医科栄養学・栄養医学ブログ

医学部で医科栄養学を学んだ経験と最新の栄養医学をこのブログに反映したいと、考えています。

ガン修復遺伝子BRCA2のDNA修復機能について 栄養医学ブログ 日本ビタミンC研究会 藤井毅彦

2016-12-14 14:57:43 | 健康・病気

ヒトの細胞は、活性酸素などの攻撃で、日夜、DNAが損傷を起こしていますが、幸いなことに、DNA修復遺伝子が傷ついたDNAを修復し、ヒトをガンの発症から守っています。ところが、その修復遺伝子が変異を起こすと、乳がんを初め、卵巣がん、前立腺がん、すい臓がんなどを発症する、と報告されています。

ロンドン癌研究所のShahid博士等の研究によると、精製したガン修復遺伝子BRCA2を電子顕微鏡で撮影し、BCRA2が他のタンパク質やDNAとどのように作用するか調べ、その画像からBRCA2がダメージを受けたDNAをどのようにして修復するか、明らかになりました。

バラバラになったDNAの線維の上に、短いフィラメントを形づけるのにRAD51(DNAの二重鎖切断の修復に関与するたんぱく質)が役立っており、BRCA2は、RAD51がDNAの釣り合った線維を探すのを可能にしています。ところが、以前は、BRCA2は、DNA修復に関係しているけれども、その形状と作用メカニズムは分かっていませんでした。よって、ガンの治療での標的にすることができませんでしたが、BRCA1とBRCA2は、DNAの修復に関係したタンパク質をコード化(機能するたんぱく質を塩基配列として暗号化すること)することが分かりました。

ところで、英国人の場合、約1,000人中1人がBRCA2遺伝子に変異が有りますが、日本人の場合、BRCA2に変異が認められる女性は、乳がんの発症により寿命が40~85%短くなり、一般的な遺伝子変異による寿命が約12%短くなるのと比較しても、BRCA2の変異では多いようです。なお、英国では、BRCA1とBRCA2変異の陽性の女性は、予防的に、ビタミンCの点滴やグルタチオンの点滴、あるいは、それらの栄養素を経口摂取したり、中には乳房の外科手術をする女性もいる、と報告されています。

ところで、DNAは、毒性化学物質、代謝産物、紫外線、PM2.5、それに放射線などにより、一日あたり数千回ダメージを受けますが、体の修復機構によりダメージの多くを修復し、修復できなかったDNAはガンを発症させます。米国や英国の研究によると、抗酸化栄養素などが、その修復機能を高める、と報告されていますが、抗酸化栄養素が、BRCA2の変異を修復させるかどうかは、今後の研究が待たれます。

References
First picture of BRCA2 protein show how it works to repair DNA. ScienceDaily. Oct 5,2014
Tana Shahid, et al: Structure and mechanism of action of theBRCA2 breast cancer tumor suppressor. Nature Structure &Molecular Biology. 2014;DOI: 10.1038/nsmb.2899