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納戸の奥に眠っている箱を久しぶりに出してみると…
買い集めていた45年前の週刊ベースボールを読み返しています

# 560 KKドラフト ⑦

2018年12月05日 | 1985 年 



西武に1位指名されたPL学園・清原和博内野手は12月2日にも西武入りを表明する。この30年に1人という超大物を西武はどういう受け入れ態勢で待っているのか?また清原という素材が西武に何をもたらすのか?本誌評論家としてお馴染みの森昌彦氏の監督就任が確実になったこともあり、ますます清原という存在が興味あるものになってきた。

西武は器に相応しい教育をするチーム
パ・リーグの球団に指名されたら拒否して日本生命入りすると言っていた清原選手。ドラフト会議で西武に指名されて成り行きが注目されていたが、どうやら西武入りへ動き始めた。西武の浦田・鈴木スカウトが11月26日に清原本人と両親に会い指名の挨拶をした。「僕に西武のことを事細かに聞くんだ。球場や合宿所の写真を見せると身を乗り出して質問責めだった」と浦田スカウトは交渉の雰囲気を明かして西武入りへ手応えを感じたと語った。清原本人も心は既に西武の一員のようで「背番号は高校の時と同じ『3』がいい」と言ったという。清原の西武入りは確実のようだが、高校通算46本塁打・甲子園13本塁打の逸材を西武はどう育てていくのだろうか?

「高校生といっても我々は即戦力に近い評価をしている。実戦でどんどん使えば早い時期に中軸を打てる打者になるだろう」と話すのはチーム編成の元締めであり抽選で清原を射止めた根本管理部長。「選手には自ずと器がある。指導者はいち早くそれを見抜いて相応しい器を与えなければならない」が根本部長の持論。器とは投手なら先発・中継ぎ・抑え、打者なら打順を意味している。つまり将来四番を打つ打者は最初から四番の座に慣らしていかなければいけない、という事だ。だから打線の中軸候補だった秋山選手は1年目から二軍の四番だった。昨年のドラフト1位指名の大久保選手もまた二軍でクリーンアップを外れる事はなかった。


一塁・清原、三塁・秋山でON砲の再現狙う
しかし根本部長は持論を曲げてこうも言う。「清原は早い段階で一軍に上げて六・七番あたりを打たせて実戦で鍛えるのもいいかもしれない。四番の器に据えるのはそれからでも遅くない」と。二軍から育てた秋山や大久保と違っていきなり英才教育を施す可能性を匂わせた。つまり清原に対しそれだけ高い評価をしている。「長打力、右方向へも打てる技術などどれをとっても何十年にひとりという逸材。おまけに野球に対する情熱も並みじゃない。話をしてみてそれが痛いほど伝わってきた」と浦田スカウトも惚れ直す。打撃に関して異論を挟む者はいない。では高校時代はほぼ一塁しか守っていなかった守備に関してはどうだろうか?

「身体 (186cm・91kg) の割に柔軟性もあり器用だよ」とスカウトから報告を受けた根本部長は言う。本職は一塁だが他にも三塁や外野も守れる。甲子園で投手として登板したのは御愛嬌だろうが守りに関しても野球センスを感じる。根本部長は「練習すれば何処を守らせても一軍レベルに到達するのも早いだろうが打撃を生かすには慣れた一塁がいいかな」と話す。折しも今季一塁を守ったスティーブ選手の去就は未定。新外人次第で解雇される可能性もあり清原にとって願ったりの状況だ。一塁・清原、三塁・秋山はかつてのON砲が巨人の黄金時代を支えたようにAK砲が活躍すれば、数年来の課題であった人気面でも西武にとって希望の星となるのではないか。

そう言えば黒江前作戦コーチが退団会見で記者から「心残りはないか?」と問われて「気持ちは前向きだがひとつだけ心残りがある。清原君を指導できなかったのが残念だ」と答えた。清原とはそれくらいの選手なのだ。去る人がいれば来る人もいる。前ヘッドコーチで本誌専属の評論家・森昌彦氏が次期監督に決まっている。巨人V9の頭脳と言われ広岡前監督の懐刀としてヤクルトと西武でヘッドコーチを務め三度の日本一に大きく貢献した人物だ。西武球団初代監督の根本氏が開拓し、広岡氏が築き上げたものをしっかりと地固めするのが森氏の役目だ。「最近では別格の魅力的な選手だ。引っ張るだけじゃなく逆方向へも大きいのも打てる。並みのセンスではない(森)」と清原を高く評価している。



【清原日誌】
11月26日:西武と初交渉。富田林市の料亭「あき」で浦田チーフスカウト、鈴木スカウトの訪問を受ける。話し合いは2時間に及び「寮の設備は?」「グラウンドは?」など盛んに質問を浴びせる。交渉後の会見で「いい球団やと思います(清原)」と第一声。桑田について聞かれると「特に何もありません。寮で少し話しましたがドラフトに関しては話してません」と。そんな清原が目を輝かせたのは記者から「王監督が指名しなかったのを後悔するような選手になれるか?」と聞かれた時。清原は即座に「そう思います。それを心の支えにしていくと決心しました」ときっぱり言い切った。

11月27日:午後3時過ぎにPL学園のグラウンドで軟式野球部との対抗試合を楽しむ。姉・文代さんの中国旅行土産の人民帽を被ってプレーするなど茶目っ気ぶりを見せた。打ってはタイムリー二塁打、投げては先発した松山主将を好リリーフするなど大活躍。

11月29日:この日は桑田が巨人と初交渉の日とあって周囲はバタバタしていた。清原は授業を終えるとひとり研志寮からトレーニングウエアを着て現れた。記者から桑田について訊ねられると「僕には関係ないっス」と素っ気ない受け答え。黙々とランニングをして寮に戻った。来る12月2日に予定されている西武との2回目の交渉で西武入りを表明するものと推測されている。
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