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買い集めていた45年前の週刊ベースボールを読み返しています

# 712 評論家をドッキリさせた異変 ④

2021年11月03日 | 1977 年 



止まらない快進撃と喜んでいたら今度は止まらない黒星街道。やっぱりダメかと泣いていたらまた勝ち始める。どうにも不思議なタイガースの試合っぷり、どうなってんだろう?

王敬遠にみる吉田采配
連勝、連敗、また連勝。ドラマチックでいいじゃないと笑い飛ばせる人には堪らないだろうが、普通の阪神ファンには『嬉しがらせて・・・泣かせて・・』と歌の文句そのままで精神衛生上あまり好ましくない。「ファンからしてみればどうにも理解できない。いったいどう阪神というチームを考えていったらいいのか。連敗するかと思ったら連勝するし、さっぱりチームの体質を計ることができませんわ」と嘆く阪神ファンの宝塚市・柴田達朗さん。柴田さんによると「甲子園で巨人3連戦3連敗した時にスタンドから罵声を浴びせたけど、家に帰って冷静になったら興奮した自分がアホらしくなった。去年の11連敗に比べたら大したことなかった」と。

勝つ時は派手でファンとしては嬉しいのだが、負ける時も派手というか、物凄いというかエラく目立つものだからファンは余計にカチンとくるそうだ。その八つ当たりが吉田監督に向けられる。ファンだけでなくネット裏の専門家でも吉田采配に首を傾げる人は多い。例えば4月27日の対巨人5回戦(後楽園球場)7回裏一死二塁の場面で谷村投手は張本選手を敬遠して王選手と勝負した。結果は左中間に2点適時打で吉田監督の賭けは失敗した。野球は結果で評価されるからこの王を巡る敬遠策についても様々な意見が飛び交った。

「かつてベーブルースが言っていただろ『ヒット狙いに専念させてくれたら打率4割を打ってやるぜ』と。王だってホームランを狙わずに打ったらいかにスランプとはいえヒットを打つくらい容易い大打者。その辺を理解できない阪神ベンチはダメだよ」と阪神OB評論家は手厳しい。これに対して吉田監督は「谷村には投げやすい方を自分で選べと指示したが迷っていたので相性が悪い張本を歩かせた。結果的にヒットになったが当たりそのものは打ち取った打球でウチに運がなかっただけ」と釈明したが少しおかしい。昨季の谷村投手の対戦成績は張本は12打数3安打、王は11打数5安打と王の方が相性が悪かったのだ。

あるベテラン評論家が対巨人戦の前にこんな話をしてくれた。「長嶋監督が『俺も下手だけど吉田さんも同じだね』と。お互いに裏表がなく分かり易い采配だと笑っていた。相手の裏の裏をかくような事はせず、ある意味清々しいじゃないか」と。だからこそ28日の試合のようにノーガードの乱打戦を見せてくれる。また別の評論家は「長嶋監督も吉田監督も3年目だが昨年優勝した長嶋監督には余裕が感じられる。奇襲作戦と言われる早い回からの代打策も一つの型が出来て我々ネット裏の人間を納得させるようになってきた。その点では吉田監督の作戦はまだ板についてきたとは言えないね」と。

伝統の一戦と言われて常に対比される両チーム。昭和48年の最終戦に勝てば優勝という甲子園での直接対決に代表されるように大一番に強い巨人、ここぞという試合に勝てない阪神と言われ続けてきた。阪神は相手が巨人だと必要以上に意識してしまう。「今の巨人の状態は万全ではなく圧倒的に強いわけではないのだから130試合のうちの1試合と考えて戦えばよいのにそれが出来ない」と阪神担当記者は言う。むしろ戦力は阪神の方が上なのに大一番では巨人に勝てない。特に地元の甲子園では余計な緊張感が頭をもたげてしまう。吉田監督はじめ歴代の監督たちが懸命に払拭に努めた阪神の伝統的な体質がどうしても現れてしまうのだ。


田淵の闘志に光明
吉田監督は不運だった。開幕10試合までの阪神は順風満帆以上のあれよあれよの快進撃ぶりだったのにその反動は大きく余りに痛ましい逆境が待っていたのである。開幕前は最大の弱点と言われていた投手陣が完投試合を続ける奮闘を見せた。それが急にガタガタと崩れてしまう。それに加えて野手陣の故障が相次いだ。特に痛かったのが成長著しい掛布選手が広島戦で手首に死球を受けて戦線離脱に追い込まれたこと。続いてラインバック選手が肩とヒジを痛めて欠場し自慢の200発打線に陰りが。更に下位打線を牽引していた佐野選手が川崎球場で外野フェンスに激突して頭部に大怪我を負ったしまった。満身創痍の阪神では吉田監督にも同情せざるを得ない。

そんな中で変身したと言われているのが田淵選手だ。今年から選手会長に就任し、チームリーダーとしての自覚からか傍目から見てもスリムになった。かつては相撲の " 阪神部屋の横綱 " と揶揄されていた出っ張ったお腹の肉もスッキリ落として、今は90kg 台をキープしている。均整のとれた身体で動きもスムーズだ。ただし持病の腰痛は完治しておらず体調そのものは万全ではない。にもかかわらずここまでフル出場し、先の巨人戦では初盗塁や左翼線へ痛打して二塁へ果敢にヘッドスライディングをするなど元気なところを見せている。「プロ8年間で11盗塁の俺だけど今シーズン1年で20盗塁してやるぜ(田淵)」と冗談が出るくらい上機嫌だ。

後楽園での巨人戦で田淵は対巨人60本目の本塁打を放つなど3連戦の勝ち越しに貢献した。その前の甲子園での3連戦・3連敗後の記者会見で質問に答えず無言を貫いた挙句に「そんなに言うならアンタらいっぺん監督をやってみなはれ」と捨て台詞を吐いて不評をかった吉田監督も田淵の活躍に「ペナントレースは始まったばかり。勝負はこれからや」と心境に変化も。なんといっても200発打線の猛虎阪神がモタモタしていたらセ・リーグのペナントレースの面白さが半減してしまう。

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