医科栄養学・栄養医学ブログ

医学部で医科栄養学を学んだ経験と最新の栄養医学をこのブログに反映したいと、考えています。

心不全へのL-カルニチンの作用について その二 栄養医学ブログ 日本ビタミンC研究会 藤井毅彦

2023-06-02 10:09:28 | 栄養医学、ニュートリシィオナル サイエン
Soukoulis博士らの研究によると、心不全患者のL-カルニチン、もしくはプロピル-L-カルニチンの摂取では、運動能力の改善、運動時間の延長、駆出率の最大化、酸素消費量の最大化、などの増加が統計学的に認められた、と報告しています。また、別の研究では、30名の心不全患者にL-カルニチンを30mg/日、摂取してもらい、対照に比べて、肺動脈圧の低下、運動能力の改善、酸素利用の増大、それに心室サイズの縮小などの改善が認められました。浜松医大での研究によると、L-カルニチンは、心不全患者に対して、伝統的治療法とL-カルニチンを併用摂取することにより、有益な治療因子になる可能性が認められました。

Mancini博士らの研究によると、心不全患者(NYHAクラス2とクラス3の60名)の駆動分画の改善(180日後、13.6%)は、伝統的治療法(ジキタリス、利尿剤)に併用して、1.5g/日のプロピル-L-カルニチンを摂取した患者で認められました。ところが、L-カルニチン摂取による代謝産物のトリメチルアミン-N-オキシドが、逆に心臓に害があるとの米国での研究もあります。このことは、L-カルニチンの摂取量に問題があるのか、他の栄養素の摂取状況が関係しているかどうか研究が必要です。さらなる研究の積み重ねを期待しています。

References
Heart failure. University of Maryland Medical Center
Heart Failure. LifeExtension
Kobayasi A, et al. L-carnitine treatment for congestive heart failure. Jpn Circ J.1992 Jan;56(1)]86-94