汚れた大気に含まれるPM2.5やPM10などが原因の大気汚染から心臓を守る、水溶性抗酸化物質(ビタミンCやグルタチオン、抗酸化酵素など)の効果については、以前のこのブログで紹介しましたが、今回は、脂溶性抗酸化物質(魚油のEPAやDHAなど)の効果について紹介したい、と考えています。
Romieu I博士らの研究者は、オメガー3不飽和脂肪酸(ビタミンF)を食事に補充することは、大気汚染への暴露から心臓を守ってくれる可能性が有ることを、発見しました。
ところで、自動車の排気ガスや産業活動、それに石炭発電所などによる大気汚染が原因の高濃度の微小粒子状物質(PM2.5やPM10など)への暴露は、体の炎症の増大と酸化ストレスの増大により、心臓にダメージを与えることが知られています。PM2.5は、Cu/Zn superoxide dismutase(SOD), Manganese SOD, それにglutathione peroxidase(GSH-Px)のような、体の抗酸化酵素の防御作用を減少さす可能性があります。
オメガー3多価不飽和脂肪酸(魚油など含まれるEPA,DHAなど)の摂取を増やすと、抗炎症作用をもたらすようです。彼ら研究者は、慢性的にPM2.5に暴露されているメキシコ市在住の看護師の居住者を募集し、ニ重盲験テスト形式で魚油か大豆油のどちらかを摂取してもらうため、無作為に振り分けました。そして、7ケ月間、彼らの追跡調査を実施しました。看護師の自宅内のPM2.5を測定し、魚油を与える前と与えた後に抗酸化酵素の値を測定しました。
魚油もしくは大豆油の摂取は、抗酸化酵素Cu/ZnSODの活性の増大と関係し、抗酸化物質グルタチオンの血漿値の増大とも関係していました。魚油は大豆油に比べて、より大きい防御作用を示していました。この違いは、多分、魚油がDHAとEPAを含み、大豆油がαーリノレン酸を含むからではないか、と研究者らは考えました。魚油は、これらバイオマ―カー(抗酸化酵素)に作用するPM2.5に対し、阻害作用を有する、と考えられます。更なる研究により、PM2.5に対し、魚油が有効であることを、期待しています。とりあえず、水溶性抗酸化栄養素と共に魚油などの脂溶性抗酸化栄養素を摂取することも、PM2.5対策の一つと考えられ、多めの野菜や果物の摂取と共に重要である、と考えられます。
References
The effect of supplementation with omega-3polyunsaturated fatty acids on markers of oxidative stress in elderly exposed to PM2.5: Romieu I et al, Environ Health Perspect. Sep, 2008; 116(9)
Omega -3s may protect the heart against pollution:http:/www.cpmedical.net/articles/
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