医科栄養学・栄養医学ブログ

医学部で医科栄養学を学んだ経験と最新の栄養医学をこのブログに反映したいと、考えています。

認知症のリスクと糖尿病、うつ病との関係について  栄養医学ブログ 日本ビタミンC研究会 藤井毅彦

2015-03-09 13:05:16 | 健康・病気

高齢化に伴い認知症のリスクが高まりますが、二型糖尿病や動脈硬化症、それにうつ病を有する人は、そのリスクが高まる、と多くの研究では報告されています。また、日本国でも急速な人口の老齢化により認知症が増え、政府がその対策を国家的喫緊の課題と位置づけているようです。

University College LondonのClaudia Cooper博士らの研究によると、軽度の認知障害の人は、二型糖尿病やうつ病を伴っている場合、認知症のより高い発症のリスクがあります。軽度の認知障害(MCL)は、正常な老化と認知症の間にあり、MCLの精神機能は、年齢相応よりは、より低下しております。このことは、65歳の人で19%見られ、一般人口群の3%と比較して、3年以内に認知症を発症する、と報告されています。

最近の"American Journal of Psychiatry"誌によると、62件の別々の研究からのデータを分析して、総計15,950名の軽度認知障害と診断された人々を追跡調査し、二型糖尿病の人は、65%ほど認知症を発症しやすく、また、うつ症状を有する人は、認知症の症状を二倍より高く発症しやすいようです。なお、アルツハイマー認知症は、脳の二型糖尿病であるという研究も有りますが、更なる研究が求められます。

精神機能と身体的健康の間には強い関係があり、身体を健康に保つことは、脳の機能を保つ上に役立ちます。食事や気分の改善のための生活習慣の改善は、認知症を避けるため、軽度認知障害の人や高齢者にとって有益だけでなく、多くの、他の健康上の利点をもたらします。

この博士らの再調査では、認知症発症の予防のため、二型糖尿病の改善やうつ病の改善、それに食事の改善が重要です。その予防のため、社会的活動や適度の身体的活動と共に、地中海性食事や薄味の和食が推奨されています。なお、これらの食事は、野菜、果物、魚介類を多く用い、獣肉や飽和脂肪酸を少なくした料理です。Alan Thomson博士らは、軽度の認知障害の人での医学的、かつ精神医学的なこれら二つ以上の疾患を持つ場合、認知症予防のため初期介入の重要性と栄養医学的な治療の可能性を強調しております。更なる研究を期待しています。なお、認知症の栄養医学的対策は、以前のこのブログでも紹介しています。

References
Claudia Cooper, et al: Modifiable predictors of dementia in mild cognitive impairment. American Journal of Psychiatry. 2015
Diabetes, depression predict dementia risk in people with slowing minds. ScienceDaily. Feb 20,2015