Haa - tschi  本家 『週べ』 同様 毎週水曜日 更新

納戸の奥に眠っている箱を久しぶりに出してみると…
買い集めていた45年前の週刊ベースボールを読み返しています

# 463 問題児 ②

2017年01月25日 | 1985 年 



昔の学級委員は先生の指名で決まっていたが最近では民主的に選挙で選ばれる。だから必ずしも先生のお気に入りの生徒ばかりではなく " 戦う学級委員 " も出現し先生を困らせる。 " 戦う選手会 " の要職にある岡田(阪神)や梨田(近鉄)も球団に対して果敢に戦いを挑んだ。岡田が「コンバートをするなら西武に放出してくれ」と言えば梨田も契約更改の席で「トレードに出してくれ」と直訴したと伝えられている。こうした選手側からの揺さぶりに両球団はどう反応したのかというと予想通りというか、情けないというか阪神は吉田監督が早々に「岡田は二塁一本でいく」と宣言した。入団以来、三塁・二塁・外野と転々とさせられた岡田にとってこれ以上の朗報はない。言わば岡田の反旗に球団側が過剰に反応した訳だ。しかしチーム全体を見ればこの岡田二塁定着は必ずしも得策ではない。内野から弾き出される選手がいるからだ。

真弓選手である。昨シーズン主に二塁を守っていたが岡田を二塁に定着させる為に真弓は外野コンバートを命じられ黙って受け入れた。真弓らしいスパッとした割り切り方だが「どうせ俺は生え抜きじゃない。こうなる立場なんだ」という意識も働いた筈。事実、掛布選手は「そりゃ岡田が定着して頑張ってくれれば越した事ないが、その為に外野へ行かされる選手の気持ちを考えてみろ」と不快感を隠す事なく表した。その後、スポーツ紙上で " 口もきかない両主砲 " などと面白おかしく掛布と岡田の仲が報じられたが元を辿れば吉田監督の発言に行き着く。岡田や真弓が期待通りの活躍を見せれば笑い話で済むのだが岡田には右太腿筋肉断裂の後遺症が残っていて走者との接触で再び離脱などとなり、穴埋めに真弓が二塁へ再コンバートともなれば真弓の心中は「しょせん俺は便利屋よ」と士気が下がりかねない。

近鉄は阪神のような対応はとらなかった。「有田捕手より出番を多くする」「君の方を信頼している」など決して言質は与えなかった。これはチーム内での評価の逆転現象が球団を強気にさせているようである。有田は試合中に投手に向かってあれこれキツイ言葉を投げつける。それだけ有田がリードに自信を持っている事を表している。梨田にはそれが無い。技術面でも肩を除いては有田の方が一枚も二枚も上手。鈴木啓投手が技巧派へのイメチェンが成功した陰に有田の存在があったのは言うまでもない。梨田の最近の口癖「もう一度、昔の梨田の姿に戻りたい」が現在の立場に対する焦りの現れでもある。昨今の選手会において球団側に対し急先鋒だった田尾選手が西武にトレードされたように、例え人気選手でも球団の意にそぐわない場合は放出される。確かに梨田は近鉄にとって貴重な戦力だが「トレードされっこない」などとタカをくくっているとトレードが実現する可能性はゼロではない。

一方で優等生なのが石毛(西武)。球団創設時のチームの顔だった田淵が引退し球団はニューリーダーとして白羽の矢を立て自覚を促したが、今ひとつ頼りない。昨シーズンは入団以来最少の安打数で打率も前年の3割台から2割5分台に低迷したものの、年俸は期待料込みで10%アップ(3千9百万円)したが新年早々に球団の期待に冷や水をぶっかけるような失態を演じてしまった。1月4日、伊豆の大仁のゴルフ場での自主トレ中(ゴルフのプレー中という情報もアリ)に左膝を痛めてしまった。しかも直ぐに治療をせずにそのまま放置。11日になって長池コーチから帰京し治療するよう命じられ診断を受けると医師から1月中の安静を言い渡された。「何を考えているのかね、この男は。自分が置かれている立場を分かってない」と広岡監督はバッサリ斬り捨てた。広岡監督の構想では今季から打順が一番か三番に予定されているが、にわかに大きくなった責任感に押し潰されてしまうかも。
コメント (1)
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