医科栄養学・栄養医学ブログ

医学部で医科栄養学を学んだ経験と最新の栄養医学をこのブログに反映したいと、考えています。

PM2.5への暴露と抗酸化酵素、グルタチオンの細胞での変化について 日本ビタミンC研究会

2013-05-16 23:17:22 | 健康・病気

大気の汚れにより、自動車、衣類、それに空の汚れが目立つ昨今ですが、その原因となる
微小粒子状物質(PM2.5やPM10など)の煤(すす)を、私たちは知らないうちに吸い込み、体の異変を引き起こしていますが、今回は、そのことにより、細胞のグルタチオン(抗酸化栄養素)と
抗酸化酵素の値が減少することが、ラット(白い色をしたネズミ)での研究で明らかになりました。従って、外からグルタチオンや抗酸化酵素(野菜や果物、それに発酵食品,食物発酵酵素飲料・粉末などに含まれている)を摂取することも、PM2.5時代を乗り越える知恵である、と考えます。

車の排気ガスは、多環芳香族炭化水素(PAHs)が多く含まれ、都市の空気汚染(PM2.5やPM10など)の有力な原因となっています。PM(PM2.5とPM10を総称したもの)への暴露は、子供のような、その影響を受けやすい人口群において、呼吸器系、心臓・血管系の疾患への罹患率と死亡率に関係しています。さらに、PMは、喘息の進行と悪化の一因となります。このことは、PMの中にelectrophilesの存在、もしくは多環芳香族炭化水素の代謝によるelectrophilesの発生により起こると考えられます。

細胞内に豊富な、抗酸化物質であるグルタチオン(GSH)は、electrophilesの抱合と活性酸素を減少さすことにより、細胞を保護します。グルタチオン依存性フェイズⅡ解毒酵素(glutathione peroxidaseとglutathioneS-transferase)は、それぞれ、代謝と抱合を促進します。環境の
微小粒子状物質は、構成がよく変化し、系統的な疫学調査・研究を困難にしています。

カリフォルニア大学のJakie K. W Chan博士やSean D. Kodani博士らは、in vivoでの研究のために、再現可能な、前もって混合した、微細な光炎性微小粒子状物質(PFP)を生じせしめる
システムを開発しました。肺の病気に罹るのに、PFPが作用するのを判定するため、生後7日の
ラットと成長したラットに、22μg/m3のPFPを6時間暴露させ、吸入させました。肺性グルタチオン
と関係するフェイズⅡの解毒遺伝子と蛋白質発現は、暴露後、2,24,48時間後に評価されました。

グルタチオンの、最初の、より高い基準値に関わらず、ラットの新生児は、グルタチオンの著しい枯渇を示しました。さらに、成人ラットに比べて新生児ラットは、フェイズⅡ酵素(glutamate
cysteine  ligase, glutathione reductase, glutathioneS-transferase, それに、glutathione
peroxidaseなど)の誘導の減少を観察しました。これらのことから、成長している新生児ラットは、環境汚染に対し、適切な対応を妨げやすく、正常な発達パターンから外れやすい、と結論づけられます。人類の新生児にも言えるのでないか、と考えられ、栄養医学的対応が喫緊の課題となっています。

Reference

Age-Specific Effects on Rat Lung Glutathione and Antioxidant Enzymes after Inhaling Ultrafine Soot:Jackie K. Chan et al, American Journal of Respiratory  Cell and Molecular
Biology, No.1 (2013), pp. 114-124