今年のドラフトはひと口に言って清原ドラフトである。過去にも江川ドラフト、原ドラフトと呼ばれるものがあったが、今年の清原ほど集中度・寡占度はなかった。その意味で非常に特殊なドラフトと言っていい。その特殊性の中で各球団はどのような秘策を練っているのだろうか?
◆ 阪神タイガース:清原には一塁だけでなく外野、三塁も用意
初の日本一に輝いた阪神の課題は?の問いには誰もが投手力の充実を挙げるだろう。弱投に悩まされた首脳陣も同じ考えだが、清原となると話は違ってくる。「清原の1位指名は8月に決まっていた」と球団関係者は明かす。吉田監督は日本一になった翌日の会見でドラフトに関しては白紙を強調したが実は8月の時点で既に清原指名は決まっていたのだ。喉から手が出るほど欲しい即戦力投手を差し置いてでも清原一本に絞ったのは何故か?それは清原の存在がチームバランスを超越した選手だからだ。振り返れば昭和54年のドラフト会議では今と同じく打高投低のチーム状況であったが1位は早大の岡田だった。その判断は間違いでなかった事は明らか。そして何よりも今ドラフトに即戦力投手の逸材が存在しないことが清原1位指名の最も大きい理由である。
「清原君は足も速く肩も強いから一塁だけでなく外野や三塁でも使える(横溝チーフスカウト)」と佐野選手に衰えが見え始めているだけに1年目から外野手として出場する可能性もある。更には掛布選手の負担を減らす意味でも将来的には一塁へのコンバートが囁かれており、清原を三塁の後釜にしようと考える動きもある。クジ運に見放された場合はズバリ、園川投手(日体大)が外れ1位候補の筆頭。日米大学野球で脚光を浴びた本格派左腕。先発陣にサウスポーが不在の阪神にとって是非とも欲しい投手だ。仲田投手に期待した今季だったが制球難と精神面に課題があり来季の計算には入っていない。左腕不足は中継ぎ陣にも。山本和投手は年齢の点で連投になると苦しくワンポイントを任せられる左腕は必要だ。ただ園川投手はプリンスホテル入りを希望しており、場合によっては西川投手(法大)に方向転換する可能性も残している。
◆ 広島東洋カープ:有望若手が揃っているだけに余裕のドラフト
「戦力的に特にココという穴がないので」と他球団の監督さんが聞いたら頭から湯気を出しそうな余裕の発言をした阿南新監督。退任した古葉前監督から引き継いだチームには有望な若手がゴロゴロしている。山本浩や衣笠以外の主力選手は全員20歳台。加えて春キャンプやオープン戦で活躍した次世代の若手も控えている。それでも敢えて弱点を挙げるとしたら二塁手か。木下、原、新人の正田、更には小早川をコンバートして何とか今季は乗り切ったが、確固たるレギュラーは不在。阿南監督も「敢えて言うなら内野手が欲しい」と本音をポロリ。どうやら広瀬(本田技研)、若井(法大)、福王(明大)あたりの即戦力野手に白羽の矢が立ちそうだ。
だが阪神同様に清原は別格。1位指名に関しては「清原で決まり」と木庭スカウト部長は公言している。他球団との競合は覚悟の上で「やっぱり大砲というのは持って生まれた才能。清原君は10年に1人の逸材。意外と足も速く器用さも兼ね備えている(木庭スカウト部長)」と高評価。抽選で清原を外した場合は「投手はいくらいても困らない。今年は投手が不作なので各球団のスカウト達の腕の見せ所(球団関係者)」と言うように少数精鋭の好投手を奪い合うことになりそうだ。現時点では園川投手(日体大)、中山投手(高知商)という左右の本格派に狙いを絞っているようだ。
◆ 読売ジャイアンツ:オール・オア・ナッシングで清原に賭ける
実力は三流に成り下がっても相変わらず人気だけは No, 1の巨人。球団フロントもスカウト達もこの時期になると俄然と強気になる。「実績を見れば清原は原以来の大物じゃないかな。甲子園でもここで打てば一流だなぁ、と思いながらテレビを見ていたけど必ず打ったもんね。すぐには無理だろうけど2~3年でファンの期待に応える選手になると思うよ。抽選になるだろうけど逃げる手はないよ。ナンバーワンの選手なんだから」と王監督は秋季キャンプ中に記者からドラフトに関して聞かれると清原指名を堂々と公言した。巨人はドラフト会議当日に正力オーナーを交えて指名選手を決めるのが恒例となっていて現時点では未確定だが今年に限っては清原で間違いなさそうだ。
2位は吉田選手(三菱自動車川崎)を予定。山倉選手の後釜がなかなか育たず、有田選手(近鉄)獲得に動いているが年齢的に2~3年が限界とあって何としても実力派捕手が欲しいところ。実は昨年のドラフト会議後にドラフト外で獲得に乗り出したが会社側から「ドラフト外では…」と断られている。球団側も指名すれば入団OKの感触を得ているようだ。投手に関しては石井投手(日大)を狙っている。「中継ぎなら1年目から使える。調子にムラがあるのが欠点だが度胸もあり即戦力」とスカウト陣の評価は高い。3位以降では堀江スカウトが推す古川選手(亜大)に注目。パンチ力のある右の外野手で仁村選手や石井選手と遜色ないと評価している。