医科栄養学・栄養医学ブログ

医学部で医科栄養学を学んだ経験と最新の栄養医学をこのブログに反映したいと、考えています。

膀胱ガンリスクへのクルクミンの作用について 栄養医学ブログ 日本ビタミンC研究会 藤井毅彦

2019-07-29 10:39:01 | 健康・病気

近年、ヒトは、江戸時代のヒトに比べて、多くの食品添加物(アスパルテーム、酸化チタン、サッカリンなど)の摂取、化学物質への暴露、化学農業における農薬、除草剤による汚染などに晒され、それらの相互作用による膀胱ガン発がんリスクにさらされているのが現状です。そして、これらの汚染が、膀胱ガンの発症に深く関係しているとの多くの研究報告があります。もちろん、常態的アルコール摂取や喫煙、それに高齢化による膀胱上皮細胞の劣化と解毒機能の低下も関係しています。ここでは、膀胱ガン対策の一つとして、クルクミン(秋ウコンの成分)が膀胱ガンリスクの低下と関係しているという、新しい研究が複数報告されているので、これらについて考えていきたいと、思います。なお、秋ウコンは、ターメリックと呼ばれ、スパイスとして料理によく用いられ、ターメリックには約3.6%のクルクミンが含まれています。

Jing shi博士らの研究・報告によると、クルクミンは、ガンの進行をコントロールすることがわかりました。膀胱ガン細胞群の細胞の成長、アポトーシス、転移などに及ぼすクルクミンの効果は、MTT試験(培養細胞の生存率や増殖率を調べる試験法)、移行アッセイ法(培養環境下での細胞の移動性を分析する手法)、flow cytometry(微細な粒子を流体中に分散させ、その流体を細く流して、個々の粒子を光学的に分析する測定法)を用いて評価されました。これらに関係したメカニズムは、western blot analysis(ウエスタンブロット解析)を用いて研究されました。クルクミンは、容量・時間依存様式ではT24細胞(ヒト尿路膀胱ガン細胞群)と5637細胞(ヒト尿路膀胱ガン細胞群)の成長が低下するのが確認されました。クルクミンはin vitroでのマトリックスメタロプロテナーゼ伝達経路(ガン浸潤転移と関係した経路)の抑制を通じて、膀胱ガン細胞のアポトーシスを促進し、その細胞の転移を阻害することが、この研究で明らかになりました。膀胱ガンへのクルクミンの抗膀胱ガン作用は、将来、臨床での効果が認められる可能性があります。さらなる複数の研究が期待されます。また、別の研究では、クルクミンは、大腸ガンや大腸ポリープ(腺腫)の発症を予防することが報告され、日本女性のガンの中で第一位の大腸ガンへの予防・治療効果が期待され、いろんな研究機関で、現在研究されています。

 

J . Falke博士らの研究・報告によると、シクロデキストリンークルクミン複合体(CDC)は、全ヒト尿路上皮性腫瘍細胞群とラットAY-27尿路上皮性腫瘍細胞群に及ぼす用量依存性抗増殖性作用を示しました。その上、CDCとCDC+BCGによる膀胱内治療では、上皮性腫瘍細胞は、それぞれ、60%と68%低下し、BCGと対照に比べ、それぞれ75%と85%ほど低下しました。プラシボでのこの違いは、統計学的には重要でありませんでした(p=0.078と0.199)。しかしながら、それらの腫瘍細胞は、プラセボとBCG処置ラットで認められました。

結論として、CDCは、in vitroではヒトやラットの尿路上皮性腫瘍細胞群への抗増殖性作用を示し、侵襲性同所膀胱ガンラット群において、CDCとBCG併用でのCDC治療に対する希望的効果を観察しました。これらの研究は、クルクミンの抗がん性の新しい研究なので、さらなる追試が必要と考えられます。

また、米国での別の研究によると、クルクミン(ターメリックの成分)は、ヘッジホッグシグナル経路を抑制することにより、膀胱ガン幹細胞を阻害します。このことから、ヘッジホッグシグナル経路の抑制により、乳がん幹細胞の活動を阻害すると考えられ、このことは、膀胱ガンへの介入の効果的な化学的予防因子となるに違いないと、考えられます。

Cancer Research(2009;69(23):8958-66)誌に載ったAshish M博士らの研究によると、ターメリック(秋ウコンの洋名)は、現在、研究されている最も重要な抗がん栄養素で、その成分のクルクミンは、BCG療法(膀胱ガンの免疫療法)の効果を増強し、膀胱ガン細胞のNF-kBの阻害とTRAIL受容体の誘導を通じて、BCGの抗腫瘍作用を増強すると、報告されています。なお、これらは、新しい研究なので、今後、データが積み重ねられると、期待しています。なお、クルクミンの許容量は、150mg/50Kg/日と報告されています。

 

 

references

Jing SH,et al. Antitumor effects of curcumin in human bladder cancer in vitro. Oncology Letters. May 18, 2017

J Falke, et al. Curcumin as treatment for bladder cancer. Bio Med Research International. 2018, ArticleID9634902, 7 pages

Can Turmeric help with bladder cancer? TURMERIC.com

Curcumin could help with bladder cancer.The Spicy Therapies. Feb 20,2018

A shish M,et al. Turmeric compounds may help prevent and treat bladder cancer. Cancer Res. 2009;69(23):8958-