医科栄養学・栄養医学ブログ

医学部で医科栄養学を学んだ経験と最新の栄養医学をこのブログに反映したいと、考えています。

糖尿病、心臓疾患、肥満、ガンと血中アディポネクチン値、セラミドの関係について 栄養医学ブログ

2012-04-21 20:57:55 | 健康・病気

最近、いろんな疾患とアディポネクチン値の関連が注目されています。いろんな研究者の論文をまとめてみると、新しい知見が見えてきます。それを参考に難しい疾患に対する栄養医学的戦略を考えたいと、思います。

血中アディポネクチン値を調べることにより、糖尿病、心臓疾患、ガン、肝臓病などの進行状態が、予測できるようになりました。飢餓ホルモンとして知られている、アディポネクチンは、未だ神秘のベェールに包まれています。新しい発見では、アディポネクチンが、いろんな疾患に対し、新しい治療法への道を開くことができるヒントになる可能性があるようです。

South west 大学医療センターの研究によると、アディポネクチンは、体の中で多様な役割を演じ、その測定値は糖尿病、心臓疾患、あるいはガンなどの進行状態を予測できると、その研究は示唆しています。生物学的機能に関しては、アディポネクチンの役割は、体重を減らすことです。

現在まで、これら異なった現象の間の明らかな関連は認められませんでした。アディポネクチン(飢餓ホルモン)は、アポトーシスとして知られている"細胞の自殺"を促進するセラミド(脂質のサブセット)と相互作用をすることを、この大学の発見は示唆しています。

インスリンと心筋細胞をつくる膵臓細胞の自己自殺の誘導モデルを用い、その細胞にアディポネクチンを入れた時、セレミドは破壊的作用から有益な作用に変わりました。

アディポネクチンは、本質的にこのugly cousinに対し、変化を提供します。高値のセラミドは糖尿病を進行させます。それは膵臓細胞を殺すからです。なお、William Holland博士らは、この発見をモデル動物とin vitroで証明しました。アディポネクチンにより、細胞死からこれらの細胞を守ることができるβ―細胞と心筋細胞の、これらモデルのアポト―シスを利用することにより、証明できました。

アディポネクチンは、インスリン感受性と肥満のコントロールに於いて役割を演じます。アディポネクチンは飢餓を防止する皮下組織に、余分の脂肪を貯えるのに役立つホルモンです。

もっと多くの脂肪が貯えられる時(内臓脂肪など)、アディポネクチン値はさらに低くなり、体は心臓疾患、肝臓病、ガンそれに糖尿病などを発症させ、炎症が起った器官に於いて。脂肪を貯え始めます。しかし、外からアディポネクチンの産生を促す栄養素(EPA,VD,Resveratrolなど)を補給して、その器官の炎症を抑え、疾患の進行を止めることができると、考えられます。

アディポネクチンは大変重要で、脂質に対し"鍵"となる操作因子です。アディポネクチンの役割を理解することは、糖尿病、体重減少、心臓疾患、ガンなどの疾患に対し、よりよい治療法を提供すると、考えられます。現在、世界の研究者は、細胞の生存と脂質代謝に対するアディポネクチンの重要性に注目しています。

ところで、話は変わりますが、肥満、糖尿病、メタボリック症候群の予防基準としての腹囲は、国際基準、日本基準を、一般的な男女の身長差、脂肪量の差、それに筋肉量の差を勘案して、いろんな説が出ていますが、人種によっても差が有るようです。

Reference

Adiponectin Levels could Predict Diabetes, Heart Disease:  Kathleen Blanchard , December 28, 2010


糖尿病、肥満、動脈硬化症とアディポネクチン産生療法について その一 栄養医学ブログ

2012-04-15 22:01:51 | 健康・病気

アディポネクチンと糖尿病との関係が注目されています。アディポネクチンは、肥満に於いて脂肪やグルコース(血糖)をコントロールする、体内で産生される、蛋白質を基本とするホルモンです。アディポネクチンは、インスリンが代謝される時、インスリンを直接制御します。そして、研究が進行中ですが、2型糖尿病の管理に於いて鍵となる役割を演じると、信じられています。アディポネクチン値は肥満した人達では異常に低く、健康に良い食事が、アディポネクチンの産生に寄与する可能性があります。そして、そのことが、糖尿病の進行を阻害するのに役立つ可能性があります。アディポネクチンは、血管の内側の細胞組織の炎症を減らし、心臓血管系疾患に、いくらか臨症上の期待をもたらします。

アディポネクチンは心臓の代謝を好ましい方向に持っていくことと関係した、脂肪組織から分泌されるぺプタイド様ホルモンです。アディポネクチンは、2型糖尿病、肥満、アテローム性動脈硬化症、それにNAFLDなどの疾患に於いてよい結果をもたらす役割を果たします。すなわち、アディポネクチン値が高ければ高い程、健康状態が良くなります。

現在、アディポネクチン値を高める運動や栄養療法が研究されています。ここでは、現在、わかっている方法について、かいつまんで述べます。アディポネクチン値を高めるための運動では、心臓血管系を良くするためには、少なくとも一週間に三度、一日あたり20分歩くことです。

次に生活習慣を変えることです。飲酒をやめ、禁煙して下さい。大豆などの植物性蛋白質の豊富な食品、プロバイオティクス、オメガ―3不飽和脂肪酸を含む魚(EPA,DHAを多く含む)、果物、野菜、海草、それに全粒穀物とビタミン、ミネラルを多く含む食品を食べて下さい。これらすべては、内臓脂肪の産生を減らし、アディポネクチン産生を高めることができます。なお、十分それらを摂取できない場合は、栄養サプリメントで補って下さい。

ビタミンDの摂取と前記食品の摂取がアディポネクチン値を高め、内臓脂肪の産生を減らすことにより、肥満を間接的に減らすかもしれません。ある症例では、ビタミンDと肥満に関しては、三年以上、プロバイオティクスを併用して、ビタミンD5000国際単位/日を摂取しました。しかし、血中ビタミンD値はまだ17ng/mlでした。ここでの問題点は、その吸収不良とプロバイオティクスを一緒に摂取したせいでした。ビタミンD値は一年以内に54ng/mlまで改善しました。それ以降安定しました。面白い事に、体重が70ポンドも減り、現在は標準体重になりました。しかし、わずかに体脂肪が余分にありました。その同じ年に医療の続きを継続しながら体脂肪が10%、体重が5ポンド以下、減りました。代謝上では、このことはCaとビタミンDの吸収の改善とインスリン、コーチゾン、レプチンなどのホルモンシグナルの改善を伴っていることに気づくに違いありません。それらは、内臓脂肪の減少と高線維食、良好なインスリンコントロール、それにプロバイオティクスを併用してビタミンDを4000~5000国際単位/日、摂取したことによる有効性と理解されます。

その他に、レスべラトロールにもアディポネクチン産生効果があることが報告されています。

なお、これらは体に優しい予防・治療法ですが、ビタミンDは脂溶性なので少量で効果が出、体内で長く留まります。従って、大量摂取は副作用が出ますので、控えましょう。また、現在、世界の研究者達が、必死でアディポネクチンを増やす栄養生化学的治療法を研究中です。

References

How to increase Adiponectin: eHow.com

Association between vitaminD and adiponectin: Vitamin D Council Blog

 

 


炎症とプロバイオティクスについて その一 栄養医学ブログ

2012-04-06 22:15:28 | 健康・病気

今回は、プロバイオティクスの抗炎症作用について、いろいろ考察していきたいと考えています。さて、プロバイオティクスは、乳糖不耐症などの消化管のトラブル、過敏性腸管症候群、消化性潰瘍などの克服に関して、大変注目されています。この有益な微生物は、心臓疾患、ガン、それに関節炎などの慢性疾患の原因となる一次性因子の一つである、炎症との戦いに役立つ可能性があります。

炎症は、疾患もしくは感染に対する免疫反応の、生まれつきの性質です。体が、外傷を受けたり、刺激物質の存在を感知した時、その影響を受けた細胞は、血管の透過性をもっと増強する物質である、ヒスタミンを遊離します。損傷を修復したり、病原体を殺すことができるその影響を受けた組織へ、血管から液性物質と白血球を血管透過性により、流入させます。不幸にも、この役立つ免疫反応は、一連の、よく知られた、不快な作用(炎症の主な症状である熱、腫れ、発赤、それに痛みなど)をもたらします。炎症が慢性であるなら、健康上の問題をもたらします。

プロバイオティクスは、それが生きたまま利用される時、健康上の利点をもたらす微生物(善玉菌と呼ばれている)です。あなた方はすでに体内に生きたプロバイオティクスがいます。善玉菌は腸管システムに存在し、感染をもたらす悪玉菌(大腸菌など)による侵入を防ぎます。

プロバイオティクス効果に関する研究では、免疫反応を緩和したり、炎症を緩和する作用について、更なる洞察を提供しています。米国の関節炎財団は、関節炎の症状を緩和するBifidobacterium infantis(乳酸菌の一種)の抗炎症作用を明らかにした、最近の研究を認めています。動物実験では抗炎症作用が認められましたが、ヒトでの更なる研究が、米国で近々に行われる予定です。Bifidobacterium infantisは腸管の炎症を緩和でき、抗炎症作用を有しますが、プロバイオティクス菌の異なった種の間には性質の違いが存在します、従って効果も違います。自分の腸管に合った種を見つけ出して下さい。体調がよくなる乳酸菌の種が自分に合ったものです。どの乳酸菌も体には毒性がありませんが、効果は違います。いろいろ乳酸菌、納豆菌、酪酸菌サプリメントや納豆、ケーフィル、ピクルス、ヨ―グルトなども試してみるのも、一法です。なお、これらは抗炎症剤に比べて、体に優しい治療法です。

Reference

Do probiotics decrease inflammation? :Charis Grey, Aug 18,2011. LIVESTRONG. COM

 

 

 

 


糖尿病と酵素について その一 栄養医学ブログ

2012-04-04 18:55:24 | 健康・病気

糖尿病は、男性、女性、それに子供達を悩ましています。この油断のならない病気は、心臓病、脳卒中発作、高血圧、失明、腎臓病、神経系疾患などの合併症をもたらします。毎年、足や爪の切断は、事故、外傷性でないものの原因の60%を占めます。2004年、米国の71000人の糖尿病患者は、下部手足の切断を経験しています。現在の治療法は、血糖値と血中グルコース値のコントロールに焦点が集中しています。また、もう一つの重要な管理オプションは、加工食品を減らしたり、運動をして、体重を減らすことです。体重を減らすことにより、合併症を防ぐのに役立つ体のストレスを減らすことです。それによりグルコース値を減らすことができます。

Brigham Young 大学のWilliam W. Winder博士は、血液から最適のグルコースを吸収する、筋肉の引き金となる因子である重要な酵素を同定しました。彼はラットでの研究で、運動が、AMP活性化賦活素(AMPK)と呼ばれている酵素を産生することを、証明しました。筋肉が収縮する時、この酵素は活性化します。運動する時、エネルギー産生に用いられる筋肉組織へ、血流から更に多くのグルコースを輸送するため、GLUT4として知られている蛋白質を筋肉が利用します。糖尿病であるなら、筋肉でのグルコースの利用度の増大は、血流中の余分のグルコースを用いるよい方法です。したがって、運動によりAMPKの産生を増大させて、グルコースの利用を高めることが重要です。こうすることにより、血糖値を管理できます。

"Diabetes"という医学雑誌の論文では、benfotiamine(ビタミンB1誘導体)を摂取した糖尿病患者は、日をおうごとにグルコース輸送が改善されたと、報告されています。ちなみに、ビタミンB1は、酵素の補酵素となっています。水溶性ビタミン、必須ミネラルには、酵素の補酵素となっているものが多く、それらのビタミン、ミネラルの補給は、一種の糖尿病の酵素療法です。また、パパイア、マンゴーなどの生の果物や野菜、豆などには、いろんな酵素が含まれています。果物は酵素のよい供給源です。糖分に注意して適正量摂取して下さい。さらに、野草や果物、野菜を原料にして発酵することにより、酵素がいろいろ、多く含まれる酵素飲料が発売されています。高価なのが難点です。糖尿病の酵素療法も生活に取り入れることは、賢明な方法です。ニガウリ、緑茶、シナモン、ビール酵母、ネギ科の野菜なども糖尿病患者に有益な食品です。なお、アレルギー体質のヒトは、栄養医学に詳しい医師に相談下さい。

References

Enzymatic therapy for diabetes: Barbara A, LIVESTRONG. COM

Enzymatic therapy with vitamins &supplement: Alison Steliner, LIVESTRONG.COM

 


・統合失調症とグリシン、オメガー3不飽和脂肪酸について その一 栄養医学ブログ

2012-04-02 16:07:24 | 健康・病気

統合失調症の栄養医学的療法については、以前にPauling博士とHoffer博士などが、ビタミンB3(ナイアシン)、ビタミンB複合体、ビタミンCの併用による、統合失調症に対する効果を発表し、臨床でも寛解効果を得ています。近年になって非必須アミノ酸であるグリシンのN-メチル-D-アスパルテイト受容体(NMDA受容体、神経伝達物質)との関連が、明らかになり、臨床試行も行われています。また、Hoffer療法とグリシン療法併用療法も臨床試行が行われつつあります。これらの療法は、マイルドな治療法であるので、実施しやすい、体にやさしい療法です。

NMDA受容体は、脳全体に存在し、学習、記憶、脳の発達、それに脳全体の生化学的処理過程に重要です。NMDA受容体は、もう一つの神経単位からド-パミン(もう一つの神経伝達物質)の遊離を規制し、コントーロールするのに役割を果たしています。グリシンの欠乏は、NMDA受容体の機能不全の原因となり、そのことは、ドーパミン値の高値をもたらし、統合失調症様症状の進行をもたらす可能性があります。

グリシンと共に抗精神病薬を摂取することは、統合失調症の症状の改善につながることを、少しの研究は示唆しています。しかしながら、この治療法の実用化は、試行で40~50g/日の大量グリシンを用いるので、制限があります。低い投与量のグリシンは、標準療法をサポートし、強化するのに有益である可能性があります。更なる研究が必要です。

統合失調症でのグリシンの一般的投与量は、白人の場合は、体重1Kgあたり8g/日です。以前の研究では、大部分の人は、40~90g/日程度摂取しました。この大量投与は、医師の監督の下に摂取して下さい。グリシンなどアミノ酸の大量摂取は、腎疾患のヒトには副作用を起こします。また、グリシンの摂取では、時々、胃の不調、下痢がありますが、量を減らせばほとんど副作用はありません。なお、日本人の場合は、グリシンの摂取量は、白人の量の半分でも有効でないかと、考えられます。副作用の出ない自分の最適量を、時々の体調や臨床データを基に確認することも、治療に必要と考えられます。

オメガー3不飽和脂肪酸(魚油)は、EPAとDHA を含み、主として魚油の中に含まれています。これらは体の機能保持に必要です。健康保持に必要な値は、食事単独でたやすく摂取できるより、より多いと考えられます。これらの油は、心臓疾患、糖尿病、関節炎らの疾患に対し、補完療法として用いられています。なお、統合失調症でも、EPAは、ナイアシン(vitaminB3)程の効果は有りませんが、弱い効果が有りますので、グリシンやナイアシン、ビタミンB複合体の補完療法として用いることは、必要と考えます。

統合失調症患者は、体内の必須脂肪酸の値が低いようです。EPA/DHAを摂取した統合失調症患者の研究では、これらの油は治療のための薬物療法の薬物量を減らせると、報告されています。さらに、少しの研究では、オメガー3不飽和脂肪酸を摂取する統合失調症患者は、症状が少しも現れないようです。また、EPA/DHA療法は、補完療法として生き残ると考えられます。

オメガー3不飽和脂肪酸の一般的投与量は、1~4g/日です。魚油サプリメントは、最大約18%のEPA/DHAを含んでおり、それを1g摂取できます。魚油は、幾人かの人々では、心臓血管系疾患の減少と高コレステロール値を下げることが、証明されています。同様に、EPA/DHAは、糖尿病の血糖値を下げ、また、ある人々では、それを上げます。1g/日以上のEPA/DHAを摂取し、糖尿病薬、心臓血管病薬を摂取し続けることを考慮しているのなら、摂取前に、詳しい医師、薬剤師に相談下さい。魚油を摂取することによる最大の副作用は、マイルドです。魚油摂取による抗血液凝固作用があるので、抗血液凝固薬と併用して飲まないでください。オメガ―3不飽和脂肪酸の副作用は、胃の不調、鼻血、軟便などですが、少量ではその副作用はでません。そして、Hoffer療法(VB3+VC+VB複合体)とグリシン+EPA/DHA療法の併用は、現時点で体に優しい、ベストの予防・治療法だと、考えられます。

Reference

Integrative Terapies for Schizophrenia- Omega-3 fatty acids(Fish oils) and glycine: Scott Olson, ND . Seven Counties Services, Inc.