは漢字、書けます」と言って、正解を見せてくれなかった。
ふたつのチームがかわりばんこに出題。
青チームの学生が自分たちで考えたヒントを言う。
「長いです」「とても速いです」「安くありません、高いです」
冬休みに旅行を計画している学生から「しんかんせん」という正解が出た。3ポイントゲット。
赤チームのヒント。「とても大きいです」「いつも座っています」「外に座っていますが、寒くありません」正解が出ない。
青チームからの質問「動物ですか」「いいえ、どうぶつじゃありません」
ここでちょっと私の助け船。いすの上にあぐらで座って手で印を結び「I'm a buddist」それで「ダイブツ」という答えが出た。ここでもめた。
「ナラのダイブツは外にいません。かまくらと言わないから、正解じゃない」という赤チーム。「ダイブツ」があたったのだから、正解だという青チーム。「じゃ、1点だけ」と、仲裁。
青チームの第二問「日本の人はこれが好きです」「フィフィさんも好きです」「飲み物です」
赤チームの答えは、すぐに出た「お酒」「日本酒」。みんなどっと笑う。フィフィさんの日本酒好きはクラスで有名らしい。
年賀状は、「じゅうしょとなまえを書きます」「お正月にもらいます」「郵便局へ行きます」というヒントで正解が出た。
東京タワー。「一番高いです」「きれいです」「のぼります」というヒントで出た答えは「ふじさん」
「ちがいます。東京タワーです」と、正解が発表されると、青チームは「ふじさんはきれいです。東京タワーはきれいじゃないです」と、ヒントの出し方が悪いとブーイング。
「夜、ライトをつけるときれいですよ」と、私のヘルプ。
青チーム、最後の問題。出題者はやけにうれしそう。
「きれいです」おや、また「きれいです」というヒント。あとでブーイングがでないといいけれど。「かわいいです」ますますブーイングが出そうなヒント。
「いつも冗談を言います」
赤チームは、「わかった、わかった」と大喜び。声をそろえて「春庭先生」と言い、みな大笑い。
青チーム「正解です」。私も大笑いして「春庭先生はきれいです。かわいいです。わあ、それは冗談ですねぇ」
めでたく正解がでたところで、漢字クイズはおしまいにした。
私の冗談好きも、クイズにしてしまう学生達の機転に、日本語の上達を確かめて、「みなさん、たのしい冬休みをすごしてください」と、ごあいさつ。
「よいお年を」「よいお年をおむかえください」という年末のあいさつも上手に言えるようになって、今年の授業おさめ。
<つづく>